先日こんな症例を経験しました。
手術目的で入院していた60歳台の患者さん。手術は問題なく終えましたが、食事が進まず、発熱も来しました。その頃から意識レベルの低下を認めるようになり、診察すると振戦や筋固縮がみられました。 内服薬を確認すると、以前から炭酸リチウムを服用していました。
何が起こったかというとリチウム中毒で、おそらく食欲低下と発熱を契機にリチウムの血中濃度が上昇したのだと思います。
そんなリチウム中毒についてDr.Kがまとめてくれたので、あなたもぜひ勉強してください。
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我々研修医が救急外来などで出会う中毒の症例は市販薬の過量服薬が多いかと思いますが、処方薬による中毒の原因として「炭酸リチウム」は比較的多いものです。炭酸リチウムは主に双極性障害の躁症状の改善目的に処方され、細胞膜の電位安定化に関与して薬効を発揮すると言われています。
【分類】
・急性中毒
・慢性中毒
・慢性摂取患者の急性中毒
→至適血中濃度(治療域)は0.6-1.2mEq/Lと狭い
=脱水等で血中濃度が上がると簡単に中毒を起こしてしまう
【検査所見や診断のポイント】
◎リチウム摂取歴のある患者に
・悪心/嘔吐
・言語不明瞭/傾眠(意識レベルの低下)
・焦燥/錯乱/せん妄/昏睡
・痙攣/振戦/ミオクローヌス
・失調/筋強剛/反射亢進
が見られたら中毒を疑い、血中濃度を測定する
→振戦や強剛等パーキンソニズムに近い症状が表れる(Myerson徴候なども陽性になったりする)頻度が高いため、リチウム摂取歴が不明でも急激に進行してきたパーキンソニズムに対しては鑑別として考える必要がある
<バイタルサインや血液検査>
・WBC上昇
・低血圧
・高体温
→感染症(Septic shock)との鑑別を要する
<心電図>
・陰性T波
・徐脈、脚ブロック→洞停止
【治療方針】
◎まずリチウム投与を中止
+胃洗浄はよい適応(リチウムは活性炭に吸着しにくい)
+細胞外液により脱水やNa欠乏を是正
→脱水状態では尿細管におけるリチウムの排泄率が落ち、再吸収が増加してしまう
+痙攣重積の場合にはジアゼパム静注などなど
※解毒剤はなく、重傷の際は血液透析も必要
中毒の診断は難しいことも多いですが、どんな症例に対しても詳細な病歴聴取(特に”AMPLE”の聴取)を怠らないことが重要かと思います。特に本人の意識レベルが悪い時には家族や救急隊からもしっかりと情報収集するよう心がけていきたいものです。
(Dr.K)
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