臨床研修ブログ

水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。

HIVで知っておくべきこと・・・松永先生のレクチャーより

2024.11.21

32歳男性が咳と呼吸困難感で受診しました。

 

2週間前から乾性咳嗽を自覚。徐々に増悪し、特に労作時に増悪する呼吸困難となりました。屋内外で症状の変化なし。既往歴は花粉症。家族歴に特記なく、内服薬もなし。喫煙は20本/日 x 15年。機会飲酒程度。

 

身体所見では体温 37.8 ℃, 血圧 124/65 mmHg, 脈拍 76/min,呼吸数 18/min, SpO2 95% (RA)
肺:呼吸音清で、他に特記所見はありませんでした。

 

胸部レントゲンで異常を指摘され、CTを撮影したところ下のようなすりガラス陰影を認めて、ニューモシスチス肺炎(PcP)と診断されました。

 

 

PcPは徐々に進行する乾性咳嗽・呼吸困難で、安静時で問題なくても、歩行させてみて初めて、呼吸困難がはっきりすることもあるので安心できません。LDH高値、β-Dグルカン高値や胸部レントゲンでは間質影が典型的ですが、正常のこともあります。

 

PcPはステロイドを長期服用している患者さんでは発症することがあり、多くの患者さんでPcP予防のためにST合剤を処方されているのは、あなたも見たことがあるかもしれません

 

でも、30歳台でステロイドも服用していないのにPcPを発症するのでしょうか?

 

こんな時はPcPと診断して安心せずに、背景に何かあると疑うこと、特にHIVの存在を疑うことが重要です。実際のところPcPはCD4 <200になると発症するAIDSの指標疾患の一つになっています。

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先日のことですが、今年4回目となる松永先生の感染症レクチャーが開催されました。今回のテーマは「HIV」でした。

 

正直なところ当院でHIVに遭遇することは非常に稀です。そのためにHIV治療の進歩についていけていないところがあります。つまり我々が間違った理解していて、それに気づけていない危険があります。その結果、患者さんに遭遇した時にやってはいけないことをしてしまうかもしれません。そういう点で松永先生のレクチャーは重要でした。

 

冒頭の症例のように、経過に違和感を感じてHIVも鑑別に挙げることは我々にとって大事なことです。そこで今回の松永先生のレクチャーではHIVに関して非専門家が知っておくべきことをまとめていただきました。次回もそのエッセンスを紹介していきます

(編集長)

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家族の判断を理解するヒント

2024.11.19
カテゴリー: 初期研修

あなたも患者さんが亡くなりそうな場面に何度か遭遇したことがあると思います。当院のJ1の中でも、多い人だと4~5回はお看取りを経験し、死亡診断書を書いています。

 

患者さんの容態が悪化してくるとお亡くなりになる前から、ご家族に病状を説明して、いよいよ最後の時はどのように対応するかという話もします。その時のご家族の反応はどうだったでしょう?

 

最後まで積極的な治療を望む家族もいれば、意外にあっさりしていたり、「苦しまないようにお願いします」と言われたり、話をするまでどんな反応があるか、なかなか予想できないと思いませんか?

 

我々は疾患のことを理解しているので、その後の経過をある程度予測できるし、こんな感じで対応するのがイイかなとイメージしながらご家族に話を切り出します。

 

ところが、ご家族の反応は我々の予想通りにはいかないことがほとんどです。でも、どうしてご家族がそう判断するのかを理解するヒントを得る方法があるのですが、あなたはご存じですか?

それは家族歴に隠されています。

 

入院時などに家族歴を聞く時に、患者さんのご家族の中で既に亡くなっている方がいれば、その方の話を詳しく聞き出してみてください。

 

編集長の経験で言えば、例えば脳梗塞が原因で寝たきりで、療養病院を何度も転院した経験がある方がいたご家族は、その苦労を思い出して、積極的な治療を希望しないことが多い印象があります。

 

逆に、大動脈解離や心筋梗塞などで急にご家族を亡くされた方は、何もしてあげられなかったということをずっと悔やまれて、最後まで積極的な治療を希望されたご家族が多かったように思います。

 

また、ご家族がみな健在で家族が亡くなる経験がない場合は、時間をかけて丁寧にお亡くなりになるまのでプロセスを説明する必要が出てきます。

 

家族歴は鑑別疾患を考える時の重要な情報源だけでなく、ご家族の考えや選択を理解する大きなヒントが隠れていることがあります。患者さんが亡くなりそうな状況でご家族に話をする時に役立ちますので、あなたもこういう視点で家族歴を聞き出してみてください。

(編集長)

ERの一コマ

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見た目は大事

2024.11.16
カテゴリー: 初期研修

あなたも一度くらいは患者として病院やクリニックで診察を受けたことがありますよね?

 

診察室に入る時に、どんなお医者さんか?何を聞かれるか?程度の差はあれ、緊張しませんでしたか?

 

そんな時に、お医者さんの方から自己紹介してくれて、いろいろ話しやすく相槌を打ってくれて、不安なことを話せて、話もまとめてくれると、すごく安心します。あなたにもそんなお医者さんになってもらいたいです。

 

でも、同時に患者さんや家族は「このお医者さんを信頼していいのか?」と疑いの目でも見ています。無意識のうちに医者を値踏みしているのです。あなたも診察を受けた時にそう思っていませんでしたか?

 

これは誰でも無意識にしていることなので、患者さんを責めても意味がありません。ですが、ある程度の対策はあります(笑)。それは・・・、身だしなみを整える、つまり見た目を良くすることです。

 

たぶん患者さんは誰でも、自分がかかったお医者さんがカッコいいとか、腕がいいとか、偉いとか、テレビに出たことがあるとか、そんなことを期待しています。家族や知人に、どんないい先生だったかを自慢したい気持ちがあります。そんな時に寝ぐせで髪が立っているとか、白衣の襟がきちんとなっていないとか、無精ひげだったり、白衣や靴に血液がついて汚れていたら、やはり印象が悪くなりますよね。・・・・あなたは大丈夫ですか?

 

ブランド物の白衣でもきちんと着ないとカッコ良くないですし、スクラブも市民権を得ましたが高齢の患者さんにとっては「お医者さん=白衣」というイメージがまだまだあるので、イマイチかもしれません。(このため編集長は白衣を着るようにしています)

 

カッコよくする、身だしなみを整えることで、よい印象を持ってもらうことが出来ます。患者さんを診察する時の見た目がだらしないのはNGです。あなたの行動をみんなが見ていますから、だらしない格好で患者さんや家族の前には行かないようにしましょう。

(編集長)

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超音波によるショックの鑑別

2024.11.14
カテゴリー: カンファレンス循環器
研修医1年目のT.Nです。今回は、私が循環器内科を回ったときに学んだことを紹介します。
研修が始まり間もない頃、指導医の先生にこのようなことを聞かれました。
「ショックってどうやって鑑別する?」
 
4つのショックの鑑別ポイントをまとめた表は、よく見かけるような…、でも心拍出量とか末梢血管抵抗とか中心静脈圧とか、いまいちピンと来ないし。たしかにどうやって鑑別するのだろうと思いました。
 
答えはエコーでした。「RUSH exam」という方法を教えていただいたのですが、RUSHとはRapid US for Shock and Hypotensionの頭文字で、この方法ではエコーだけで心臓の状態、循環血液量、血管の状態を一度にスクリーニングすることができます。
 
RUSH examでは、①Pump(心臓)  ②Tank(循環血液量)  ③Pipe(血管)の3つのカテゴリーごとに所見を取ります。
 
①Pump
・心嚢液貯留の有無
・左室径/収縮能
・右室径/収縮能
・左室径と右室径の比、右心系による左心系圧排の有無
②Tank
・E-FAST
・肺エコー
・IVC径/呼吸性変動
③Pipe
・大動脈解離/大動脈瘤の有無
・DVTの有無
(肺エコー: 肋骨に対して直行する向きで肺にプローブを当てます。肺水腫があるとBlineと呼ばれる高輝度の陰影を認めます。)
 
すべての所見を揃えることは難しいですが、一つ一つがショックの原因を探り初期対応につなげる上で、とても有益です。
 
ここからは、私が経験した症例を一つご紹介します。
90歳男性、血圧低下と心不全疑いの方です。胸部レントゲンで、心拡大と両側肺野の透過性低下を認めたため左心不全が疑われました。そのため、以下のように治療方針を立ました。
 
①ノルアドレナリンで血圧を維持
②フロセミドで溢水を解除
③NPPVで呼吸のサポートと左室の前負荷軽減
 
治療を開始して、しばらく経過観察しましたが、血圧は上昇せず、利尿薬への反応も悪く、なかなか改善は見込めませんでした。
この患者さんに何が起きているんだろう?と思い、まずエコーを当ててみました。すると、心室の収縮能は左室よりもむしろ右室の方が低下していました。また、IVCから腎静脈にかけての拡張も認め、静脈灌流が滞っていることもわかりました。
まとめると、この方は左心不全に右心不全も合併しており、またNPPVの作用も相まって閉塞性ショックのような病態も重なっていました。それによってなかなか血圧が上がらず、腎血流低下からの乏尿も生じていたと考えています。
そのため、NPPVを一度NHFに変更してみたところ、静脈系に滞っていた血流が解除され、血圧は上昇し尿量も増え、急性期は乗り越えることができました。
 
早急な初期対応が求められるショック状態では、素早い病態把握が重要となります。その点で、エコーは迅速に多くの情報を得ることができるので、とても便利だなと感じました。
まだまだ修練が必要だなと痛感する日々ですが、うまく使いこなせるようになることを目指して、これからも頑張りたいと思います!

(T.N)

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病院見学のススメ

2024.11.12
カテゴリー: 初期研修

11月になって肌寒くなってきました。季節がようやく追いついてきた感じですね。

 

11月と言うと、マッチングも終わり、編集長的にはホッと一息つきたいところですが、すぐに来年度のローテーション作成などに取り掛かる時期でもあります。

 

そして4年生もしくは5年生のあなたは冬休み中の病院見学の計画をそろそろ考え始めるころでしょうか?昨年までと異なりコロナでの制限も無くなって、病院見学もしやすい環境になっていますが、年が明けるとあっという間に春休みで、それが過ぎると気づいたらマッチング面接の時期になってしまいます。まだ時間があると思わないで、少しずつでも情報収集を始めるのが良いと思います。

 

このブログでは何度も紹介しているネタではありますが、今回は病院見学のポイントを紹介します。

 

・可能な限り、病院見学に行きましょう。

レジナビなどのサイトやWeb病院説明会、リアルイベントで情報収集をするのが当たり前になりましたが、それだけでは不十分だと思います。実際に行ってみると、それぞれの病院によって想像以上に雰囲気が違うことに気づくはずです。行けない時には、Web病院説明会で質問コーナーや個別面談のようなコーナーを設けているものが増えているので、積極的に利用して雰囲気をつかむのが良いと思います。

 

・病院見学に行った際のポイントは・・・、

指導医クラスの話は、半分程度に聞いておけばOKです。なぜかと言えば、基本的にイイことしか言わないからです(編集長にも自覚があります・・・)。

 

・必ず研修医たちに直接話を聞きましょう。

研修医の先生たちにあなたの知りたいことを質問してみましょう。研修医も1年前には同じように悩んでいた訳ですから、たとえあなたがつまらない質問かもと思っても、そのような質問こそ聞いておくべきです。一番参考になる答えが返ってくるはずです。

 

そして研修医たちの元気の良さや看護師さんや技師さんたちの雰囲気にも注目してみて下さい。研修医を育ててくれるのは指導医だけではありませんからね。

 

さらに、気になっている病院や候補として考えている病院には2回、3回と見学に行ってみることをおススメしています。何故かと言えば、どうしても初めてのところは緊張するし、余裕がないので周りを見ているようで見えていません。2回目になると余裕ができて、おなじ病院見学でも見える風景が違うはずです。

 

加えて1回目にあった研修医が、2回目にはものすごく頼りになる研修医に見えるはず。この時期なら、1年目でもかなり仕事ができるようになっていますので、そんな研修医の姿を見ると、あなたの研修のイメージも描きやすくなるはずです。

 

当院に病院見学に来ていただいた方からは

・研修医の先生と関わる機会が多く、研修の特徴について知ることができて良かった。

・小児科では、済生会での研修だけでなくこども病院にも行くことができて、初期研修後のイメージも持つことができました。

・昼食の時に研修医の先生とお話する時間が確保されていて、聞きたいことを全部聞くことができ、とても参考になった。

・救急科の見学では、日中に救急車が来なかったのですが、その分研修医の先生方からいろいろな話を聞けたので満足です。

・研修医の先生方が主体的に診療に関わっているのを見ることができました。

といったコメントをいただいています。

 

そろそろ冬休みの病院見学の申し込みをいただいています。あなたもお早めに下のリンクからお申し込みください!

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(編集長)

今日もPICC挿入

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外来診療に役立つ10のコツ(3)

2024.11.09
カテゴリー: 初期研修

「外来診療に役立つ10のコツ」の最後です。

 

7)受療行動を把握する

同じような症状で、繰り返し受診しているのか、他の医療機関にかかっているのかを把握します。他院でも検査や処方を受けているのなら、その結果がどうだったのかを確認しましょう。患者さんの解釈モデルの理解につながり、検査や治療計画を立てる時に無駄な検査を省けます。同時に家庭環境や仕事の状況も聞き出すと、これらの計画を立てやすくなります。

  

8)要約を述べる 
患者さんによっては、同じ話を繰り返してなかなか終わらない人がいます。こんな時は、例えば動悸が主訴なら「日中の仕事をしている時は何ともないけど、ホッと一息ついてソファに座ったり、夜にお布団に入って眠りにつくまでの間に、脈が抜けるような、ドキッとする感じがあるんですね」というように、患者さんの話を要約して、確認してみましょう。

 

こうすることで、患者さんもちゃんと話を聞いてもらえていると実感できるし、患者さん自身も問題点を整理できるようになります。

 

9)質問や追加したいことがないかを尋ねる 
患者さんからの話を聞いて、こちらの方針もだいたい定まってきました。検査の予定などを決めて、そろそろ診察を終えるタイミングで、「他に聞いておきたいことはないですか?」と一言付け加えましょう。

 

この一言で患者さんは一生懸命話を聞いてくれていると感じて、より印象が良くなります。またこの質問をきっかけに、いままでスッキリ理解できなかった患者さんの解釈モデルや受診動機が判明することがあります。

 

10)次のステップを示す

患者さんにいろいろと話をしますが、残念ながら実はよく理解できていません。それは仕方ないことです。患者さんは「で、どうすればいいの?」と思っているのです。なので、「次は1週間後に検査結果を説明します」など具体的な次のステップを示しましょう。これは患者さんの記憶に残りやすいようにワンフレーズにするとイイかもしれません。

 

編集長自身を振り返ってみると、患者さんとコミュニケーションがうまく取れていないと感じた時は、10個のうちのどこかが上手くできていなかった時でした。あなたも10のコツを使って外来診療を楽しんでください!

(編集長)

初期研修外来用の診察室

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外来診療に役立つ10のコツ(2)

2024.11.07
カテゴリー: 初期研修

「外来診療に役立つ10のコツ」の続きです。

 

4)雰囲気や態度で共感的理解を示す

前回の繰り返しになりますが、気になっていることを全部話せて、しっかりと話を聞いてもらった(=共感的理解)という安心感はとても重要です。

 

でも、しっかり聞いてもらっているというのは、言葉よりも、むしろ言葉以外の態度が大きく影響することが分かっています。患者さんが話している時は、電子カルテの方を見ながらではなく、患者さんの方を向いて、少し前かがみになって、視線を時々合わせながら話を聞く、という姿勢が印象を大きく変えます。

 

5)受診動機を明らかにする

なぜ今日に外来受診をしたのか?  なぜ時間外のこの時間に受診したのか?  なぜ夜中にわざわざ受診したのか?こういった受診動機を把握しましょう。

 

それだけ症状が辛くて我慢できなかったという重症度の把握にも役に立ちます。また不安が大きくて受診したという心理的な状況も把握できます。実は、主訴と全く関係ないことで助けを求めている、ということもあり得ます(例えばDVなど)。不安が受診動機なのであれば、検査は最小限に、場合によっては検査なしで、時間をかけて話を聞く必要があります。

 

6)解釈モデルを把握する

解釈モデルとは、患者さんが病気のことや、検査、治療に関して、どのように理解しているかということです。例えば、心筋梗塞のために先月まで入院していた患者さんが、頭痛を主訴にERを受診したとしましょう。我々からすると、心筋梗塞と頭痛は恐らく関係ないものと考えます。実際に筋緊張性頭痛の症状でした。

 

しかし、患者さんは心筋梗塞の影響で頭が痛くなったのではないか?と考えていたとしたら、「心配ありません」とか「痛み止めを出しておきますね」と言っても、患者さんは納得しません。一言、「この頭痛は、心筋梗塞とは関係ないですよ」と言えば、痛み止めも必要なくなります。

 

解釈モデルを理解しないと、いつまでも患者さんとの会話がかみ合わないし、お互いに「なぜ分かってくれないんだ!」と不満が募るだけです。

 

似たようなことですが、例えば知人や家族が癌になったので、自分も不安になって受診したというのはよくあることです。こういった受診動機を把握しないまま検査だけ行っても、かえって不安が大きくなることがあります。患者さんの不安を解消しつつ、なるべく少ない検査を計画しましょう。

 

(編集長)

これはER外来の一コマ

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外来診療に役立つ10のコツ(1)

2024.11.05
カテゴリー: 初期研修

外来では限られた時間の中で患者さんの状態を把握して、必要な検査を計画し、診断さらに治療計画を立てるという、非常に高度なスキルが求められる場です。外来研修を始めたばかりの頃は上手くいかずに大事なことを聞き出せなかったり、患者さんの話を止められずに時間ばかりかかった・・・、と言う感じですが、コツをおさえると能率よく、そして患者さんと良好な関係が作れます。

 

今回から、そんなあなたに役立つ「外来診療をスムーズにする10のコツ」を紹介します。昨年もこの内容を紹介しましたが、あなたがこの通りにやれば、患者さんに良い印象を持たれて、外来もスムーズに進むはずです。たとえ一部分だけでも取り入れてみると、だんだんとその良さを実感できるはずです。ぜひやってみてください。

 

1)挨拶と自己紹介

患者さんが診察室に入ってきたら、患者さんの方に体を向けて挨拶です。「お待たせしました。内科の○○です」と、はっきり言いましょう。ここでの注意点は、電子カルテの方に体を向けたままでの挨拶はNGです。これから話を聞くのに、誠意に欠けた印象を持たれてしまいます。そして患者さんの名前を確認して、荷物や姿勢などに配慮しましょう。

 

この時に付き添っている人にも患者さんとの関係を聞いておくと良いと思います。ここで注意点は「患者さんとのご関係を教えていただけますか?」と聞きくことです。例えばご年配の男性患者さんに付き添っていた方を、勝手に奥さんだと思い込んで「奥さまですね」と話しかけたら、なんと娘さんだった(!)という失敗を編集長は何度もやっています。この後の会話の気まずさと言ったらありません・・・。必ず上記のセリフ通りに尋ねることが大事です。

 
2)開放型質問から始める

よく言われることですが、「今日はどうしましたか?」など、患者さんが自由に話せるような質問(開放型質問)から始めます。最初の数分間だけでも、こちらから言葉を挟まずに聞くことに徹します。患者さんの方に体を向けて、時々目線を合わせながら話を聞きましょう。

 
3)言葉かけ,うなずき,相槌で話を促す

患者さんは医師の前では話したいことの半分も話せていません。ホントはもっと話したいと思っています。なので、うなずいたり、上手に相槌を入れたり、「他に心配なことはないですか?」と話を促しましょう。これですごく良い印象を持ってもらえます。誤解を恐れずに言うと、気になっていることを全部話せると、それだけですっきりして検査をせずに安心して帰ってくれます。

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癌性髄膜炎

2024.11.02
カテゴリー: カンファレンス 内科

10月に開催された茨城県内科学会で、当院J1のちくわ先生が発表した症例からのシェアです。

 

70歳台男性が9日前から頭痛を自覚。さらに2日前から両側の難聴と全身の疼痛が出現し、入院となりました。意識はJCS I-3、GCS E4V4M6で項部硬直はなく、難聴以外の脳神経所見はなく、麻痺や病的反射もありませんでした。

 

頭部CTで出血や脳梗塞の所見はありませんでしたが、髄液検査で初圧の著しい上昇(>300mmH2O)と細胞数増多、糖低下を認めました。髄液の細胞診から印環細胞癌が、内視鏡で胃癌が見つかり、胃癌に伴う癌性髄膜炎の診断となった症例です。

 

癌性髄膜炎は遠隔部位の腫瘍から軟膜への癌細胞浸潤を指します。

発症機序としては

・脈絡叢や血管周囲腔への血行性拡散

・頚部リンパ節を介した直接伝達

・傍椎骨レベルでの神経根に沿った拡散

・神経周囲リンパ管や神経鞘に沿った逆行性播種 

などが考えられています。

 

発症率はすべての癌患者のうちおおむね5%前後の報告が多く、疾患別に見ると固形癌では肺癌、メラノーマ、乳癌での発症が多く、それ以外ではALLで比較的高頻度に見られます。

 

 

消化管原発の癌ではがん性髄膜炎の発症は少なく、今回の患者と同じ胃癌からの発症は0.14%との報告がありました。全体としては診断精度の向上と癌治療進歩による余命延長から、発症率は増加傾向となっています。

 

この症例では急激に両側の難聴を来したことが特徴ですが、脳脊髄液は脳底槽や小脳橋角部に停滞しやすく、脳脊髄液中に浸潤した腫瘍細胞がその領域に広がりやすい特徴があるとされており、そこから内耳道に侵入した腫瘍細胞により蝸牛神経の軸索が破壊される説,蝸牛に到達した腫瘍細胞が、直接的に蝸牛の構造破壊を引き起こす説,内耳道に腫瘍が形成されることで内耳動脈が圧迫され、虚血性に蝸牛機能障害を生じる説などが考えられています。

(ちくわ)

 

なお、ちくわ先生は今回が初めての学会発表でしたが、落ち着いて聞き取りやすく話していたし、会場からの質問にも堂々と答えていて、なかなか立派でした♪

(編集長)

発表中のちくわ先生

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水戸済生会の外来研修2024

2024.10.31
カテゴリー: 初期研修

水戸済生会の臨床研修の特徴の一つに1年間を通して内科外来を行う外来研修があります。具体的にはJ1の秋からJ2の秋までの1年間に週1回の外来を継続するというものです。このようなスタイルで外来研修を行っている施設はほとんどないと聞きていますが、長期間にわたって患者さんをフォローできるという大きなメリットがあります。そして今年度も11月からJ1の外来研修を開始します。

 

そもそも外来研修では、研修目標として「コンサルテーションや医療連携が可能な状況下で、単独で一般外来診療を行える」ことが掲げられています。もちろん困ったときには指導医に聞いたり、コンサルテーションすればよいのですが、外来診療はERや病棟での診療とは対象となる患者さんや疾患も異なってくるので、やり方も変えていく必要が出てきます。

 

ERではヤバイ疾患を見逃さないことが重要で、そのために検査を一気に行う傾向があります。一方で外来診療では「患者さんの問題を解決する」ことが重要になってきます。そして患者さんの問題を解決するために「時間を味方につける」ことがポイントになります。診察したその日に検査を一気にやって診断を付ける必要はないのです。

 

例えば、倦怠感を主訴に受診した70歳代女性があなたの外来を受診したとしましょう。体重減少もなく、受診日の採血では貧血はなく、甲状腺ホルモンも正常で軽度の肝機能異常のみでした。1週間後の外来で行ったエコーで脂肪肝のみ。心配になって悪性腫瘍も考えて胸部CTを撮影して、その1週間後に読影結果を説明するために受診してもらったところ、「だいぶ元気になりました」と笑顔で言われてしましました。

 

よくよく聞くと、同居している高校生のお孫さんの受験のことを考えると眠れなくなっていたのですが、無事に合格したのですっきりしたとのこと。ウソのようですが、何度もフォローすることで初めて把握できることがたくさんあるのです。

 

水戸済生会の外来研修では、時間を味方につけて患者さんの問題を解決できるような臨床能力を身につけてもらいます。

(編集長)

研修医外来の風景

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