臨床研修ブログ

水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。

3月11日は昨日でしたが・・・

2024.03.12
カテゴリー: 救命救急センター

昨日は3月11日でした。東日本大震災から13年経ちます。あの日、あなたはまだ小学生とか中学生だった頃でしょうか?

 

今年は元旦から能登半島地震があったり、このところの房総沖の地震の頻発など、いつ災害が起こるか分からない、決して他人事ではないことを改めて実感しますね。

 

そしてこれから紹介する記事は2016年5月からこのブログを始めてから、毎年この時期に載せているものです。編集長としては、単にあの時のことが思い出されるだけでなく、これから研修を始めるあなたに、そして現在初期研修中のあなたに、是非とも読んでもらいたいからです。 

 

この記事を書いてくれた白ひげ救急医は弘前大学の出身で、医師としてのデビューが東日本大震災という強烈な場面で、その後の医師人生に大きな影響を受けました。まだ医師でもない、何もできない立場だったとは言え、病院スタッフよりも一生懸命動き回ってくれていたのをよく覚えています。

 

そんな白ひげ救急医は、長い闘病生活の末に天国に旅立ちました。ずっと死と隣り合わせでしたが、そんな様子は見せずに救急医としてドクターヘリやドクターカーに乗って活躍したり、後輩の研修医たちを鼓舞し、先頭に立って指導してくれていました。

 

白ひげ救急医と一緒に仕事をしたことのある後輩も少なくなりましたが、水戸済生会にはそんな先輩がいたことは覚えておいて欲しいと思います。

(編集長)

**************

白ひげ救急医です.

 

皆さんは「あの日」何をしていましたか?

 

僕はその頃,まだ法律的には医学部6年生.卒業は間違いないけど,国家試験の結果は出ておらず宙ぶらりんの状態.大学のある弘前から,妻と一緒に水戸に移動して来たのはあの日の前日.半日かけて車で東北道を南下し, 水戸市内のホテルに一泊.

 

そしてあの日.

 

朝から空っぽの新居に,引っ越し業者の手によって,意外に多い量の段ボール箱を搬入してもらい,僕と妻は少し遅い昼食をとりに外出.まだ見慣れない水戸の町並みの中,全国どこでも同じデザインのコンビニの駐車場に車を入れた瞬間・・・

 

2011年3月11日午後2時46分

 

当然,新居にはまだライフラインが通っておらず,怯える妻を連れて,自然と水戸済生会病院に足が向かっていました.

 

学生時代から何度も病院見学をしていたので,僕の顔を覚えてくれている先生方から声をかけていただきました.妻に安全な場所を提供していただき,僕はお借りしたスクラブに袖を通し,できる範囲のお手伝いをさせていただきました.

 

とは言え,法律的にはただの医学生.混乱する院内で事務的な作業,搬送のお手伝い,医療資器材の運搬など,はっきり言ってこの時の事はあまり覚えていません.何もできませんでした.

 

おそらく,医師の資格を持っていたとしても,ほとんど役に立たなかったと思います.“何もできなかった” “何も覚えていない”ということを強烈に覚えています.
 
これが僕の医師人生の,そして救命医としての始まりでした.その後,それぞれの早さで時間が流れ,救命医として勤務する中で,3月11日になると毎年「あの日」のことを思い出します.何の因果かわかりませんが,3月11日に当直を担当する事が多く,今年もまた当直に入ります.あの時何もできなかった自分と今日の自分を最大限客観視しながら,節目の日の当直を迎えます.

 

災害はいつ起こるかわかりません.その時医師として何ができるか.今のうちに考えてみませんか?

(白ひげ救急医)

当時の慌ただしいERの一コマ

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けいれんの原因は?

2024.01.20
カテゴリー: 救命救急センター

ある日のER当直の話です。救急隊から受け入れ要請の連絡がありました。

 

70歳台の男性、突然の全身性のけいれんがあり、その後尿失禁と冷汗あり。救急隊が接触した際にはけいれんは止まっていて、麻痺無し、共同偏視なし、顔面蒼白あり。

 

さて、これだけの情報で、あなたは鑑別疾患をいくつ挙げられますか?

ちょっと考えてみてください。

いろいろあると思いますが、当然ながらてんかんをはじめとした頭蓋内疾患が鑑別に挙がりますよね。

 

ではここに、下記のような救急隊からバイタル情報が加わるとどうでしょう?

脈拍104bpm、血圧69/56mmHg、体温34.8度、呼吸数21回

 

やはり、頭蓋内疾患でよいでしょうか? 他に鑑別疾患を挙げられますか?

この症例の診断は腹部大動脈瘤破裂でした。

 

 

けいれんは頭蓋内疾患で起こりますが、通常血圧が上昇しています。一方で、頭蓋内疾患以外では血圧が低下して、脳血流が低下した時にけいれんを起こすことがあります。

 

循環器内科医でもある編集長的は、STEMIのPCI中に徐脈や心室細動を起こして、カテ台の上でけいれんされて慌てる経験は何度もあります。この症例も、腹部大動脈瘤破裂で急激に血圧が低下した際にけいれんを起こしたと考えられます。

 

けいれんと聞くと、すぐに頭部CTやMRIを取りたくなる気持ちは良く分かりますが、バイタルを確認して、血圧が高くない場合には頭蓋内疾患以外の検索を忘れないようにしましょう。

 

ちなみにこの症例は、お隣の日赤から救急科ローテで来てくれているY先生が、おなかにエコーを当てて見つけてくれました。実に素晴らしいナイスプレーでした!

(編集長)

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舩越先生のZoomレクチャー・・・救急外来でのコミュニケーション

2023.11.09
カテゴリー: 救命救急センター

昨日のことですが、東京ベイ浦安市川医療センター救命救急センター長の舩越拓先生にZoomでレクチャーを行っていただきました。

 

舩越先生のことは、このブログでも何度か紹介していますが、救急領域では名が知られた存在の

先生で、多くの監訳や著書があり、レジデントノートなどの雑誌の企画も行っています。編集長とはIVRつながりで、兄弟子、弟弟子という関係で、コロナ前からレクチャーをお願いしていました。

 

前回は8月にマイナーエマージェンシーのテーマで開催しましたが、今回は「救急外来でのコミュニケーション」というタイトルで行っていただきました。

 

救急外来という、非常にコミュニケーションを取りずらい環境で、どういう点に気を付けながらコミュニケーションを取っていくのがいいのかというお話でした。

 

その中から一つシェアします。

 

救急外来で病状説明をする時のポイントを教えてもらったのですが、そのうちの一つが「あいまいな言葉は使わない」と言うものでした。

 

「相手がショックだろうから伝えない」は逆効果。さらに相手によって判断が分かれる言葉に注意が必要とのこと。

 

どういうことかと言うと、例えば「今は肺炎で難しい状況です」と言っても、何が難しいの? どうして難しいの? となってしまい、肝心なことが伝わっていない。

 

もっと明確に「●●さんの状態では○○の治療はできない状態です」とオブラートに包まずダイレクトに言う方が相手に伝わるそうです。

 

他にも紹介してくれましたが、舩越先生の書いた本にも詳しく書いてありますので、ぜひ読んでみてください♪

 

舩越先生の本はこちら

 

今回の続きを年明けの1月にZoomレクチャーをしていただく予定です。お楽しみに♪

(編集長)

レクチャーでの一コマ

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救命救急センターだより「脳死と植物状態」

2023.10.07
カテゴリー: 救命救急センター

長い長い長い夏も終わりを告げ、だいぶ涼しくなってきましたね!来年は涼しい夏であることを期待しますが、期待だけに終わるでしょうね…

 

さて、本日も空を夢見る消化器内科医ことNaoです。こんにちは。この間の当番日は雨で飛べず、不完全燃焼中です。

 

今日のお話しは「脳死」と「植物状態」の違いです。

 

医者なら即答できなければいけない質問かもしれません。が、恥ずかしながら、医者を10年以上やっておりましたが、今までその違いを明確に区別できていませんでした。いや、ほんとに恥ずかしながら、ですね。

 

植物状態と脳死、これは実は厳密には同じ土俵で語る内容ではありません。植物状態というのは患者さんの状態を表す言葉で、脳死(本来は全脳死)は生理学・解剖学的な障害部位を指す言葉であり、本来対比されるべきではありません。

 

細かいことを話し始めると、とてもとてもブログにまとめられないので…(神経内科の師匠に話を聞いたら、難しくて途中から全く理解できませんでした) なので、これから脳神経を専門にしていく学生さんにとっては、ちょっとおかしいぞ、っていう内容もあるかもしれません。ごめんなさい。とりあえず、皆さんが考えるきっかけづくりになれればと思い、記事を書いてみます!ちょっと長くなりますが、記事を分けずに書き切ります。

 

さていわゆる「植物状態」については明確な定義はありませんが、一般的には

 

「大脳半球の機能障害により、覚醒状態が欠如した状態であり、自律神経反射や運動反射を維持できるだけの還納および脳幹機能は保たれている状態。」

 

つまるところ、「栄養さえ与えられ続ければ、人工呼吸器などの助けなしに生命機能の持続がなされる状態」を指します。

 

脳の機能部位で言うと、大脳の機能は失われているが、生命維持のために必要な脳幹部の機能はある程度保たれている状態です。そして植物状態は非常にわずかな可能性ながら、機能が回復する可能性は否定されない、と言えると思います。

 

一般的に言われる「脳死」は「全脳死」を指し、「脳幹を含む全脳髄が不可逆的に機能を失った状態」となります。

 

脳の機能はすべて失われ、機械のサポートなしには呼吸をすることもできなくなっており、もちろん体を動かす、言葉をしゃべる、そもそも感情などの人間的活動はすべて失われています。自律神経のコントロールもありませんので、レートコントロールすらされないため、一般的には10日程度で致死的な経過は免れないと考えられます。

 

更なる脳死の話の前に、私たちが一般的に死亡診断を行うときに何をするかを考えてみましょう。

 

この記事を読んでくださっているほとんどの方は学生さんだと思いますので、死亡診断の場面にまだ立ち会ったことがないかもしれませんが、僕は以下の手順で死亡診断を行います。

 

①聴診器を用いて心音が聴取されないことを確認(心拍動の確認)、装着している場合は心電図モニターの確認。

②(人工呼吸器を用いている場合は接続を外して)呼吸音が聴取されないことを確認(自発呼吸の停止の確認)

③ペンライトを用いて瞳孔の診察(対光反射の消失および瞳孔散大の確認)

 

この3つの徴候をもって死亡診断を行い、時刻を確認の上で死亡宣告と患者さんへの挨拶および礼。この診断法で確認されるのは心臓死です。

 

脳死は、心臓死の前の、まだ各臓器が血流を得ていて臓器死に至る前の段階で死亡を確定し、臓器は生きた状態で取り出し他の生命の維持のために用いる診断法になります。したがって、大前提として、患者さん本人に臓器移植の意思がある必要があります。

 

脳死には国で定めた判定基準があります。

①深昏睡(JCS 300, GCS 3)

②瞳孔の固定、瞳孔径が左右とも4mm以上

③脳幹反射の消失(対光反射、角膜反射、毛様脊髄反射、眼球頭反射、前庭反射、咽頭反射、咳反射)

④平坦脳波(少なくとも4導出で30分間以上)

⑤自発呼吸の消失(無呼吸テスト)

 

これを臓器移植に関わらない、脳死判定に豊富な経験を有する医師2名以上で、6時間以上の時間をあけて2回行って初めて診断とされています。

 

そういえば国家試験対策で覚えた気がしましたが、実臨床で脳死と植物状態がごっちゃになっていました。

 

僕のアメリカ人の知人がアメリカで心臓移植を受けて、コントロール困難な心不全から立ち直り数年家族との時間を過ごせたという経験もありますので、自分自身はその時には僕の体で使える部分はいくらでも使ってもらいたいなと思っています。

 

日本は臓器移植が非常に少ない国ですが、まず医療者が臓器移植までのステップを理解していないことには、患者さんの想いを汲み取ることができずに終わってしまう可能性があります。

 

ですので、皆さんは是非脳死判定の手順を理解しつつ、いざというときに患者さんの意思を確認して言葉を伝えられない患者さんの想いを汲み取ってあげていただければと思います。

 

では、また次の記事で!

(Nao

ERの一コマ

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救命救急センターだより「一酸化炭素中毒」

2023.09.28
カテゴリー: 救命救急センター

空に憧れている消化器内科医ことnaoです。こんにちは。ようやく涼しくなってきましたね。

 

いよいよ2024年から医師の働き方改革が本格化しますが、そのせいで時間外労働の厳しい制約があり救急科での診療にも制約が入ってしまっています。働きたいのに働けない、なんて嘆きも出てきますが、それくらい当院では時間外労働しっかり管理されておりますので、若手の先生はご心配なく当院で働いていただければと思います。

 

さて、意外と対応を慎重にしなければならない一酸化炭素中毒についてお話しさせていただきたいと思います。三次救急病院ですと、定期的に火事などで気道熱傷きたしたり、一酸化炭素中毒になったりという患者さんが搬送されてきます。

 

一酸化炭素中毒の症状ってどんな症状かご存じでしょうか。軽いと頭痛、めまい、嘔気、皮膚の紅潮程度で、重度になってくると呼吸困難に加えて呼吸抑制、意識障害、痙攣などをきたします。

 

症状だけを見たときに一酸化炭素中毒っぽいな、っていきなり思うことはないと思います。つまり、症状から鑑別に挙げる疾患ではなく、状況から鑑別にあげる必要があります。

 

では、一酸化炭素中毒をきたす状況ってどんなでしょう? 家事、練炭自殺、住居用でない地下施設での作業などが考えられます。そうです。わざわざ念を押されなくても最初から鑑別に上がりますよね。

 

でも、意外と鑑別に上がりにくいことがあります。

 

それは、特に自殺目的でもなんでもなく、日常のちょっとだけ特殊な事情で一酸化炭素中毒になることがあります。

 

最近は住宅が高気密化しています。それに伴い住宅の換気システムは向上していますが、換気シ

ステムが何らかの理由で作動していない状況で、家の中で焼き肉をした、とか。雪国ですと、寒い時期に車にエンジンをかけたまま仮眠をしていたら、マフラーの出口がふさがって、排気ガスが室内に逆流してきてというのは定期的にある事故です。また、ガレージで換気扇を回さずに車のエンジンをかけて作業していたなんて言う事例もあります。

 

多くの場合、救急隊が優秀ですのでしっかり現場のアセスメントをして伝えてくれますが、プレホスピタルの場合は自分が最先着隊の時もあります。その場合は自分が現場でそのアセスメントができなければなりません。それができないと、自分がむしろ危険にさらされる可能性すらあります。ですので、現場の状況把握、情報収集というのは非常に大切です。

 

ちなみに、ご存じだと思いますが、SpO2では酸素化ヘモグロビンとCO-Hbを区別することができませんので、SpO2が保たれていることと一酸化炭素中毒の軽症、重症は基本的に関係ありません。ですので一酸化炭素中毒は血ガス分析装置でCO-Hbを測定して判断していきます。ただ、タバコ吸いの人は5から最大10%程度くらいまではCO-Hbが含まれていることがありますので、CO-Hbがちょっとくらい高いからと言って慌てず、生活歴の聴取も重要です。

 

治療は軽症の場合は酸素投与です。CO-Hbが20%を超えてくるような場合は高圧酸素療法を検討したり、挿管管理が必要になることがあります。

 

10年以上医者をやっていても、病歴聴取が甘かった!と振り返ることがあります。研修医の先生がしっかり問診をとっているので、先に気づいてくれたりすることすらあります。基本って大事です。ではまた!

(Nao

朝からバタつくERの一コマ

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救命救急センターだより「アナフィラキシー2」

2023.09.07
カテゴリー: 救命救急センター

ドクヘリが好きすぎて、パイロットになりたくなった消化器内科医naoです。こんにちは。

 

今日はドクターカーの日でしたが、当院の研修医の先生の中には、ドクヘリに憧れて医者になったなんて言う素敵な先生もいることが判明しましたので、是非レジデントになってからも当院で活躍してほしいなと思いながら本、日もアナフィラキシーの話をしたいと思います。

  

アナフィラキシーの対応しているとき、患者さんにアドレナリンを打ちつつ、自分自身の体内でもアドレナリンが大量分泌されています。

 

内視鏡治療中に後輩によく「夢中になるな、夢中になると周りが見えなくなって偶発症をおこしやすくなる」と指導するのですが、自分自身も周りが見えなくなってしまうことがあります。

 

以前、アナフィラキシーショックの対応していた時、もう収縮期血圧が50-60前後を推移し、患者さんは嘔吐を繰り返し、アドレナリンを2回打っても効果がなくどうしようと思っていたら、そばで見ていた別の先生が 

 

「グルカゴン!」

 

と叫んで、グルカゴンを静注したら速やかに改善した、という体験があります。βブロッカーを内服している患者さんではグルカゴンが有効なことがあるということを身をもって知りました。

 

グルカゴンは1-5mgをゆっくり静注

必要に応じて5-10分ごとに追加(ただし高血糖や消化器症状に注意)

今度は静注です。筋注ではありません。

 

緊急時だからこそ、冗談を言えるくらい落ち着いて、周りを見ながら、常に次の選択肢を頭に入れつつ冷静に対応をしましょう。それができると、めちゃカッコいいですよ!

  

そして最後に、本来は最初にお伝えするべきだったかもしれませんが、皆さんが医師としてではなく、一市民としてアナフィラキシーの現場に立ち会ってしまったときの対応についてもお話ししたいと思います。長くなりますが、今回はちゃんとこの記事の中でお伝えします。

 

なによりもまず、応援を呼びましょう。

 

そのうえでアナフィラキシーの原因となったものを可能な限り除去します。とはいっても、ほとんどの場合食物などで体内に入ってしまっているのでむつかしいかとは思いますが。

 

そして、体位は基本的に床に寝てもらったほうが良いです。必要に応じて下肢挙上も効果があるとされています。血圧が低下していなくても、急な体位変換で血液分布が変わり急変する可能性があるからです。なので仰臥位あるいは回復体位で安静にしていることが望ましいです。

 

すきを見ながら体の状態をできるだけ評価します。呼吸の状態、後から来る医師のための体重などの情報(特に小児で)、皮疹の範囲、血圧の情報も可能な限り、橈骨が触知するか、鼠経が触知するか、頸動脈が触知するかでおおよその血圧を推定できます。

 

何事も、いざ対面すると固まってしまうことが多いですので、シミュレーションが大切です。この記事をここまで読んでいただいたのであれば、是非、シミュレーションして、いざというときスムーズに動いてください!

 

ではまた次回の記事で!

(Nao

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◆レジナビFairオンライン2023 内科

  ~専門研修プログラム~ に参加します!

 9月11日(月)18時30分~です。

今回は循環器内科の専攻医も登場して、あなたのご質問にお答えします。

是非ご参加ください!

 

レジナビの申し込みページはこちら

 

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救命救急センターだより「アナフィラキシー」

2023.09.05
カテゴリー: 救命救急センター

皆様お久しぶりです。

 

猛暑で生気を失ってしまったものの空への想いは捨てていない消化器内科医Naoです。僕はヘリポートまでのブルードラゴン(救急車)に氷をたくさん入れた水筒を入れて何とか生き延びつつ頑張っておりますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。

 

本日はアナフィラキシーの対応です。

 

さて、アナフィラキシーの対応をするには、まずアナフィラキシーをアナフィラキシーと診断しなければなりませんが、皆様ちゃんと診断基準覚えていますか?

 

診断基準1

皮膚や粘膜に全身性の蕁麻疹、掻痒、紅潮、口唇・舌・口蓋垂の腫脹などをきたしている。

 

診断基準2

典型的な皮膚症状を伴わなくとも、アレルゲン(と考えられるもの)に獏らした後急速に下記の症状をきたす場合

1. 高度の呼吸器症状(呼吸困難、喘鳴、気管支攣縮、低酸素血症など)をきたしている。

2. 血圧低下、湿疹、失禁、筋緊張低下など

3. 重度のけいれん性腹痛、反復性の嘔吐など

上記のいずれかに該当する場合アナフィラキシーが強く疑われます。

 

パニック発作や喘息など(ガイドラインでは非常に多数挙げられていますが)、似た症状を示す他の疾患が否定されることが前提となります。

 

診断ができた後の対応で大切なのは、さっさとアドレナリンを打つことです。過去の報告では、アナフィラキシーに対するアドレナリンの不使用は脂肪のリスクを高めることが指摘されています。

 

プレホスピタルで出動する場合は、十分な情報が得られない場合も多いため、状況からアナフィラキシーをしっかり疑い、速やかな治療介入を開始することが非常に大切です。

 

出動中に寄せられる情報からアナフィラキシーを疑ったら、もうアドレナリンを薬剤バッグから取り出し、針をつけて準備し、アルコール綿と薬だけ持って現場に飛び出していくなんて言うこともあります。

 

さて、その大切なアドレナリンの投与量覚えていますか?

 

成人 0.5mg、小児では0.01mg/kgです。これを「筋注」です。静注ではないですよ。筋注です。これを5-15分ごとに繰り返します(多くは1回で効きます)。

 

今回心配なので調べてのですが、アドレナリン筋注は妊娠中でも母体の循環動態を守ることが胎児を守ることにつながるので。適応になるとのことでした。

 

ここで怖いのが、アドレナリンが効かない人がいます。その話は長くなったのでまた次回にします!乞うご期待!

(Nao

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舩越先生のZoomレクチャー・・・マイナーエマージェンシー3回目

2023.08.26
カテゴリー: 救命救急センター

先日、東京ベイ浦安市川医療センター救急集中治療科(救急外来部門)部長の舩越拓先生にZoomでレクチャーを行っていただきました。

 

舩越先生のことは、このブログでも何度か紹介していますが、救急領域では名が知られた存在の

先生で、多くの監訳や著書があり、レジデントノートなどの雑誌の企画も行っています。編集長とはIVRつながりで、兄弟子、弟弟子という関係で、コロナ前からレクチャーをお願いしていました。前回は5月に開催したのですが、このブログで紹介するのを忘れていました(スミマセン)。

 

今回の内容は「マイナーエマージェンシーの苦手意識を克服しよう」の3回目、完結編ということで、指先のトラブルシューティングと眼科救急のミニマムを取り上げていただきました。

 

指先のトラブルとしては、爪下血腫、爪周囲炎の対処や釣り針の取り方(String Yank Technique)も教えてもらいました。

 

眼科救急では、眼窩吹き抜け骨折、外傷性視神経損傷といった外せない内容に加え、エコーで対光反射を見る方法など、編集長は知らなかった内容も盛り沢山でした。特に大事な点として、「視力は目のバイタルサイン」 「視力低下と眼痛は緊急性が高い」といった大原則を強調していて、深夜でも眼科医に連絡する際のTipsがちりばめられていました。

 

マイナーエマージェンシーについては今回でおしまいですが、舩越先生のレクチャーは、今年度4回の開催を目標にしていただいていますので、次回以降も楽しみです♪

(編集長)

レクチャーでの一コマ

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救命救急センターだより「熱中症の初期治療」

2023.07.25
カテゴリー: 救命救急センター

お久しぶりです。空を夢見る消化器内科医Naoです。

 

非常に暑い日と雨降りの日が続いておりますが皆様はいかがお過ごしでしょうか。またしても間が空いてしまいまして申し訳ありませんでした。

 

意外と救命センターだよりを読んでくださっている方がおられるようで、「最近滞ってるけど忙しいのか?」とお声がけいただけてうれしい限りです。

 

さて、今年もこの季節がやってまいりました!みんな大好き、熱中症です!

 

以前も熱中症のブログを書きましたが、熱中症は初期治療がとても大切な疾患です。そして適切な初期治療により予後を大幅に改善させることが見込める、逆に適切な初期治療が遅れると、重篤化してしまい生命に危機を及ぼすことのある疾患です。

 

この記事を読んでいただいている皆様は、これをきっかけに改めて熱中症の初療を思い出していただき、レジャー中にこのような方に遭遇したら適切な治療をしてあげてください。

 

熱中症の重症度を見分ける簡単な方法は

軽症  水分の自力摂取が可能

中等症 ぐったりし水分摂取ができない、嘔気などのために水分摂取ができない。

重症  呼びかけに応じない。

 

中等症は適切な対応で現場対応可能な可能性もありますが、基本的には中等症~重症はためらわずに医療機関へ収容しましょう。特に重症は救急車を呼びましょう。

 

軽症の対応は、

①日陰やできれば冷房のかかった部屋に移動します。

②厚手の衣服を着ている場合、汗の気化を阻害してしまいますので、なるべく薄い格好にします。仰いで汗の気化を促進させるのも効果的です。

③冷たい電解質を含む飲料水(経口補水液やスポーツドリンク)を摂取させます。細かい説明は省きますが水やお茶は最適解ではありません。熱中症の場合は塩分の喪失を起こしておりますので、電解質を含む飲料水が望ましいです。

 

中等症以上の場合であっても、救急車を待つ間や医療機関へ運ぶ間に上記対応を行いましょう。冷却したペットボトルがあれば首や腋下、股の間にあてて冷却するのも効果的です。

 

なお、経口補水液として有名なOS-1ですが、カリウムを比較的多く含んでおりますので透析患者さんには要注意です。また塩分濃度も高いので、予防的に常用するのは望ましくありません。経口摂取不良がある高齢者や運動などで水分の喪失が多いときに補助的に使用しましょう。

(Nao)

慌ただしいER

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救命救急センターだより「 思い込みとの戦い・パート2」

2023.05.11
カテゴリー: 救命救急センター

救急医と消化器内科医の二刀流、医者の世界で大谷翔平を目指す、空飛ぶ消化器内科医ことNaoです。こんにちは。(大谷選手のファンの方、調子に乗ってごめんなさい)

 

ところで前回の「思い込み」に関する記事はご覧いただけましたでしょうか。今回は、前回の記事が長くなりすぎたため載せなかった症例のご紹介です。

 

前回は脳血管に関する二症例でしたが、今回は心血管に関する症例になります。「STEMIを診断したときは、できればCTも」と以前からたびたび言われていましたが、その理由を痛感した症例になります。

 

消防からの受け入れ要請は、「初老の男性、激しい胸痛および呼吸困難」でした。救命士の診察で、バイタル以上に全身状態からこれは3次レベルだ、とのことでかかりつけ医ではなく当院へ搬送されてきました。疼痛および呼吸困難から高度の不穏状態であり、鎮静および挿管し諸検査を行う方針としました。心エコーでは心タンポナーデ、広範な前壁の壁運動低下が認められました。心電図でも胸部誘導で広範なST上昇が認められ、STEMIだ!と判断し循環器内科医callしました。

 

しかし、ほかの救急医たちや循環器内科の医師は「なんか違和感がある」と。これはただのSTEMIではないのではないかということで造影CTを撮ると、上行大動脈の基部が極めて限局的に解離し、心タンポナーデをきたし、左冠動脈の起始部を閉塞させていることがわかりました。正直、自分自身では画像をみても最初はわからず、救急医や循環器の先生たちに教えられて初めて分かったレベルでした。

 

「優秀な内科医」に色々な定義はあるかと思いますが、一つ言われているのは「いかに鑑別を出せるか、いかにたくさんの疾患を思い浮かべられるか」が重要であるといわれています。

 

「優秀な救急医」にもたくさんの定義があると思われ、判断が迅速である、当然正しい判断ができるとか、手技が正確であるとかいろいろあると思います。

 

ただ、前回の件や今回の件をして思うのが、「いかにいろんな場面を想定できるか」ということだろうと思います。この患者さんに何が起こっているのか、を短絡的に診断に結び付けることなく、得られた臨床症状を説明しうるストーリーをしっかり考えつくせることだろうと考えます。救急医の判断が誤ると、初動の遅れにつながるわけです。

 

この症例では、STEMIでタンポナーデがおこっているとしたら時間軸が合わないなど、おかしな点がいくつかあるわけです。救急医だけに限らず、「何かおかしい」という感覚を無視せず大事にし、患者さんのために働いていきたいと思いました。

 

「救急診療は医師ならば誰しもができるべき」厚労省はそんな方針で医師教育を考えているように見受けられますが、本物の救急医は、やはり「救急のスペシャリスト」であって決して片手間でできる領域ではありません。僕も早く本当の意味で消化器内科医と救急医の二足の草鞋を履きこなせるように引き続き努力していきたいと思います。

 

皆さんも、当院で救急医(あるいは消化器内科医)を目指しませんか?笑

(Nao)

CPA搬送直後の一コマ

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