
臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
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呼吸困難?それとも胸痛?
あなたが当直をしているときに、ERに息苦しさ(呼吸困難)を主訴に70歳台の男性が受診しました。1週間前から息が苦しくなってきた、今日は夕食後に苦しくなったとのこと。
糖尿病と狭心症でPCIの既往がありましたが、バイタルは問題なし、SpO2の低下もなく、胸部レントゲンではうっ血も胸水もなしで、心電図もST変化や異常Q波もありません。採血ではトロポニンもNTproBNPとも上昇していませんでした。
あなたは患者さんの症状も消失していたので、その日は翌日の循環器外来を指示して帰宅としました。
その翌日、患者さんは循環器内科の外来を受診しましたが、循環器内科の先生は心電図が変化していないことを確認しただけで、不安定狭心症の診断で心カテ目的に当日入院にしました。
あなたは、なぜ循環器内科の先生がいきなり心カテ入院にしたのだと思いますか?
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ここで重要なのは、患者さんの訴えである息苦しさ(呼吸困難)をどうとらえるかです。
息苦しさ(呼吸困難)と言っても、
・労作時なのか? ⇒心不全、狭心症、COPD
・安静時なのか? ⇒喘息、冠攣縮性狭心症
・起坐呼吸なのか? ⇒心不全
・早朝の呼吸困難なのか? ⇒喘息
という感じで鑑別が変わってきます。
指導医になぜ入院させたのかを聞いてみたところ、「OPQRST-LAを聞いたかい?」と言われました。
OPQRST-LAとは疼痛などの症状を聞く時の型で、
O:Onset(発症)
P:Provocative/Paliative factor(増悪/寛解因子)
Q:Quality(痛みの質・性状)
R:Radiation(放散)
S:Severity(重症度)
T:Time course(時間経過)
L:Location(場所)
A:Associated symptom(随伴症状)
のことです。
このOPQRST-LAを踏まえて、改めて患者さんの話を聞きなおしてみると
O:家の中で移動するとき
P:労作時のみで安静時や就寝時にはない
Q:胸全体を鉄板で押さえつけられるような
R:放散はなし
S:動きを止めてじっとしなければいけないくらい
T:数分から5分程度
L:前胸部全体
A:嘔気や発汗はない
こうしてみると患者さんの訴えは、「労作時に数分間持続する胸部圧迫感」を「息苦しい」と表現していたことが分かります。循環器内科の先生は、患者さんの訴えを1週間前から悪化傾向にある胸部圧迫感と解釈したので、不安定狭心症を疑って同日に心カテするという判断に至ったようです。実際のところ、心カテでは左冠動脈前下行枝の近位部に高度狭窄を認め、PCIを行ってから退院となりました。
患者さんの言葉は大事ですが、そのまま鵜呑みにするのではなく、OPQRST-LAなどのツールを使いながら、話を聞きだしてみてください。
(編集長)
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