臨床研修ブログ

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鑑別疾患のあげ方(解剖学的アプローチ)

2025.11.13
カテゴリー: カンファレンス 内科

前回に続いて、鑑別疾患のあげ方です。編集長が勧める鑑別疾患のあげ方は2つあって、前回は1つ目のVINDICATE!!!Pを紹介しました。今回は2つ目の、解剖学的アプローチを紹介します。

 

この方法は具体例を出した方が分かりやすいので、やってみましょう。

例として、「胸痛」の鑑別をできるだけたくさんあげてみてください

いくつ鑑別をあげられましたか?

 

狭心症、心筋梗塞、大動脈解離、肺塞栓、気胸・・・・、多くの研修医は、ERで見落とすとヤバい疾患はすぐに言えても、あまり

ヤバくない(生命にすぐにかかわらない)疾患は、なかなか挙げられません。ヤバい疾患ではなくとも、患者の不安は一向に解消されないので、下手をするとトラブルのもとになることもあります。


こんな時に、解剖学的に近い臓器や組織を考えていくと鑑別疾患を挙げやすくなります。

 

具体的に、胸に近い臓器は・・・・

皮膚:

 帯状疱疹

乳房:

 乳癌、乳腺炎

骨:

 肋骨骨折、圧迫骨折、骨転移

筋肉:

 筋肉炎

肺(さらに胸膜、肺胞、間質、気管支、気管と分けて考えましょう):

 気胸、胸膜炎、肺癌、肺炎、気管支炎、肺塞栓

心臓(冠動脈、心外膜、心筋、弁):

 狭心症、心筋梗塞、急性心外膜炎、心筋炎、肥大型心筋症、大動脈弁狭窄症、

大血管(大動脈とその分枝、大静脈):

 大動脈解離(特に上行解離)、大動脈瘤破裂

縦隔:

 縦隔炎、縦隔気腫、縦隔腫瘍

食道:

 逆流性食道炎、食道破裂、食道腫瘍

胃:

 胃炎、胃潰瘍、胃癌

肝臓:

 肝膿瘍、肝腫瘍

胆嚢・胆道:

 胆石、胆嚢炎、胆管炎

甲状腺:

 甲状腺炎

神経:

 肋間神経痛、帯状疱疹後神経痛

横隔膜:

 横隔膜下膿瘍

 

まだまだあると思いますが、このように解剖学的に近いものを順に頭に浮かべて、それに関する疾患をあげていくと意外とたくさん出てきます。臨床の現場では、前回紹介したVINDICATE!!!+Pと、この解剖学的に攻める方法を無意識に組み合わせて鑑別疾患を考えていると思います。

 

あなたがたとえどの診療科に進むとしても、この2つの「鑑別疾患のあげ方」は初期研修医のうちに必ず身に着けるようにしてください。同時に、普段から鑑別疾患をたくさんあげるトレーニングを意識すると良いと思います。ぜひ頑張ってください♪

(編集長)

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鑑別疾患のあげ方(VINDICATE!!!P)

2025.11.11
カテゴリー: カンファレンス 内科

あなたがたとえどの診療科に進むとしても、初期研修医のうちに必ず身に着けてもらいたいことの一つに、「鑑別疾患のあげ方」があります。

 

鑑別疾患は、星の数ほどあるので全部覚えることは不可能です。でも、鑑別疾患のあげ方(フレームワーク)をおさえておくと、考えやすくなるだけでなく、抜けがなくなるのでお勧めですので、ぜひ覚えて下さい。

 

編集長が勧める鑑別疾患のあげ方には2つあります。1つ目は病因から攻める方法で有名な VINDICATE!!! + P(ヴインディケイト+P)です。2つ目は解剖学的に攻める方法です。

 

今回はVINDIVATE!!!+P(ちなみに!!!にも意味があります)を紹介します。

 

V:Vascular (血管系)
I:Infection (感染症)
N:Neoplasm (良性・悪性新生物)
D:Degenerative (変性疾患)
I:Intoxication (薬物・毒物中毒)
C:Congenital (先天性)
A:Auto-immune (自己免疫・膠原病)
T:Trauma (外傷)
E:Endocrinopathy (内分泌系)
!:Iatrogenic (医原性)
!:Idiopathic (特発性)
!:Inheritance (遺伝性)
P:Psychogenic (精神・心因性)

 

これは鑑別診断の神様として有名なティアニー先生が紹介していたものですが、すごいところは全ての疾患が網羅されているところです。もともとティアニー先生が病理学をやっていたので、こんなフレームワークに至ったと聞いたことがあります。

 

この鑑別方法は、一見すると関係なさそうな症状や検査データを俯瞰的に考える時に役立つと思います。原因が良く分からない、もしかしたら他の疾患を考える必要があるかもしれないと思った時に、これを見ながら鑑別疾患を考えてみて下さい。

(編集長)

山中先生と鑑別疾患を考え中

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骨粗鬆症の治療薬(2)

2025.11.06
カテゴリー: カンファレンス 内科

J2のオバタリアンが書いてくれた骨粗鬆症の治療薬について、前回からの続きです。

 

****************************

アレンドロネート、リセドロネート、ゾレドロン酸は骨吸収抑制薬のビスホスホネート(BP)製剤です。BP製剤は連日~年1回まで様々な使用方法がありますが、いちど吸収されたBP製剤が骨に沈着し有効性を発揮するため、特に理由がなければ内服回数が少ない薬剤で問題ないとされています。

 

というのも経口製剤は吸収率が非常に悪いため「早朝空腹時、コップ1杯の水道水180mlで噛まずに内服、内服後30分は臥位禁止、30分後以降に食事摂取」が必要なのです。正直言ってかなり面倒です。したがって内服が困難な場合は静注製剤がお勧めとなります。副作用には国試的にも有名な顎骨壊死のほか、急性期反応という投与後のインフルエンザ様症状、腎機能障害があります。

 

今回のガイドラインに追加されたゾレドロン酸は、椎体骨折発生を70%低下させたという報告があり、主なBP製剤4剤のなかで椎体骨折の骨折予防効果が最も強いとされています。年1回の投与で効果が持続することから頻回の受診が不要という利点もあります。

 

デノスマブは骨吸収を抑制する抗RANKL抗体薬で、骨密度上昇、骨折予防のいずれについても強力なエビデンスが存在します。骨粗鬆症に適応があるのはプラリア®で、6カ月に1回の皮下注なのでアドヒアランスという点でメリットが大きいです。ただし、やや高価です(約5万円/年、10割)。

 

デノスマブは休薬するとすぐに多発椎体骨折が引き起こされると報告されており、休薬時には必ずほかの骨粗鬆症治療薬による逐次療法(別の薬への切り替え)が必要となります。もし入院した患者さんに「半年に一回、骨粗鬆症の薬を皮膚に注射しています」とか言われたら、お薬手帳をさかのぼって確認した方がよさそうですね。

 

ロモソズマブ(イベニティ®)は「骨折の危険性の高い骨粗鬆症」が適応となる抗スクレロスチン抗体薬です。アレンドロネートとの比較試験で、アレンドロネートよりも有意に骨折を抑制したと報告されています。注意点として1年以内の脳血管、心血管系の既往がある場合は投与を避けるとなっています。毎月の皮下注射が必要で、非常に高価であり(約60万円/年、10割)使用する際には患者背景なども考慮する必要がありそうです。

 

最後になりますが、どの製剤を使うにしても、骨粗鬆症治療薬はビタミンDが充足していることで効果を発揮します。そのためほとんどの症例で、活性型ビタミンD製剤(エディロール®、アルファロール®)が処方されますが、高齢、腎機能低下、脱水などで高Ca血症のリスクがあり適宜血中/尿中Caのモニタリングが必要です。

 

逆に、高齢者の食欲低下や倦怠感、多尿などがみられた場合、これらの薬剤による高Ca血症を考慮して内服薬の確認をすることが大切です(最近もエルデカルシトールによる食思不振、高Ca血症、急性腎前性腎不全をきたした症例がありました。エルデカルシトールを中止することで改善したそうです)。

 

かなり長くなってしまいましたが、ひとつだけ強調するとしたら「骨粗鬆症薬を使用している患者さんがいたら、Caに注意しましょう」です。

 

薬はいろいろありますが、いずれの場合もCa補充のため活性型ビタミンD製剤を併用していることがほとんどです。そのため副作用としての低Ca血症もあれば、活性型ビタミンD製剤による高Ca血症もありえます。

 

骨折予防はその人の健康寿命を大きく左右します。このブログを見て少しでも骨粗鬆症というものに関心を持っていただければ嬉しいです。

                               

(参考文献)

・骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版.骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成員会,編.ライフサイエンス出版 2025.

・もう迷わない!骨粗鬆症診療 改訂第2版 竹内靖博,著.日本医事新報社 2025.

・シリーズGノート 骨粗鬆症の薬の使いかたと治療の続けかた 小川純人,編.羊土社 2023.

(オバタリアン)

これからPICC

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骨粗鬆症の治療薬(1)

2025.11.04
カテゴリー: カンファレンス 内科

冬の気配を感じ始める今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。研修医のオバタリアンです。編集長よりご指名いただいたので、今回は10年ぶりに改訂された「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」から、骨粗鬆症の治療薬についてのお話になります。

 

骨粗鬆症は一般の方々にも広く知られ、よく「骨がもろい」と表現されますが、以下のような明確な診断基準が存在します。

 

<原発性骨粗鬆症の診断基準>

(低骨量をきたす骨粗鬆症以外の疾患、続発性骨粗鬆症の原因を認めないことが前提)

Ⅰ.脆弱性骨折あり

 1.椎体骨折または大腿骨近位部骨折あり

 2.その他の脆弱性骨折あり、骨密度YAM80%未満

Ⅱ.脆弱性骨折なし

 骨密度がYAM70%以下またはー2.5SD以下

 

したがって、例えば骨密度を測っていなくても椎体骨折が一つでもあれば骨粗鬆症の診断となります。日々の診療の中でも高齢患者の既往に骨折歴をみることは決して少なくなく、お薬手帳には骨粗鬆症治療薬がしばしば登場します。今回はガイドラインにおいて推奨度が高く、今後も重要となりそうな薬物について簡単にまとめてみました。

 

改訂された2025ガイドラインでは、薬物の推奨は骨密度に対する効果と骨折抑制効果の2項目で評価されました。骨密度に関しては腰椎と大腿骨の両方に有効であれば「行うことを推奨する」、骨折抑制効果に関しては椎体、大腿骨近位部、非椎体の骨折すべてに有効であれば「行うことを推奨する」とされ、この2項目とも「推奨する」となっているのは、

 

・アレンドロネート(ボナロン®、フォサマック®)

・リセドロネート(アクトネル®、ベネット®)

・ゾレドロン酸(リクラスト®)←NEW!

・デノスマブ(プラリア®)

・ロモソズマブ(イベニティ®)←NEW! ☆骨密度上昇に対しては唯一「強く推奨」

 

の5種類でした。

 

ちなみに今回追加されたアバロパラチド(オスタバロ®)は、骨密度に対しては「推奨」となっていますが、骨折抑制については大腿骨近位部骨折に対する骨折抑制効果のエビデンスを認めなかったため「提案」となっています。

 

また、ロモソズマブは骨形成促進薬である副甲状腺ホルモン製剤(テリパラチド®、アバロパラチド®)同様に、適応は骨折の危険性が高い骨粗鬆症となっています。

次回に続きます。

(オバタリアン)

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高齢者の食欲低下には ”MEALS ON WHEELS”

2025.11.01
カテゴリー: カンファレンス 内科

誤嚥性肺炎で入院された患者さん。抗菌薬の治療で熱も下がって呼吸状態も良くなってきて、よし退院だと思っていたら、なんだかご飯を全然食べてくれなくて困り果ててしまったことはないでしょうか。

 

なにか介入できる原因はないか? 食欲低下や体重減少を鑑別する時に使えるゴロを紹介します!

 

それが、MEALS ON WHEELS(車輪の上に乗った食事、いわゆる配食サービスの意味)

 

M: Medication 薬剤

E: Emotional  特にうつ病

A: Alcoholism, Abuse, Anorexia アルコール依存、拒食症

L: Late life paranoia 老年期妄想

S: Swallowing problems 嚥下障害
O: Oral Problems  義歯が合っていない、虫歯、口内炎

N: Nosocomial infections, No money  院内感染、金欠
W: Wandering 認知症など行動異常

H: Hypothyroidism, Hyperglycemia 甲状腺機能低下症、高血糖

E: Enteral problems: 吸収障害など

E: Eating problems 自分で食べられない

L: Low salt, Low cholesterol カロリー不足など

S: Stones, Shopping problems, Social Problems, isolation 買物、社会的問題、孤独

 

これで原因を鑑別してみてください!

 

ちなみに、薬で食欲増やしてください!と言われたら、なかなか厳しいですが、、、食欲増やすと言われている薬はこちら↓↓↓

・副腎皮質ステロイド
・抗精神病薬(オランザピンなど)
・ヒスタミン受容体(H1受容体)拮抗薬(ザイザル、アレロック、ペリアクチンなど)

 

よければ参考にしてみてください!

(E.T)

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退院が近づいたら・・・栄養とADL

2025.10.25
カテゴリー: カンファレンス 内科

例えば、80歳代の男性でADLは自立、敷地内の別棟に息子さん家族が住んでいる(茨城はこのパターンが多いんです)方が、肺炎で入院しました。幸い、順調に経過し、血ガスも胸部レントゲンも、WBCやCRPも改善しています。

 

肺炎が良くなってきたので、そろそろ退院してもらおうと家族に話をしたら、「こんなんじゃ、おじいちゃんを連れて帰れません!」と言われてしまいました。なぜだか分かりますか?

 

実は、食事は食べれるけど、むせ込まないように誰かがついてないといけません。摂取量も十分とは言えない。ADLも歩けているけど歩行器を使用していて自宅で一人での移動は無理。

 

家族からすれば、今まで全く手がかからなかったのに、常に誰か家にいなくてはいけないなんて、家族みんな仕事しているから無理!となる訳です。あなたもこの先、似たような状況を必ず経験するハズです。

 

特に高齢者では、入院を契機に急速にADLの低下を来します。脳梗塞を起こしたわけでもないのに、嚥下機能が落ちたり、食事量も激減することはしばしば日常で遭遇します。

 

そこで、退院の見通しがついた入院患者さんについて、「疾患」のことだけでなく、「栄養とADL」に注目してみましょう。

 

入院前の生活に戻れるのか? 転院や施設を考慮した方がいいのか? 早い段階で家族に見通しを伝え、退院に向けての準備を始めないと、退院直前になって冒頭のようなことになってしまいます。

 

退院してもらうには、疾患だけでなく、いろいろ目配せが大事です。特に「栄養とADL」はキモになることを覚えておくとイイと思います。

(編集長)

「おはようございます!」と朝の回診

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浮腫へのアプローチ・・・山中克郎先生のレクチャーより

2025.10.21
カテゴリー: カンファレンス 内科

10月16日に山中克郎先生をお迎えしてレクチャーを開催しました。

 

山中先生は藤田医科大学の教授を務めた後、諏訪中央病院の総合診療科、福島県立医大会津医療センター総合内科の教授として活躍され、退官後の現在は諏訪中央病院に戻られて診療を続けている総合内科の大御所の一人です。著書もたくさんあります。

 

当院とは2018年からのお付き合いで、コロナ期間中もZoomでのレクチャーをお願いしていました。昨年度も2回ほどお越しいただきましたが、今年度もレクチャーをお願いしたところ、快諾いただきました。

 

今回は、その山中先生のレクチャーから「浮腫へのアプローチ」をシェアします。

 

【Step1:どの部位に浮腫があるか?】

全身性浮腫:⼼不全、肝硬変、腎不全、ネフローゼ症候群などによる低アルブミン⾎症、甲状腺機能低下症、薬剤(Ca拮抗薬、NSAIDs、ステロイド、シクロスポリン)

 

局所性浮腫:⼝唇(⾎管浮腫)、上肢(上⼤静脈症候群)、⽚側下肢(深部静脈⾎栓症、蜂窩織炎、リンパ浮腫)

 

【Step2:発症形式】

突然発症(数分以内)⇒ アナフィラキシー、血管浮腫

急性発症(数日)⇒ 深部静脈⾎栓症、蜂窩織炎、急性⽷球体腎炎

慢性(数か月)⇒ 心不全、肝硬変、静脈不全

 

【Step3:病態生理を考える】

患部を指で圧迫する

非圧痕性浮腫

  ⇒甲状腺機能低下症、リンパ浮腫

・圧痕性浮腫

  ⇒①Fast edema(40秒以内に圧痕が消失)なら低アルブミン血症

     ②Slow edema  (40秒経っても圧痕が残る)なら⼼不全、静脈不全

 

【その他】
• ⽚側性下腿浮腫では深部静脈⾎栓症→肺塞栓の可能性を第⼀に考える
• 悪性腫瘍(特に腺がん)に伴う過凝固が原因で深部静脈⾎栓症ができることもある
• 静脈不全は⾒逃されていることが多い。内果の⾎管拡張、うっ滞性⽪膚炎、静脈瘤、⾜関節付近の⾊素沈着、下腿潰瘍があれば疑う
• 原因は複合的なことが多い。例えば、薬剤(Ca拮抗薬)+静脈不全+塩分過多+⻑時間の⽴位

(編集長)

 

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腰痛のレッドフラッグサイン

2025.09.06
カテゴリー: カンファレンス 内科

40歳台の男性が、腰痛を主訴にERを受診しました。日中の仕事中に荷物を運ぼうとして腰を痛めたようです。帰宅してから徐々に痛みが強くなったので来院しました。

 

診察すると、痛そうにしていたものの、歩いて診察室に入ってきました。下肢のしびれや麻痺もありません。脊椎の叩打痛もなし。

 

レントゲンなどもチェックしないで、痛み止めを処方して帰宅させて良いでしょうか?

ちょっと考えてみて下さい。

↓  

ここで思い出してもらいたいのは「腰痛のレッドフラッグサイン」です。

 

腰痛はよくある症状で、すぐに画像検査や入院が必要となることは少ないのですが、中には重篤な疾患が隠れていることがあります。そこを見分ける時に役立つのがレッドフラッグサイン(警告症状・警告所見)です。

 

具体的には

 ・4~6週間の保存療法でも改善しない

 ・夜間疼痛や安静時痛

 ・筋力低下や感覚障害の進行

 ・50歳以上

 ・癌あるいは癌を強く疑わせるような病歴

 ・原因不明の体重減少

 ・静脈麻薬の使用

 ・最近の尿路感染症、皮膚感染症

 ・免疫抑制状態

 ・発熱、悪寒

 ・骨粗鬆症の既往

 ・慢性のステロイド使用

 ・薬物乱用

 ・強い外傷

 

冒頭の症例は、上記のいずれにも該当しないので、画像検査なしで帰宅で良い症例だと思います。もちろん、痛みが長引いたり、麻痺やしびれなどが出現したら、受診するように伝えておくことも重要です。

 

一方、最近のエムスリーの記事で、化膿性脊椎炎を疑ってMRIを施行すべきであったという判決が取り上げられていました。

 エムスリーの記事はこちら

 

少なくともこの記事の内容からは、患者さんは50歳以上で発熱を伴っていたことから、画像検査を考慮すべき状態であったようです。

 

ミスが心配だからと、なんでもかんでも検査というのは、あまりセンスの良いものではないと思いますが、検査を考慮すべき症例では、行えるようにしておいて下さい。

(編集長)

無事にAライン確保♪

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服薬のアドヒアランス

2025.09.02
カテゴリー: カンファレンス 内科

編集長が外来をやっている時に重視しているのは、服薬のアドヒアランスです。

 

こちらとしては、患者さんの症状を軽減させたり、長期的な予後の改善やイベント抑制のためにお薬を処方している訳ですが、患者さんが服用してくれなければ、効果は期待できません。

 

服薬のアドヒアランスを確認する方法は、独自の技をお持ちの先生がいるので、是非聞きだして、参考にしてみると良いと思いますが、編集長は下記のようなところで確認しています。

 

その方法は、残薬の確認です。年に1,2回ですが、患者さんに「残薬を調整するので、次回の外来の時に自宅に残っているお薬をぜんぶ持ってきてください」と伝えています。

 

忘れる人もいますが、持ってきたらざっと数えて、残薬数が一定に処方を調整します。薬剤が多いと時間も取られて面倒ですが、どの薬剤が残っているのかを把握するだけでもOKです(もちろん処方のコメント欄に記入すれば、調剤薬局に依頼することもできます)。

 

この情報を把握すると、アドヒアランスを改善するための処方の変更に役立ちます。たとえば、朝夕に服用するDOACが、夕方の分だけ多く残っている時は、朝のみの服用のDOACに変更するなどです。

 

他にも、予想もしないような理由で服用していないことが明るみになることがあります。

 

ある時、血圧のコントロールがなかなか付かない高齢の患者さんに、残薬を持ってきてもらったところ、ナント降圧剤が380錠(!)も残っていたことがあります。詳細は忘れましたが、雑誌で読んだか、知人に言われたか、とにかく薬はあまり良くない旨のことを言われ、不安から服用しなくなったようです。

 

こんな時に、患者さんを責めてもいいことはありませんから、一度すべての処方をやめて、一剤ずつ、本人が納得するように時間をかけて再開していきました。編集長も、かなり凹んだエピソードなのですが、これ以降も年に数回は残薬確認するように患者さんに声掛けをしています。

 

ちなみに、ワーファリンを処方している患者さんは、ほぼ毎回INRをチェックしますが、これが安定している人はアドヒアランスの問題もほぼないというのが経験則です。

 

我々は、処方したから服用しているだろうと考えがちですが、患者さんは不安や不満を言い出せず、服用していないことは想像以上に多いようです。我々の方からいろいろな機会を作って、確認してみることが大事です。

(編集長)

お勉強中♪

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レッドマン症候群

2025.08.05
カテゴリー: カンファレンス 内科

今回はJ1のA先生が書いてくれた記事を掲載します。前回のさくらもち先生に続いてのブログデビューです。これも日常臨床での経験からの記事ですので、是非読んでみてください。

(編集長)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

こんにちは!

さくらもち先生に引き続きブログデビューさせていただきます、J1のAと申します。

 

文章を書くことが苦手なのでずっと逃げていましたが、そろそろ編集長に怒られそうなので書いてみます。拙い文章ですが、ぜひ読んでみてください^ ^

 

 

あなたが当直中に病棟から電話がかかってきました。

「入院している〇〇さんですが、顔面が紅潮し、体全体が真っ赤です!薬疹でしょうか!先生診てください!」

 

研修医になってまだ3ヶ月目。こんな電話かかってきたら、普通に焦ります。病棟に早足で向かいながらこの患者さんのことを思い出してみました。

 

「60歳台の男性でパーキンソン病でかかりつけの方で脱力、歩行困難で入院した方だな。熱があったから血液培養出したら、MRCNSが確か4本中3本から検出されて、抗菌薬始めてたな。」

 

そうこうしているうちに病室に着きました。

 

電話で聞いていた通り、患者さんの顔面は真っ赤に紅潮しており、四肢、体幹には紅斑が広がっていました。

 

バイタルは安定していて、患者さんの様子は落ち着いており、「痒くないし痛くもない」と言っています。ひとまず安心、、。

 

一体、この患者さんに何が起こっているのでしょうか?

そういえば、看護師さんからの電話の時、「薬疹かも」と言っていた気がします。

カルテでこの患者さんへの処方を確認してみました。

 

〜、〜、イーシードパール、セフトリアキソン、バンコマイシン

 

ここまで読んで分かったあなたはもう国試合格間違いなしです。おめでとうございます。今すぐ勉強をやめて遊びにでも出かけてください。

 

では、答え合わせです。

 

 

“レッドマン症候群”という名前を聞いたことがあるでしょうか?

 

レッドマン症候群とは、バンコマイシンの急速投与によりヒスタミンが遊離されて生じるアナフィラキシー様反応で、顔面、頸部、体幹、四肢に搔痒感と紅斑性発疹が現れます。ほかには、脱力感、血管浮腫、胸痛・背部痛なども起こり得ます。発症機序にIgEは介在しないためアレルギー反応ではありません。

 

ここでバンコマイシンについて簡単におさらいです。

 

バンコマイシンはグリコペプチド系の抗菌薬で細胞壁の合成を阻害します。MRSAを含めたグラム陽性菌にのみ有効です。基本は点滴投与ですが、偽膜性腸炎には経口投与でしたよね。

 

忘れてはならないのは、薬物血中濃度モニタリング(TDM)が必要ということです!(国試頻出です‼️)

濃度が高ければ腎障害などの重篤な副作用を引き起こしますし、低い状態が続けば耐性菌が生えてしまうという、なかなか難しい抗菌薬です。

 

バンコマイシンの初回TDMは、投与3〜4日目(投与4〜5回目)に行うことが望ましいとされています。採血の時間帯ですが、「トラフ」と呼ばれる投与直前(約30分前)に行います。(なぜこのタイミングかを説明すると長くなってしまうのでぜひ調べてみてください。) また、場合によっては「ピーク」と呼ばれる点滴終了後1〜2時間のタイミングで濃度を測ることもあります。

 

さて、レッドマン症候群の話に戻りましょう。

 

レッドマン症候群を引き起こさないためには、バンコマイシンの点滴を60分以上かけてゆっくり点滴静注することがとても重要です。

 

実際に、上級医がオーダーしたカルテを見てみると、「投与時間1時間30分」としっかり書いてありました。

 

もし、あなたがバンコマイシン投与中の患者の全身の紅斑をみたら、すぐにアレルギーと判断するのではなくレッドマン症候群を疑って投与速度の確認を行いましょう!

 

 

レッドマン症候群は抗ヒスタミン薬により改善させることができます。この患者さんは、ポララミンを投与したところ翌日には紅斑は消退していました。

 

ここまで読んでいただきありがとうございました。バンコマイシンについて少しだけ詳しくなっていただけたかなと思います。

 

また、ぜひこのブログに遊びに来てください!

見学もお待ちしております\(^^)/

(A)

 

ERでの一コマ

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