臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。
胃潰瘍とピロリ(1)
コロナのせいでジムに行けてないDr. Muscleの記事です。今回も自分の経験症例からのまとめです。
今回は胃潰瘍について。Commonな疾患ですが、研修医に質問すると、歯切れのよい答えが返ってこないことが意外と多いと思います。ぜひ読んでみてください。
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今回は入院中の担当患者さんで黒色便を認め、内視鏡検査で多発性の胃潰瘍を認めた症例を経験したので胃潰瘍について簡単にまとめてみました。
・胃潰瘍の原因としては、ほとんどはNSAIDs内服、H.pylori感染です。
そのほかの原因としては、組織血行障害を起こす基礎疾患(肝硬変による門脈圧亢進や糖尿病、狭心症)やビスホスホネート製剤、Zolinger-Ellison症候群、サイトメガロウイルスや単純ヘルペスウイルス感染によるものなどが稀ではありますが挙げられます。
・症状としては心窩部痛、上腹部不快感、胸やけ、げっぷ、呑酸と多様な症状がありますが、どれも特異度は低く、高齢者では消化管出血や穿孔などの合併症が起こるまで全く無症状ということも多くあります。
・重篤な合併症としては吐血・下血・穿通・穿孔・狭窄があげられます。
出血が大量にあれば血圧低下や頻脈をきたしますが、少量の場合は症状がみられず動悸、息切れ、めまいで来院することもあります。穿通・穿孔は十二指腸潰瘍に多く、穿通が起こると疼痛は限局し背部に放散し、強度の疼痛を訴えます。突然腹部全体に重度のびまん性の腹痛が生じた場合は穿孔が示唆されます。
・次に胃潰瘍ステージ分類についてです。
胃潰瘍は内視鏡検査の所見によってActive stage(A1,A2), healing stage(H1,H2), scarring stage(S1,S2)に分類されます。
(日本医師会ホームページ 健康の森より)
A1では潰瘍辺縁に浮腫を伴い、潰瘍底は一般に白苔または黒苔でおおわれています。
A2ステージに移行すると辺縁の浮腫が改善し潰瘍底は白苔に覆われます。
これらの時期には悪性腫瘍との鑑別が難しいため、潰瘍辺縁からの生検が鑑別診断に有効です。
H1・H2ステージでは潰瘍辺縁に再生上皮を認め、白苔を伴う潰瘍底の面積は減少します。白苔が残存している場合はhealing stageとされます。
Scarring stageでは白苔は消失。赤色瘢痕を認めるS1と白色瘢痕を認めるS2に分類されます。
・内視鏡にて活動性の出血を認める場合や非出血性の露出血管を認める場合には内視鏡的止血術の適応となります。内視鏡的止血術としてはクリップ法や凝固法、血管収縮剤や硬化剤の局注法が存在します。
・薬物治療としてPPI・H2RA・ボノプラザン(VPZ)内服、H.pylori除菌などがあります。
次回はピロリについてです。
(Dr. Muscle)
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茨城県臨床研修病院合同説明会 on Web
これからの時期は、研修病院説明会などが多く開催される時期です。特に春休み中の病院見学を考えている人にとっては、できるだけ効率よく病院見学をして情報を集めたいと思っているのではないでしょうか?
そんなあなたのために、茨城県では毎年3月に県内の臨床研修病院の合同説明会を開催しています。コロナの影響で、昨年度からWebでの開催となっていますが、今年度も3月13日(日)にWeb開催することになりました(下記のチラシをご覧ください)。
もちろん当院も参加しますので、他の研修病院と合わせて効率よく情報収集をしてください!あなたのご参加をお待ちしています!!
(編集長)
<茨城県臨床研修病院合同説明会のチラシ>
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基本的臨床能力評価試験2022
毎年この時期になると基本的臨床能力評価試験(GM-ITE)というものがあります。日本医療教育プログラム推進機構(JAMEP)というNPOが行っている研修医向けのテストです。研修医の客観的な臨床能力の実力を知ることができ、研修指導や臨床研修プログラムの評価・改善にも使えるというのがウリです。
編集長も経験がありますが、初期研修中はホントに自分は実力がついているのか?と不安になることがあります。自分の実力を知る方法としては、他の研修病院に行った同期の研修医と会話する時くらいで「奴はスゲーな!」とか、「自分は結構できてるかも」と勝手に判断するくらいしかありませんでした。でも、このテストを受ければ自分の実力が全国でどのあたりなのかが分かるので、とても良い機会だと思っています。
毎年当院のマッチング研修医には受けてもらっていますが、今年の試験を昨日院内で行いました。今年の試験の特徴は、CBT方式になったこと。なので、研修医部屋の自分の机でみんなで受験でした。今後はいろいろな試験もCBT方式が導入されるのでしょうね。
さて、試験の内容ですが、基本的臨床能力と言っても幅広い分野から出題されます。編集長も何問か見たのですが、結構難しい・・・。
英文の問題も去年より若干増えたかも。ただ、臨床で経験したことをまめに振り返っておけば、そこそこできる印象です。
昨年の個人の成績は上下に分散していましたが、病院全体の成績としては偏差値50を超えていました。今年の結果が楽しみです♪
(編集長)
あまりテスト中らしく見えませんが・・・・、
真剣にやっています
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今年度2回目 山中先生のZoomレクチャー
先日のことですが、今年度2回目となる山中克郎先生のZoomレクチャーを開催しました。
山中先生は、福島県立医大会津医療センター総合内科の教授として活躍されていますが、総合内科の大御所の一人です。著書もたくさんあり、ドクターGにも出演されたことがあります。昨年6月に1回目をお願いしましたが、それに続いてのレクチャーとなりました。
今回のテーマは、Deep Medicine AI時代の診療 とすごいテーマでした。
要約すると、「パターン認識が中心となる診断はAIに任せて、医師は患者の悩みに共感をいだき、データだけに頼らずに患者に直接触れて異常を発見することが重要となる」という内容でした。
確かに、既にいろいろな分野でAIが浸透してきていますが、そんなAIに対して漠然とした不安を感じている医師も多いと思います。改めて私たちの役割を確認できました。その他に2つの症例検討を行うなど、あっという間の1時間でした。
じつは、山中先生から本もプレゼントしていただきました♪
先生の著書3冊で、しかもサインとメッセージ入りです。
特に初期研修を終えて専門研修に入る先生たちにはぜひ読んでもらいたい内容でした。山中先生、有難うございました!
来年度も山中先生のレクチャーをお願いしていますので、参加したい方はお知らせください。
(編集長)
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研修医インタビューページが更新されています!
当院の採用サイトをご覧いただくと、トップページの中段あたりに「初期研修医」というバナーがあります。それをクリックすると、バナーが7つ出てきて左端の上から2段目に「研修医の声・インタビュー」というのがあります。
ここはサイトの中で一番読まれているページですが少しずつ追加しており、現在は10名いるJ1のうち、すでに6名のインタビュー記事が
載っています。編集長の検閲なしのインタビューですので(笑)ぜひご覧になってください。
研修が始まったばかりのころの記事もありますが、今の時期のJ1はだいぶしっかりして、安心していろいろ任せられるようになっています。写真よりも、だいぶいい顔つきになったように思います。4月からは後輩をしっかり指導してくれるはずです。
コロナの患者が激増しており、春の病院見学シーズンも実際に見学に行けるのか、あなたも不安に感じていると思いますが、病院サイトやこのブログで情報発信を続けていきますので、引き続きよろしくお願い致します。
またご質問などあれば、遠慮なく下記フォームからお問い合わせください!
(編集長)
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脊髄空洞症
J1の Dr.muscle が自分の経験症例からのまとめを書いてくれたのでシェアします。
この記事のように、自分が関わった患者さんの主病名はもちろん、主病名以外の既往などから知らない疾患とかあやふやな点を拾い上げ、調べて整理しておくのが一番効率の良い勉強法だと思います。
ちなみにペンネームのDr.muscleは同期の研修医たちが名付け親です。理由はあなたのご想像通り・・・です。
(編集長)
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今回、既往に脊髄空洞症の手術歴があり、尿道カテーテル長期留置患者の尿路感染症という症例を受け持つことになったので、脊髄空洞症について調べてみました。
【脊髄空洞症とは】
脊髄の中に液体がたまり、脊髄がちくわのように空洞が形成され、脊髄の中心部分を交差する温痛覚が宙吊り型(上肢・胸部のみ障害され、頭部や下肢は正常)に障害されます。また、病状の進行に伴い、脊髄の中心以外にも空洞が広がるため、筋力低下や自律神経障害など多様な神経症状を引き起こします。
原因としてはキアリ奇形が原因となることが多いですが、脊髄損傷や脳脊髄神経の癒着を起こすような病気でも起こります。片手の痛みや温痛覚障害で発症することが多く、その後徐々に両上肢の麻痺が進行し、治療せずに放置した場合は下肢にまで麻痺がおよび、車いすが必要になることも。
ちなみに、キアリ(Chiari)奇形の定義は以下の通りです。
1型:小脳扁桃が大後頭孔より3mm以上下垂し、原則として小脳扁桃の変形を生じているもの。延髄の下垂を伴ってもよい。
2型:小脳下部(主に虫部)と延髄が大後頭孔より下垂し、第4脳室も下垂する。原則として腰仙部に脊髄瘤又は脊髄髄膜瘤を伴う。
治療としては空洞を縮小させる手術の他はありません。
手術法としては大後頭拡大術・空洞短絡術があり、どちらも全身麻酔下に行います。
・大後頭拡大術
キアリ奇形が原因となっている脊髄空洞症に有効
頭蓋骨から脊柱管に移行する部分を拡大させて、脳脊髄液の流れを改善する。
・空洞短絡術
脊髄空洞内に直接カテーテルを留置し、そのチューブから他の場所へ空洞内にたまった水を逃がす。具体的には『空洞-くも膜下腔シャント(SS shunt)』が行われることが多い。
手術による合併症としては手足のしびれや動きの悪化、髄液瘻や髄膜炎、感染などが挙げられます。手術によって空洞は縮小し症状の悪化を止められることは多いですが、空洞が縮小しても、手足のしびれや痛みは残存し、期待通りの神経症状の回復はできないことは少なくなく、そのような場合は内服での治療を継続する必要があります。
以上です。国家試験の際になんとなく宙づり型というキーワードは目にしたことはあったのですが、それ以外、治療法や予後などについてはほとんど知らなかったのでとても勉強になりました。
(Dr. muscle)
頚髄レベルの脊髄空洞症
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実は・・・、インスタも始めていました
まだ、あまり知られていないのですが、実は昨年10月から臨床研修のアカウントでインスタを始めていました。
フォロワーがようやく200名をちょっと超えたところですが、先日から当院の採用サイトのトップページの下の方にインスタへのリンクが
埋め込まれています。ぜひフォローをお願いします♪
前回の記事で紹介した先日の激励会で、採用予定者にインスタのことを聞いてみたのですが誰も知らなかった・・・・。ということで、これからはアピールしていきたいと思います。
このインスタは、J1のフォトグラファーが中心になってやっています。フォローはもちろん、「いいね!」と「コメント」をしてもらえると、モチベーションが上がります。ぜひよろしくお願いします!
(編集長)
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激励会報告
だいぶ寒い毎日が続いていますね。各地で雪の予報が出ていますが、どうぞ気をつけてお過ごしください。
さて先日のことですが、当院のJ1らが、今春から当院で初期研修を開始する予定の10名の激励会をZoomで開催してくれました。
これは以前から年末もしくは年明けの時期にやっていたのですが、昨年からコロナのためZoomで開催するようになりました。国試合格に向けての激励とともに、春から同期として一緒に頑張っていく仲間との初顔合わせの目的もあります。
もちろん、直属の上司(?)となる今のJ1から激励や実践的な国試対策などのアドバイスをもらえるのは、とっても嬉しいハズです。
後半は悩みごと相談コーナーだったのですが、だいぶ硬さも取れてきて、いろいろ質問も出ました。例えば、部屋の確保や引っ越しのこと、車の冬タイヤはあった方がいいか?など・・・・。
細かいけど、気になることを少し解消できたようです。
さて、コロナ感染者の増加はすごいスピードで、茨城県内も昨日(1月12日)は120名を超えてきました。換気やマスク、黙食などを中心に、充分な感染対策を行いながら、国試までの残された時間を効率よく使って、全員合格に向けて頑張ってください!
(編集長)
激励会の舞台裏
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心不全患者さんを診る時は・その5(初期治療の注意点)
前回はクリニカルシナリオ(CS)について紹介しました。虚血と大動脈弁狭窄症を除外できそうなら、基礎疾患の検索は後回しにして、患者さんの症状を早く取るために治療を開始するツールがCSでした。
CSに基づいて初期治療を開始するのはもちろんOKですが、当然ながら注意点もあります。
まず、CSは便宜的に収縮期血圧で分類しているので血圧だけで判断しないこと。
例えば、胸水も下腿浮腫もある患者さんが、ERでの血圧が150mmHg あったとしましょう。CS1に該当し、NPPVと硝酸薬ということになります。でも、明らかに浮腫や胸水など体液貯留傾向があるなら、利尿剤を使う必要が出てきます。
心不全の治療はERの中だけではなく、特に高齢者の心不全では、いかにADLを低下させないように退院させ、外来加療に持ち込むか、という視点が重要になってきます。CSに囚われずに早く症状を改善し、退院につなげるようにしましょう。
また大動脈弁狭窄症(AS)は要注意です。
ASは重症なほど血圧が上がりません。とすると、CS2として硝酸薬と利尿剤を使いたくなりますが、急激に前負荷が低下するとびっくりするほど血圧が下がってしまいます。
何故かというと、ASは心臓の出口である大動脈弁が硬くなって開きが悪くなる病気ですから、前負荷を維持しておかないと心拍出量が維持できないのです。しかし硝酸薬と利尿剤を同時に使ってしまうと、急激に前負荷が低下して、心拍出量が低下し血圧が下がるのです。心拍出量が低下すると硬くなった大動脈弁を押し広げる力も低下してしまうので、血圧がなかなか上がらず、ハラハラしてしまうことになります。
対策としては、硝酸薬と利尿薬を同時に使わずに一方から開始して、急激な前負荷の低下を避けながら慎重に経過を見ることです。CS1とかCS2のように、利尿がついたらほぼ安心という訳には行かないので、心してかかりましょう。そして、循環器内科医や心臓血管外科医に相談し、早期に手術を考慮してもらいましょう。
(編集長)
TAVI中の一コマ
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心不全患者さんを診る時は・その4(クリニカルシナリオ)
前回は心不全患者さんの基礎疾患を探っていく時に最初に除外すべきは、虚血と大動脈弁狭窄(AS)の2つということを紹介しました。
虚血はSTEMIのように分かり易ければイイのですが、実際はなかなか難しいことも多いので、治療と並行しながら考えていきます。ASは聴診であなたが見つけ出せるので、ぜひ聴診器を当ててみてください。
さて、虚血もASでもなさそうとなれば、基礎疾患の検索は少し後回しにしてもOKで患者さんの症状を早くとってあげることが必要ですね。
このような初期対応で使われるのがクリニカルシナリオ(CS)です。
CSは基礎疾患よりは、病態を早く把握して治療を開始するためツールです。でも時々、入院していつまでも「CS1の心不全の患者さんで・・・」とプレゼンしている人がいますが、CS1は診断名ではないのでこのようなプレゼンはイケてません(笑)。
今回は、このCSを確認しておきます。
CS1:収縮期血圧>140mmHg
・急激に発症するびまん性肺水腫
・体液貯留は少ない(=浮腫が無い)
・治療はNPPV、硝酸薬
CS2:収縮期血圧100~140mmHg
・全身性の浮腫、体重増加を伴う
・肺水腫としては軽度
・治療はNPPV、硝酸薬、利尿薬
CS3:収縮期血圧<100mmHg
・低潅流が主で、肺水腫や浮腫は軽度のことが多い
・心原性ショックを含む
・治療はカテコラミン、状況によって輸液
CS4:急性冠症候群
・心原性ショック
・治療はNPPV、硝酸薬、PCIなどの再灌流療法
・さらにIABPやインペラなどの機械的補助
CS5:右心不全
・肺うっ血はなく、全身性の浮腫
・輸液負荷は避けつつ、利尿剤やカテコラミンを使用
ERで良く遭遇するのはCS1と2です。CS4は循環器内科医の出番ですが、CS3と5は循環器内科医でも治療が難しいことがほとんどです。
(編集長)
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