専門研修ブログ
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茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
CPX(心肺運動負荷試験)で分かること
前回は外来心リハについて紹介しましたが、心リハを行う上でどの程度まで運動負荷をかけて良いのかの判断には、バイタルの変化や症状の有無だけでなく、負荷試験での評価が重要になります。
そんな時に用いられる負荷試験の一つにCPX(Cardioplumonary Excercise Training:心肺運動負荷試験)があります。当院にもCPXがあって心リハの際に利用していますが、その特徴をまとめてみます。
CPXは「ランプ負荷」、「運動負荷試験」、「呼気ガス分析」という特徴を有する呼気ガス分析を併用して行う運動負荷試験のことです。運動負荷には自転車エルゴメーターが用いられています。
ランプ負荷とは徐々に負荷量が増加するため、安静時、軽労作、中等度の労作、重度の労作と各段階の血行動態などを把握することができます。そして呼気ガス分析で酸素摂取に関する呼吸機能や心機能、骨格筋、自律神経など関連する病態の把握が可能となります。
他の負荷検査としては、運動負荷心筋シンチや負荷心エコーがありますが、運動負荷心筋シンチでは最大運動負荷かけないと評価できません。例えば膝の悪い高齢者だと最大負荷をかけられないので有用な情報が得られないことになります。また負荷心エコーでは骨格筋を含めた全身の情報はえられません。
そしてCPXはトイレ歩行が許可されたばかりの心不全患者さんでも施行可能で、心リハの方針決定に有用な情報が得られます。
CPXの具体的な臨床応用として以下のようなものがあります。
・運動耐容能の評価
・運動処方・日常生活指導
・息切れの鑑別
・虚血重症度の判定
・心不全の病態解明、重症度把握
・ペースメーカ至適モードの設定
・心不全における僧帽弁置換術/形成術の効果予測
(参考文献:安達仁編著 CPX・運動療法ハンドブック)
(編集長)
筑波大学循環器内科のホームページより
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外来心リハ
81歳の男性で、8年前に前壁の急性心筋梗塞に対してPCIを施行した既往があります。この時は最大CPKが12000Uまで上昇し、EFは30%程度で退院しました。しばらくは心不全や不整脈の出現もなく通院していましたが、徐々に労作時の息切れや心房細動が出現し、腎機能も悪化してきました。内服薬はARNI、β遮断薬、MRA、SGLT2阻害薬に加えてフロセミドもトルパプタンも全て服用してもらっている状況でした。心エコーもEFは全く改善なく、むしろ左室のリモデリングが進んでLVDd=60㎜と左室拡大をきたしています。
2回ほど心不全の増悪で入院歴があり、いつ心不全で入院するか分からないハイリスクの患者さんでしたが、あることを始めたら、その後は外来で利尿剤の調整などを要する程度の悪化はありましたが、心不全で入院することはなりました。この患者さんは何をはじめたのでしょう?
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答えは、外来心臓リハビリテーション(外来心リハ)です。
心不全診療ガイドラインでは心不全患者の再入院の主な要因として、
1)管理不十分によるうっ血(体液貯留)の増悪
2)感染・腎不全・貧血・糖尿病・COPDなどの非心臓性併存疾患(noncardiac comorbidities)
3)薬物治療および非薬物治療に対するアドヒアランス不良(nonadherence)
が指摘されていますが、さらに高齢心不全患者の長期予後の規定因子としてサルコペニア・フレイルがあげられています。つまり再入院リスクの高い高齢で多臓器併存疾患を保有している心不全患者では、入院中だけでなく退院後にも「 QOL向上・運動耐容能向上」と「再入院防止・要介護化防止」を目指して、全身的な疾病管理とサルコペニア・フレイルを予防する運動介入の必要性が強調されています。
以前から心不全に対する多職種介入プログラム・疾病管理プログラムの有効性が多数報告されいて、心不全患者の再入院と総死亡率を有意に減少させることが示されていますが、近年では心不全患者が定期的に多職種チームによる観察・指導を受ける外来心リハが、セルフケア・生活習慣改善指導を受ける理想的な場であると認識されつつあります。
具体的には、医師・看護師・理学療法士らからなる多職種チームが
1)運動処方に基づく運動療法を退院後に週1~3程度の外来通院方式で継続
2)慢性心不全の治療アドヒアランス遵守・自己管理への動機づけとその具体的方法を指導
3)心不全増悪の早期兆候を発見し,心不全再入院を未然に防止する対策を実施する
施設ごとにやり方は異なると思いますが、外来診察室での安静時身体所見にくらべて、運動中の自覚症状・身体所見・心電図変化を観察することにより心不全増悪兆候をより早期に鋭敏に検出できる利点があります。当院では外来受診前に外来心リハをやってもらい、心リハ資格をもったリハビリスタッフの記録を確認しながら患者さんの診察をしています。
冒頭に提示した患者さんも、外来心リハを継続するなかで、自宅生活での問題点を把握し、介入できたことや早期に利尿剤等の調整を行えたことに加えて、リハビリによる運動耐容能が向上したことが、心不全入院を繰り返さなくなった大きな要因だったと考えています。
(引用:JCS/JHFS 急性・慢性心不全診療ガイドライン2017年改訂版)
(編集長)
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「専門」の落とし穴
ある日のことですが、内科外来をやっていると看護師さんから相談がありました。
「検診で肝機能異常と尿酸高値を指摘された患者さんが受診したのですが、初診の消化器内科の先生は尿酸の方は診れないって言っているので、先生に診てもらえませんか?」
患者さんの診察をする前から、肝機能異常はOKだけど、尿酸はNGという対応って、あなたはどう思いますか?
外来患者さんが多くなると、早く患者さんを診療しなくてはいけないので、だんだんと焦ってきて、自分の専門分野以外のことは診たくない、他に回したくなる気持ちは実によく良く分かります。
でもこれが尿酸ではなく、例えば健診で血糖高値の指摘でも、おそらく診れないと言うのではないでしょうか? 内科ではどの領域でも糖尿病を診ない訳にはいかないという現実があるにも関わらずです。
検診で指摘された程度であれば、まずは話を聞いて、病歴を確認する程度で、いきなり処方を出したり、その日のうちに入院させて精査が必要になることは通常ありません。肝機能のフォローついでに、尿酸もフォローして、その間にどう対応すればよいのか調べる時間はあります。たとえ糖尿病だとしても、すぐにインスリンが必要なんてことは、外来診療では稀です。
しばらく前に当院で内視鏡のトップとして活躍してくれていた消化器内科の先生が開業されたのですが、その先生とお会いした時に「クリニックで診療している患者さんのうち消化器内科疾患はどのくらいの割合ですか?」と聞いたことがあります。
その先生の答えは「約2~3割」とのこと。それ以外の大部分が高血圧とか脂質異常症そして糖尿病と言っていました。つまり、専門領域に関わらず内科のコモンな疾患については、ある程度の対応ができないといけないと言えるでしょう。
今は内科専攻医、そして勤務医として急性期病院で働いているあなたでも、将来はどこで仕事をするようになるか分かりません。自分の専門分野は○○と思っていても、実際にそれを生かせるのは日常臨床の中の割合から言えばごく小さいことがほとんどです。専門分野を習得することは重要ですが、今から自分のできることを狭めるのはもったいない。どんな状況でも対応できるように、内科のコモンな疾患の評価や管理を自分でやってみるのが大事だと思います。
専門にこだわり過ぎて食わず嫌いにならないように、まずは話を聞いてみることから始めてみてください。
(編集長)
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「レジナビ Fair 内科専門研修」にご参加有難うございました!
ちょっと間があいてしまいましたが、9月8日(日)に「レジナビFair 2024内科専門研修」に登壇しました。日曜日のお昼という微妙な時間帯でご参加いただけるのか不安でしたが、編集長の予想よりもずっと多くの方にご参加をいただき有難うございました。
この企画は専門研修プログラムの紹介ですが、初期研修医だけでなく医学生も参加できます。今までは初期研修医よりも医学生の方が多かったのですが、なんと今回は初期研修医の参加が多くて、編集長的には大変嬉しかったです。
いつものレジナビのパターンで、前半にスライドを使っての内科専門プログラムの紹介で、後半はご質問に答える形の20分でした。でも、このブログでも紹介してきたように、今年度から血液内科と膠原病内科が常勤医2名体制になり、そのあたりの説明を厚くしたので前半の紹介がちょっと長くなってしまいました。
その分、後半の質疑応答の時間が短くなり、専攻医の都合もつかず編集長のみで対応となってしまったのが反省点です。気を付けていたものの、少々盛り気味に喋ってしまったかもしれないので、ぜひ当院の専攻医たちから直接話を聞いてください。
気を付けていたものの、少々盛り気味に喋ってしまったかもしれないので、ぜひ当院の専攻医たちから直接話を聞いてください。病院見学にお越しいただくのが一番ですが、忙しいとか、遠方ということならZoomでも対応しています。このページの下にある、「お問い合わせフォーム」からご連絡ください。
なお、専門研修プログラムでは、大学のプログラムにエントリーする人が多いかもしれませんが、大学以外を考えている人たちは、初期研修1年目の年が明けたこの時期から情報収集を始めて、2年目になったところで病院見学に行くパターンが増えてきたように思います。初期研修中に、いろいろな病院を見て回るのはなかなか大変ですが、気になる病院には必ず足を運ぶことをお勧めしています。
水戸済生会の内科専門研修も、昨秋から脳神経内科や膠原病内科の先生が赴任したことで、今までよりも充実したものになります。さらに今春からは血液内科医も常勤として赴任する予定です。「総合診断能力をもつスペシャリスト」を目指すには絶好の環境となるはずですのでご期待ください!
(編集長)
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【茨城県企画】エコーハンズオントレーニングの申し込みが始まります!
茨城県地域医療支援センター主催のエコーハンズオントレーニングを11月16日(土)に当院で開催します。
このハンズオントレーニングは、県内の若手医師を対象に県の主催で毎年当院で開催されているものです。講師は当院技術顧問の仁平先生とエコー室のスタッフです。仁平先生は超音波学会の指導医をもっており、なんでもエコーで見て、なんでも診断してしまうレジェンドです。
参加費用が1万円かかりますが、定員9名と少人数で、実際にプローブを当ててレジェンドからエコーのコツを教えてもらえる、またとない機会ですので、あなたもぜひご参加ください!
申し込み方法は、イバラキドクターズライフのサイトにある申し込みフォームからです。
ただし、申し込み開始が明日9月10日から10月10日までですので、お早めに忘れずにお申し込みください!
(編集長)
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【おしらせ】水戸済生会 内科専門研修プログラム説明会2024@Zoom
J2のあなたは来年の研修先をどこにするか、決めた人もいれば、まだまだ悩み中という人もいると思います。当院のJ2も決めた人、決められない人などイロイロです。
専門研修を始めるには、専門医機構に登録して、診療科と研修施設を決める作業が必要になります。9月1日現在では専門医機構からも、内科学会からも登録開始時期についての情報はありませんが、特別な理由がない限り、昨年同様に11月1日から登録開始になるのではないかと編集長は予想しています。
さて、当院では基幹型の内科専門研修プログラムを有しており、特に腎臓内科、消化器内科、循環器内科は内科専門医を取得後に異動することなく各サブスペシャルティ領域の専門医資格を取得できる
施設です。
さらに昨年秋から脳神経内科医と膠原病内科医が常勤となり、今年4月からは血液内科の常勤医も加わって、内科の診療体制が充実しました。今後は各サブスペ資格取得のため施設認定を目指していきますが、呼吸器内科専門医が不在という弱点を除けば、JOSLER症例の確保に困ることはありません。
当院の内科専門研修プログラムに関するお問い合わせもいただいていることから、今年も院外で研修しているあなたを対象にZoomでの説明会を開催することにしました。
開催日時は以下の通りです。J2が対象ですが、関心のある方なら医学生でもJ1でも参加可能です。
【水戸済生会 内科専門研修プログラム説明会】
日時:2024年9月13日(金)
20時開始(40~50分程度の予定です)
場所:Zoom
内容:①内科専門研修の概略
②消化器内科の専門研修
③腎臓内科の専門研修
④循環器内科の専門研修
⑤膠原病内科の専門研修
⑥血液内科の専門研修
⑦脳神経内科の専門研修
⑧質疑応答
申し込み方法:下記リンクの問い合わせフォームからお申し込みください。フォーム内の「お問い合わせ内容」欄に「内科専門研修プログラム説明会参加希望」と入力し、送信して下さい。
あなたの参加をお待ちしています♪
(編集長)
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◆レジナビ内科専門研修にも登壇します!
9月8日(日) 12:30~12:50
レジナビFairオンライン2024 内科専門研修プログラムに当院も登壇します。
消化器内科、循環器内科、腎臓内科だけでなく、膠原病内科、血液内科、脳神経内科が
加わってパワーアップした内科専門研修についてご紹介します。
もちろん、あなたの質問に直接お答えします♪
参加にはレジナビのサイトから申し込みが必要です。
下記リンクからお申し込み下さい。
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医師の資質
私に初期研修医でも、専攻医でも、ついてくれた時に必ずする質問があります。
「’良い医者’に求められる資質、1つだけ挙げるとすれば何か?」
これには、皆さん色々な考えがあることと思います。技術、能力、センス、恐れない心、努力、知識などなど色々な回答がありました。
あなたはいかがでしょうか? 僕は”責任感”こそが最も大切であると考えています。
責任感があれば、患者さんの要望や希望に応えられるように努力するだろうし、目の前の患者さんのために勉強したり技術を磨いたり、仮にミスがあっても真摯な対応をすることができる。責任感がすべての根源になっているのではないか、と考えています。
当院では毎週木曜日の8時から内科外科カンファレンスが行われています。基本的には内科から外科に手術につながる症例のプレゼンテーションを行い、方針を検討する形です。このカンファでよく外科の先生が言う言葉で、内科医としてシビレル言葉があります。
「内科の先生がそこまでやってダメなら、あとはコッチ(外科)でやります」
このフレーズを外科から聞いたとき自分たちが一生懸命患者さんに尽くしてきてくれたこと、自分たちが十分に内科的治療をし尽くしたことを理解してもらえたとうれしくなるのと同時に「ここまで来たらあとは俺たちが何とかするぞ」という外科の心意気に感動します。
私も内科医として自分の仕事にプライドを持っていますが、やはり内科の限界があります。その時には外科の力を借りるしかありません。(時として、やっぱり外科はかっこいいなと感じることもなくはないです)もちろん、内科が外科の術後の偶発症に対して治療協力をすることもあります。(我々も内視鏡医としてできることはたくさんありますからね!)
内科にとっても、外科にとっても自分たちが知力を尽くして戦った後の後ろ盾になってくれる強力な存在があることで、より複雑でリスクの高い患者さんの治療へも立ち向かっていくことができます。私は当院の外科の先生を心から尊敬していますし、頼りにしています。
目の前の患者さんがどんなに大変な状況になっても、この患者さんのために自分は何ができるのか、と責任感をもってともに考えて行動してくれる仲間はなんと心強い存在でしょうか。すべての医師にちゃんと責任感があれば、患者さんの押し付け合いなんてならないですからね。
(Nao)
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エコーガイド穿刺の注意点
CVやPICC、透析用のカテーテルなどを挿入する時に、あなたもエコーガイドで穿刺していると思います。今はエコーガイドが当たり前で、エコーガイドでやれば安全という風潮ですが、エコーガイド穿刺にも大事な注意点があるのを知っていますか?
実はエコーガイド穿刺でも、重大な合併症を生じた事案が多く報告されており、昨年も日本医療安全調査機構というところから、再発防止のための提言も出ています。
中心静脈カテーテル挿入・抜去に係る 死亡事例の分析 ― 第 2 報(改訂版)―
エコーガイド穿刺の最大の落とし穴は、「エコーで見えているところよりも、針は先に進んでいることが多い」ことなのです。
どういうことかというと、下の図のようにエコーの断面に真の針先が入っていないと誤って認識してしまうのです。
これはエコーを実際に持って、真の針先をしっかり同定できるように左手でプローブをしっかり固定し、針を進める右手も微妙な調整が必要で、繰り返し練習が重要です。
もちろんエコーガイド穿刺は有用な手法ですから、あなたも習得すべき手技ですが、同時に過信せずに、注意点についてもよく理解して、トレーニングしておく必要があります。
消化器内科の先生方は、エコーガイド穿刺が上手な人が多いですから、よくその手元を見て真似してみてください。
(編集長)
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ローテーションはなぜ必要なのか?
内科専門研修プログラムでは、初期研修でローテーションした診療科であっても、改めて一通りローテーションして主治医として症例を経験することが求められます。
初期研修を終えているので、内科の中でも、好き・嫌い、得意・不得意が分かってきていますから、「初期研修で回った科をもう一度やる必要があるのか?」とか「循環器内科は苦手なので回りたくない」なんて言われることもあります。
もちろん初期研修で担当するのと、専門プログラムで主治医として担当するのとでは意味合いが違うことは専攻医も分かっています。でも、できるならローテしないで、自分の診療科のことを早くできるようになりたいという気持ちを持つのは自然ですし、良く分かります。
ローテーションがなぜ必要なのか?このヒントが、編集長が読んだある記事に書いてありました。
「もしあなたが金槌しか持っていなけれ全ての問題は釘に見えるだろう」
(欲求階層説で有名な心理学者アブラハム・マズロー)
何の事だか分からないかもしれませんが、この言葉の意味はこんなことです。
例えば患者さんのことで、何かの問題を解決する必要に迫られた時、
・消化器内科医は消化器内科の観点で
・消化器外科医は消化器外科の見地で
・循環器内科なら循環器内科の視点で
・看護師なら看護師の視点で
解決策を考えます。
つまり、人は自分の持っている「最も使いやすく手近な道具」を使って解決しようとする、ということです。
「自分が最も使いやすく手近な道具」を使って問題を解決するということは、もちろん悪いことではありません。これは言い換えれば「長所発揮」であり、強みを生かして課題や困難にチャレンジすることは重要です。
しかし、当然ながら全ての問題が「自分が最も使いやすく手近な道具」で解決できる訳ではありません。ところが、無意識に「手近な道具」を使って考えているので、そのことに気づくのに時間がかかります。
例えば腹痛の患者さん診察する時、消化器内科なら、まずは腸管、胆道系、肝臓の異常はないかと考えて、エコーやCTをチェックするでしょう。でも、なにも異常を見つけることが出来なかったらどうでしょう?
こんな時、循環器内科なら心筋梗塞の中に腹痛を主訴に受診する患者がいることを知っているので、心電図をチェックしたくなります。腎臓内科なら尿毒症の症状から来る腹痛を疑うかもしれません。膠原病内科なら血管炎を疑うかもしれません。つまり、ローテーションをすることで、各診療科の視点を身につけることができるのです。
患者さんの問題を解決するためのカンファレンスも同じです。一人の患者さんについて、他の診療科の先生と議論をしたり、看護師さんやリハビリ、ケースワーカーなどと患者さんについて意見を出し合うことは違う視点があることを気づかせてくれます。
このように、内科の中でも自分の専門領域以外の見方を付けておくことは重要ですし、ローテーションは自分が気づかなかったアプローチを気づかせてくれる貴重な機会と言えます。
自分が手にしているのは、多くの場合金槌である
ということを自覚しておかないと、自分の知っている範囲でしか考えなくなり、こじつけて解釈したりと、手段が目的化してしまう危険性があります。内科専門プログラムでのローテーションを、自分の診療科以外の医師やスタッフに積極的に相談して、幅広い見方を出来るようなる時間と考えてみてはどうでしょうか?
(編集長)
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リズムコントロールか? レートコントロールか?
フォーカスアップデート版が出された循環器学会の不整脈治療ガイドラインからです。
心房細動患者さんを診た時に中長期的な管理をどうするかは毎回悩むところです。この管理方針には、洞調律への復帰と維持を図るリズムコントロールと、洞調律には復帰させずに適切な心拍数のコントロールで症状改善を図るレートコントロールの2つがあります。
まず、洞調律の復帰・維持する利点としては心房細動の症状に加え,運動能力とQOL の向上、LVEF の改善、左房径減少、入院イベントの減少に有効とされています。
レートコントロールは、約20 年前に行われたAFFIRM試験というリズムコントロールとレートコントロールを比較した試験で生命予後に有意差がなかったことが根拠となっています。
もっとも当時は心房細動に対するカテーテルアブレーションが普及しておらず、現在もそのまま適応することは困難ですし、いろいろな研究から近年では心房筋リモデリングなどの有害事象が進展する前の早期に抗不整脈薬やアブレーションを積極的に用いてのリズムコントロールを行うことの重要性が指摘されていて、ガイドラインでは推奨度と共にリズムコントロールが望ましい場合も示されています。
ClassⅡa:発症早期の心房細動患者において,リズムコントロール療法を考慮する
<リズムコントロールが望ましい場合>
・症状(動悸,眼前暗黒感,胸部不快感など)が強い
・心房細動の持続により心不全の発症、増悪が危惧される
・心房細動発症関連の併存疾患(高血圧、心不全、冠動脈疾患、糖尿病、睡眠時呼吸障害など)が比較的少ない
・心房筋のリモデリングが軽度(左房径の高度拡大がない、心房内伝導遅延が少ない)
・ 患者がリズムコントロールを希望する
そうなると、レートコントロールの方針で管理する患者さんは、洞調律を維持することが困難と考えられる持続性および永続性心房細動患者がおもな対象となります。
(参考文献:2024JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療)
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