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茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
CPXの実際(6) VE vs VCO2 slope
CPX(心肺運動負荷試験)で負荷中の指標を紹介しています。
前回は最高酸素脈とVE/VO2、VE/VCO2について紹介しました。今回はVE vs VCO2 slope、PETCO2、PETO2です。
【VE vs VCO2 slope】
前回紹介したVE/VCO2と同様に、換気血流不均衡がどの程度改善されるのかが分かる指標です。つまり心不全の重症度の指標になるもので、34以上になると予後不良とされています。
求め方としては、下図のようにVEが増加し始めた点からRCPまでの傾き(①)を用います。RCP以降だと傾きが急峻になる(②)ので健常人でも値が悪くなる、つまり運動耐容能が低いと評価されてしまいます。
【PETCO2、PETO2】
PETCO2(終末呼気中のCO2分圧)は、肺血流が少なかったり換気血流不均衡が大きい場合に低値となります。肺血流量、心拍出量、肺血管床減少度の指標となります。
これは、血液中のCO2がほぼ完全に肺胞に拡散されるため、すべての肺胞で適切なガス交換が行われていれば肺動脈血CO2分圧と肺胞内CO2分圧と終末呼気中のCO2分圧とがほぼ等しくなるはずですが、ガス交換がうまくいかないと終末呼気中のCO2分圧は低くなるからです。正常値はRCPでのPETCO2が45㎜Hg以上と覚えておけば良いようです。
一方、PETO2(終末呼気中のO2分圧)は、負荷中に漸減していきます。運動に伴い呼吸が深くなって、ガス交換がよくなり、呼気中に残っているO2が減少するのですが、ATに達すると逆に増加し始めます。
(参考文献:安達仁編著 CPX・運動療法ハンドブック)
(編集長)
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新年のご挨拶
新年あけましておめでとうございます。
いつもこのブログをお読みいただき有難うございます。今回が今年最初のブログになりますが、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
病院は今日から通常営業というところだと思いますが、すでに当番で仕事を始めている人も多いのではないでしょうか。大変お疲れ様です。
編集長も大晦日の日勤をしましたが、インフルエンザの患者さんばかりでした。もっとも心不全で退院直後の高齢者とか、保存期腎不全で透析直前の患者さんとか、インフルエンザを契機に不安定化しそうな患者さんばかりだったので、単に抗ウイルス薬と解熱剤を処方すればいいという訳ではなく、内科医の腕の見せ所でした。
さて、あなたは今年1年の目標とか、将来の目標を考えたでしょうか? 普段はなかなかスルーしがちですが、年初めというチャンスにぜひ少しの時間をとって考えてみてください。
とは言っても、目標を立てたところですんなり到達できるわけではありません。調子が良い時もあれば悪い時もあります。専攻医になると、できることが増えてやりがいがある一方で、失敗すると自分で何とかしなければいけない場面が増えますし、研修医の時とは比べものにならないくらい影響が大きくなって、かなりへこんでしまいます。
こういった経験は、大なり小なり誰でもすることなのですが、こんな時に参考になる本を紹介したいと思います。
スペンサー・ジョンソンの「頂きはどこにある?」という本です。
読んだことがある人もいるかもしれませんが、調子が良い時(山)と調子が悪い時(谷)の対処法について書いてあり、薄くて、さっと読み終えることができる本です。検索すれば、すぐにYouTubeなどの要約サイトが出てきますので、探してみてください。
こういった本は調子が良い時には、あなたに響かないかもしれませんが、調子が悪い時には刺さる内容だと思いますので、今すぐ読まなくとも存在を覚えておいても良いと思いますよ。
まだまだ寒さも続きますので、体調に気を付けながら仕事に頑張っていきましょう!
(編集長)
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年末のご挨拶
早いもので、もう年末ですね。インフルエンザが猛威を振るっていますが、いかがお過ごしでしょうか?
水戸済生会の内科専門研修を紹介する目的で2020年7月から始めたこのブログですが、気づいたら約4年半たっていました。週1回のゆっくりしたペースで記事を書いていますが、4年たっても閲覧数は全然増えていません(笑)。編集長としては、気にしていないと言ったらウソになりますが、扱うテーマもだいぶニッチなものばかりなので、閲覧数狙いは無理だと思っています。でも、今こうしてあなたに記事を読んでいただいているので、ホントにうれしい限りです。どうも有難うございます。
さて、今年は水戸済生会の内科専門研修プログラムに大きな変化がありました。
それは、2023年秋から脳神経内科医とリウマチ膠原病内科医が常勤になり、さらに今年4月から血液内科医が常勤となったことで、呼吸器内科以外の内科系疾患を幅広く診療できるようになったことです。
これは専攻医にとってJOSLER症例の確保が非常に容易になっただけではありません。以前は、水戸済生会の内科専門研修プログラムの特徴と言えば消化器内科、循環器内科、腎臓内科でした。そこに3つの診療科が加わったことで、内科の中でも症例の幅が広がり、診療レベルの向上という相乗効果を実感しています。
もちろん、早く自信をもって対応できるものが欲しいという専攻医のニーズに応えるため、できるだけ早くサブスペシャルティ領域の専門医資格を取得することを目指すというプログラムの方針は変わりありません。
同時に、指導医側としてはいろいろな状況でも活躍できる内科医になってもらえるように、さまざまな経験をしてもらうことも重要と考えています。これら3つの診療科が加わったことは、この点からも非常に意味のあることだと考えています。
水戸済生会の内科専門プログラムでは、臨床の現場で活躍できる内科医を育てていけるよう、スタッフ一同頑張ってまいりますので、来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
(編集長)
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CPXの実際(5) 最高酸素脈
CPX(心肺運動負荷試験)で負荷中の指標を紹介しています。
前回は最大酸素摂取量(Peak VO2)と嫌気性代謝閾値(AT)について紹介しました。今回は最高酸素脈とVE/VO2、VE/VCO2を紹介します。
【最高酸素脈(Peak VO2/HR、Oxygen pulse)】
最高酸素脈は酸素摂取量を心拍数で割ったもので、1回の心拍出量がどれだけ酸素摂取に関与しているかを評価する指標です。つまり最大負荷時の心拍出量の指標の一つでもあります。
標準値は以下のように計算されるそうですが、60歳代で運動習慣のない人であれば10ml/beatであれば正常と考えて良いそうです。
<激しい運動習慣のない成人における VO2/HRの標準値>
男性:(-0.1×年齢+34.5)×体重/(220-年齢)
女性:(-0.1×年齢+28.9)×体重/(220ー年齢)
(日本循環器学会の標準値より)
注意点としては、ベータ遮断薬など心拍数を下げる薬を服用していると高く出てしまいます。そして心拍出量を示す指標と述べましたが、心機能そのものを示す指標ではないことにも注意が必要です。例えば肺高血圧や長期臥床で骨格筋量が低下している場合にはこの値は低下します。
【VE/VO2、VE/VCO2】
ウォームアップの項でも触れましたが、これらの指標は負荷に伴って徐々に低下します。これは運動に伴って肺血流も肺換気も増加するため、換気血流不均衡分布が改善されるためです。VE/VO2はATまで低下し続け、その後上昇に転じます。VE/VCO2はATあるいはRCP(呼吸性代償開始点)まで低下し続け、RCP以後に上昇します。
この指標は、VE/VO2ーVE/VCO2の関係から最大負荷をかけずにATを決定できるため、心筋梗塞後や術後早期にCPXを行う場合に有用です。
この指標に影響する因子は肺血栓塞栓症、SV(1回拍出量)低下、血管内皮機能低下、交感神経活性の異常亢進、浅く速い呼吸様式などです。
心不全ではSV低下により、血管壁へのシアストレスを増加させることができず、結果として血管内皮からのNOの産生が増加しないため肺血流も増加しないことや、交感神経活性の更新により血管拡張をきたしにくくしているとされます。
(参考文献:安達仁編著 CPX・運動療法ハンドブック)
(編集長)
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CPXの実際(4) 最大酸素摂取量と嫌気性代謝閾値
CPX(心肺運動負荷試験)の実際を紹介しています。CPX負荷中に得られる指標はたくさんありますが、前回は酸素摂取量の異常パターンを紹介しました。
今回は最高酸素摂取量(Peak VO2)と嫌気性代謝閾値(AT)についてです。
【最高酸素摂取量(Peak VO2)】
Peak VO2は心臓リハビリにおける酸素摂取量に関する最も重要な指標ですが、これ以上はもはや運動できないという強度(医学的な安全限界とか本人の自覚的限界)で負荷が終了したときの酸素摂取量(酸素摂取量の最高値)のことです。
混乱しやすいものとして、最大酸素摂取量(VO2 max)があります。VO2 maxは有酸素運動能力を反映し、この値が大きいほど心肺機能の能力が高いことを意味します。アスリートやトレーナーが使っているのはこちらの方です。
心不全患者さんの心臓リハビリでは安全優先ですので、VO2 maxではなくPeak VO2が用いられますただし、両者は同義語として用いられている場合もあります。
【嫌気性代謝閾値(AT:Anaerobic threshold)】
ATの定義は「好気的代謝に無気的代謝が加わる時点での酸素摂取量」となっていて単位はml/minです。
ATの決定法には以下の通りいくつかあるので、負荷終了後の解析時にいくつかの方法を見ながら決定していきます。
1.VCO2、VEがVO2から乖離して増加を開始する点(下図・左)
2.V-slope法でSlopeの傾きが45度以上になり始める点(下図・右)
3.VE/VO2の増加開始点
4.R増加開始点
5.PETO2増加開始点
ATはPeak VO2の約60%であり、AT以後は乳酸の産生が進み、徐々にアシドーシスになります。この時はまず腎臓での代償機序が働きますが、それが限界を迎えると肺による代償機序(=過換気)が始まります。このポイントを呼吸性代償開始点(RCP:Respiratory Compensation Point)と言います。
(参考文献:安達仁編著 CPX・運動療法ハンドブック)
(編集長)
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CPXの実際(3) 負荷中に得られる指標
CPX(心肺運動負荷試験)の実際を紹介していますが、今回は負荷中の指標についてです。
負荷中に得られる指標は以下のようにたくさんあります。
①酸素摂取量
②最高酸素脈(peak VO2/HR, Oxygen pulse)
③VE/VO2, VE/VCO2
④VE vs VCO2 slope
⑤PETCO2, PETO2
⑥TV-RR関係
⑦RR threshold
⑧Ti/Ttot
⑨呼吸予備能(Breathing reserve)
⑩SpO2
⑪Oscillatory ventilation
⑫OUES
これらを全部覚えて使いこなすのは正直なところ難しいですが、何となくこんなものを見ているとイメージだけでもつかんでおくと良いでしょう。
今回は酸素摂取量を見ていきます。酸素摂取量はATP産生そのものと考えて良いので、酸素摂取量が増加しなければATPも増加しないので、いろいろな症状につながります。
今回は酸素摂取量増加に関する異常パターンを見ていきます。
・酸素摂取量増加の3つの異常パターン
酸素摂取量は負荷1ワット(W)につき10㎖/分増加(ΔVO2/ΔWR=約10㎖/min/W)することは覚えておきましょう。
異常パターンの1つ目(図A)は、ΔVO2/ΔWRが低下しているパターンで、傾きの異常と言われます。心不全症例やでコンディショニングが進んだ患者など、有酸素代謝能力が低下して負荷初期から嫌気性代謝の割合が高いことが原因で、ΔVO2/ΔWRが7㎖/min/Wくらいまで低下します。
2つ目のパターン(図B)は直線性の異常と言われ、軽労作では有酸素代謝が正常に行われますが、あるレベルの負荷に達すると嫌気性代謝の割合が増大するような場合に見られます。狭心症による虚血や拡張障害などがこのパターンを示します。
3つ目(図C)は傾きは正常だが、上方にシフトする位置の異常のパターンで、特に肥満の強い場合に見られます。安静時の酸素摂取量は正常ですが、ウォームアップ時から予測値よりも増加し、傾きは正常パターンが特徴です。強い肥満の場合には自分の下肢が重いため、エルゴメーターを漕ぐ時に要するエネルギー需要が正常体重の人よりも多いことが原因とされています。
次回は最高酸素摂取量(peak VO2)について紹介します。
(参考文献:安達仁編著 CPX・運動療法ハンドブック)
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CPXの実際(2) ウォームアップで見るべきポイント
前回からCPX(心肺運動負荷試験)の実際を紹介していますが、今回はウォームアップで見るべきポイントについてです。
ウォームアップは0ワット、3分間で行います。これだと心不全患者さんでも行うことができます。ウォームアップ中には以下の3点を見ていきます。
①酸素摂取量(VO2)
ウォームアップを開始すると、VO2は急激に増加しますが3分以内に定常状態(プラトー)に達します。このプラトーに達するまでの時間は老化や心不全で延長し、延長の度合いは予後の指標となります。
もしVO2がプラトーにならない場合には、ウォームアップで既に嫌気性代謝閾値(AT)を超えていることを意味します。
②VE/VO2、VE/VCO2の変化
VE/VO2、VE/VCO2ともウォームアップ開始に伴って低下します。これは肺血流も肺換、気も増加するためですが、心不全であればこれらの増加の程度が小さいのでVE/VCO2がどの程度低下するかを見ると心不全の重症度を推測できます。
一方でウォームアップですでにATに達している場合には、VE/VO2が増加し、VE/VCO2以上の値になります。
③心拍応答
ウォームアップを開始すると、速やかに心拍数が増加します。これは副交感神経活性の消退が主たる要因とされています。この心拍応答が極端に低下している(つまり心拍数が上昇しない)場合としては、ペースメーカリズム、除神経(開心術後、心臓移植)など限られています。
逆に心房細動の場合は心拍応答が過剰になりますが、この場合はβ遮断薬や運動療法でのレートコントロールが必要です。運動療法の禁忌ではなく、運動療法を継続すべき状況です。
(参考文献:安達仁編著 CPX・運動療法ハンドブック)
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CPXの実際(1) 安静時に見るべきポイント
今回からCPX(心肺運動負荷試験)の実際を見ていきます。まずはCPXの負荷開始前、安静時で見るべきポイントについてです。
CPXでの負荷は8~12分で終了するようにします。心疾患患者では最大負荷強度が100ワット前後で
あることが多いので、10ワットずつのランプ負荷に設定します。
安静時には以下の5つのパラメータを確認します。
①心電図・血圧
②心拍数
③酸素摂取量(VO2)
④ガス交換比(R)
⑤VE/VCO2
①心電図・血圧
前回までで紹介しましたが、負荷検査をやって良いかの判断や心電図の中止基準を判断するベースラインとなります。血圧>180mmHg、<80mmHgではCPXは行わない方が良いでしょう。
②心拍数
ご存じの通り、安静時には副交感神経優位で、運動時は交感神経優位となっています。副交感神経活性は速やかに変化するので、安静時にも心拍数は微妙に変化します。しかし心不全患者などでは安静時でも交感神経優位になっており、心拍数の微妙な変化が消失します。安静時からやや頻脈気味で心拍数の変化が見られない状況であれば、負荷中に不整脈などの出現が起こりやすいと想定しながらCPXを行うことが大事になります。
③酸素摂取量(VO2)
酸素摂取量は250~400㎖/分となります。だいたいこの範囲に入っているかをチェックして、外れているようなら機器の較正をやり直します。
この数字の根拠としては、安静時における酸素摂取量3.5(mL/kg/分)を1METとする定義をから考えると、体重が60㎏の人の酸素摂取量は210㎖/分となります。実際はエルゴメーターに乗ると体全体にやや力が入る影響で1.2~1.8METsくらいになるので、酸素摂取量は250~400㎖/分となります。
④ガス交換比(R)
通常ガス交換比は0.82~0.83で、0.70未満や1.0以上の場合には較正をやり直します。
ガス交換比はVCO2/VO2で計算しますが、安静時では呼吸商とほぼ同じ値を示します。ちなみに脂肪のみを摂取していると0.7程度、炭水化物のみだと1.0になります。「呼吸商」とは呼ばないのは、基礎代謝量測定時のように完全な安静状態ではないため、CPXでの安静時でも「ガス交換比」と呼んでいるそうです。
⑤VE/VCO2
VE/VCO2はCO2換気当量とも呼ばれますが、CO2を1モル排出するのに必要な換気量のことです。これだけだとちょっと良く分かりませんが、換気・血流不均衡(V/Qミスマッチ)に依存する指標と言われるとイメージしやすいかもしれません。安静時には30~50程度を示しますが、高いほどV/Qミスマッチが大きいことを意味します。
具体的には、心不全では運動中に肺動脈が拡張しないことと心拍出量が少ないため、肺血流量が増加せずガス交換効率が低下するので、VE/VCO2は高値になります。当然ながら、安静時のVE/VCO2は心不全の重症度を反映します。他にも肺高血圧や重症COPDでも高値となり、各種の治療効果の判定にも使えます。
(参考文献:安達仁編著 CPX・運動療法ハンドブック)
(編集長)
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リスクをどう伝えるか?
あなたは内視鏡やカテなどの処置や手術の説明をして、患者さんやご家族から同意書にサインをもらったことはありますか?手術の同意書はないけど、造影CTや輸血の時などはサインをもらったことがあるはずですよね。
手術に限らず造影CTでも輸血でもリスクがあるから、説明したうえで同意書にサインをもらう訳ですが、このリスクをどう伝えたらいいのか、あなたは考えたことはあるでしょうか?
例えば、高齢で腎機能も悪い患者さんで周術期死亡率が5%と予想される手術の説明をするとしましょう。
患者さんは「先生におまかせします」というばかりですが、死亡率5%の手術は死亡率1~2%と言われる冠動脈バイパス手術(CABG)と比べると、かなりリスクの高い手術ということになります。なので、あなたはもっと深刻に捉えて欲しいと思っています。
この時、あなたは
① この手術は死亡率は5%の手術です。
② この手術では20人に1人が死亡する可能性のある手術です。
どちらで説明しますか?ちょっと考えてみてください。
↓
↓
↓
リスクを自分のこととして捉えてもらいたい時は、②の説明の方が伝わりやすと言われています。
「5%」も「20人に1人」も、どちらも同じことを言っているのですが、「20人に1人」と言われた方が人は、より「もしかしたら自分の身に起こるかもしれない」と考えるそうです。
似たようなことがコロナワクチンでもありました。
1回目のワクチン接種が始まったころに、「ワクチン接種後に〇〇人死亡した」という報道が良くありました。でも、ワクチンの接種回数がその時点ですでに何万回という状況だったので死亡率は非常に低い頻度だったはずです。さらにワクチンと死亡には前後関係はあるかもしれませんが、ホントにワクチンの影響なのかという因果関係は分からない状況だったのに、患者さんの中には非常に不安に受け止めていた人が多くいました。「〇〇人死亡」という実数でリスクを自分のことと受け止めやすくなったのだと思います。
リスクを伝えるとき、同じことを言っているのに相手にどのように受け取られるかについては、私たちはもっと注意を払うべきではないでしょうか。
(編集長)
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心電図異常の陽性基準 不整脈
前回は心電図異常の基準としてST変化を取り上げましたが、今回は運動負荷中に見られる不整脈についてです。
一般的に、運動による心筋虚血は異所性興奮を起こしやすく不整脈を引き起こすとされています。具体的には心室頻拍、R on T現象、連続する2段脈、3段脈、30%以上の頻度の心室性期外収縮(PVC)がガイドラインでも運動負荷中止徴候として挙げられていますし、運動誘発性に一過性の心房粗細動、Ⅱ度以上の房室ブロック、脚ブロックが出現することがありますが、これらも重篤な基礎疾患を反映している場合があるので、運動負荷中止基準に含まれています。
一方で運動による迷走神経抑制と交感神経刺激により安静時に存在する不整脈を抑制することもあります。具体例としては、安静時のPVCの多くは運動により焼失し、運動後に再出現するパターンをとり、良性の反応と言われます。
【洞不全症候群(SSS)】
洞不全患者では運動に対する酸素摂取量の増加に比べて心拍数の増加の程度が少ないとされていますが、ガイドラインではSSSによる3秒以上の洞停止(Sinus arrest)や洞房ブロック(SA block)を認めても、運動負荷で心拍数が適度に増加すれば運動許容できるとされています。注意すべき点としては、負荷中よりも負荷終了後に迷走神経緊張を来して著明な洞徐脈や洞停止を来すことがあるので、観察を怠らないようにしましょう。
【心房細動】
慢性心房細動患者では、運動時の心拍上昇反応と自覚症状を確認する目的に運動負荷を行う場合がありますが、最大心拍数が高く、最大酸素摂取量が低い傾向があります。このため、心拍数だけでなく酸素摂取量の増加の程度も確認しながら運動負荷を行う必要があります(つまり、トレッドミル検査よりもCPXの方が望ましいことになります)。
【心室性期外収縮(PVC)】
前述のように、安静時のPVCの多くは運動により焼失し、運動後に再出現するパターンをとり、良性の反応と言われますが、負荷終了後だけに出現するPVCは冠動脈疾患と関連し、予後不良とする報告もあります。
運動誘発性のPVCは健常者にも見られることがあり、心拍数130bpm以上で散発するPVCは正常反応とも言われます。しかし連発や頻度が多い場合は虚血と関連しているとされ、中止基準に含まれます。
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