専門研修ブログ
茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
リスクをどう伝えるか?
あなたは内視鏡やカテなどの処置や手術の説明をして、患者さんやご家族から同意書にサインをもらったことはありますか?手術の同意書はないけど、造影CTや輸血の時などはサインをもらったことがあるはずですよね。
手術に限らず造影CTでも輸血でもリスクがあるから、説明したうえで同意書にサインをもらう訳ですが、このリスクをどう伝えたらいいのか、あなたは考えたことはあるでしょうか?
例えば、高齢で腎機能も悪い患者さんで周術期死亡率が5%と予想される手術の説明をするとしましょう。
患者さんは「先生におまかせします」というばかりですが、死亡率5%の手術は死亡率1~2%と言われる冠動脈バイパス手術(CABG)と比べると、かなりリスクの高い手術ということになります。なので、あなたはもっと深刻に捉えて欲しいと思っています。
この時、あなたは
① この手術は死亡率は5%の手術です。
② この手術では20人に1人が死亡する可能性のある手術です。
どちらで説明しますか?ちょっと考えてみてください。
↓
↓
↓
リスクを自分のこととして捉えてもらいたい時は、②の説明の方が伝わりやすと言われています。
「5%」も「20人に1人」も、どちらも同じことを言っているのですが、「20人に1人」と言われた方が人は、より「もしかしたら自分の身に起こるかもしれない」と考えるそうです。
似たようなことがコロナワクチンでもありました。
1回目のワクチン接種が始まったころに、「ワクチン接種後に〇〇人死亡した」という報道が良くありました。でも、ワクチンの接種回数がその時点ですでに何万回という状況だったので死亡率は非常に低い頻度だったはずです。さらにワクチンと死亡には前後関係はあるかもしれませんが、ホントにワクチンの影響なのかという因果関係は分からない状況だったのに、患者さんの中には非常に不安に受け止めていた人が多くいました。「〇〇人死亡」という実数でリスクを自分のことと受け止めやすくなったのだと思います。
リスクを伝えるとき、同じことを言っているのに相手にどのように受け取られるかについては、私たちはもっと注意を払うべきではないでしょうか。
(編集長)
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心電図異常の陽性基準 不整脈
前回は心電図異常の基準としてST変化を取り上げましたが、今回は運動負荷中に見られる不整脈についてです。
一般的に、運動による心筋虚血は異所性興奮を起こしやすく不整脈を引き起こすとされています。具体的には心室頻拍、R on T現象、連続する2段脈、3段脈、30%以上の頻度の心室性期外収縮(PVC)がガイドラインでも運動負荷中止徴候として挙げられていますし、運動誘発性に一過性の心房粗細動、Ⅱ度以上の房室ブロック、脚ブロックが出現することがありますが、これらも重篤な基礎疾患を反映している場合があるので、運動負荷中止基準に含まれています。
一方で運動による迷走神経抑制と交感神経刺激により安静時に存在する不整脈を抑制することもあります。具体例としては、安静時のPVCの多くは運動により焼失し、運動後に再出現するパターンをとり、良性の反応と言われます。
【洞不全症候群(SSS)】
洞不全患者では運動に対する酸素摂取量の増加に比べて心拍数の増加の程度が少ないとされていますが、ガイドラインではSSSによる3秒以上の洞停止(Sinus arrest)や洞房ブロック(SA block)を認めても、運動負荷で心拍数が適度に増加すれば運動許容できるとされています。注意すべき点としては、負荷中よりも負荷終了後に迷走神経緊張を来して著明な洞徐脈や洞停止を来すことがあるので、観察を怠らないようにしましょう。
【心房細動】
慢性心房細動患者では、運動時の心拍上昇反応と自覚症状を確認する目的に運動負荷を行う場合がありますが、最大心拍数が高く、最大酸素摂取量が低い傾向があります。このため、心拍数だけでなく酸素摂取量の増加の程度も確認しながら運動負荷を行う必要があります(つまり、トレッドミル検査よりもCPXの方が望ましいことになります)。
【心室性期外収縮(PVC)】
前述のように、安静時のPVCの多くは運動により焼失し、運動後に再出現するパターンをとり、良性の反応と言われますが、負荷終了後だけに出現するPVCは冠動脈疾患と関連し、予後不良とする報告もあります。
運動誘発性のPVCは健常者にも見られることがあり、心拍数130bpm以上で散発するPVCは正常反応とも言われます。しかし連発や頻度が多い場合は虚血と関連しているとされ、中止基準に含まれます。
(参考文献:安達仁編著 CPX・運動療法ハンドブック)
(編集長)
ICUでのECMO抜去の助手
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心電図異常の陽性基準 ST変化
前回は運動負荷試験の中止基準について確認しました。今回は心電図異常の基準を確認していきます。
虚血性心疾患における運動負荷検査では、診断だけでなく病態の評価や予後予測、治療効果判定などの評価目的に心電図変化だけでなく、血圧増加反応の低下、心拍数上昇反応の低下、低運動耐容能なども指標にて判断していきます。心電図指標としてはST低下が有名ですが、それ以外の心電図指標の意味も頭に入れておく必要があります。
まずは虚血の判定基準は以下の通りです。
【確定基準】
・ST低下:水平ないし下降型で0.1mV以上低下(J点から0.06秒後ないし0.08秒後で測定)
・ST上昇:0.1mV以上(T波の増高に影響を受けないようにJ点付近で判定する)
・安静時からST低下がある場合:水平型ないし下降型で付加的な0.2mV以上のST低下
【虚血が疑わしい所見】
・0.1mV以上の上向型ST低下の中でもST部の傾きが小さい(≒水平型に近い 1mV/秒以下)の場合
・陽性U波の陰転化
・HR-STループが時計方向回転
【偽陽性を示唆する所見】
・HR-STループが反時計方向回転
・運動負荷中は上向型のST低下だが、負荷終了後に徐々に水平型、下降型に変化して長く続く場合(Hysteresis)
ST上昇について補足説明するとaVR以外で認めるST上昇は虚血の特徴的な所見ですが、心筋梗塞後の異常Q波がある誘導では必ずしも虚血を意味するものではありません。
HR-STループとは、横軸に心拍数を縦軸にST変位をとって、負荷開始から回復期にかけてのST変化と心拍数をグラフ化したもので、ループが反時計回転(傾きが小さい)場合には偽陽性の確率が高い、ループが時計回転(傾きが大きい)場合には陽性である確率が高いというものです。今は使われることはあまりありませんが、要は低い心拍数の時点からSTが低下してくる方が虚血の可能性が高いと覚えておけば良いと思います。
(参考文献:安達仁編著 CPX・運動療法ハンドブック)
(編集長)
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