専門研修ブログ
茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
新しい内視鏡が入りました!
タイトル通りですが、当院の内視鏡システムが更新されました!
当科はオリンパス社とフジフィルム社2社の内視鏡を揃えています。これは、世界のほとんどのシェアを持つ2社の内視鏡の特性を理解しつつ使いこなせる医師を育てるためです。当院で育った若手医師はそのままどこの病院に行っても、選り好みすることなく、与えられた内視鏡の特性に合わせて内視鏡検査や処置にあたることができます。
若干マニアックな話が入りますが、是非内視鏡医を目指すあなたは読んでいただければと思います。
今回の更新はフジフィルム社でした。オリンパス社が一足先にLED光源になっておりましたが、今回フジフィルム社もレーザー光源からLED光源になりました!元々画質には定評のあったフジフィルム社ですが、LEDになりその画質に磨きがかかっています。経鼻内視鏡については目を見張るものがあります。
オリンパス社の画像取り込み方式は高速面順次方式と言い、赤緑青の光を高速で切り替えながら照射し、それで得られた3色の色を重ねて一つの画像にしています(実際は、特殊光観測のための2色を加えた5色のようです)。フジフィルム社は同時式で通常のデジタルカメラと同様の方式です。一般的には面順次方式のほうが画質は向上させやすいという評判があるのですが、フジフィルムは同時式で面順次方式に負けない(それ以上の?)画質を出してきています。
ちなみに、面順次方式では撮影の瞬間にぶれたりすると色分解が起こってしまうのですが(以前の光源では白色光源の前に3色の色のフィルムを高回転で回して撮像する方式で、色の切り替え速度が遅かったこともありこれが起こりやすかった)、LEDのX1シリーズでは色分解がほとんど起こらず、両社とも技術の進歩を感じます。
話がブレブレしてしまいましたが、要するに、画質が非常に良くなりました。経鼻内視鏡は近接撮影が強化され、拡大内視鏡の40倍程度と同等の血管情報を得ることができるとのことです。
最近の内視鏡学会の主流の意見は、スクリーニングは経鼻内視鏡で十分であるという論調になっているように感じますが、個人的には懐疑的な考えでした。しかし、この経鼻なら!本当にスクリーニングでは経口内視鏡なんか要らない、と心から言えます。
ちなみに、当院のオリンパスの経鼻内視鏡は、X1シリーズの最新の光源が入っているにもかかわらず、ちょっとした事情で290という一個前の経鼻内視鏡のままのため、オリンパスの本領が発揮されていません。来年、オリンパスの経鼻内視鏡もちゃんと更新になる予定ですので、非常に楽しみです。
尚、実は今回フジフィルム社のAiも入れてしまいました。まだまだ粗削りな技術ですが、市中の基幹病院として実戦でのフィードバックを私たちからも入れさせていただき、更なる技術の発展に貢献したいと思っています。
これがAi
Aiが私たち内視鏡医の仕事を奪うのか。そんな後ろ向きなことは考えず私たちはAiにタスクシフトをしつつ私たち人間にしかできないことをしっかりこなしていこうじゃないですか。いつの日か内視鏡入れて、何も考えずに抜くだけでAiが病変を指摘してくれるようになり、私たちは内視鏡切除適応病変を切除するだけでいい、なんて日が来たら良いですね。
(Nao)
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CLTI 創傷治療(1)
改訂されたガイドラインをもとにCLTIについて紹介しています。前回までは、CLTIの評価と血行再建について紹介してきました。今回からは創傷治療についてです。
CLTIは基本的に虚血があることが前提の概念ですので血行再建は間違いなく重要ですが、単に血行再建をすれば傷が治る訳ではないので、創傷治療をどう進めていくかという点を理解しておく必要があります。各施設で創傷管理を誰がするかは異なると思いますが、当院では形成外科に管理をお願いしています。
創傷治療は次の8項目に分けて考えていきます。
① 創傷の評価(虚血/ 感染)
② wound bed preparation/デブリ―ドマンと小切断
③血行再建術
④創傷治癒を促進する治療
⑤再建軟組織の切断
⑥免荷装具
⑦リハビリテーション
⑧再発の予防/予防的フットケア
①創傷の評価について。
虚血と感染についてはWIFI分類を用いましたが、原則として血行再建を先行して行ってから、デブリードマンなどの局所治療を行います。もちろん血行再建とデブリードマンを同時に行っても問題ありませんが、創傷治癒過程は血流が改善しないと開始されないので、血行再建を行わずに虚血状態で外科的デブリードマンを行うと、さらに悪化してしまいます。血行再建は創傷治癒が得られるとされるSPP>40㎜Hgを目標に行います。
ただし、感染が広範囲で高度な場合は早期にガス壊疽または敗血症への進行を防ぐために、緊急でデブリ―ドマンまたは大切断を決断しないといけないことがあります。また、明らかな感染のある組織のみを先ず切除し,再建せずに創傷を閉じることのないダメージコントロール手術が施行されます。全身状態が安定した後で軟部組織再建手術を行います。もちろん抗菌薬の投与も必要になります。
そこまで対応を急がなくて良い状況であっても、創傷は必ず自分の目で確認するようにします。創傷の部位と創傷の深さ、さらに深い潰瘍や骨露出の有無を形成外科に伝えると良いと思います(骨露出は骨髄炎の可能性を念頭に置くためです)。
(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)
(編集長)
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CLTI 治療(血行再建・2)
改訂されたガイドラインをもとにCLTIについて紹介しています。
前回から治療について紹介しています。CLTIの血行再建を外科的バイパス手術にするかEVTにするかは、患者リスク、創傷の状態、血管の病変部位を考慮して決めることが推奨されています。
患者リスクでは2年以上の予後が予想される場合や、バイパスに用いる自家静脈がある時は外科的バイパス術を考慮していきます。創傷の状態では、創傷範囲が広い場合は外科的バイパス術を、創傷範囲が小さければEVTを考慮しますが、今回は血管病変部位での考え方です。
ガイドラインでは血管病変部位を以下のように分けています。
①大動脈腸骨動脈 Aorto-iliac(AI)領域
②総大腿動脈 Common femoral artery(CFA)領域
③大腿膝窩動脈 Femoropopliteal(FP)領域
④膝下動脈領 Infrapopliteal(IP)領域
⑤足関節以下 Inframaleoolar(IM)領域
①のAI領域はEVTが第一選択(ClassⅠ)となっています。
②のCFA領域では、孤発性のCFA病変なら外科的に血栓内膜摘除術(Thromboendoarterectomy:TEA)が第一選択(ClassⅠ)ですが、AI領域から連続した病変ならEVT+TEAのハイブリッド(ClassⅠ)となっています。
一方でCFAへのEVTは意外と成績が悪くないというデータもあるので、将来的にもバイパス術を行なわないようなリスクの高い患者さんにはEVTもありかもと記載されています。ちなみに当院でもそれなりに経験がありますが、確かに少なくとも短期~中期では悪くありません。
CLTIは通常,マルチレベルの閉塞性病変に起因して発生しますが、AI領域のみ、CFA領域のみ、そして③のFP病変のみが原因となることはまれで,多くは④のIP病変との複合病変です。特に組織欠損を伴う患者においては,FPとIPを複合病変として考える必要があります。ただし、具体的にどうすると良いかについては確立されたものはまだありません。
そういった背景を踏まえて、③のFP領域では浅大腿動脈(SFA)の閉塞長が長いもの(≧25㎝)は外科的バイパス術、短いもの(≦25㎝)はEVTとなっています(ともにClassⅠ)。外科的バイパス術なら自家静脈をグラフトに用いるのが推奨(ClassⅠ)ですが、人工血管の使用も可(ClassⅡb)となっています。ホントは外科的バイパス術が良い症例でも、自家静脈がないとか患者リスクが高い場合はEVTもあり(ClassⅡa)としています。
④のIP病変については、2年以上の予後が予想される患者で自家静脈グラフトがあれば外科的バイパス術ですが(ClassⅠ)、それができない患者に対してはEVTを考慮する(ClassⅡa)となっています。
IP病変へのEVTの基本は,3本ある膝下動脈のうち解剖学的に最も治療難易度の低い血管を1本再疎通させること(in-line flow to the foot)と言われていますが、標的血管の選択に関する統一した見解はまだありません。複数の膝下動脈へのEVTは有効だと思いますが、ガイドラインではClassⅡbの推奨となっています。
⑤のIM領域については、患肢の予後に強く影響します。しかし切断回避などの効果は示されておらず、現時点では創傷治癒遅延をきたしている場合にEVT を考慮してもよい(Ⅱb)、という位置づけです。当院でもできるだけ血行再建を試みていますが、上手くいくこともありますが、石灰化の強い長期透析患者さんでは残念ながら歯が立たないのが現状です。
結局のところ、CLTIの血行再建は患肢が重症なほど外科的バイパス術が向き、患者リスクが高いほどEVTが望ましいと言えます。しかし、外科的バイパス術は原則として自家静脈グラフトが前提なので、実際にお願いする患者さんは少ないのが当院の現状です。EVTの成績はまだまだと言えますが、だからと言ってCLTIの血行再建をしない訳にはいきません。下肢切断を何とか回避しようと思いながら日々取り組んでいます。
(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)
(編集長)
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CLTI 治療(血行再建・1)
改訂されたガイドラインをもとにCLTIについて紹介しています。前回までは評価および治療方針の決定プロセスについて紹介しました。今回から治療に関してです。
「治療方針の決定と管理は,多診療科・職種により構成された集学的治療チームにより行う」とガイドラインにも明記されていますが、CLTIの診療を担当するのは施設によって異なります。形成外科や循環器内科、血管外科が主体になることが多いと思いますが、水戸済生会では循環器内科がゲートキーパー役となり、形成外科や血管外科と相談しながら診療にあたっています。
当院の場合は、フットケアに関心のある看護師さんを中心にメンバーが集まりましたが、透析患者が多いため透析室のスタッフがチームに入ると対応が格段にスムーズになりました。リハビリも患者さんと一緒にいる時間が長いので、非常に有用な情報を持っています。そして院内のスタッフではないものの装具士さんも参加してくれたので、靴やインソール、義足のことなど実にいろいろなことを教えてもらい、すぐに診療に役立てることができたのは非常に良かったです。
さて、CLTI治療の2本柱は血行再建と創傷管理です。CLTIは虚血があるのが前提なので、血行再建はなにがしかの方法で必要になります。しかし血行再建さえやれば自然に傷が治る訳ではないので、ある程度創傷管理についても知っておき、タイミングを逃さずに形成外科にコンサルトすることが大事です。
その下肢の血行再建ですが、外科的バイパス術もしくは血管内治療(EVT)の2つがあります。どちらを選択するのかについては、施設によって偏ってしまうのはやむを得ないかもしれませんが、ガイドラインでは、患者リスク、創傷の状態、血管の病変部位を考慮して決めることが示されています。
【患者リスクでの考え方】
予後が2年以下と想定されるのであればEVTを、2年以上が想定されるのであれば外科的バイパス術を考慮します。患者リスクは,年齢,ADL,フレイリティ,栄養状態に加え治療抵抗性心血管病,糖尿病,透析,貧血,対側肢の状態から評価していきます。(ClassⅡa)
この他に、バイパスに使用できる自家静脈の有無が、EVTか外科的バイパスかを選択する判断材料になります(バイパスグラフトとしては3.0~3.5mm径の大伏在静脈が望ましい)。(ClassⅡa)
【創傷の状態による考え方】
平均的な患者リスクであれば、創傷範囲が小さい場合はEVTを、創傷範囲が広い場合は外科的バイパス術を考慮します。(ClassⅡa)
次回は血管病変部位による考え方を紹介します。
(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)
(編集長)
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CLTI 方針決定のプロセス(PLANコンセプト)
改訂されたガイドラインをもとにCLTIについて紹介しています。前回は解剖学的重症度を評価するGLASS分類の各項目について紹介しました。今回は治療方針決定についてです。
通常は腸骨動脈領域の病変のみではCLTIに至ることはありませんので、GLASS分類ではFPとIP領域での血管解剖からグレードを決め、さらに下記の表を用いてGLASSステージを決定します。
FP gradeとIP gradeの組み合わせによるGLASS stage
そして、下記の表を用いてGLASSステージとWIFIステージとでEVTを選択するのが良いのか、外科的バイパス手術を選択するのが良いのかを判断していきます。
さらに患者リスク評価を行って、周術期死亡5%以上で2年生存率が50%以下と想定される症例では高リスクと判定され,EVTが選択されます。この患者リスクの危険因子として,高齢,腎機能低下,冠動脈病変,うっ血性心不全,糖尿病,喫煙,脳血管障害,組織欠損,BMI,認知症,ADLがありますが、 さらにフレイルや維持透析がCLTIの重要な危険因子であることが分かっています。
ガイドラインではCLTIの治療方針を決める際には、今まで紹介してきたように下肢の状態(WIFI分類)と血管の状態(GLASS分類)に加えて、患者リスクを評価したうえで方針を決める、PLAN(Patients risk estimation, Limb Staging,ANatomic pattern of disease)コンセプトが提唱されています。
(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)
(編集長)
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