専門研修ブログ

茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。

アルドステロン症の見つけ方 その1

2021.08.30
カテゴリー: 循環器

循環器内科には高血圧の患者さんが多く紹介されてきます。健診で指摘された人、既に治療を開始しているけどコントロールがイマイチな人などですが、そのほとんどが本態性高血圧(EH)です。でも、その中に二次性高血圧の患者さんが隠れていて、これを見つけ出すのは循環器内科医のやりがい(ひそかな楽しみ)の一つです。

 

というのも、二次性高血圧の多くは何種類もの降圧剤を使ってもコントロール不良のことが多く、原因に特異的な治療を行うと非常にコントロールも良くなるし、状況によっては降圧剤を最小限まで減らすことができる場合があるからです。

 

そんな二次性高血圧の中で、原発性アルドステロン症(PA)は高血圧患者のうち3~10%を占めるというデータもあるくらい頻度の高い疾患ですので、その気になればあなたも見つけられます。今回から、そんなPAの見つけ方を紹介していきます。

 

まず、PAとくれば高血圧と低カリウム血症ですね。しかしカリウム値が正常の場合も多く存在するので、カリウム値だけで判断するのは良くないようです。

 

PAのスクリーニングとしては、最初に血漿アルドステロン濃度(PAC)と血漿レニン活性(PRA)を随時採血で調べて、アルドステロンレニン比(ARR=PAC/PRA)を求めます。本来は高血圧患者全例にPAのスクリーニングが望ましいのですが、費用対効果のエビデンスがありません。

 

このため実際のところ、ARRのスクリーニングが推奨されているのは

 

①低カリウム血症合併高血圧

②若年者の高血圧、

③Ⅱ度以上の高血圧

④治療抵抗性高血圧

⑤副腎偶発腫合併例

⑥40歳以下での脳血管障害発症例

⑦耐糖能障害

⑧肥満

⑨睡眠時無呼吸症候群 

 

スクリーニングでARRを調べるときは、体位は臥位でも座位でも構いません。ぜひチェックしてみてください。

             (編集長)

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失敗の正しい対処法

2021.08.23
カテゴリー: 臨床研修ブログ ブログ

初期研修医のころとくらべて専攻医になると、いろいろ仕事を任されたり、カテや内視鏡などの手技もさせてもらえます。初期研修医や看護師さんからも頼りにされます。とは言っても、すぐに指導医クラスのようなレベルになる訳ではないので、病棟の仕事で失敗したり、カテや内視鏡がうまくできずに指導医に交替したりすることがあります。

 

もちろん、だんだん仕事の段取りもうまくなっていくし、手技も交代せずに最後までできるようになりますが、ちょっと思い返してみるといつも同じような間違いや失敗をしているなんてことはないでしょうか?

 

編集長もよく失敗するのですが、原田隆史という方が書いた「失敗の取り扱い方」という文章が参考になったのでシェアします。その原田先生によると、

 

人は失敗を

1.直視しない(向き合わない)

2.後回しにする

3.人のせいにする

4.忘れようとする

 

その結果

5.繰り返す

 

つまり「失敗をなかった」ことにする= 「あれは失敗ではなかった」としてしまうそうです。

 

この裏には、「失敗を認めたくない」、「失敗は悪である」、「失敗は無駄である」と捉えているから、こう考えてしまうのだそうです。失敗の原因と向き合い、分析し、自分を成長させるヒントにするのが正しい失敗の対処法で、無かったことにするのではなく、自分で向き合って、カタを付けるしかないと。

 

手技については比較的わかりやすいですが、やはり失敗の原因を自分なりに分析しないと上手くなりません。ただ、失敗を失敗と認識していないこともよくあります。

 

例えば、

・いつも同じようなパターンで診断を間違える。

・いつも同じオーダーを間違える。

・いつも看護師さんに同じことを言われる。

・いつも似たようなことで患者さんとトラブルになる。

 

あなたは、こんなことを無かったことにしていませんか?

             (編集長)

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【腎臓内科】ドライウェイトの話(3)

2021.08.16
カテゴリー: 腎臓内科

前回の続きです。

 

大事な点としては除水したくてもできない場合があります。低心機能の人(AS,ARを含む)、感染症など状態が悪くて血圧が低い人(血管透過性が亢進してる人)、肝硬変で腹水はあるけど血管内脱水の人、消化管出血で貧血の人などがその例で、血圧が容易に下がってしまいます。

 

慢性期で、も糖尿病や神経変性疾患で自律神経機能低下している人や重症下肢虚血があって透析中の疼痛がひどい人も、同様に調節は難しいです。うっ血性心不全で入院した人に関しては,DWの下方修正で血圧が1段階下がることが予想されるため,血圧が低めの時には降圧薬を一部中止してベースをあげてもらえた方が除水しやすい傾向にあります。

 

透析は状態が悪い患者さんにとっておそらく,みなさんが思っているよりも急変リスクが高く,循環動態としてはダイナミックな治療です。透析開始し沢山の血液が体外に出ることで循環血漿量が減り,本来であればそれを補うようにプラズマリフィリングといって血管内に水分が移動する調節機構が働きますが,上記のような原因があるとうまく働かない,もしくは調節しきれずに血圧が下がってしまいます。

 

そういった場合、除水のスピードをゆっくりにして長い時間をかける(臨時透析を入れて透析時間を増やす)とか、急性期であればCHDFにすることなどで対応します。透析は,途中でサボることができない治療ですが,血圧がどうしても下がってしまう,いわゆる透析困難症と言われるような方にとっては,透析のたびに血圧が下がって怖い思いをしたり,失神したりと,かなりハードな状況となります。辛い思いをさせながらどこまで透析を続けるのか,どこを体の限界と判断するのかという議論に関しては,とても難しい問題です。

(おもち)

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内視鏡の話(3)特殊光について

2021.08.09
カテゴリー: 消化器内科

内視鏡について語る第3弾です。相変わらず、いち消化器内科医の勝手な個人的な意見ですので、その点だけご了承お願いいたします。

 

私が内視鏡医になったとき、既にオリンパス社によるNBIという技術は一般に浸透し始めていました。その後、今から6年ほど前に、当院にフジフィルム社のカメラが入りました(今から見ると、一世代前のモデルになります)。このモデルにはBLIとLCIという二種類の特殊光モードが搭載され、BLIはNBIと類似モードであるので使い方はそこまで困りませんでしたが、LCIについては何が見れるモードなのか、よくわかんないモードというのが正直なところでした。現在では腸上皮仮性や萎縮性胃炎の中の腫瘍性病変の検索に際して力を発揮することがわかっており、ルーチンの検査でも積極的に活用しています。

 

特殊光については、さすがフィルム会社といいますか、フジフィルムの技術はすごいな、画質と併せて一歩抜きんでているな、と内心思っていましたが、現在のオリンパスの最新内視鏡には、AFIとIRIという新しいモードが作られました。特にIRIは大量出血の中でも、出血点の見極めをサポートしてくれ、ESDの時には威力を発揮してくれます。やはり処置系ではオリンパスが優位なのか、などと思います。

 

ただ、特殊光や拡大など、内視鏡の機能が増えてくるとそれをコントロールする操作系統の工夫が必要になる。そこに両社の考え方の違いがまた現れる、と。それはまた別の話とします。

 

他の会社の内視鏡は触ったことがないのでわかりませんが、オリンパスとフジフィルム作っているのは同じ内視鏡ですが、そこに込められる思想は明らかに違います(営業マンの姿勢も違いますが)。

 

それぞれの内視鏡は日本が世界に誇る技術者たちの知恵と技術の結晶であり、この違いを感じれば感じるほど、そこに込められた技術者の想いにオタク心がくすぐられます。二社の最新機種を触り放題な環境、きっとなかなかないですよ。まだ試しでしか使ったことないですが、今後はAIにも両社の違いは大きく表れてくるとおもわれ、技術の進化が楽しみで仕方ありません。

(Nao)

真剣そのもの!

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【腎臓内科】ドライウェイトの話(2)

2021.08.02
カテゴリー: 腎臓内科

DWが適切でないと気づくチャンスは他にも複数あります。

 

透析患者の血圧は体液量に依存(前負荷のコントロールが自分の体ではできないため)するため,高血圧がうっ血を疑うきっかけになることもあります。また,透析後半の血圧上昇は心不全傾向(除水で心機能が改善している)を示唆し,逆に透析後半に急激な血圧低下がある場合にはDWが下げ過ぎているかもしれません。除水のスピードが多い場合など(後からお話します)は血圧が下がってしまうので一概に判断はできませんが,血圧の動きは一つの大事な指標です。

 

他にDWの評価の仕方としては,症状/臨床所見/血圧だけでなく,胸部レントゲンやhANP(透析後採血, 馴染みがなければBNPでみてみるのもありです)やIVC径など総合的にみて評価します。施設によっては生体インピーダンス法という体脂肪率のように水分量を評価できるやり方や,HctやBUNなどの採血結果から計算する仕方もあるようですが,自分が評価し慣れた方法で総合的にみられれば使う必要はないと思います。

 

ついでにですが,心不全の対応をみているとたまに気になることがあります。しばしば見かけるのは心不全+低酸素の方に人に痰の吸引を頻回にしていることです.確かに心不全の時は,肺炎を合併しやすいのもあって痰の量は多いかもしれません。サクションやマスクを外すことによる<苦しい・痛い>の刺激で交感神経が刺激され,心不全症状がさらに悪くなることが予想されるので,気道閉塞がひどい場合以外はなるべく最小限にするのが良いかなと思います。

 

救急外来や病棟で透析準備が整うまで待っている間,低酸素でモニターアラームはなるし,苦しそうで何かやってあげたいという気持ちもあるでしょう。NPPVを必要であれば装着することは勿論ですが,苦しいことによる不穏で忍容性がなかったり,今のご時世だとCOVID-19抗原(-)だけでも確認しないと使いにくかったり(COVID-19感染者にNPPV使用するとそのNPPVは使用後破棄になってしまいます)すぐに使用できない状況な場合もあります。

 

そんな時はキチンとベットでずり落ちている体勢から整えてhead upさせて,酸素を十分投与するだけでも多少安楽なる場合も多々あるので(大体苦しくて不穏で整えても頻回に直さないといけないことになることが多いです),研修医の先生は看護師さんがパパッと何気なくやっていることを一緒にやってみると良いかもしれません。

(おもち)

腎生検は無事終了♪

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