専門研修ブログ
茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
【循環器】上肢動脈疾患 原因疾患その5
上肢動脈疾患の原因の最後です。
クリオグロブリン血症
クリオグロブリンとは、37℃以下で
凝集し、それ以上の温度で溶解する
性質をもつ免疫グロブリンのことです。
このクリオグロブリンによる血栓症および
クリオグロブリンが血管壁に沈着して補体が
活性化されることにより生じる免疫複合体性
血管炎のことをクリオグロブリン血症性血管炎
と呼んでいます。上肢では、レイノー現象、
紫斑・網状皮斑などの皮膚症状、関節痛、
血栓症および血管炎による末梢性神経障害
などを認めます。
塩化ビニル暴露
化学工場などで塩化ビニルに暴露する
作業に従事する人で塩化ビニル中毒に
なることがあります。症状としては
めまい、羞明、吐気、見当識障害等を
来す中毒症状や、急性の高濃度ばく露
では重症の不整脈、虚脱、意識喪失などから
死亡例もあるそうです。上肢の症状と
してはレイノー症状を来すことがあるそうです。
医原性
これは感覚的にわかりますよね。
例えば、橈骨動脈からのアプローチで
心カテをやった時に、血管損傷を
起こしてしまうことがあります。
上腕動脈は高位分岐やUlner loopと
呼ばれるようなバリエーションがいろいろ
あるので注意です。
(Angiologist)
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【循環器】上肢動脈疾患 原因疾患その4
上肢動脈疾患の原因の続きです。
細胞毒性薬・動注用薬剤
細胞毒性薬というと、消毒薬も含めた幅広い
薬剤を指してしまいますが、動注も行われる
抗がん剤は血栓塞栓症を来す代表的なものに
なります。代表的なものとして、殺細胞性
抗がん剤ではプラチナ製剤(シスプラチン)や
タキサン系抗がん剤、分子標的薬では多 くの
薬剤で血栓塞栓症を合併するそうですが、
特に血管新生阻害薬や多標的チロシン
キナーゼ阻害薬が多いようです。
血栓塞栓形成に関する病態については
不明な点が多いものの、作用機序が明らか
である薬剤として血管新生阻害薬が挙げ
られます。血管新生阻害薬のベバシズマブは,
大腸がん、肺がん、乳がんなど多くの治療に
用いられますが、血管内皮細胞を標的として
おり血管内皮障害とともに血栓症を発症します。
静脈血栓塞栓症の発症は11.9%、動脈血栓
塞栓症が3.3%と報告されているそうです。
(参考文献)
向井幹夫 心臓 Vol . 49 No . 8(2017);816-821
糖尿病
糖尿病で足壊疽を来すことは有名ですが、
手指にも壊疽を来すことがあり、血行再建も
難しく、対処困難なことが多くなります。
骨髄性増殖性疾患
多発性骨髄腫に代表される骨髄増殖性
疾患は、疾患そのものが血栓塞栓症を
多く合併することが知られています。
さらに、治療薬である免疫調節薬や
プロテアソーム阻害薬にステロイド剤を併用
す ることで、その頻度がさらに増加するそうです。
(Angiologist)
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【循環器】上肢動脈疾患 原因疾患その3
上肢動脈疾患の原因の続きです。
Buerger病(バージャー病)
閉塞性血栓血管炎とも呼ばれ、四肢動脈に
閉塞性の全層血管炎を来す疾患。下肢に
多いが、上肢にも発症する。原因は不明で、
喫煙は発症に強く関与している。また、
歯周病との関連も示唆されている。
症状は冷感やしびれ感、寒冷暴露時の
レイノー現象を認め、高度になると安静時
疼痛、潰瘍や壊死に至る。治療は禁煙が
きわめて重要
麦角病
ライ麦や小麦などの穀物に寄生する麦角菌
が産生する菌核にアルカロイドが含まれて
いて、これによる中毒症状を麦角病と呼びます。
麦角アルカロイドは血管収縮作用があり、
四肢末梢の循環不全から壊死に至ることも
あります。中世ヨーロッパでは、麦角菌に
汚染されたライ麦で作られたパンを食べる
ことで流行していたそうです。ちなみに、
片頭痛治療に用いられるエルゴタミンは
麦角アルカロイド由来です。
結合組織異常
結合組織異常の代表的な疾患はエーラス
ダンロス症候群(Ehlers-Danlos syndrome)
ですが、血管型エーラスダンロス症候群では
動脈解離や動脈瘤破裂などを来すことが
知られています。当然、上肢動脈にも
起こりえる疾患です。治療は外科的修復
ですが、直達手術では縫った所から
血管が裂けてくるような状況になるため、
血管内治療を選択されることが多いようです。
(Angiologist)
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【循環器】上肢動脈疾患 原因疾患その2
上肢動脈疾患の原因の続きです。
放射線障害
悪性腫瘍に対する放射線治療の影響で
動脈閉塞や瘤形成、破裂、瘻孔形成など、
頻度は低いものの動脈の合併症を来す
ことがあります。特徴としては、照射野に
限局している、他の周辺臓器(皮膚、筋肉
など)にも放射線障害が出ていることが
多いことがあげられます。
塞栓症
上肢動脈に起こる塞栓症の原因は、
心房細動によるものが多いとされています。
腋窩動脈や上腕動脈など、血管径が細く
なる部分や、橈骨動脈と尺骨動脈の
分岐部のような、分岐部にひっかかります。
もともと上肢は虚血に強いところなので、
塞栓症が起こってから、時間が経過して
いても、血栓除去術などの血行再建を
考慮すべきとされています。
筋線維異形成
ESCガイドラインでは「筋線維異形成」と
訳されていますが、本邦では「繊維筋
異形成(FMD)」と呼ぶことが多いです。
特徴的な血管造影所見と病理所見で
診断します。部位は腎動脈が有名ですが、
他にも頸動脈や頭蓋内動脈、腹腔動脈、
腸骨動脈、さらに上肢の動脈にも見られ
ることが報告されています。上肢では
狭窄や閉塞というより動脈瘤を形成して
発見される報告が多いようです。
(Angiologist)
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【循環器】上肢動脈疾患 原因疾患その1
前回は上肢動脈疾患の原因を
紹介しましたが、あまり聞きなれない
疾患も多いので、簡単な解説を
加えていきます。
動脈硬化性
動脈硬化性のもので、多くは腕頭動脈
起始部、鎖骨下動脈や腋窩動脈に生じます。
鎖骨下動脈盗血症候群などの症状を
来します。また後述する予定ですが、
冠動脈バイパス術で内胸動脈を使用する時に
見落とさないように評価が必要です。
胸郭出口症候群(TOS:Thoracic Outlet Syn.)
神経性、静脈性、動脈性に分けられ、
その中でも動脈性TOSは稀とされている。
ちょうど洗髪する時のように上肢を
90度外転、90度外旋、肘関節90度屈曲位
にする(ライトテスト)と動脈が圧迫されて
橈骨動脈が触れなくなり、しびれや手指の
蒼白が生じます。
巨細胞性動脈炎
以前は側頭動脈炎と言われていたもので、
高安病と異なり、高齢者に多い。大型・中型の
動脈に巨細胞を伴う肉芽腫を形成する動脈炎で、
大動脈とその主要分枝、特に外頚動脈を高い
頻度(約2/3)で傷害するが、大動脈とその
分枝部の病変は20%に認められます。
約4割の患者に鎖骨下動脈や腋窩動脈の
狭窄を認めるが、多くは無症状です。
高安動脈炎
若年女性に見られる疾患で、大動脈からの
分枝の近位部に狭窄を来すので、鎖骨下動脈や
腕頭動脈、腎動脈、総腸骨動脈などに狭窄病変を
来すことが多い。上肢の症状としては、橈骨動脈
が蝕知しなくなる(脈なし病)、洗濯物を干す時や
洗髪がつらいという訴えが多い。
(Angiologist)
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【循環器】上肢動脈疾患
前回までは頸動脈、椎骨動脈病変に
ついてシェアしてきましたが、今回から
上肢動脈疾患についてです。
上肢動脈疾患といっても、あまり
ピンとこないかもしれません。
仮に経験するとしても、透析患者さんの
シャントトラブルがほとんどかもしれません。
でも、ここは鑑別疾患を思いつくだけで
差をつけることができる領域ですので、
ざっくり頭にいれておくと、必ずどこかで
役に立ちますよ。
臨床で注意しておきたいのは、やはり
動脈硬化性のもので、多くは腕頭動脈
起始部、鎖骨下動脈や腋窩動脈に生じます。
他の病因を含めて下表に示しますが、
思いのほかたくさんの原因疾患があること
が分かります。
臨床的に疑わしい場合は、ドップラーエコー、
CTアンギオ、MRAにて評価を行いますが、
鎖骨や肋骨の影響で評価しにくいことも多く、
状況によっては血管造影も考慮した方が
良いことは覚えておくといいと思います。
(Angiologist)
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