専門研修ブログ

茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。

【腎臓内科】ドライウェイトの話(1)

2021.07.26
カテゴリー: 腎臓内科

こんにちは,おもちです。

 

以前に水戸済生会の臨床研修ブログに記事を書いた時には初期研修医でしたが,月日が流れるのは早いもので、当院の内科専攻医、腎臓内科医になりました。今回から,少し腎臓内科らしく、透析の特にドライウェイト(DW)の設定について何度かに分けてお話します。

 

透析患者さんは,体の水分調節が自力ではうまくできません。これは,尿が少なくなり水分排泄ができなくなるからです。体の水分バランスを保つために透析で除水を行いますが,ドライウェイト(DW)とは<透析が終わった後,何kgになっていればその人にとってちょうど良い水分量か>を考えて決めた,目標の除水量を決める透析後目標体重のことを指します。例えば,透析前体重が64kgでDWが62kgであれば除水量は64kg-62kg+0.2kg(透析回路のプライミング分)の2.2kg除水すれば透析後に62kgになり,ちょうど良い水分バランスで患者さんが過ごせる、といった具合に使います。

 

DWは適切でないと困ります。DWが少なすぎる=水分量が足りない場合,脱水になっていることや血圧低下が起きやすいことから、脳梗塞や心筋梗塞,シャント閉塞などの血栓症のリスクが上昇します。患者さんも,透析が終わった後,倦怠感が強く出てることで日常に支障が出たり,足が攣ったり,フラフラしてしまったりといった症状として出ます。

 

DWが多すぎる場合、言わずもがな心不全になります。心不全が爆発すると喘鳴や起座呼吸のように誰が見ても一発でわかる症状が出ますが,その前にも夜間に咳嗽が出るようになったり,食欲不振や下痢(腸管浮腫)として症状が出たり,胸の違和感や喉の違和感などGERDや虚血性心疾患と同様な症状を訴える患者さんもいます。透析患者さんとして特有かなと思うのは,シャント肢のむくみとして症状が現れる人もいます。

 

前に経験したのは,虚血性心疾患の既往のある方で,病棟で頻回にミオコールスプレーを使いたいとおっしゃる方がいました。もちろん,虚血性心疾患を疑いましたが胸部違和感があるときに心電図変化はなく,SPECTまでやってもらいましたが特に新規病変を疑う所見はありませんでした。<前にも同じ事があって体重調整してもらった>との患者さんの一言で,DWを下げたところ胸部違和感はすっかり消失しました。胸部違和感は心不全の症状で,ミオコールスプレー=前負荷が軽減された事で一時的に症状も良くなっていたんだなと、結論的には理解できましたが心不全の症状を見つけるの難しいなとつくづく感じた一例でした。

 

心不全は症状が顕著になる前に,なんらかの不調を患者さんは感じている場合が多いと思います.不定愁訴として見逃されてしまうことや,別の理由でDWが下げられないこと(後でお話する)もありますが,爆発する前に見つけてどうにかしてあげたいなと思いますよね。

(おもち)

 

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内視鏡の話(2)上部消化管内視鏡

2021.07.19
カテゴリー: 消化器内科

内視鏡について無責任に語る第2弾です。今回は上部消化管内視鏡についてお話しします。ただし、今回もあくまでいち内視鏡医としての意見を無責任に語っております。当院や当科の公式の見解ではありませんのでご了承いただけますと幸いです。

 

さて、皆さんは上部消化管内視鏡のスコープ選択について重視されることは何でしょうか?

 

一般的に差が出てくるのは、操作部の扱いやすさ、太さ、画質、拡大の有無、送水ラインの有無、特殊光であろうと考えます。

 

当院で採用している経口スコープは両社(オリンパス、フジノン)とも拡大スコープで、送水ラインがあり、太さも10mm程度でほぼ同じです。経鼻スコープも太さはほとんど同じです。差は経口も経鼻も特殊光、画質、操作部の違いあたりになると思います。

 

オリンパスの操作部はしっかりとした感触で、さながらドイツ車に乗っているような堅牢感があります。長きにわたり多くの先生たちに愛されてきた、確実な操作性を新しい機種になっても必ず維持しています。

 

フジノンの内視鏡は操作部が一回り小さく感じられ、手の小さい人でも扱いやすく工夫されているように感じます。また、非常に高画質であることが特徴です。特に経鼻内視鏡の画質には目を見張るものがあり、さすがに現役の経口内視鏡には劣りますが、ひと世代前の経口内視鏡と遜色ない高画質です。フジノンの経鼻内視鏡におけるネガは、拡大がないことと送気送水が経口に比べて劣るくらいで、患者さんの苦痛を考えると拡大内視鏡が必要な精密検査以外のすべての内視鏡検査を経鼻内視鏡で行ってもいいのではないかと思うほどです。

 

私は時に検査の内容に応じて機種を指定したりすることもあります。これも、2社の内視鏡があるからこそできることです。あなたも、両社の内視鏡を使いこなせるようになりませんか?(あれ?内視鏡医、内視鏡を選ばず?)

(Nao)

 

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内視鏡の話(1)

2021.07.12
カテゴリー: 消化器内科

久しぶりに内視鏡ネタでNao先生が記事を書いてくれました。内視鏡医の中でも、いろいろ好みやこだわり、意見が異なるところだと思いますが、そういった違いを分かって、議論できるのが専門医の楽しいところだと編集長は思っています。

 

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今回は疾患についてではなく、内視鏡についてちょっと語ってみたいと思います。

 

水戸済生会では、オリンパス社と富士フィルム社の最新内視鏡を診療で使用しています。具体的にはオリンパス社の拡大経口内視鏡、経鼻内視鏡、十二指腸鏡、拡大下部消化管内視鏡。富士フィルム社の拡大経口内視鏡、経鼻内視鏡、拡大下部消化管内視鏡、コンベックス型超音波内視鏡、ラジアル型超音波内視鏡、ダブルバルーン内視鏡を使用しています。

 

今回は両社の社風の違いをお話ししてみたいと思います。ただし、病院としての意見でも、科の意見でも何でもない、あくまでも一消化器内科の個人的な意見ですので、「そんな感じなのかな」程度に聞いていただければと思います。

 

私のイメージとしては、オリンパスは内視鏡界における絶対的王者としてこれまでの技術をしっかり継承し、目新しい技術に飛びつくよりも、実績を重視しながら堅実なモノづくりをしている。車でいうとトヨタのクラウンのような存在。

 

富士フィルム社は、内視鏡界の黒船としてオリンパスの牙城を崩すべく、とにかく新しい考え方と技術で内視鏡を向上させまくっている。車で言うと、テスラのような存在かもしれません。

 

昔はオリンパスだけあればいい時代もあったと思いますが、今はこの二社のうち、どちらかがあればいいという状態にはなっていません。

 

当院では二社の特徴を実際に使用して感じれます。そして当院では二社の癖をとらえて使いこなせます。弘法筆を選ばず・・・・。

 

あなたもどんな内視鏡も使いこなせる弘法のような内視鏡医になりませんか?自分自身の癖がついてしまう前に、少しでも多くの内視鏡に触れていることはあなたの技術をより向上させます。 

(Nao)

次回に続きます

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ものの見方・・・ローテーションはなぜ必要か?

2021.07.05
カテゴリー: ブログ

編集長が先日読んだある記事にこんなことが書いてありました。

 

「もしあなたが金槌しか持っていなけれ全ての問題は釘に見えるだろう」

(欲求階層説で有名な心理学者アブラハム・マズロー)

 

いきなり何の事だか分からないかもしれませんが、この言葉の意味はこんなことだと思います。

患者さんのことで、何かの問題を解決する必要に迫られた時、

・消化器内科医は消化器内科の観点で

・消化器外科医は消化器外科の見地で
・循環器内科なら循環器内科の視点で

・看護師なら看護師の視点で

解決策を考えます。

 

つまり、人は自分の持っている「最も使いやすく手近な道具」を使って解決しようとする、ということです。

 

「自分が最も使いやすく手近な道具」を使って問題を解決するということは、もちろん悪いことではありません。これは言い換えれば「長所発揮」であり、強みを生かして課題や困難にチャレンジすることは重要です。

 

しかし、当然ながら全ての問題が「自分が最も使いやすく手近な道具」で解決できる訳ではありません。ところが、無意識に「手近な道具」を使って考えているので、そのことに気づくのに時間がかかります。

 

これを日常臨床に当てはめると、患者さんの問題を解決するためにカンファレンスなどで他の診療科の先生と議論をしたり、看護師さんやリハビリ、ケースワーカーなどと患者さんについて意見を出し合う場が必要ということです。

 

内科専門研修プログラムでは、初期研修でローテーションした診療科であっても、改めて一通りローテーションすることが求められます。もちろん初期研修で担当するのと、専門プログラムで主治医として担当するのとでは意味合いが違いますが、内科の中でも自分の専門領域以外の見方を付けておくことは重要ですし、ローテーションは自分が気づかなかったアプローチを気づかせてくれる貴重な機会と言えます。

 

自分が手にしているのは、多くの場合金槌である

 

ということを自覚しておかないと、自分の知っている範囲でしか考えなくなり、こじつけて解釈したりと、手段が目的化してしまう危険性があります。内科専門プログラムでのローテーションを、自分の診療科以外の医師やスタッフに積極的に相談して、幅広い見方を出来るようなる時間と考えてみてはどうでしょうか?

(編集長)

消化器内科外科カンファの一コマ

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