専門研修ブログ

茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。

自信をつけてもらいたい

2021.04.26
カテゴリー: ブログ

前回は専門研修の決め方について取り上げました。ちょっと心構え的な内容でしたが、打算ではなく、関心のあることをやれるのは大事なことだと思います。そして、今回は水戸済生会での専門研修プログラムも、ぜひ知っていただきたいのでご紹介します。

 

水戸済生会では内科の基幹型専門研修プログラムを有しています。その他の診療科は、筑波大学などの専門研修プログラムの協力病院となっています。今年度の内科専門研修プログラムには専攻医1年目(卒後3年目)が3名と専攻医2年目(卒後4年目)が1名在籍しており、この他に、他施設からローテーションしてきた専攻医もいます。まだまだ実績は少ないのですが、当院で内科専門研修を行うメリットはいろいろあるので、もっと知ってもらいたいところです。

 

水戸済生会での内科専門研修の特徴を挙げると、

 

・消化器内科、循環器内科、腎臓内科を中心に、最短でサブスペシャルティ領域の専門医資格(以下、サブスペ専門医)を取得することを目指しています

・消化器内科、循環器内科、腎臓内科では、施設を異動することなく、当院のみの研修でサブスペ専門医試験を受験できます。また、各領域で関連する多くの資格を取得可能です。

・消化器内科、循環器内科、腎臓内科とも、症例数に比べて専攻医数が少ないので、手技を含めて多くの症例を経験できます

 

このため、個々の希望を聞きながら、希望診療科の連動研修(並行研修)を取り入れて、プログラムを組んでいます。

 

ただし、内科領域については、知っておいて欲しいことがあります。

 

内科専門研修プログラムでは、内科全領域の症例経験が求められます。初期研修中に経験した症例も一部含めることができますが、いまさら全領域の症例を経験しなければならないのは、なぜでしょうか?

 

それは、同じ内科領域にもかかわらず、あまりに専門性が高くなってしまった弊害を何とかしたいと、いう危機感が内科学会にあるからです。例えば、心不全患者はよく腎機能が悪くなりますが、ちょっとでも腎機能が悪くなると「心臓は落ち着いているので腎臓内科で見てください」と丸投げしたり、肺炎か心不全かで呼吸器内科と循環器内科で患者を押し付けあったり(注:水戸済生会の話ではありません)。

 

専門領域しか研修していないと、こんな風に患者さんを振られても「○○があるから、うちでは診れません」となってしまいます。

 

内科学会の専門研修プログラムの「理念と使命」にいろいろ書いてありますが、大胆に意訳すると、「得意・不得意があっても、まずは患者さんを診察してみる」。そのうえで「必要に応じて、適切な診療科に相談できる」ようになってもらう。これが内科専門研修の大事な目的だと考えています。

 

さて、ここで勘のいいあなたは疑問を持つかもしれません。水戸済生会ではサブスペ専門医取得を勧めており、矛盾しているのではないか?

 

これは違います。早期にサブスペ専門医取得を勧める理由は、あなたに自信をつけてもらいたいからです。

 

内科領域は幅広く、すべてを深く習得することは並大抵のことではありません。でも、自分の好きな、関心のある領域であれば、たとえ手技がうまくなくとも、治療方針について判断したり、その領域の専門医と議論ができます。他の診療科の先生から相談され、頼りにされます。これは間違いなく大きな自信になります。もっと勉強しようというモチベーションにもなります。

 

当院では、内科専門研修プログラムをとおして、総合診断能力を有するスペシャリストとして、同時に医療を支えるチームの一員として『疾患』のみならず『患者さん』を診ることができる医師を目指して欲しいと考えており、これからもその環境を提供していきます。

 

循環器内科のサイトはこちら

消化器内科のサイトはこちら

腎臓内科のサイトはこちら

 

(編集長)

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◆10分で分かります

1月に開催された「レジナビFairオンライン2021 ~専門研修(内科)プログラム~」 での説明動画を、水戸済生会YouTubeチャンネルでご覧いただけます!

 

水戸済生会の内科専門研修の特徴が10分で分かります。特に、消化器内科・循環器内科・腎臓内科を志望しているあなたは、ぜひご覧ください!

 

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専門研修をどうやって決める?

2021.04.19
カテゴリー: ブログ

 新年度になって、J2のあなたも3年目からの専門研修をどうするか考える時期になりました。J1の時は目の前のことをこなすのに精いっぱいだったかもしれませんが、2年目になると少し余裕ができて、いろいろなことが見えてくるのではないでしょうか?

 もともと志していた診療科に進む人、ローテーションしてみて興味を持った診療科に進む人、実際にローテーションしてみて当初考えていた診療科は不向きだと気付く人、といろいろあります。編集長が研修医らに話すのは、どうして医師になったのか?もともと考えていた診療科をどうして選んだのか?そこを、もう一度考えてみることを勧めています。

 実際のところ、自分や家族の病気がきっかけだったり、ブラックジャックなどの漫画やドラマでカッコいいと思った、など人それぞれです。ただ、医学生のときと違ってローテーションしてみると、自分は不器用で手技は向かないとか、興味なかったけどすごく才能があって面白くなったとか、その診療科のリズムが合う、合わないということが分かります。

 医師という職業はとてもやりがいがありますが、楽な職業ではありません。どの診療科でも、それなりの覚悟は必要です。専門研修プログラムの登録開始までは、まだ時間があります。労働条件とか給料といった条件で比較することも必要ですが、カッコイイという憧れの気持ちもすごく大事にしながら、じっくり考えてみてください。

(編集長)

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◆10分で分かります

1月に開催された「レジナビFairオンライン2021 ~専門研修(内科)プログラム~」 での説明動画を、水戸済生会YouTubeチャンネルでご覧いただけます!

 

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【循環器】大腿穿刺のトラブル その8(外科的修復術)

2021.04.12
カテゴリー: 循環器

前回は仮性動脈瘤への対処法について、前回は①圧迫 ②トロンビン注入について紹介しました。今回は、外科的修復術についてです。

 

外科的修復術は、血管外科の先生にお願いしないとできないので、タイミングによっては頼みにくいことがあるかもしれません。



でも、仮性動脈瘤はすでに出血している状態ですから、迅速な対応が必要です。普段から相談しやすい関係を作っておきましょう。

 

修復術の際は出血点の中枢側と末梢側を遮断してから出血点を修復しますが、血腫が大きすぎると動脈自体の同定が困難なことがあります。また部位的に遮断しにくいこともあるので、この場合カテーテルとのハイブリッドも役に立ちます。

 


上図のように、対側の大腿動脈などから出血しているところにバルーンを進めて、出血点で拡張すれば止血が得られて操作がしやすくなります。ハイブリッドカテ室で透視下に行えば、場所の同定が容易になるのでラクです。

(Angiologist)

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【循環器】大腿穿刺のトラブル その7(仮性動脈瘤の対応)

2021.04.05
カテゴリー: 循環器

今回は仮性動脈瘤への対処法についてです。

 

対処法としては

 1. 圧迫(用手またはプローブ圧迫)

 2. トロンビン注入

 3. 外科的修復術

と主に3つの方法がありますが、いずれにせよ仮性動脈瘤と判明したら早期に対処することが大事なので、院内のリソースを考えて選択します。

 

まず、圧迫法ですが、むやみに圧迫してもダメで出血点をきちんと圧迫することが必要です。用手的に行ってもいいのですが、出血点が良く分からないので、エコープローブを用いた圧迫がおススメです。

 

ポイントはエコーを当てて、カラードプラで出血点を見つけたら、仮性瘤内への血流が無くなるように、そのままエコープローブで20~30分間圧迫を続けます。押さえていると疲れてプローブがずれてくるので、ときどきカラードプラで瘤内に血流が入らず適切に圧迫できているか確認します。20~30分経って、圧迫をやめても瘤内にカラードプラで血流が見えなくなったら、沈子で圧迫してPCI後と同じように4~5時間の安静です。

 

この圧迫法の弱点は、血腫が大きいときちんと圧迫できない場合があることです。そこで患者さんには申し訳ないのですが、血腫を周囲によけるように「散らして」出血点を圧迫しましょう。また、10分程度では止血は得られないので、あなたの他の仕事はあきらめて20~30分圧迫を継続することです。ここで止血しておかないと、もっと多大な時間をとられることになります。小さい仮性動脈瘤なら、圧迫だけで大丈夫なことが多いです。

 

トロンビン注入は、仮性動脈瘤内(つまり血管外のスペース)に体表からトロンビンを注入することで、血栓化を図るものです。手技的に慣れが必要ですが、圧迫時間を短縮できる点で優れています。ただ、血栓化が得られた後の4-5時間の安静を省略できるものではありません。

 

エコーで出血点を同定し、プローブで圧迫して仮性瘤内への血流を遮断した状態にします。ここで体表から仮性瘤内にトロンビン0.3~0.5mlを注入します。小さい血腫であれば狙うのが難しくなりますし、大きな血腫では上手く血栓化が得られないこともあります。トロンビンは血管内投与が禁忌ですから、圧迫をしっかり行って仮性動脈瘤内(=血管外のスペース)に注入しましょう。ちなみにトロンビンは内視鏡室や手術室にありますが、この手技に対する保険適応はありませんのでご注意ください。

(Angiologist)

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◆10分で分かります

1月に開催された「レジナビFairオンライン2021 ~専門研修(内科)プログラム~」 での説明動画を、水戸済生会YouTubeチャンネルでご覧いただけます!

 

水戸済生会の内科専門研修の特徴が10分で分かります。特に、消化器内科・循環器内科・腎臓内科を志望しているあなたは、ぜひご覧ください!

 

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