専門研修ブログ
茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
水戸済生会の消化器内科専門研修2024
水戸済生会総合病院では基幹型の内科専門研修プログラムを有しており、特に腎臓内科、消化器内科、循環器内科は内科専門医を取得後に異動することなく各サブスペシャルティ領域の専門医資格を取得できる施設です。
さらにリウマチ膠原病内科、脳神経内科、血液内科の常勤医も加わって、内科専門研修を行う環境が整ってきました。
今回は消化器内科の専門研修について紹介します。
令和6年度は消化器内科にはスタッフ8名と消化器内科志望の専攻医5名がいます。スタッフのうち2名はJOSLERを無事に終えて内科専門医研修プログラムを終えた2名も含んでいます。また専攻医には院外研修中の人も含んでいますが、やはり若手が多いとフットワークが良くて活気がありますね。
どの病院でも消化器内科はとても忙しい診療科ですが、水戸済生会の消化器内科は以下のような特徴があります。
① 高いQOL
チーム制を実効性のある形で導入しているので、仕事の時はみっちり仕事。休みの日は、完全オフ。仕事と趣味を両立できます。働き方改革には以前から十分対応できているのですが、それを実現するために、上下の隔たりなく仲間として全員で力を合わせて診療しています。
② 幅広い治療手技
内視鏡治療は当然のこと、当院ではエコー下穿刺治療、血管内治療もすべて自科で行います。食道静脈瘤に対するBRTOや憩室出血や腹腔内出血も血管内治療グループと共に治療にあたりますので、消化器内科がカバーすべきほぼすべての治療手技+αを習得できます。
③ 高難度治療
EUS下穿刺治療、胆道鏡(SpyGlass)を積極的に行っており、さらに小腸内視鏡も導入されました。これからの内視鏡医に求められる新しい治療技術も身に着けられます。また、外科との合同手術(LECS)も導入し、協力して治療を行っています。
④ IBD(炎症性腸疾患)診療
IBD診療も積極的に行っております。典型的初発症例の寛解導入は当然ながら、ステロイド抵抗例などの難治例、外科治療を考慮すべき重症例まで対応しています。IBDの基本治療薬である5-ASA製剤の使い分けはもちろん、栄養療法、血球除去療法、免疫抑制剤、生物学的製剤など、ありとあらゆる医療リソースを用いたIBDの幅広い治療戦略を学ぶことができます。
冒頭でも紹介したように専攻医が増えてきていますが、偏りなく内視鏡検査なども経験して、日に日にレベルアップしています。あなたも水戸済生会の消化器内科で一緒にレベルアップを目指しましょう!
ご質問など、どんな小さなことでも遠慮なく、下記の問い合わせフォームからご連絡ください!
(編集長)
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刺激伝導系ペーシング(CSP) その2
前回に続いて刺激伝導系ペーシング(CSP)についてです。
前回はCSPが再び注目されてきた経緯を取り上げましたが、今回はもうちょっとだけ詳しくCPSについて紹介します。
<CPSの定義>
CSP は刺激伝導系(ヒス束,右脚,左脚本幹ならびに左脚枝)を捕捉するペーシング法の総称。ペーシング出力を変更することにより、刺激伝導系ならびに局所心筋の捕捉されるタイミングが異なる結果、QRS波形が出力に依存して変化することが特徴。
<ヒス束ペーシング(HBP)>
HBPは三尖弁輪の心房側または心室側にリードを留置してヒス束を捕捉する方法で、もっとも生理的な興奮伝播様式が得られる。ペーシング出力を変更することによりヒス束の単独捕捉(selective pacing)もしくはヒス束と局所心筋の同時捕捉(non-selective pacing)が観察される。
もっとも生理的なペーシング法だが、リード留置が可能な領域が狭く、一般的に手技難易度は高い。デリバリーカテーテルの改良により手技成功率は92% 前後にまで改善されたが、センシング不全や術後早期・遠隔期のペーシング閾値上昇と、それにともなうリード再留置(7 ~ 11%)が大きな懸念点。
<左脚領域ペーシング(LBBAP)>
LBBAPは,右室中隔の深部にリードを進め、左室中隔心内膜下からペーシングを行う方法で、左脚本幹あるいは左脚枝を捕捉することが目的。
HBP と異なり、かならずしもリード先端で左脚電位は記録されない。LBBAP では右室への興奮伝播が遅延するため、心電図波形で通常V1 誘導のQRS 終末部にR 波を認めるのが特徴。
LBBAP ではリード留置の標的となる領域が広く、心室波高やペーシング閾値がHBPより優れていて、手技成功率は90 ~ 98% 前後と高い。リードを中隔の深部に進めるため、心室中隔穿孔や中隔内血腫,冠動脈中隔枝の損傷といった特有の合併症がある。
(参考文献:2024JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療)
(編集長)
(ガイドラインp20 図6より一部転載)
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刺激伝導系ペーシング(CSP) その1
今回もフォーカスアップデート版が出された循環器学会の不整脈治療ガイドラインからです。今回は刺激伝導系ペーシング(CSP)についてです。
まずCSPという言葉を聞いたことがあるでしょうか?このCSPは不整脈をやっている先生でなければ聞きなれないかもしれません。編集長も詳しくはないので勉強も兼ねて紹介します。
もともと、徐脈に対するペースメーカ治療では右室心尖部ペーシングが用いられてきました。
右室心尖部ペーシング
この右室心尖部ペーシングは心拍数維持効果は得られますが、左室の非同期的収縮を生じるため、ペーシング率の増加にともない、EF 低下や心不全など心血管イベントが増加することが知られています。その後は右室心尖部以外に右室中隔ペーシングが試みられてきましたが、心血管イベントの抑制効果は示されませんでした。
右室中隔ペーシング
動物実験などでは刺激伝導系を直接捕捉するヒス束ペーシング(HBP)が生理的な興奮伝播様式が保持されることが分かっていましたが、デバイスの登場でHBPや左脚領域を直接補足する手技成功率が向上し、CSP の可能性に注目が集まっています。
左脚ペーシング
(右室中隔ペーシングに比べて高位に留置されています)
今回のガイドラインのアップデートでは、徐脈性不整脈に対するCPSは以下のようになっています。
【ClassⅡa】
ペースメーカ適応の房室伝導障害患者で、高頻度の心室ペーシング(> 20%)が予測され、かつ軽度~中等度の左室収縮能低下(LVEF 36 ~ 50%)を認める場合、刺激伝導系ペーシングを考慮する。
【ClassⅡb】
・ペースメーカ適応の房室伝導障害患者で、高頻度の心室ペーシング(> 20%)が予測され、かつ左室収縮能低下を認めない場合、ペーシング誘発性心筋症を回避する目的で、刺激伝導系ペーシングを考慮してもよい。
・房室ブロック作製術を必要とする症例に対して,刺激伝導系ペーシングを考慮してもよい。
当院でもまだ10例未満と少数ですが、左脚領域に心室リードを留置するケースを経験しています。長期経過がどうなるか注目ですね。
(参考文献:2024JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療)
(編集長)
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専門研修の決め方
新年度になって、J2のあなたも3年目からの専門研修をどうするか考える時期になりました。J1の時は目の前のことをこなすのに精いっぱいだったかもしれませんが、2年目になると少し余裕ができて、いろいろなことが見えてくるのではないでしょうか?
水戸済生会で初期研修を終えた先輩たちも多くなってきましたが、もともと志していた診療科に進む人はもちろん多いのですが、ローテーションしてみて今まで関心のなかった診療科の魅力を
発見した人もいれば、不向きだと気付いた人、といろいろありました。
以前に調べてみたところ、初期研修開始時の希望診療科と3年目で選択した専門診療科が同じだったのは約4割でした。つまり、学生の頃に考えていた診療科はあるけれど、半分以上の人が初期研修中に悩んで悩んで診療科を決めているという感じなのだと思います。
編集長が研修医らに話すのは、どうして医師になったのか?もともと考えていた診療科をどうして選んだのか?そこを、もう一度考えてみることを勧めています。
実際のところ、自分や家族の病気がきっかけだったり、ブラックジャックなどの漫画やドラマでカッコいいと思った、など人それぞれです。
医師という職業はとてもやりがいがありますが、楽な職業ではありません。どの診療科でも、それなりの覚悟は必要です。
専門研修プログラムの登録開始までは、まだ時間があります。労働条件とか給料といった条件で比較することも必要ですが、カッコイイという憧れの気持ちもすごく大事にしながら、じっくり考えてみてください。
(編集長)
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腎機能障害がある時の抗凝固療法は?
今年フォーカスアップデート版が出された循環器学会の不整脈治療ガイドラインからです。今回は腎機能障害がある高齢心房細動患者に対する抗凝固療法について紹介します。
心房細動のため抗凝固療法を始めようと思ったけど、腎機能障害があるので導入をどうするか悩む症例にしばしば遭遇します。中等度~重度腎機能障害患者に対するDOAC のリアルワールドデータが集積されてきたこともあり、今回のアップデートでは以下のような推奨になっています。
【ClassⅠ】
30 mL/ 分≦ CCr <50 mL/ 分の軽度~中等度腎機能障害患者に対して
抗凝固療法を行う(DOAC を優先する)
【ClassⅡa】
15 mL/ 分≦ CCr < 30 mL/ 分の重度腎機能障害患者に対して
ダビガトランを除くDOACを用いた抗凝固療法を考慮する
(ダビガトランはCCr<30ml/分は禁忌となっている。それ以外のDOACはCCr<15ml/分で禁忌)
【ClassⅡb】
CCr < 30 mL/ 分かつ非透析導入の末期腎機能障害患者に対して
ワルファリンを用いた抗凝固療法施行を考慮してもよい
【ClassⅢ】
維持透析患者に対してワルファリンを用いることは推奨されない
維持透析患者ではDOAC は禁忌であり、ワルファリンについても心房細動アブレーション周術期,機械弁症例や脳梗塞二次予防など,例外的に使用せざるを得ない場合を除き原則禁忌となっています。
ここでの注意点はCCrを用いていることです。採血検査で出てくるeGFRとは異なるので、勘違いしないようにしてください。
CCrと言っても実際はeCCrを用いることになりますが、これはネット上で計算ツールがすぐに見つかるので利用してみて下さい。
(参考文献:2024JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療)
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