専門研修ブログ
茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
急性膵炎のはなし1 概要
今回から何回かに分けて急性膵炎についてお話ししたいと思います。
ブログにはちょっと書けない理由なのですが、僕はERCPと膵炎に対しては強い想いをもって消化器内科医になりました。専門医になってからも、ある年末に忘年会で酒をたまたま飲んだ比較的若い男性が重症膵炎になり、全力で治療をしたものの、結局残念な結果になった経験があります。とは言え、膵炎は良性疾患です。一人でも多くの人の命をつなぎとめることができるように、この連載をきっかけに皆さんにも勉強していただけたらと思います。
まず、膵炎はいったいなぜ起こるのでしょうか?
膵臓から分泌されるトリプシンという、大きく言うとタンパク分解酵素があります。正常状態ではこのトリプシンが食物を分解するわけですが、膵内においてはトリプシノーゲンという非活性状態で存在します。トリプシノーゲンは膵臓から分泌されると、十二指腸のエンテロキナーゼという酵素と反応してトリプシンに変化し上記の通りのタンパク分解酵素として働きます。
しかし、これが「何らかの原因によって」膵臓内で活性化されトリプシンになると膵の自己消化が始まり、上記サイクルがどんどん引き起こされて重症化していく。膵炎の発生機序はざっくり上記のような機序で引き起こされると考えられていますが、細かな部分についてはわかっていないことが多いです。
これがERCP後膵炎を完全に制御できないことにもつながってます。一発でカニュレーションが決まって、5分そこそこでドレナージ治療を終えた患者さんが膵炎になったりするんですよね。かと思えば、30分以上時間かけた患者さんがなんともなかったりする…。
閑話休題、膵炎の発生機序は上記の通り、大まかな部分しかわかっていませんが、その発生にかかわる「何らかの原因」にはどんなものがあるでしょうか?
日本においてはものすごくざっくりいうと、アルコール:胆石:その他が1:1:1の割合です。急性期の治療が変わる胆石性については必ず確認する必要がありますが、急性期治療を終えた後の方針が変わる、アルコール性、薬剤性、高脂血症なども当然確認する必要があります。また、絶対外してはいけないのが腫瘍性です。原因のわからない膵炎については、全身状態などにもよりますが、超音波内視鏡を含めたあらゆる手段を用いて原因検索することが求められます。
今日長々書いた内容で伝えたかった事、「膵炎の治療においては、急性期治療とともに原因の検索に最大限務めること」
(Nao)
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◆水戸済生会での専門研修に関するご質問はこちらへ!
どんなことでも問い合わせフォームからご質問ください。
また、各診療科の専攻医にZoomで質問できますので、その旨もお知らせください!
◆市中病院で循環器専門医を目指しているなら
水戸済生会循環器内科のサイトを是非ご覧ください!
PCIだけでなく、Ablation、TAVIなど、当院で行っている幅広い循環器診療を紹介している充実したサイトです。各種の資格取得にも有利です!
是非ご覧ください!
◆10分で分かります!
1月に開催された「レジナビFairオンライン2021 ~専門研修(内科)プログラム~」 での説明動画を、水戸済生会YouTubeチャンネルでご覧いただけます!
水戸済生会の内科専門研修の特徴が10分で分かります。特に、消化器内科・循環器内科・腎臓内科を志望しているあなたは、ぜひご覧ください!
今回は当院の専門研修の概要について紹介します。
当院は472床の総合病院で、救命救急センター(3次救急)を有しており、ドクターカーやドクターヘリの基地病院でもあります。また、茨城県立こども病院と隣接しているため、茨城県の県央・県北地区の総合周産期母子医療センターとしてハイリスク分娩などを一手に引き受けています。
専門研修は内科で基幹型プログラムを有していますが、それ以外の診療科は筑波大学をはじめとした専門研修プログラムの協力施設として、専攻医を受け入れています(下記参照)。
初期研修医の定員は10名で、この数年はフルマッチが続いており、このうち当院の内科専門研修プログラムに進むのは毎年1~2名です。最近では他の施設で初期研修を行った後に当院での専門研修プログラムを選択してくれる人もいて、いろいろと活気づいています。
当院で初期研修をした研修医で、産婦人科や消化器外科など内科以外の診療科を選択した人も、手術件数など症例数が確保できるため、専攻医として半年~1年程度はそのまま当院で研修を継続するケースも多くあります。
当院の採用サイトに専攻医のページがありますが、内科以外の各診療科の情報も充実させていく予定です。先日は消化器外科のページを
新たに作りましたので、ぜひご覧ください。
(編集長)
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内視鏡医はAIに仕事を奪われてしまうのか?
今、医療業界の話題の中心にいるといっても過言ではない、AIにロボット。ご多分に漏れず内視鏡界隈でも、AIや内視鏡ロボットが内視鏡医の仕事を奪うのではないか、と噂されています。
私はといえば、米国の大学でロボットが豚に対して人の助けを得ることなく手術を完遂したとの報道に正直衝撃を受けているところではあります。「手術」だけはまだまだロボットの入る余地はないと信じていたのに。とはいえ現実的に当面は、内視鏡医はいかにうまくAIと付き合うか、という問題になるかとは思いますが、いずれ医者という仕事もロボットに置き換わる日が来るのでしょうか?
現状での内視鏡関連のAIはどうなっているかというと、その役割は大きく分けて、「検出支援」と「鑑別支援」の2つにわけられます。
検出支援とは
病変の可能性がある部位をマークで示し、音で合図してくれる。癌、腺腫、過形成などの区別は付けず、とりあえず「非正常粘膜」と思われる部位を拾い上げていくモード。これまで試した機種(3機種試しました)は現状では、人間と同じく「見て」判断しているため、色調が周囲の粘膜と差異が少ないと検出感度が非常におちる印象です。
今のところ「自分の目よりすごくいい!」という感じはなく、マークと音が目障り、耳障りといったところです。しかも、治療のためポリープを正面視し続けるともう・・・。
鑑別支援とは
見つけた病変が、癌なのか、腺腫なのかなどを判別してくれます。特殊染色や超高倍率が必要な機種から、特殊光と弱拡大だけでいい機種など機種により差はありますが、個人的にはこの鑑別支援が内視鏡医にとってはとても役立つ気がしています。
将来的には異型の程度やがんの深達度を判断してくれるようになるのではないでしょうか。食道病変なんかは異型度や深達度、病変の範囲まで診断してくれちゃったりする日が来たらほんとに頼もしい!特殊光の技術が進んで、AIと組み合わせると深部血管の位置や粘膜下層の繊維化の程度もわかるようになり、一番最初の局注や粘膜切開で大出血を引き当てるなんて言う悲しいことはなくなる日がくるかもしれない!
そんなことを夢見ています。というわけで、内視鏡医にとっても悪い話ばかりではないはずです。
(Nao)
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胃静脈瘤の治療・BRTO(4)
今回はBRTOで用いる塞栓材についてです。
用いられる主な塞栓材には以下のようなものがあります。
・オルダミン(EOI:Ethanolamine oleate with iopamidol)
・NBCA(n-butyl-2-cyanoacrylate)
・金属コイル
・50%ブドウ糖
・エタノール
オルダミン
BRTOで主に使われる塞栓材です。10mlのバイアルに入っているのですが、透視では見えないので10mlのヨード造影剤と混ぜて使用します。胃静脈瘤までの距離が遠い時などはCO2とのフォームを作ると粘稠度が下がり使いやすくなります。
薬剤を停滞させておく必要があるので、翌日までバルーンを閉塞したまま帰室し、翌日に血栓化を造影で確認します。オルダミンの機序は、血管内皮を傷害して血栓閉塞を来すのですが、溶血による腎障害を予防するために使用する直前にハプトグロビンの点滴投与が必要です。
NBCA
TAEなどでも使われている塞栓材ですが、オルダミンのように溶血を来さないので血液製剤であるハプトグロビンを使用する必要がないのがメリットです。ただし、粘稠度が高いので胃静脈瘤までの距離がある時は使いにくいデメリットがあります。
金属コイル
静脈瘤自体を塞栓するために用いるのではなく、側副路の塞栓に用いられたり、バルーン閉塞の代わりに排血路を閉塞させるために用います。
50%ブドウ糖・エタノール
比較的小さい側副路を塞栓させるために用いられます(が、編集長はまだ使ったことがありません)。
症例を提示します。
孤発性の胃静脈瘤でBRTOを施行。右大腿静脈からアプローチしてAsato型のシースを左腎静脈にエンゲージ。そこからGRシャント内にバルーン付きカテーテル(Candis®)を進めてBRTVを行ったところ、胃静脈瘤ははっきり造影されず、傍食道静脈に続く側副路を認めました(廣田分類Grade3)。
矢印が傍食道静脈に続く側副路
この造影では胃静脈瘤本体は
はっきり造影されていません
側副路のフローが速くStepwise injectionでは塞栓不可と判断しましたが、この側副路を越えてバルーンカテーテルを進めることができずDowngrade techniqueも使えませんでした。そのため、この側副路側にマイクロカテーテルを進めてコイル+NBCAで塞栓を行ったところ静脈瘤本体が造影されるようになりました。
矢印はコイルとNBCAで塞栓した側副路
矢頭は胃静脈瘤本体
この状態からオルダミンで塞栓を行い終了しています。
矢印はコイルとNBCAで塞栓した側副路
矢頭はオルダミンが停滞した胃静脈瘤本体
術後のCTでは胃静脈瘤は造影されなくなりました。
左が術前、右が術後
矢印は胃静脈瘤本体(術後は造影されなくなっている)
術前の矢頭はGRシャント、術後の矢頭はコイル
4回にわたってBRTOを紹介してきましたが、孤発性胃静脈瘤を見つけた時は造影CTでGRシャントを探して、あればBRTOを考えてみてください。
(編集長)
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