専門研修ブログ
茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
【循環器】アルドステロン症の見つけ方 その11(ガイドラインの変更点3)
原発性アルドステロン症(PA)の診療ガイドライン2021年から変更点を紹介していますが、今回はデキサメタゾン抑制試験についてです。
実はPAには同時にコルチゾールの自律分泌を合併する場合があることが知られています。頻度は評価法によって異なるそうですが、PA全体で3.9~77.6%、片側性のPAでは23.4%と報告されています。
アルドステロンとコルチゾールの同時産生腫瘍はアルドステロン単独を産生する腫瘍と比較して
・腫瘍径が大きい
・耐糖能異常
・骨粗しょう症
・蛋白尿
・心血管イベントを合併する頻度が多い
といった特徴があるそうです。
そして、コルチゾールの同時産生があると、副腎静脈サンプリングの解釈に影響が出たり、副腎摘出後のステロイド補充が必要になることがあります。さらに同時産生腫瘍では、アルドステロンとコルチゾールの過剰分泌が必ずしも同側とは限らないことがあるため、局在診断が重要となります。
このためガイドラインでは
CTで腫瘍径が1㎝以上の明確な副腎腫瘍を認める時は、1㎎デキサメサゾン抑制試験を実施して、コルチゾールの自立分泌の有無を確認する
ことを推奨しています。
コルチゾールの産生過剰の判定基準は
1㎎デキサメサゾン負荷後のコルチゾール≧1.8μg/dlで
としています。
(編集長)
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【循環器】アルドステロン症の見つけ方 その10(ガイドラインの変更点2)
前回は原発性アルドステロン症(PA)の診療ガイドライン2021年改訂から測定法の変更に伴ってスクリーニングのカットオフが変更されたことを紹介しました。
新しい測定法では十分なカットオフ値の検証ができていないので、暫定的陽性という判断をして、アルドステロンの自律的過剰産生を証明するための機能検査を行います。
機能検査はカプトプリル検査がおススメですが、そのカットオフ値も変更されています。
カプトプリル50㎎を内服して60分もしくは90分後に採血をします。この時の採血で
PAC(CLEIA法)/PRA ≧ 200 で陽性と判定します。
スクリーニングの基準と同様に、ARR100~200も境界域として暫定的陽性と判定します。
PRAではなく、ARC(活性型レニン濃度)を用いる場合は
PAC(CLEIA法)/ ARC ≧ 40 で陽性と判定します。
こちらも 20~40を境界域として暫定的陽性と判定します。
暫定的陽性はちょっとわかりにくいかもしれません。実際の臨床では確かに微妙な症例に遭遇することがあります。現状では面倒でも内分泌専門医に相談するのが良いでしょう。
(編集長)
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【循環器】アルドステロン症の見つけ方 その9(2021ガイドラインの変更点)
原発性アルドステロン症(PA)の診療ガイドライン2021年改訂版が日本内分泌学会からこの秋にリリースされました。
この改訂ではアルドステロンの測定法も、レニンの測定法にも変更点があり、これに伴ってカットオフ値も変更されています。今回はちょっと分かりにくいこれらの点を整理します。
このブログの シリーズ その2 で紹介しましたが、まず従来のPAのスクリーニングは
・血漿アルドステロン濃度(PAC)
・血漿レニン活性(PRA)
上記2つを測定して
・アルドステロンレニン比(ARR=PAC/PRA) を求めます。
従来のカットオフ値は
PACの単位がpg/mlであれば、ARR>200(単位がng/dlであれば、ARR>20)
さらに、ARRに加えてPAC>120pg/ml (12ng/dl)の併用が推奨となっていました。
ところが、従来用いられていたRIA法は測定キットが供給停止になったため、CLEIA法によるPACに統一されました(単位はpg/ml)。
CIEIA法では、以前のRIA法よりも値が低くなります。理由として、より特異的なモノクローナル抗体を用いているため、アルドステロン以外のステロイドなどとの交差が極めて低いためだそうです。
このため新しいスクリーニングのカットオフ値は
ARR≧200 かつ PAC≧60pg/ml に変更
さらに、CIEIA法に切り替わったばかりなので、至適カットオフ値が確立するまで
ARR 100~200も境界域として
ARRが100~200 かつ PAC≧60pg/mlも暫定的陽性
としています。
もう一つ、レニンの測定も血漿レニン活性(PRA)と共に、活性型レニン濃度(ARC)も採用されています。
ARCはPRAと測定原理が異なるので正確な換算は困難だそうですが、便宜上
CLEIA法によるPAC/ARC≧40 を陽性と判定
CLEIA法によるPAC/ARCが20~40 かつ PAC≧60pg/mlも暫定的陽性
としています。
当院で検査をオーダーすると、結果の画面には・・・
・アルドステロンCLEIA
・アルドステロンRIA相当値(→すでに廃止されたので換算値)
・レニン活性(→PRAのこと)
・レニン定量CLEIA(→ARCのこと)
・アルドステロン/レニン活性比(→CLEIA法によるPAC/PRAのこと)
・アルドステロン/活性型レニン定量値比(→CLEIA法によるPAC/ARCのこと)
というように、いくつも記載してあってかなり迷いますが、結局のところ
・アルドステロンCLEIA ≧60
・アルドステロン/レニン活性比 ≧200
(もしくは、アルドステロン/活性型レニン定量値比≧40)
が当てはまっているかを見ればよいことになります。
ちなみに、前回は2016年にコンセンサスステートメントが出されていますが、それから5年経過経過しての改訂でした。今回は日本からのエビデンスも多く採用されていますが、JPAS・JRASという本邦の大規模PAレジストリが大きく関わっています。
実はこのJPAS・JRASに水戸済生会も参加しており、編集長も普段は交流のない内分泌の先生方との議論に参加させてもらい、非常に勉強になりました。(注:もちろんガイドライン改訂には関わっていません)
(編集長)
これはアブレーション中の一コマ
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【循環器】アルドステロン症の見つけ方 その8(治療について)
前回は副腎静脈サンプリング(AVS)の評価方法について紹介しました。
コルチゾール値で適切にサンプリングされているのかを評価したうえで、片側性病変と診断されたら手術を考慮します。両側性の場合はアルドステロン拮抗薬(スピロノラクトンやエプレレノン、エサキセレノン)を中心にすえて内服薬を継続します。手術は、腹腔鏡下の片側副腎全摘術になります。最近は腹腔鏡手術も単孔式で行われているようです。
どこに紹介したらよいのかは、その地域ごとに異なると思いますが。泌尿器科が手術を行っていることが多いようですが、大学によっては内分泌外科が行っているところもあります。ちなみに当院では泌尿器科で行っています。
なお、編集長はまだ見たことがありませんが、症例の多い病院ではAVSも副腎内の分葉内静脈支脈ごとの超選択的にサンプリングを行う選択的副腎分葉内支脈採血(Segment-selective adrenal tributary sampling: S-ATS)を行って、片側副腎の部分切除で済ませるということもできるそうです。
こうすることで約10%程度にみられる両側性のアルドステロン産生腫瘍(APA)においても外科手術が可能になるとともに、対側に病変を生じた場合の副腎不全を防止できる利点があるそうです。
術後はアルドステロン拮抗薬を中止して大丈夫ですが、経験的に全例で降圧剤が全く不要になるわけではありません。血圧を見ながら降圧剤を減量していきます。
さて、アルドステロン症に関して紹介してきましたが、実は今年(2021年)にガイドラインが改定されています。次回はガイドラインの改訂点を紹介していきます。
(編集長)
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