
専門研修ブログ
茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
内科系(非手術)入院患者のVTE予防
前回までは妊娠中および分娩後のVTE予防についてガイドラインからシェアしましたが、今回は手術を行わない内科系疾患入院患者のVTE予防についてです。
ちょっと考えてみて欲しいのですが、内科入院の患者さんは、高齢でベッド上で動けない(動かない)方が多く、CVが入っていたり、食事の十分摂取できなかったり、担癌患者だったり、発熱していたりと、VTEのリスク因子を非常に多く持っている人ばかりです。
実際のところ外科系と比較して、内科系(非手術)入院ではVTE予防管理の実施率が外科の59.2%に比べ7.3%と低く、PTE発症率が高かった(0.119% vs. 0.095%)ことが報告されていて、周術期だけでなく手術を行わない内科系疾患の入院患者でも、VTEの予防策の重要性が示されています。
一方で、内科系疾患といっても脳出血や出血性胃潰瘍、悪性腫瘍など出血に注意しなければいけない患者も含まれており、周術期のように分かりやすい予防策はガイドラインでも示されていません。ですが、ガイドラインでは原則的なところを推奨しているので、一度は目を通しておくと良いと思います。
まとめると、
・早期離床:動ける患者さんは、どんどん動いてもらう
・VTEのリスクが多く重なっている場合、出血の問題がないのであれば抗凝固療法を考慮
・弾性ストッキングはエビデンスに乏しく、やるならフットポンプ
・ICUなどの重症患者では抗凝固療法かフットポンプ。ただし両者の併用は推奨されない
ちなみに、内科系疾患の患者でも、VTEの高リスク患者では退院後(特に6週間以内)もVTE発症リスクが高まると報告されているそうです。一律には推奨されていませんが、40日間程度の予防的抗凝固療法により,そのリスクを抑制できるというデータも紹介されています。
(出典:2025 年改訂版 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン)
(編集長)
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分娩後のVTE予防
前回は妊娠中VTEについてガイドラインからシェアしましたが、今回は分娩後の産褥期でのVTE予防についてです。
ご存じかもしれませんが、妊娠中だけでなく分娩後の産褥期(一般的には分娩から6週間を指します)もVTEのリスクが高く、妊娠中と同様の注意が必要とされています。特に分娩後数日間はリスクが高く、帝王切開後はさらに上昇します。患者さんも動けるようになるので、医療者側も油断しがちな時期です。患者側はもちろんですが、医療者側への啓発も重要になります。
妊娠中と同様にVTE予防の基本は理学的予防法(下肢の運動,弾性ストッキング,間欠的空気圧迫法)で、さらにハイリスクの産褥婦に対して抗凝固療法を上乗せすることになります。
【第1群 分娩後のVTE高リスク妊娠】
• 以下の条件にあてはまる女性は、分娩後の抗凝固療法あるいは抗凝固療法と間欠的空気圧迫法との併用を行う
1)VTEの既往
2)妊娠中にVTE予防のために抗凝固療法が行われている
【第2群 分娩後のVTE中間リスク】
• 以下の条件にあてはまる女性は分娩後の抗凝固療法あるいは間欠的空気圧迫法を行う
1)VTEの既往はないが血栓性素因があり,第3群に示すリスク因子が存在
2)帝王切開分娩で第3群に示すリスク因子が2つ以上存在
3)帝王切開分娩でVTE既往はないが血栓性素因がある
4)母体に下記の疾患(状態)が存在
分娩前BMI 35kg/m2以上、心疾患、肺疾患、SLE(免疫抑制剤の使用中)、悪性腫瘍、
炎症性腸疾患、炎症性多発性関節症、四肢麻痺・片麻痺等、ネフローゼ症候群、
鎌状赤血球症(日本人にはまれ)
【第3群 分娩後のVTE低リスク(リスク因子がない妊娠よりも危険性が高い)】
• 以下の条件にあてはまる女性は分娩後の抗凝固療法あるいは間欠的空気圧迫法を検討する
1)帝王切開分娩で下記のリスク因子が1つ存在
2)VTE既往はないが血栓性素因がある
3)下記のリスク因子が2つ以上存在
35歳以上、3回以上経産婦、分娩前BMI 25~ 35、喫煙、分娩前安静臥床、
表在性静脈瘤が顕著、全身性感染症、第1度近親者にVTE既往歴、産褥期の外科手術、
妊娠高血圧腎症、遷延分娩、分娩時出血多量(輸血を必要とする程度)
(出典:2025 年改訂版 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン)
(編集長)
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妊娠中のVTE予防
妊娠中の女性は、VTEのリスクが4~5倍増加し、産褥期は20倍に増加することが知られています。
当院には総合周産期母子医療センターがあるため、妊娠中から産褥期、さらにその後のVTE管理を行う機会が多くあります。どのような妊婦さんがハイリスクで、予防策を行うべきなのかは知っておくべき内容ですので、今回は妊娠中のVTE予防についてシェアします。
妊娠中のVTE予防の基本は理学的予防法(下肢の運動,弾性ストッキング,間欠的空気圧迫法)になります。さらにハイリスク妊婦に対して抗凝固療法を上乗せすることになります。
妊娠中のVTEのリスク分類と抗凝固療法の推奨については以下のようになりますが、第1群(高リスク群)には抗凝固療法を行い、第2群(中間リスク群)と第3群(低リスク群)に該当する症例の妊娠期間中の手術後には予防的抗凝固療法を行うかたちになります。
【第1群 妊娠中のVTE高リスク妊娠】
• 以下の条件にあてはまる女性は妊娠中の抗凝固療法を行う
1)2回以上のVTE既往
2)1回のVTE既往,かつ以下のいずれかがあてはまる
a)血栓性素因がある
b)既往VTEはi)妊娠中,ii)エストロゲン服用中のいずれかで発症した
c)既往VTEは安静・脱水・手術などの一時的なリスク因子がなく発症した
d)第1度近親者にVTE既往がある
3)妊娠成立前よりVTE治療(予防)のための抗凝固療法が行われている
【第2群 妊娠中のVTE中間リスク】
• 以下の条件にあてはまる女性は妊娠中の抗凝固療法を検討する
• 以下の条件にあてはまる女性は妊娠中手術後には抗凝固療法を行う
1)1回のVTE既往があり,それが安静・脱水・手術など一時的リスク因子による
2)VTE既往がないが以下の条件にあてはまる
a)血栓性素因がある
b)妊娠期間中に以下の疾患(状態)が存在
心疾患,肺疾患,SLE(免疫抑制剤の使用中),悪性腫瘍,炎症性腸疾患,炎症性多発性関節症,
四肢麻痺,片麻痺等,ネフローゼ症候群,鎌状赤血球症(日本人にはまれ)
【第3群 妊娠中のVTE低リスク(リスク因子がない妊娠よりも危険性が高い)】
• 以下の因子を3つ以上有する女性は妊娠中の抗凝固療法を検討する
• 以下の因子を1つから2つ有する女性は妊娠中のVTE発症に留意する
VTE既往がないが以下の因子を有する
35歳以上,妊娠前BMI 25kg/m2以上,喫煙,第1度近親者にVTE既往歴,安静臥床,
長期間の旅行,脱水,表在性静脈瘤が顕著,全身感染症,妊娠中の手術,卵巣過剰刺激症候群,]
妊娠悪阻,多胎妊娠,妊娠高血圧腎症
(出典:2025 年改訂版 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン)
(編集長)
Impellaのハンズオン
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内科専門医試験の結果が発表されました
先週のことですが、内科専門医試験の結果が発表されました。
当院のプログラムからだけでなく、筑波大学などの他院のプログラムの先生も含まれていますが、新しく3名の内科専門医が誕生しました。
忙しい臨床のなかですべての分野の勉強をするの大変だったと思いますが、みんな優秀な成績だったようです(受験者には各分野の得点が開示されます)。試験発表後で、一息ついたばかりですが、これからはサブスぺ専門医資格(専門医機構が定める2階部分の資格)の受験が待っていますので、引き続き頑張って欲しいと思います。
そもそも、なぜサブスぺ資格が大事なのかというと、例えば循環器内科なら、循環器専門医を取得しないとCVIT専門医や不整脈専門医などの関連資格が取得できませんし、新しいデバイスの術者要件にも関わってきますので、いくら腕が良くても新しいデバイスが使えません。つまり、循環器に限らず、サブスぺ専門医を持っていないと、いくら経験や技術があってもその次の資格が取得できないようになっているのです。
こんな時に水戸済生会の内科専門研修は有利です。
ご紹介した循環器内科以外にも、消化器内科、腎臓内科は学会認定施設になっていますし、リウマチ膠原病内科もリウマチ学会教育施設になっています。つまり水戸済生会では、大学の医局に所属することなく内科専門医からサブスぺ専門医資格を取得できる施設なのです。
施設を異動することもなく、患者さんを長く診ることができるのは、内科医を目指すあなたにとって大きな魅力だと思いませんか?
もし、あなたがちょっとでも興味を持ったのであれば、ぜひ病院見学にお越しください。指導医だけでなく学年の近い専攻医らから直接話を聞きだして、あなたの不安を解消してください!
(編集長)
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