
専門研修ブログ
茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
DVTの時にはリハビリはやって良い?
日本循環器学会では各種のガイドラインを出していますが、学会のサイトから無料でダウンロードできるという太っ腹な対応をしてくれているので、あなたも是非利用することをお勧めします。
この春も2025 年改訂版としていくつかのガイドラインがリリースされていますが、その中でも「肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン」は大きく改定されたガイドラインの一つです。
今回は、これまで発行されてきた「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン」、「肺高血圧症治療ガイドライン」そして「慢性肺動脈血栓塞栓症に対するballoon pulmonary angioplastyの適応と実施法に関するステートント」の3 つを統合して新たに改訂されています。編集長もようやく新しいガイドラインを拾い読みし始めたところですので、役立ちそうなところを順不同で紹介していきます。
あなたは、担当している入院中の患者さんにDVTがあることが分かると、看護師さんやリハビリのスタッフから「トイレまで歩かせて大丈夫ですか?」とか「リハビリはベッド上にしておきました」と言われた経験はありませんか?ホントにその対応で良いのでしょうか?
今回のガイドラインでは、「DVTの理学療法(推奨表15)」として、この点を明確にしています。
推奨表15 DVT の理学療法に関する推奨とエビデンスレベル
従来DVTの急性期では離床や歩行などによって血栓を遊離させてしまい、肺血栓塞栓症(PTE)を発症する危険性があると考えられていました。このためベッド上安静が行われてきたという経緯があります。しかし,適切な抗凝固療法を行えば、早期に離床、歩行を行っても、新規のPTE発症は増加しないことやDVTの血栓は伸展しないこと,さらに下肢疼痛が改善することが報告されています。
つまり抗凝固療法下で浮遊血栓を伴わない、下肢疼痛が強くない、全身状態が安定しているなどの条件がそろえば、ベッド上安静ではなく早期離床、歩行することが推奨されます。
一方で抗凝固療法を行っていても、浮遊血栓を伴う場合はPTEの発症率が高いと報告されているので、この場合は慎重な判断を要します。編集長であれば、もしPTEに至った場合に血行動態に大きな影響が出ないか、具体的には血栓範囲や肺高血圧の有無、心機能などを総合判断して、離床やリハビリを判断していきます。
(出典:2025 年改訂版 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン)
(編集長)
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