専門研修ブログ

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血栓後症候群(PTS)

2025.06.02
カテゴリー: 循環器

この春に行われたVTEガイドライン改定でのポイントの一つは、VTE後に慢性疾患に移行することを明示したところだと思います。その内容として、血栓後症候群(PTS)慢性血栓塞栓性肺疾患(CTEPD)が取り上げられていますが、今回はPTSについて紹介します。

 

 

PTSとは、DVT後の血栓遺残や弁破壊による逆流などで、慢性的に静脈うっ滞を来し、最終的には難治性の静脈性潰瘍を呈する病態を指します。このPTSは、海外では急性DVT後の20~80%に発症するとされていますが、わが国の観察研究では急性DVT後の3年におけるPTS発症率は13%であったと報告されています。

 

PTS発症の危険因子には、血栓範囲が広い、同側のDVT再発例、深部静脈の閉塞と弁不全の両者が存在することとされ、他にも肥満や生活環境、穿通枝や表在静脈の弁不全も関与しています。ただ、DVT発症初期の抗凝固療法が適正に施行された症例では発症が少ないようです。

 

PTSの診断には,Villaltaスコアが用いられています。通常は5点以上で軽症,10点以上で中等症,15点以上あるいは静脈性潰瘍例は重症と診断されます。

 

 

<Villalta PTSスコア>

 

予防には、発症初期からの適切な抗凝固療法、DVT発症後の弾性ストッキング着用があり、さらに症例を選択したうえでの早期血栓除去も有用とされています。

 

PTS を発症してしまったときの治療としては、慢性静脈不全の治療に準じて生活指導(立位・下肢下垂時間減少,減量)や弾性ストッキングなどによる圧迫療法、潰瘍再発例や疼痛が強い重症例で腸骨静脈病変を含む症例では腸骨静脈に対するカテーテル治療の適応と記載されています。

 

編集長もPTS患者さん何人か診療をしていますが、対症療法が中心となるので、静脈潰瘍に至るような重症例では対応に非常に苦労します。今までのDVTではPTEに至らないようにすることにフォーカスされていましたが、下肢自体の長期予後にも配慮して、急性期に適切な治療をしてPTSに至らないようにすることが重要だと思います。

 

(出典:2025 年改訂版 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン)

(編集長)

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