専門研修ブログ

茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。

医師の資質

2024.08.26
カテゴリー: ブログ

私に初期研修医でも、専攻医でも、ついてくれた時に必ずする質問があります。

「’良い医者’に求められる資質、1つだけ挙げるとすれば何か?」

 

これには、皆さん色々な考えがあることと思います。技術、能力、センス、恐れない心、努力、知識などなど色々な回答がありました。

 

あなたはいかがでしょうか? 僕は”責任感”こそが最も大切であると考えています

 

責任感があれば、患者さんの要望や希望に応えられるように努力するだろうし、目の前の患者さんのために勉強したり技術を磨いたり、仮にミスがあっても真摯な対応をすることができる。責任感がすべての根源になっているのではないか、と考えています。

 

当院では毎週木曜日の8時から内科外科カンファレンスが行われています。基本的には内科から外科に手術につながる症例のプレゼンテーションを行い、方針を検討する形です。このカンファでよく外科の先生が言う言葉で、内科医としてシビレル言葉があります。

 

「内科の先生がそこまでやってダメなら、あとはコッチ(外科)でやります」

 

このフレーズを外科から聞いたとき自分たちが一生懸命患者さんに尽くしてきてくれたこと、自分たちが十分に内科的治療をし尽くしたことを理解してもらえたとうれしくなるのと同時に「ここまで来たらあとは俺たちが何とかするぞ」という外科の心意気に感動します。

 

私も内科医として自分の仕事にプライドを持っていますが、やはり内科の限界があります。その時には外科の力を借りるしかありません。(時として、やっぱり外科はかっこいいなと感じることもなくはないです)もちろん、内科が外科の術後の偶発症に対して治療協力をすることもあります。(我々も内視鏡医としてできることはたくさんありますからね!)

 

内科にとっても、外科にとっても自分たちが知力を尽くして戦った後の後ろ盾になってくれる強力な存在があることで、より複雑でリスクの高い患者さんの治療へも立ち向かっていくことができます。私は当院の外科の先生を心から尊敬していますし、頼りにしています。

 

目の前の患者さんがどんなに大変な状況になっても、この患者さんのために自分は何ができるのか、と責任感をもってともに考えて行動してくれる仲間はなんと心強い存在でしょうか。すべての医師にちゃんと責任感があれば、患者さんの押し付け合いなんてならないですからね。

(Nao)

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エコーガイド穿刺の注意点

2024.08.19
カテゴリー: ブログ

CVやPICC、透析用のカテーテルなどを挿入する時に、あなたもエコーガイドで穿刺していると思います。今はエコーガイドが当たり前で、エコーガイドでやれば安全という風潮ですが、エコーガイド穿刺にも大事な注意点があるのを知っていますか?

 

実はエコーガイド穿刺でも、重大な合併症を生じた事案が多く報告されており、昨年も日本医療安全調査機構というところから、再発防止のための提言も出ています。

中心静脈カテーテル挿入・抜去に係る 死亡事例の分析 ― 第 2 報(改訂版)―

 

エコーガイド穿刺の最大の落とし穴は、「エコーで見えているところよりも、針は先に進んでいることが多い」ことなのです。

 

どういうことかというと、下の図のようにエコーの断面に真の針先が入っていないと誤って認識してしまうのです。

 

 

これはエコーを実際に持って、真の針先をしっかり同定できるように左手でプローブをしっかり固定し、針を進める右手も微妙な調整が必要で、繰り返し練習が重要です。

 

もちろんエコーガイド穿刺は有用な手法ですから、あなたも習得すべき手技ですが、同時に過信せずに、注意点についてもよく理解して、トレーニングしておく必要があります。

 

消化器内科の先生方は、エコーガイド穿刺が上手な人が多いですから、よくその手元を見て真似してみてください。

 (編集長)

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ローテーションはなぜ必要なのか?

2024.08.12
カテゴリー: ブログ

内科専門研修プログラムでは、初期研修でローテーションした診療科であっても、改めて一通りローテーションして主治医として症例を経験することが求められます。

 

初期研修を終えているので、内科の中でも、好き・嫌い、得意・不得意が分かってきていますから、「初期研修で回った科をもう一度やる必要があるのか?」とか「循環器内科は苦手なので回りたくない」なんて言われることもあります。

 

もちろん初期研修で担当するのと、専門プログラムで主治医として担当するのとでは意味合いが違うことは専攻医も分かっています。でも、できるならローテしないで、自分の診療科のことを早くできるようになりたいという気持ちを持つのは自然ですし、良く分かります。

 

ローテーションがなぜ必要なのか?このヒントが、編集長が読んだある記事に書いてありました。

 

「もしあなたが金槌しか持っていなけれ全ての問題は釘に見えるだろう」

(欲求階層説で有名な心理学者アブラハム・マズロー)

 

何の事だか分からないかもしれませんが、この言葉の意味はこんなことです。

 

例えば患者さんのことで、何かの問題を解決する必要に迫られた時、

・消化器内科医は消化器内科の観点で

・消化器外科医は消化器外科の見地で
・循環器内科なら循環器内科の視点で

・看護師なら看護師の視点で

解決策を考えます。

 

つまり、人は自分の持っている「最も使いやすく手近な道具」を使って解決しようとする、ということです。

 

「自分が最も使いやすく手近な道具」を使って問題を解決するということは、もちろん悪いことではありません。これは言い換えれば「長所発揮」であり、強みを生かして課題や困難にチャレンジすることは重要です。

 

しかし、当然ながら全ての問題が「自分が最も使いやすく手近な道具」で解決できる訳ではありません。ところが、無意識に「手近な道具」を使って考えているので、そのことに気づくのに時間がかかります。

 

例えば腹痛の患者さん診察する時、消化器内科なら、まずは腸管、胆道系、肝臓の異常はないかと考えて、エコーやCTをチェックするでしょう。でも、なにも異常を見つけることが出来なかったらどうでしょう?

 

こんな時、循環器内科なら心筋梗塞の中に腹痛を主訴に受診する患者がいることを知っているので、心電図をチェックしたくなります。腎臓内科なら尿毒症の症状から来る腹痛を疑うかもしれません。膠原病内科なら血管炎を疑うかもしれません。つまり、ローテーションをすることで、各診療科の視点を身につけることができるのです。

 

患者さんの問題を解決するためのカンファレンスも同じです。一人の患者さんについて、他の診療科の先生と議論をしたり、看護師さんやリハビリ、ケースワーカーなどと患者さんについて意見を出し合うことは違う視点があることを気づかせてくれます。

 

このように、内科の中でも自分の専門領域以外の見方を付けておくことは重要ですし、ローテーションは自分が気づかなかったアプローチを気づかせてくれる貴重な機会と言えます。

 

自分が手にしているのは、多くの場合金槌である

 

ということを自覚しておかないと、自分の知っている範囲でしか考えなくなり、こじつけて解釈したりと、手段が目的化してしまう危険性があります。内科専門プログラムでのローテーションを、自分の診療科以外の医師やスタッフに積極的に相談して、幅広い見方を出来るようなる時間と考えてみてはどうでしょうか?

 (編集長)

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リズムコントロールか? レートコントロールか?

2024.08.05
カテゴリー: 循環器

フォーカスアップデート版が出された循環器学会の不整脈治療ガイドラインからです。

 

心房細動患者さんを診た時に中長期的な管理をどうするかは毎回悩むところです。この管理方針には、洞調律への復帰と維持を図るリズムコントロールと、洞調律には復帰させずに適切な心拍数のコントロールで症状改善を図るレートコントロールの2つがあります。

 

まず、洞調律の復帰・維持する利点としては心房細動の症状に加え,運動能力とQOL の向上、LVEF の改善、左房径減少、入院イベントの減少に有効とされています。

 

レートコントロールは、約20 年前に行われたAFFIRM試験というリズムコントロールとレートコントロールを比較した試験で生命予後に有意差がなかったことが根拠となっています。

 

もっとも当時は心房細動に対するカテーテルアブレーションが普及しておらず、現在もそのまま適応することは困難ですし、いろいろな研究から近年では心房筋リモデリングなどの有害事象が進展する前の早期に抗不整脈薬やアブレーションを積極的に用いてのリズムコントロールを行うことの重要性が指摘されていて、ガイドラインでは推奨度と共にリズムコントロールが望ましい場合も示されています。

 

ClassⅡa:発症早期の心房細動患者において,リズムコントロール療法を考慮する

 

<リズムコントロールが望ましい場合>

・症状(動悸,眼前暗黒感,胸部不快感など)が強い

・心房細動の持続により心不全の発症、増悪が危惧される

・心房細動発症関連の併存疾患(高血圧、心不全、冠動脈疾患、糖尿病、睡眠時呼吸障害など)が比較的少ない

・心房筋のリモデリングが軽度(左房径の高度拡大がない、心房内伝導遅延が少ない)
・ 患者がリズムコントロールを希望する

 

そうなると、レートコントロールの方針で管理する患者さんは、洞調律を維持することが困難と考えられる持続性および永続性心房細動患者がおもな対象となります。

 

(参考文献:2024JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療)

 (編集長)

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