
専門研修ブログ
茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
手術の練習に170万円
先日、当院の初期研修を終えて脳神経外科医としてトレーニング中の先生と会う機会がありました。現在は卒後7年目ですが、今いる施設ではたくさんの手術をやっていて充実しているようでした。会った前日も深夜までの手術をしていたそうです。そしてこんなことを言っていました。
「手術をうまくなりたいから練習用に個人で(手術用の)顕微鏡を買っちゃいました。なんだかんだと、170万円以上使ってますよ」
編集長からすると、車を買うのと比べれば、手術用の顕微鏡に170万円をつぎ込むのは、特に驚きはありません。でも、話を聞いていると、彼の指導医の先生はかなり手術を任せてくれているようでした。編集長のように指導する側の視点からすると、おそらく彼は任せても大丈夫と思ってもらえるくらい手術がうまいし、うまく行かなったところを修正する力があるから、手術をどんどんやらせてもらえるのだと思います。
専攻医になると手技の習得が大きなテーマの一つになりますが、初めから上手な人はいません。上手に見える人は、人の気づかないところで練習を繰り返しているから上手なのです。
以前にブログで紹介した本「SKILL 一流の外科医が実践する修練の法則」には、「手術はパフォーマンス・演奏会と同じと考えよ」と書いてあります。
確かに、もしあなたが大勢の前でギターの演奏を披露するとしたら、気を散らさないように一人で練習するでしょう。手術もこれと同じで、患者さんに最高の手技を見せられるように練習が必要です。しかも、自分を追い込んで、人よりもたくさんの練習が必要です。そんな努力があなたの手技をレベルアップさせます。
彼のように170万円かけるかは、あなたにお任せしますが、ぜひとも取り組んでみてください♪
(編集長)
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水戸済生会総合病院の臨床研修は
総合診断能力を有するスペシャリスト
を目指します
◆病院見学に来ませんか?
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どんな生活を送っているのか?
あなたの目で確かめてみてください!
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なお、病院見学がむずかしい時は、Zoomで個別説明会を行っていますので、
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キャリアのVSOP論
先週のことですが、エムスリーのキャリア対策セミナーに登壇して、少しお話をさせてもらいました。
このセミナーは、前半に専門研修以降のキャリア、特に内科医がリタイアするまでのキャリアについての説明があり、後半で水戸済生会の初期研修と内科専門プログラムに関する説明をする時間をいただきました。
前半では、あくまで一般的な傾向としてですが、年代ごとに年収や家族のことなども取り上げられていて、キャリアを選択する際に考慮すべきことなどリアルな内容で、さすがエムスリーという感じの内容でした。
30名以上が参加していましたが、初期研修に加えて医学生の参加も多かったのに驚かされました。編集長の推察ですが、参加者は専門研修を医局に入ってするのか、市中病院でするのか、その後のキャリアがどうなのか、といったことに関心が高いのだろうと思います。以前なら選択肢は医局に入ることしかなかったのですが、自分でキャリアを選択できるのは良いことだと思います。しかし同時に、キャリア選択の責任は自分が負うしかありませんので、何となくではなく、よく情報収集を行ったうえで決めて欲しいと思いました。
セミナーでは編集長からも、キャリアのことで「キャリアのVSOP論」というのを紹介しましたので、ブログでもシェアしたいと思います。これは年収や労働時間といったタイパ重視ではなく、年代ごとに求められるスキルを意識してキャリアを考えてみることだそうです。
【キャリアのVSOP論】
20代はVitality(バイタリティ)
積極的にいろいろなことに取り組んで視野を拡げることで、自分の得意な分野や方向性を掴む年代
30代はSpecialty(スペシャリティ)
自分の得意分野を深堀りしていく時期。つまり、「自分はこの分野で勝負する」という方向性を決める年代。
40代はOriginality(オリジナリティ)
専門性を持ったとしても、周囲との差別化はできません。自分にしかできない仕事を意識して追及する年代。
50代はPersonality(パーソナリティ)
「役職が高い」と言うことではなく、周囲の人から「信頼されている人」なのかどうかで、自分の価値が決まる「人間力」で勝負する年代。
ちなみにこのVSOP論は1978年に脇田保と言う方の本に書かれたのが最初のようです。編集長はネットで見つけたので、原著はもちろん読んだことはありませんが、ネット上ではVがVariety(バラエティ:多様性)と書かれている記事が多くあります。でも、原著では「Vitality」と書かれているらしく、時代とともに少し変わっているようですね。さらに60代はPhilosophy(フィロソフィー:哲学)と書き加えられているものも見つけました。
由来はどうでもいいですが、研修医から医師として独り立ちしていく過程で、20代は失敗しながら一生懸命にいろいろなことに挑戦してみる、30代は自分の得意な専門性を高めていく、40代は専門領域の中で自分にしかできないことを探っていく、というのは、既にもうちょっと上の年代に達した編集長からするとすごく腑に落ちるところです。あなたの周りでカッコよく活躍している先生も、最初からできたわけではないのです。
将来、自分の考えが変わることは当然ありますし、それは悪いことではありません。普段の忙しい中でも、少しの時間を見つけてVSOPを意識しながら将来のことを考えてみてはいかがでしょうか?
(編集長)
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水戸済生会総合病院の臨床研修は
総合診断能力を有するスペシャリスト
を目指します
◆内科専門研修プログラム説明会を開催します
水戸済生会の内科研修プログラム説明会をZoomで開催します。
J2が対象ですが、水戸済生会の内科専門プログラムに関心のある方なら、医学生でもJ1でも参加可能です。あなたの参加をお待ちしています♪
日時:2025年9月26日(金)
19時開始(40~50分程度の予定です)
場所:Zoom
内容:①内科専門研修の概略
②消化器内科の専門研修
③腎臓内科の専門研修
④循環器内科の専門研修
⑤膠原病内科の専門研修
⑥血液内科の専門研修
⑦脳神経内科の専門研修
⑧質疑応答
申し込み方法
下記リンクの問い合わせフォームからお申し込みください。フォーム内の「お問い合わせ内容」欄に「内科専門研修プログラム説明会参加希望」と入力し、送信して下さい。
自動返信メールが届きますが、後日改めてZoomのURLをお知らせいたします。
胆嚢炎を診断する時の3つのコツ
心窩部痛、炎症反応の上昇などから胆嚢炎を疑われ、コンサルトを受け診察に行く。エコー上、胆嚢はやや大きいものの、いわゆる腫大の基準は満たさない(過去の胆嚢炎の記事はこちら)
胆嚢結石は一応あるが、壁の肥厚もないし、胆泥貯留もないし。画像上は胆嚢は責任病変じゃなさそうだ。念のためCTもとってみるが、所見としては同様。
「炎症反応も高いし、心窩部痛もありますが、Murphyもはっきりしないし、胆嚢炎ではなさそうですね。focusはちょっとはっきりしないです。禁食で様子見てもらって改善なければまた連絡ください。」
その後、禁食にして一旦は改善したものの、食事再開すると同様だとのことで再コンサルト。今一度エコーを当ててみると、疑いようのない胆嚢炎の所見…。「胆嚢炎でした。すみません…」
こんな恥ずかしい経験、消化器内科の医師なら一度くらいはあるのではないでしょうか(私だけならさらに恥ずかしいですが・・・)。
こんな経験をしないために、胆嚢炎を否定しきれず、他の原因も指摘できない時の3つのコツがあります。
・MRIという手がある。
⇒T2強調でpericholecystic high signalという胆嚢周囲のhigh signalが胆嚢の炎症を反映して認められることがあります。
・「胆嚢炎ではない」、とは言わない。
⇒当たり前の話ですね。断言するとカッコいいですが、「原因ははっきりは指摘できません」とか、「胆嚢炎も否定はできませんが積極的には疑いません」くらいにしておきましょう。
・時間を空けてもう一度エコーをする。
⇒午前のコンサルトなら夕方と翌日くらいには繰り返しエコーを当ててみましょう。胆嚢が収縮している、ほかの原因が判明した、などが判明するまで、エコーで確認を続けても損はありません。消化器内科医にとってエコーは聴診器みたいなものですからね。
(Nao)
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水戸済生会総合病院の臨床研修は
総合診断能力を有するスペシャリスト
を目指します
◆内科専門研修プログラム説明会を開催します
水戸済生会の内科研修プログラム説明会をZoomで開催します。
J2が対象ですが、水戸済生会の内科専門プログラムに関心のある方なら、医学生でもJ1でも参加可能です。あなたの参加をお待ちしています♪
日時:2025年9月26日(金)
19時開始(40~50分程度の予定です)
場所:Zoom
内容:①内科専門研修の概略
②消化器内科の専門研修
③腎臓内科の専門研修
④循環器内科の専門研修
⑤膠原病内科の専門研修
⑥血液内科の専門研修
⑦脳神経内科の専門研修
⑧質疑応答
申し込み方法
下記リンクの問い合わせフォームからお申し込みください。フォーム内の「お問い合わせ内容」欄に「内科専門研修プログラム説明会参加希望」と入力し、送信して下さい。
自動返信メールが届きますが、後日改めてZoomのURLをお知らせいたします。
【おしらせ】水戸済生会 内科専門研修プログラム説明会2025@Zoom
J2のあなたは来年の研修先をどこにするか、決めた人もいればまだまだ悩み中という人もいると思います。当院のJ2も決めた人が多いのですが、まだ決められない人もいます。
専門研修を始めるには、専門医機構に登録して、診療科と研修施設を決める作業が必要になります。9月8日時点では専門医機構からも、内科学会からも登録開始時期についての情報はありませんが、特別な理由がない限り、昨年同様に11月1日から登録開始になると思います。
さて、当院では基幹型の内科専門研修プログラムを有しており、特に腎臓内科、消化器内科、循環器内科は内科専門医を取得後に異動することなく各サブスペシャルティ領域の専門医資格を取得できる施設です。
さらに2023年秋から脳神経内科医と膠原病内科医が、2024年春から血液内科の常勤医も加わって、内科の診療体制が充実しました。呼吸器内科専門医が不在という弱点を除けば、JOSLER症例の確保に困ることはありません。
当院の内科専門研修プログラムに関するお問い合わせもいただいていることから、今年も院外で研修しているあなたを対象にZoomでの説明会を開催することにしました。
開催日時は以下の通りです。J2が対象ですが、関心のある方なら医学生でもJ1でも参加可能です。あなたの参加をお待ちしています♪
【水戸済生会 内科専門研修プログラム説明会】
日時:2025年9月26日(金)
19時開始(40~50分程度の予定です)
場所:Zoom
内容:①内科専門研修の概略
②消化器内科の専門研修
③腎臓内科の専門研修
④循環器内科の専門研修
⑤膠原病内科の専門研修
⑥血液内科の専門研修
⑦脳神経内科の専門研修
⑧質疑応答
申し込み方法
下記リンクの問い合わせフォームからお申し込みください。フォーム内の「お問い合わせ内容」欄に「内科専門研修プログラム説明会参加希望」と入力し、送信して下さい。
自動返信メールが届きますが、後日改めてZoomのURLをお知らせいたします。
(編集長)
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水戸済生会総合病院の臨床研修は
総合診断能力を有するスペシャリスト
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◆水戸済生会での専門研修に関するご質問はこちらへ!
どんなことでも問い合わせフォームからご質問ください。
また、各診療科の専攻医にZoomで質問できますので、その旨もお知らせください!
ローテーションはなぜ必要か?
内科専門研修プログラムでは、初期研修でローテーションした診療科であっても、改めて一通りローテーションして主治医として症例を経験することが求められます。
初期研修を終えているので、内科の中でも、好き・嫌いや得意・不得意が分かってきていますから、「初期研修で回った科をもう一度やる必要があるのか?」とか「循環器内科は苦手なので回りたくない」なんて、あなたも思うはずです。
もちろん初期研修で担当するのと、専門プログラムで主治医として担当するのとでは意味合いが違うことは専攻医も分かっています。でも、できるならローテしないで、自分の診療科のことを早くできるようになりたいという気持ちを持つのは自然ですし、良く分かります。
では、ローテーションがなぜ必要なのでしょうか?編集長が読んだある記事にこんなことが書いてありました。
「もしあなたが金槌しか持っていなければ、全ての問題は釘に見えるだろう」
(欲求階層説で有名な心理学者アブラハム・マズロー)
いきなり何の事だか分からないかもしれませんが、この言葉の意味はこんなことだと思います。
患者さんのことで、何かの問題を解決する必要に迫られた時、
・消化器内科医は消化器内科の観点で
・消化器外科医は消化器外科の見地で
・循環器内科なら循環器内科の視点で
・看護師なら看護師の視点で
解決策を考えます。
つまり、人は自分の持っている「最も使いやすく手近な道具」を使って解決しようとする、ということです。
「自分が最も使いやすく手近な道具」を使って問題を解決するということは、もちろん悪いことではありません。これは言い換えれば「長所発揮」であり、強みを生かして課題や困難にチャレンジすることは重要です。
しかし、当然ながら全ての問題が「自分が最も使いやすく手近な道具」で解決できる訳ではありません。ところが、無意識に「手近な道具」を使って考えているので、そのことに気づくのに時間がかかります。
これを日常臨床に当てはめると、患者さんの問題を解決するためにカンファレンスなどで他の診療科の先生と議論をしたり、看護師さんやリハビリ、ケースワーカーなどと患者さんについて意見を出し合う場が必要ということです。
内科専門研修プログラムでは、初期研修でローテーションした診療科であっても、改めて一通りローテーションすることが求められます。もちろん初期研修で担当するのと、専門プログラムで主治医として担当するのとでは意味合いが違いますが、内科の中でも自分の専門領域以外の見方を付けておくことは重要ですし、ローテーションは自分が気づかなかったアプローチを気づかせてくれる貴重な機会と言えます。
自分が手にしているのは、多くの場合金槌である
ということを自覚しておかないと、自分の知っている範囲でしか考えなくなり、こじつけて解釈したりと、手段が目的化してしまう危険性があります。内科専門プログラムでのローテーションを、自分の診療科以外の医師やスタッフに積極的に相談して、幅広い見方を出来るようなる時間と考えてみてはどうでしょうか?
(編集長)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
水戸済生会総合病院の臨床研修は
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