専門研修ブログ

茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。

年末のご挨拶

2022.12.26
カテゴリー: ブログ

早いもので、もう年末ですね。

 

当院の内科専門研修を紹介する目的で2020年7月から始めたこのブログも、気づいたら約2年半たっていました。週1回のゆっくりしたペースで記事を書いて、扱うテーマもだいぶニッチなものばかりなので、正直なところ2年たっても閲覧数はあまり増えていません(笑)。でも、こうしてあなたに記事を読んでいただけるのは、編集長としてはうれしい限りです。御礼申し上げます。

 

さて、水戸済生会の内科専門研修では、今年大事件が起きました。

 

それは何かというと・・・・・、内科専門プログラムで定員いっぱいの4名の応募をいただきました♪

 

初めてのことで、内科スタッフは誰もが、とても驚きましたが、同時に応募してくれた4名の期待に応えて、しっかりと研修できるように気を引き締め直す必要があると改めて認識しました。

 

何度か紹介していますが、当院の内科専門研修プログラムの特徴を一言でいえば、消化器内科、循環器内科、腎臓内科を中心に、できるだけ早くサブスペシャルティ領域の専門医資格を取得することを目指しています。

 

これは、早く自信をもって対応できるものが欲しいという専攻医のニーズに応えるものですが、同時にいろいろな状況でも活躍できる内科医になってもらえるように、さまざまな経験をしてもらうことも重要と考えています。

 

臨床の現場で活躍できる内科医を育てていけるようスタッフ一同頑張ってまいりますので、来年もどうぞよろしくお願いいたします。

(編集長)

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CLTI  大切断(2)

2022.12.19
カテゴリー: 循環器

改訂されたガイドラインをもとにCLTIについて紹介しています。前回はCLTI治療の中での大切断のメリットと適応について紹介しました。今回は主にデメリットについてまとめてみます。

 

CLTIに対する大切断の主目的は,虚血性疼痛の緩和と病変組織,感染巣,壊死組織の除去であり、繰り返される再治療と長い治療期間からの解放されるというメリットがあることは前回も紹介しました。

 

しかし、最初はごく小さな足の傷が、大切断という大事件に発展することは患者や家族は想像だにしていないのが普通です。創治癒を得るまでに、どのくらいの期間がかかるのか、何回EVTをする必要があるのか、創傷ケアの継続の必要性、疼痛が持続してしまう可能性など、分からないことだらけで、患者や家族の事情や願い、目標とは一致しないことがほとんどです。そのため、予想されるこれらの情報を共有し,適切な意思決定を支援していくことが極めて重要になり、治療の各段階においても大切断や、場合によっては血行再建も大切断も行わない緩和医療も含めたあらゆる選択肢について話し合う必要があります。

 

そんな話をする時に知っておいた方が良い数字を押さえておきましょう。

 

<切断後の創傷治癒率>
小切断(足趾・足部切断)では追加のデブリードマンや切断は4~40%に必要。再入院率は約20%で,その大半は1ヵ月以内。

膝下切断後の一次治癒率は約60%であり,15%で膝上切断を要する.

膝上切断は最も一次治癒率が高い切断手法だが、ただし膝上切断でも術後30日で8.1%の治癒不全を認めるとの報告があり。

 

< 大切断術後の生命予後>
大切断術30日後死亡率は4~22%,大切断後5年の生命予後は30~70%。

特に低心機能症例は大切断に対する耐術能が低く、周術期死亡リスクは上昇する。

 

<切断後の歩行維持率>

膝下切断後の歩行維持率は33%,膝上切断後では0%

 

かなりショッキングな数字かもしれませんが、実際にCLTI患者さんを診ていると実感のある数字でもあります。CLTIについてはエビデンスと呼べるようなデータもまだまだ少ないのですが、今回のガイドラインには実臨床での疑問をPractical question(PQ)として取り上げています。

 

このPQはエビデンスが乏しい中で、ガイドラインを作成した委員の先生たちが臨床で患者さんと向き合いながら日々格闘しているのが分かる文章で、いろいろと良いことが書いてあります。その中でもこの大切断に関するPQは編集長としては非常に納得・共感するところがありましたので、転載させていただきます。

 

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わが国のCLTI患者は,高齢で,長期間透析によるアミロイドーシスによって手の巧緻性が失われ,糖尿病網膜症によって視力低下も認められる患者が多いため,義足装着が困難な患者も多く,その結果諸外国の報告に比較して歩行維持率は低い傾向にある.したがって若年者の事故や腫瘍切除後の患者のように,大切断術後に義足をつけて歩行が可能であるとの考え方は,わが国のCLTI患者においては当てはまらない.このように歩行機能が失われる可能性が高くなることや,創離開や周術期合併症があるため,安易に大切断を選択できない.透析患者において大切断を選択し大切断によって歩行機能が失われると,外来透析クリニックへの通院が困難になり,透析ができる施設へ入所するなど患者の社会的な環境が大きく変化する.大切断によって在宅での生活が失われる可能性も十分考慮する必要がある.したがって患者が在宅での生活を強く希望する場合には,創傷と付き合いながら疼痛管理と感染制御などの緩和医療を在宅で行うということも,わが国においては選択する場合もある.(ガイドラインのPQ10より転載)

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(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)

(編集長)

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CLTI  大切断(1)

2022.12.12
カテゴリー: 循環器

改訂されたガイドラインをもとにCLTIについて紹介しています。

 

今まではCLTIの評価や血行再建、創傷治療に関して紹介してきましたが、CLTIでは大切断の話題は避けて通れません。もちろんCLTI治療の第一選択は血行再建ですが、切断も重要な治療の選択肢になります。決して切断は治療の失敗ではないのです。もちろん切断を決めるのは治療する我々も容易なことではありませんが、患者としても簡単に受け入れられるわけがありません。しかしそのメリット、デメリットを整理しておくことは重要で、ガイドラインでも一つのセクションを設けて大切断について記載しています。

 

まず、言葉の定義ですが、ここでいう大切断とは「大切断=踵(かかと)がなくなる切断」と考えてください。大切断には膝下(下腿)切断と膝上(大腿)切断があります。さらに一次切断(血行再建無しで切断)と二次切断(血行再建後に切断)という言い方も使われます。

 

CLTIに対する大切断の主目的は,虚血性疼痛の緩和と病変組織,感染巣,壊死組織の除去であり、繰り返される再治療と長い治療期間からの解放されるというメリットがあります。もちろん可能であれば歩行維持を目的とした義肢やリハビリテーションを提供しなければいけません。

 

大切断の適応としては、以下の4つがガイドラインに記載されています。

 

①再建不可能な血管疾患を有する状態
多くの場合、血行再建術の不成功、または血行再建困難例が大切断に至る理由となります。特に足関節以下(IM)のフローが悪い時は非常に成績が悪くなります。

②非機能肢(神経損傷や脳卒中による麻痺がある状態や関節拘縮により下肢機能が著しく障害された状態)
血行再建術の適応は限定的であり,大切断は有効な治療となりえます。

 

③足部の主要な運動負荷部位の壊死または制御不能な感染
広範な壊死に創部の感染が加わると制御できない状況になりえます。中足骨レベルでの切断では治癒が見込めない壊死・感染の拡がりや骨髄炎・深部感染症,踵を含む広範な壊死では大切断を考慮します。

④重篤な併存疾患や限られた生命予後しかない状態に対し、回復まで長い期間を要するハイリスク手術の回避
重篤な併存疾患を有する患者や長期生存が見込めない患者においては大切断が適応となる場合があります。血行再建を繰り返し、創治癒を得るまで長期の入院が求められることがしばしばありますが、これは著しくQOLを低下させます。これに対して一次大切断は早期に創傷ケアを必要とする状態を回避することで入院期間を短縮することができます。

 

(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)

(編集長)

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CLTI  創傷治療(5)

2022.12.05
カテゴリー: 循環器

改訂されたガイドラインをもとにCLTIについて紹介しています。

 

CLTIの創傷治療は8項目に分けて考えていきますが、実は最後の⑧再発の予防/予防的フットケアについては、ガイドラインでは触れられていません。と言っても大事なところなので、当院の経験も踏まえて少しだけ触れておこうと思います。

 

まずは、CLTI患者の下肢の予後について、ガイドラインには患側下肢と対側下肢に分けて記載されています。

 

患側下肢では血行再建術後の下肢大切断リスクはとくに術後1年以内に集中しており、それ以降は比較的低率にとどまりますが、術後1~3年の大切断(踵が無くなる下腿切断もしくは大腿切断)の累積発生率は10~20%程度報告されています。EVTと外科的血行再建術を比べると,最終的な大切断リスクや総死亡リスクは同等とする報告が多いようですが、創傷治癒は外科的血行再建術の方が早期かつ高率に達成されやすいとされています。

 

そして、血行再建術後にいったん創傷治癒が得られてもCLTIが再発することがあります。CLTI再発率は創傷治癒後1年で2~8%,2年で6~13%,3年で9~17%とされており、創傷治癒が得られた後もCLTI再発のリスクに注意して観察する必要があります。

 

片側性にCLTIを呈する患者が、経過中に対側肢にCLTIを発症することは珍しいことではありません。術後2年の対側CLTIの累積発症率は20%で、本邦からも対側肢のCLTI発症率は1年で20.8%,3年で44.8%,5年で54.2%であったとの報告があります。

 

つまり、CLTI患者では患側下肢も対側下肢も十分に注意してフォローする必要があることを認識しておくことが重要です。ただ、日常の外来ではなかなか靴下を脱がせて両足の確認は難しいのが実情です。そうであれば形成外科の受診日と同じ日にするとか、フットケアに関心のある看護師さんを味方につけるなどの工夫が役に立ちます。ちょっと古いのですが、当院でのフットケアの間隔は下記を参考にしてやっています。

 

 

患者さんには、創治癒を得ても、足の状態を確認することや、もし傷ができた時は早めに受診するように繰り返し伝えています。また靴の履き方は重要で、サンダルではなくて踵を合わせて靴ひもで甲をしっかりホールドするように履くことが傷を作りにくくします。すでに胼胝(べんち)があるなら、インソールを作ることを病院に出入りしている装具士さんに相談してみるのが良いと思います。

 

フットケアについては、日本フットケア・足病医学会が中心となって活動しており、2022年9月に学会のガイドラインが上梓されています(編集長はまだ読めていません)。

学会のサイトはこちら

 

(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)

(編集長)

 

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