専門研修ブログ
茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
2023年度の専攻医登録が始まります!
すでにご存知かもしれませんが、2023年4月開始の専門研修プログラムの専攻医登録が12月1日(木)から始まります。
昨年は11月1日からの登録開始でしたから1か月遅れで、だいぶヤキモキしたのは編集長だけでしょうか?
手続きとして、まず専門医機構のサイトで専攻医登録(アカウントの取得)をします。それから希望の専門研修プログラムに専攻医登録サイトから応募します。面接等の選考を経て採用が決まります。
1次募集で希望のプログラムに採用されなかった時は2次募集で別のプログラムに応募することになります。
1次募集の応募期間は12月1日から12月14日です。
おそらく多くの研修施設では、例年同様に面接や書類の提出を行い、内定を出しているところが多いかもしれませんが、上述のように専門医機構に専攻医の登録をしてから各研修施設のプログラムに応募しないとできないシステムとなっています。J2のあなたは、よく確認して早めに登録をしてください。
さて、ここで水戸済生会の専門研修についても紹介させてください。
当院は422床の総合病院で、救命救急センター(3次救急)を有するため、ドクターカーやドクターヘリの基地病院としての役割や、茨城県立こども病院と隣接しているため、県央・県北の総合周産期母子医療センターとしてハイリスク分娩などを一手に引き受けています。
専門研修は内科で基幹型プログラムを有していますが、それ以外の診療科は、筑波大学をはじめとした専門研修プログラムの協力施設として、専攻医を受け入れています。
初期研修医の定員は10名で、3年連続でフルマッチしてくれています。このうち当院での内科専門研修に進むのは例年1~2名ですが、近年は他施設で初期研修を終えた専攻医も増えてきています。
水戸済生会の内科専門研修プログラム当院には、消化器内科、循環器内科、腎臓内科、血液内科、総合内科、糖尿病代謝内科があります。血液内科と糖尿病代謝内科はそれぞれ常勤医が1名体制で、総合内科は院内診療科として活動しており、外来は行っていません。神経内科や膠原病内科は非常勤医師による外来のみで、呼吸器内科は現在のところ不在です。
このため、内科専門研修プログラムでは特に血液内科や呼吸器内科、神経内科について、水戸地区を中心とした近隣の病院に連携施設となってもらい、まんべんなく症例を経験できるようにしています。
当院の内科専門研修プログラムの特徴を一言でいえば、消化器内科、循環器内科、腎臓内科を中心に、できるだけ早くサブスペシャルティ領域の専門医資格(以下、サブスペ専門医)を取得することを目指しています。
消化器内科、循環器内科、腎臓内科では施設を異動することなく、当院のみの研修でサブスペ専門医試験の受験資格を得ることができます。さらに各診療科の関連する多くの資格を取得可能です。このため、個々の希望を聞きながら希望診療科の連動研修(並行研修)を取り入れてプログラムを組んでいます。
少しでも早くサブスペシャルティの資格を取りたいあなたは、ぜひ当院の内科専門医プログラムをご検討ください。
(編集長)
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水戸済生会循環器内科のサイトを是非ご覧ください!
PCIだけでなく、Ablation、TAVI、MitraClipなど、当院で行っている幅広い循環器診療を紹介している
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CLTI 創傷治療(4)
改訂されたガイドラインをもとにCLTIについて紹介しています。
CLTIの創傷治療は8項目に分けて考えていきますが、⑤再建軟組織の切断 は形成外科の領域になるので、ガイドラインでもほとんど触れられていません。今回は⑥免荷装具と⑦リハビリテーションについてです。
CLTI患者は高齢や透析患者が多く、あっという間に寝たきりになってしまいます。そこで創傷治療を行いながらのリハビリが必要です。しかし、感染がある場合など、いくつか注意点があります。
⑥免荷装具
⑦リハビリテーション
一般的にベッド上安静は廃用を助長して機能回復を遅延させてしまいます。このため禁忌を除くすべてのCLTI症例において患部の免荷(Off loading)と併せて血行再建術後早期から歩行能力やADL維持を目的としたリハビリテーションを行うことが推奨されています(Ⅱa)。ただし患側だけでなく、対側下肢にも下肢虚血や、場合によってはCLTIを有しているので、対側下肢の評価を行ったうえで運動強度を設定する必要があります。
足潰瘍の治癒過程では、リハビリテーションに際して免荷が必要で、できるならTotal Contact Cast(TCC)が第一選択とされています。しかし下の写真のような感じのもので、下肢の関節が固定され,動作が不安定になるなど、なかなか装着してもらえないのが実情です。さらに軟部組織の感染,骨髄炎,重篤な血管疾患,重篤な下肢または足部の浮腫には禁忌となっており、エビデンスとしてもCLTIを対象にTCCの効果を検証したRCTはないそうです。
Total contact cast(TCC)の一例
TCCが使用できない時の除圧方法として,アウトソールに加工を施した治療用サンダルがあり、当院でも使用実績があります。治療用サンダル着用により,歩行時の最大圧は前足部・中足部・踵の全領域で軽減できます。小さい潰瘍であればインソールなどを調整するだけでも、治癒のスピードは変わってきますので、ぜひ病院で委託している装具士さんに相談してみてください。
その他の注意点としては、足趾や足部の切断(小切断)が行われた後は,患側のインソールなどはもちろん必要ですが、荷重などの左右非対称性が顕著となるので対側下肢にトラブルを生じることがあります。そこで対側下肢も装具で負荷量を調整する必要がでてきます。
また、感染創を有する場合,関節運動は相対的禁忌となります。これは歩行あるいは他動運動により腱が伸張され感染が拡大する可能性があるため,感染が収束するまでは腱の移動を伴う運動を制限するとされています。
(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)
(編集長)
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CLTI 創傷治療(3)
改訂されたガイドラインをもとにCLTIについて紹介しています。
創傷治療の続きで、今回は創傷治癒を促進する治療についてです。この辺りの知識は循環器内科医にとって良く分からないことばかりですが、ちょっとだけでも知っておくと形成外科医との会話がすごく理解できるようになります。
④創傷治癒を促進する治療
・局所陰圧閉鎖療法(negative pressure wound therapy: NPWT)
比較的大きな創傷で壊死組織が除去され感染が制御された後に、肉芽形成を促進させる目的でNPWTを行います。慢性創傷における世界的標準治療法だそうです。「V.A.C療法」の方が聞いたことがあるかもしれません。臨床的には創傷の収縮、肉芽形成の促進、滲出液の排出、浮腫軽減などの効果を有するそうです。最近はNPWTに周期的自動洗浄液注入器を追加したNPWTi-d(negative pressure wound therapy with instillation and dwell time)というものが使用可能となったそうです。「Veraflo™(ベラフロ)」という商品名ですが、壊死組織が遺残している時期から使用可能で、デブリードマンが可能なNPWTという位置づけになっているようです。
・創傷被覆材
創傷被覆材はいろいろな種類があって、どれを使えばよいのか迷いますが、そもそも比較的小さな創傷やNPWT後の治療に適応があり、湿潤環境を維持し、上皮化を促進させる目的で使用されます。注意点はかえって感染を起こすことがあることです。これを回避するには、創傷内の滲出液の量と創傷の形態に応じて創傷被覆材を選択するのが良いそうですが、循環器内科医にはちょっとハードルが高いので、詳しい看護師さんや形成外科にその都度相談しています。
・栄養療法
現在のところCLTI患者に対する栄養療法が下肢救済につながるというエビデンスはありません。また本邦では透析患者のCLTIが圧倒的に多いという特殊な事情もあると思いますが、常識的なところとして創傷治癒の観点から栄養サポートチーム(NST)による適切な栄養管理を行うべきです。ガイドラインにはアルギニン,ビタミンC,亜鉛などを強化した栄養補助食品を付加する栄養療法を行うことも記載されています。
(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)
(編集長)
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CLTI 創傷治療(2)
改訂されたガイドラインをもとにCLTIについて紹介しています。
前回は創傷の評価についてでしたが、今回はWound bed preparationと血行再建についてです。
②Wound bed preparation/デブリードマンと小切断
Wound Bed Preparationという概念は外科医にとっては当たり前の概念ですが、循環器内科医には聞きなれない言葉です。これは慢性創傷を治療に反応する創傷に変換することを目的とした標準的な創傷治療概念で、①Tissue/Devitalized Tissue(壊死組織)、②Infection(感染)、③Moisture(滲出液)、④Edge(創縁)のポケットの4項目(頭文字をとってTIMEと呼びます)に対して評価と治療を行っていきます。
これら治療には優先順位があり、①Tissue、②Infection、③Moisture の順に評価・治療を行うとされ、Tissue にはデブリードマン、Infection には外用抗菌薬、Moisture には陰圧閉鎖療法(NPWT) と創傷被覆材で対応していきます。Edge(創縁のポケット) は外科的切除または切開を行います。
CLTIでは特にデブリードマンと感染管理が重要とされ、感染と虚血のいずれかより重症な方の治療を優先して行うことを原則で、いずれかを先行する場合でも両者の間隔はできるだけ短くすべきです。当院では形成外科と相談して、感染が強くなければ血行再建の翌日もしくは2日後に切断術やデブリを行うようにしています。
他に小切断(踵を残す切断法)では、我々がアーチ(動脈弓)と呼んでいる足背動脈と足底動脈の交通枝を温存することや、足底組織を可能な限り温存するなどの注意点があるので、形成外科とよく相談することが大事です。
③血行再建
感染と虚血の両者を認める場合で、特に高度感染を認める場合に血行再建術を優先すると敗血症または虚血再灌流障害のために患者の全身状態が急速に悪化する可能性があります。手術室の枠がないので切断は来週になるけど、先にEVTをやってしまおうと軽く考えていると痛い目にあうので注意が必要です。前述の通り、感染と虚血のいずれかより重症な方の治療を優先して行うことを原則で、いずれかを先行する場合でも両者の間隔はできるだけ短くすべきです。
(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)
(編集長)
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