
専門研修ブログ
茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
年末のご挨拶
早いもので、もう年末ですね。インフルエンザが猛威を振るっていますが、いかがお過ごしでしょうか?
水戸済生会の内科専門研修を紹介する目的で2020年7月から始めたこのブログですが、気づいたら約4年半たっていました。週1回のゆっくりしたペースで記事を書いていますが、4年たっても閲覧数は全然増えていません(笑)。編集長としては、気にしていないと言ったらウソになりますが、扱うテーマもだいぶニッチなものばかりなので、閲覧数狙いは無理だと思っています。でも、今こうしてあなたに記事を読んでいただいているので、ホントにうれしい限りです。どうも有難うございます。
さて、今年は水戸済生会の内科専門研修プログラムに大きな変化がありました。
それは、2023年秋から脳神経内科医とリウマチ膠原病内科医が常勤になり、さらに今年4月から血液内科医が常勤となったことで、呼吸器内科以外の内科系疾患を幅広く診療できるようになったことです。
これは専攻医にとってJOSLER症例の確保が非常に容易になっただけではありません。以前は、水戸済生会の内科専門研修プログラムの特徴と言えば消化器内科、循環器内科、腎臓内科でした。そこに3つの診療科が加わったことで、内科の中でも症例の幅が広がり、診療レベルの向上という相乗効果を実感しています。
もちろん、早く自信をもって対応できるものが欲しいという専攻医のニーズに応えるため、できるだけ早くサブスペシャルティ領域の専門医資格を取得することを目指すというプログラムの方針は変わりありません。
同時に、指導医側としてはいろいろな状況でも活躍できる内科医になってもらえるように、さまざまな経験をしてもらうことも重要と考えています。これら3つの診療科が加わったことは、この点からも非常に意味のあることだと考えています。
水戸済生会の内科専門プログラムでは、臨床の現場で活躍できる内科医を育てていけるよう、スタッフ一同頑張ってまいりますので、来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
(編集長)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
水戸済生会総合病院の臨床研修は
総合診断能力を有するスペシャリスト
を目指します
◆水戸済生会での専門研修に関するご質問はこちらへ!
どんなことでも問い合わせフォームからご質問ください。
また、各診療科の専攻医にZoomで質問できますので、その旨もお知らせください!
CPXの実際(5) 最高酸素脈
CPX(心肺運動負荷試験)で負荷中の指標を紹介しています。
前回は最大酸素摂取量(Peak VO2)と嫌気性代謝閾値(AT)について紹介しました。今回は最高酸素脈とVE/VO2、VE/VCO2を紹介します。
【最高酸素脈(Peak VO2/HR、Oxygen pulse)】
最高酸素脈は酸素摂取量を心拍数で割ったもので、1回の心拍出量がどれだけ酸素摂取に関与しているかを評価する指標です。つまり最大負荷時の心拍出量の指標の一つでもあります。
標準値は以下のように計算されるそうですが、60歳代で運動習慣のない人であれば10ml/beatであれば正常と考えて良いそうです。
<激しい運動習慣のない成人における VO2/HRの標準値>
男性:(-0.1×年齢+34.5)×体重/(220-年齢)
女性:(-0.1×年齢+28.9)×体重/(220ー年齢)
(日本循環器学会の標準値より)
注意点としては、ベータ遮断薬など心拍数を下げる薬を服用していると高く出てしまいます。そして心拍出量を示す指標と述べましたが、心機能そのものを示す指標ではないことにも注意が必要です。例えば肺高血圧や長期臥床で骨格筋量が低下している場合にはこの値は低下します。
【VE/VO2、VE/VCO2】
ウォームアップの項でも触れましたが、これらの指標は負荷に伴って徐々に低下します。これは運動に伴って肺血流も肺換気も増加するため、換気血流不均衡分布が改善されるためです。VE/VO2はATまで低下し続け、その後上昇に転じます。VE/VCO2はATあるいはRCP(呼吸性代償開始点)まで低下し続け、RCP以後に上昇します。
この指標は、VE/VO2ーVE/VCO2の関係から最大負荷をかけずにATを決定できるため、心筋梗塞後や術後早期にCPXを行う場合に有用です。
この指標に影響する因子は肺血栓塞栓症、SV(1回拍出量)低下、血管内皮機能低下、交感神経活性の異常亢進、浅く速い呼吸様式などです。
心不全ではSV低下により、血管壁へのシアストレスを増加させることができず、結果として血管内皮からのNOの産生が増加しないため肺血流も増加しないことや、交感神経活性の更新により血管拡張をきたしにくくしているとされます。
(参考文献:安達仁編著 CPX・運動療法ハンドブック)
(編集長)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
水戸済生会総合病院の臨床研修は
総合診断能力を有するスペシャリスト
を目指します
◆水戸済生会での専門研修に関するご質問はこちらへ!
どんなことでも問い合わせフォームからご質問ください。
また、各診療科の専攻医にZoomで質問できますので、その旨もお知らせください!
CPXの実際(4) 最大酸素摂取量と嫌気性代謝閾値
CPX(心肺運動負荷試験)の実際を紹介しています。CPX負荷中に得られる指標はたくさんありますが、前回は酸素摂取量の異常パターンを紹介しました。
今回は最高酸素摂取量(Peak VO2)と嫌気性代謝閾値(AT)についてです。
【最高酸素摂取量(Peak VO2)】
Peak VO2は心臓リハビリにおける酸素摂取量に関する最も重要な指標ですが、これ以上はもはや運動できないという強度(医学的な安全限界とか本人の自覚的限界)で負荷が終了したときの酸素摂取量(酸素摂取量の最高値)のことです。
混乱しやすいものとして、最大酸素摂取量(VO2 max)があります。VO2 maxは有酸素運動能力を反映し、この値が大きいほど心肺機能の能力が高いことを意味します。アスリートやトレーナーが使っているのはこちらの方です。
心不全患者さんの心臓リハビリでは安全優先ですので、VO2 maxではなくPeak VO2が用いられますただし、両者は同義語として用いられている場合もあります。
【嫌気性代謝閾値(AT:Anaerobic threshold)】
ATの定義は「好気的代謝に無気的代謝が加わる時点での酸素摂取量」となっていて単位はml/minです。
ATの決定法には以下の通りいくつかあるので、負荷終了後の解析時にいくつかの方法を見ながら決定していきます。
1.VCO2、VEがVO2から乖離して増加を開始する点(下図・左)
2.V-slope法でSlopeの傾きが45度以上になり始める点(下図・右)
3.VE/VO2の増加開始点
4.R増加開始点
5.PETO2増加開始点
ATはPeak VO2の約60%であり、AT以後は乳酸の産生が進み、徐々にアシドーシスになります。この時はまず腎臓での代償機序が働きますが、それが限界を迎えると肺による代償機序(=過換気)が始まります。このポイントを呼吸性代償開始点(RCP:Respiratory Compensation Point)と言います。
(参考文献:安達仁編著 CPX・運動療法ハンドブック)
(編集長)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
水戸済生会総合病院の臨床研修は
総合診断能力を有するスペシャリスト
を目指します
◆水戸済生会での専門研修に関するご質問はこちらへ!
どんなことでも問い合わせフォームからご質問ください。
また、各診療科の専攻医にZoomで質問できますので、その旨もお知らせください!
CPXの実際(3) 負荷中に得られる指標
CPX(心肺運動負荷試験)の実際を紹介していますが、今回は負荷中の指標についてです。
負荷中に得られる指標は以下のようにたくさんあります。
①酸素摂取量
②最高酸素脈(peak VO2/HR, Oxygen pulse)
③VE/VO2, VE/VCO2
④VE vs VCO2 slope
⑤PETCO2, PETO2
⑥TV-RR関係
⑦RR threshold
⑧Ti/Ttot
⑨呼吸予備能(Breathing reserve)
⑩SpO2
⑪Oscillatory ventilation
⑫OUES
これらを全部覚えて使いこなすのは正直なところ難しいですが、何となくこんなものを見ているとイメージだけでもつかんでおくと良いでしょう。
今回は酸素摂取量を見ていきます。酸素摂取量はATP産生そのものと考えて良いので、酸素摂取量が増加しなければATPも増加しないので、いろいろな症状につながります。
今回は酸素摂取量増加に関する異常パターンを見ていきます。
・酸素摂取量増加の3つの異常パターン
酸素摂取量は負荷1ワット(W)につき10㎖/分増加(ΔVO2/ΔWR=約10㎖/min/W)することは覚えておきましょう。
異常パターンの1つ目(図A)は、ΔVO2/ΔWRが低下しているパターンで、傾きの異常と言われます。心不全症例やでコンディショニングが進んだ患者など、有酸素代謝能力が低下して負荷初期から嫌気性代謝の割合が高いことが原因で、ΔVO2/ΔWRが7㎖/min/Wくらいまで低下します。
2つ目のパターン(図B)は直線性の異常と言われ、軽労作では有酸素代謝が正常に行われますが、あるレベルの負荷に達すると嫌気性代謝の割合が増大するような場合に見られます。狭心症による虚血や拡張障害などがこのパターンを示します。
3つ目(図C)は傾きは正常だが、上方にシフトする位置の異常のパターンで、特に肥満の強い場合に見られます。安静時の酸素摂取量は正常ですが、ウォームアップ時から予測値よりも増加し、傾きは正常パターンが特徴です。強い肥満の場合には自分の下肢が重いため、エルゴメーターを漕ぐ時に要するエネルギー需要が正常体重の人よりも多いことが原因とされています。
次回は最高酸素摂取量(peak VO2)について紹介します。
(参考文献:安達仁編著 CPX・運動療法ハンドブック)
(編集長)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
水戸済生会総合病院の臨床研修は
総合診断能力を有するスペシャリスト
を目指します
◆水戸済生会での専門研修に関するご質問はこちらへ!
どんなことでも問い合わせフォームからご質問ください。
また、各診療科の専攻医にZoomで質問できますので、その旨もお知らせください!
CPXの実際(2) ウォームアップで見るべきポイント
前回からCPX(心肺運動負荷試験)の実際を紹介していますが、今回はウォームアップで見るべきポイントについてです。
ウォームアップは0ワット、3分間で行います。これだと心不全患者さんでも行うことができます。ウォームアップ中には以下の3点を見ていきます。
①酸素摂取量(VO2)
ウォームアップを開始すると、VO2は急激に増加しますが3分以内に定常状態(プラトー)に達します。このプラトーに達するまでの時間は老化や心不全で延長し、延長の度合いは予後の指標となります。
もしVO2がプラトーにならない場合には、ウォームアップで既に嫌気性代謝閾値(AT)を超えていることを意味します。
②VE/VO2、VE/VCO2の変化
VE/VO2、VE/VCO2ともウォームアップ開始に伴って低下します。これは肺血流も肺換、気も増加するためですが、心不全であればこれらの増加の程度が小さいのでVE/VCO2がどの程度低下するかを見ると心不全の重症度を推測できます。
一方でウォームアップですでにATに達している場合には、VE/VO2が増加し、VE/VCO2以上の値になります。
③心拍応答
ウォームアップを開始すると、速やかに心拍数が増加します。これは副交感神経活性の消退が主たる要因とされています。この心拍応答が極端に低下している(つまり心拍数が上昇しない)場合としては、ペースメーカリズム、除神経(開心術後、心臓移植)など限られています。
逆に心房細動の場合は心拍応答が過剰になりますが、この場合はβ遮断薬や運動療法でのレートコントロールが必要です。運動療法の禁忌ではなく、運動療法を継続すべき状況です。
(参考文献:安達仁編著 CPX・運動療法ハンドブック)
(編集長)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
水戸済生会総合病院の臨床研修は
総合診断能力を有するスペシャリスト
を目指します
◆水戸済生会での専門研修に関するご質問はこちらへ!
どんなことでも問い合わせフォームからご質問ください。
また、各診療科の専攻医にZoomで質問できますので、その旨もお知らせください!