専門研修ブログ

茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。

内科系(非手術)入院患者のVTE予防

2025.08.25
カテゴリー: 循環器

前回までは妊娠中および分娩後のVTE予防についてガイドラインからシェアしましたが、今回は手術を行わない内科系疾患入院患者のVTE予防についてです。

 

ちょっと考えてみて欲しいのですが、内科入院の患者さんは、高齢でベッド上で動けない(動かない)方が多く、CVが入っていたり、食事の十分摂取できなかったり、担癌患者だったり、発熱していたりと、VTEのリスク因子を非常に多く持っている人ばかりです。

 

実際のところ外科系と比較して、内科系(非手術)入院ではVTE予防管理の実施率が外科の59.2%に比べ7.3%と低く、PTE発症率が高かった(0.119% vs. 0.095%)ことが報告されていて、周術期だけでなく手術を行わない内科系疾患の入院患者でも、VTEの予防策の重要性が示されています。

 

一方で、内科系疾患といっても脳出血や出血性胃潰瘍、悪性腫瘍など出血に注意しなければいけない患者も含まれており、周術期のように分かりやすい予防策はガイドラインでも示されていません。ですが、ガイドラインでは原則的なところを推奨しているので、一度は目を通しておくと良いと思います。

 

まとめると、

・早期離床:動ける患者さんは、どんどん動いてもらう

・VTEのリスクが多く重なっている場合、出血の問題がないのであれば抗凝固療法を考慮

・弾性ストッキングはエビデンスに乏しく、やるならフットポンプ

・ICUなどの重症患者では抗凝固療法かフットポンプ。ただし両者の併用は推奨されない

 

ちなみに、内科系疾患の患者でも、VTEの高リスク患者では退院後(特に6週間以内)もVTE発症リスクが高まると報告されているそうです。一律には推奨されていませんが、40日間程度の予防的抗凝固療法により,そのリスクを抑制できるというデータも紹介されています。

 

(出典:2025 年改訂版 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン)

(編集長)

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