
臨床研修ブログ
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BNP/NT-proBNPの使いどころ(4)
前回はBNP/NT-proBNPが使える3つの場面を紹介しました。
その3つとは、
①心不全の診断・除外
②高リスク患者のスクリーニング
③心不全の管理
でした。
では、BNP/NT-proBNPのカットオフ値はどう考えればよいでしょうか?
心不全学会からのステートメントでは、下図のようにBNP/NT-proBNPの値で、前心不全、心不全、高リスク心不全と分けています。
ですので、①心不全の診断、除外や②高リスク患者のスクリーニング目的に測定した場合は、カットオフ値はBNPで35 pg/ml以上、NT-proBNPは125pg/ml以上を用いると良いでしょう。
なお、この値はBNP/NT-proBNPが低値になりやすい、EFの保たれた心不全(HFpEF)の見落としを避けるために設定されているので、簡単にこれらの値を超えてしまいます(つまり感度が高い)。
そうなると、①心不全の診断、除外には有用ですが、②高リスク患者のスクリーニングとしては特異度が下がります。そんな時は、生活習慣の改善を図ったり、その後のフォローを強化するなど、監視を強化するのが良いと思います。
一方、③心不全の管理に使う場合には、とっくにこれらの値を超えているので、胸部レントゲンや息切れなどの症状がない、調子のよい時のBNP/NT-proBNP値をベースとして把握しておき、そこからの変動を見ていきましょう。
最後に、BNP/NT-proBNPが心不全の除外に役立った症例を提示します。
70歳台の男性。気管支喘息のため吸入薬(ICS/LABA/LAMA)を使用していましたが、1週間前から夜間咳嗽が増悪してきたと受診しました。発熱はなく、喀痰も増えていない。下腿浮腫はありませんが、胸部レントゲンでは右下肺野に肺炎?胸水?という感じの微妙な陰影が出現していました。
右下肺野に肺炎? 胸水?
増悪する夜間咳嗽から心不全を心配してNT-proBNPを測定したところ、87.6pg/mlとカットオフの125未満だったので、心不全ではないと診断し、抗菌薬を追加したところ改善しました。
抗菌薬投与後の胸部レントゲン
右下肺野は改善
BNP/NT-proBNPは大きく変動するので、初めのうちは戸惑うことが多いと思いますが、症状や浮腫の有無、胸部レントゲンなどと組み合わせて判断すると、非常に有用な情報が得られるツールですので、ぜひ使いこなしてみて下さい。
(参考)
日本循環器学会/ 日本心不全学会 心不全診療ガイドライン 2025年改訂版
日本心不全学会 血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント2023年改訂版
(編集長)
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