臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。
心停止の鑑別・・・6H6T
あなたが年始からER当番をやっていたところ、救急要請が飛び込んできました。
「70歳台の男性のCPA(心肺停止)症例です。自宅で胸痛を訴えたあとに突然意識を失いました。」
10分かからないうちに救急車は病院に到着しました。救急隊員が車内で点滴ルートを確保してくれて、胸骨圧迫を続けいていますが、まだ自己心拍は再開していません。あなたもERの看護師さんらとともに、手際よく胸骨圧迫を代ったり、薬剤投与を行います。
でも、この時にあなたには、もう一つやらなければいけないことがあります。それは何でしょう?
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それはCPAの原因を探ることです。なぜCPAに至ったのか、その原因がわからなければ同じことを繰り返してしまい、せっかくROSC(自己心拍再開)しても、その心拍をつなぎ留めておくことができなくなってしまいます。
蘇生と同時に、蘇生する先の「なぜ」を探る必要があります。その鑑別が「6H6T」です(5H5Tと言われることもあります)。
6H6Tとは、
Hypovolemia(循環血液量減少)
Hypoxia(低酸素)
Hydrogen ion(アシドーシス)
Hypo/Hyperkalemia(カリウム異常)
Hypoglycemia(低血糖)
Hypothermia(低体温)
Tamponade(心タンポナーデ)
Toxins(毒)
Tension pneumothorax(緊張性気胸)
Thrombosis coronary(冠動脈疾患)
Thrombosis pulmonary(肺動脈血栓)
Trauma(外傷)
この鑑別を常に頭の中に入れ、心肺蘇生法を行いながら、採血、レントゲン、エコーを隙間を縫いつつ行っていきます。蘇生の先を見据えて行動することで、救命~社会復帰を手繰り寄せることができるのです。
なお、冒頭の症例はROSC後に造影CTで急性肺動脈塞栓症と診断されました。ECMO管理で改善し、無事退院となった症例です。
(編集長)
慌ただしい年始のER
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新年のご挨拶
新年明けましておめでとうございます!
本年もこのブログをどうぞよろしくお願い申し上げます。
新年を迎えて、あなたは今年の目標、そして将来の目標を考えてみましたか?6年生のあなたなら今年の目標はもちろん国試合格ですが、臨床研修が始まってからの将来の目標も忘れずに考えてくみてださい。
さて、その将来の目標に絡めての話ですが、内科系であっても外科系であっても、何か一つの仕事をマスターするには時間が必要ですよね。単に仕事ができるのではなく、想定されるあらゆる状況下できちんと結果を出せるようになるには、かなりの時間が必要なことはあなたも想像できると思いますが、どのくらいの時間を考えておけば良いのでしょうか?
そこで、今回はあなたに「1万時間の法則」を紹介したいと思います。
「1万時間の法則」とは、マルコム・グラッドウェルの著書『天才!成功する人々の法則』で紹介された、ある分野で一流になるためには1万時間の練習や努力が必要だという話です。1万時間と言えば、毎日3時間の練習を10年間続けることに相当します。
10年と言われるとガッカリする人もいると思いますが、ここで注意してほしいのは、この法則を「何かに熟達するには1万時間の練習が必要である」「1万時間練習しないと技能を身につけることはできない」という意味ではないということです。
ちょっと考えればわかることですが、練習時間だけが全てを決めるわけではありませんし、効率よく学べばもっと短い時間で熟達できるはずです。必ずしも1万時間を費やす必要はありません。
でも、何かに熟達するには自分から勉強して、繰り返し練習して、フィードバックを受けて、また繰り返すことが必要で、それには時間がかかるものなのです。手技の習得だとこのプロセスはイメージしやすいですが、手技以外の業務でも同じことが言えます。
すぐに上達しないから、自分にはセンスがない、自分には向いていないと判断するのは賢いとは言えません。
そして、時間をかけて熟達するにはいくつかコツがあります。よく言われることですが、目標を明確にする、そして努力の対象を好きになる、努力を習慣化することで、熟達するまでの長い期間でもモチベーションも維持できます。
1万時間の法則は、医学生のあなたにも、研修医や専攻医のあなたにとっても、大いに参考になる考え方だと思います。長い道のりを歩む中で、日々の努力を積み重ねることが成長への鍵となります。2025年も、皆さんが目標に向かって努力し続けることを応援しています。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
(編集長)
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