臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。
オリエンテーションとOJT
水戸では桜が満開で、病院の周りの桜もとてもきれいです。場所によってはそろそろ散り始めるところも出てきました。
当院では、新J1のオリエンテーションとOJTが始まっています。もちろん正式な入職前なのにオリエンテーションをするのかと、いろいろご批判を受けるのは重々承知しており、今回で最後にしようという流れになっています。ですが、「これから頑張るぞ!」とテンションを上げてきている新J1には、そのままの勢いで病棟デビューを果たしてもらいたい・・・、そんな考えで今年もやることにしました。
内容としては各部署からのオリエンテーションと、合間に先輩からのOJT(On the job training)です。OJTでは、新J2から電子カルテの使い方や、採血のやり方、ERや病棟での指示や点滴の出し方などを教わります。
そして週明けの月曜日は病院の入職式があって、午後から病棟デビューとなります。最初は看護師さんから話しかけられただけでも、かなりビビるはずですが、少しでも早く慣れるよう頑張ってください♪
(編集長)
新J2からの採血指導の一コマ
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水戸済生会総合病院の臨床研修は
総合診断能力を有するスペシャリスト
を目指します
◆病院見学に来ませんか?
当院の研修医がどんなふうに仕事しているのか?どんな生活を送っているのか?あなたの目で確かめてみてください!
病院見学をご希望の方は、下のフォームからご連絡ください。
なお、病院見学がむずかしい時は、Zoomで個別説明会を行っていますので、下のフォームに「Zoom希望」と記入してご連絡ください。
↓
https://recruit-mito-saisei.jp/entry
◆専門研修ブログもご覧ください!
当院には基幹型内科専門研修プログラムがありますが、その強みは消化器内科、循環器内科、腎臓内科の診療体制です。あなたも最短で内科専門医、そして施設を異動することなくサブスペシャルティ専門医と関連する各種の資格を取得できます。そんな内科専門研修プログラムを紹介するブログもぜひご覧ください。
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中枢性尿崩症(Central Diabetes Insipidus : CDI)
今回は蘇生後脳症による中枢性尿崩症(Central Diabetes Insipidus : CDI)の症例を経験したのでまとめてみました。
下垂体の後葉から抗利尿ホルモン(バソプレシン)が分泌されると、腎臓内で水の再吸収(尿濃縮)が促され、体内に必要な水分量をコントロールできます。下垂体機能障害の1つである中枢性尿崩症(Central Diabetes Insipidus : CDI)は、抗利尿ホルモンが分泌されなくなる、または低下することにより発症し、体内の水分が大量の尿となって失われます。
【症状】
症状は多尿→口渇→多飲→多尿…とループを繰り返し、昼夜を問いません。尿検査では低張尿(Uosm≦300 mOsm/kgH2O,Uosm<Posm)、低比重尿(<1.010)を認めます。続発性では原疾患の症状を合併します。
【検査】
検査は中枢性尿崩症の診断と治療の手引き(平成30年度改訂)にて明確に記載されていたため抜粋します。
1.尿量は成人において1日3000㎖以上または40㎖/㎏以上
2.尿浸透圧は300mOsm/kg以下
3.高張食塩水負荷試験におけるバソプレシン分泌の低下:5%高張食塩水負荷(0.05 ml/kg/min で 120 分間点滴投与)時に、血漿浸透圧(血清ナトリウム濃度)高値においても分泌の低下を認める。
4.水制限試験(飲水制限後、3%の体重減少で終了)においても尿浸透圧は300 mOsm/kg を越えない。
5.バゾプレシン負荷試験(水溶性ピトレシン 5 単位皮下注後 30 分ごとに2 時間採尿)で尿量は減少し、尿浸透圧は 300 mOsm/kg 以上
に上昇する。
確定診断は3症状すべてが揃い、検査の1,2,3または1,2,4,5を満たすもの、となります。検査を進める中で心因性多飲症と腎性尿崩症の鑑別が重要になります。
【治療】
治療はデスモプレシン(DDAVP)の経鼻製剤2.5μg/回または口腔内崩壊錠60μg/回を1日1回から投与します。治療導入後は尿量、尿浸透圧(または比重)、血清Na濃度、体重などをなるべく毎日測定し、投与量や回数を調整します。
発症原因は大きく3つ(特発性、家族性、続発性)に分かれ、続発性が最も多く約80%を占めます。これは画像上で視床下部や下垂体に器質的障害が認められるタイプで、具体的には脳腫瘍、脳手術後、感染など炎症、癌転移などがあります。一方で特発性とは、画像上で視床下部~下垂体に器質的異常を認めないタイプで約10%を占めます。
今回は蘇生後脳症にともなう中枢性尿崩症の症例を経験しましたが、文献によると、低酸素脳症後に尿崩症を発症するまでに60±46時間、2-3日後に尿崩症と判断されることが多い、と記載されており、本症例は心肺停止後から心拍再開するまでが長く、結果として低酸素脳症に至り、その2日後に尿崩症の診断に至りました。またその文献では、低酸素脳症の尿崩症は死亡リスクが高く予後不良因子とされており、予断を許さない状況であることに変わりはないと再認識できました。
我が国内の患者数は「3万人に1人」と言われる珍しい病気で、国内の患者数は約4000~5000人程度なので文献の絶対数も少ないです。調べる中で発症原因の統計にバラ付きがみられるのはこうした背景の影響と思われ、今後のデータ収集が期待されます。
(Aotearoa)
松永先生カンファの時の一コマ
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ほうれんそうのおひたし
あなたが病棟の患者さんで困ったことがあったので、指導医に相談するため連絡してみました。指導医は忙しかったらしく、あまり話も聞かずに「ハイハイ、それでいいよ」とだけ。ところが夕方のカンファの時にこの時の対応について話したところ「なんで相談しないんだ?」と怒られてしまったことはありませんか?
これから新人が入ってくると、あなたにとっては当たり前の対応も、新人にとっては初めてのことでどうしていいか分かりません。1年前のあなた自身を思い出してみればわかることと言え、ついこの指導医のような対応をしてしまうかもしれません。
こんな時に思い出してほしいのが「ほうれんそうのおひたし」です。
「ほうれんそう」は、ほう(報告)・れん(連絡)・そう(相談)のことで、あなたも聞いたことがあると思います。
「おひたし」とは
お:怒らない
ひ:否定しない
た:(必要があれば)助ける
し:指示する
つまり安心して報告、連絡、相談できるように、あなたが現場の雰囲気を作ることが必要です。
新人研修医からの連絡を「そんな(つまらない)こと・・・」とか、「いま忙しいのに・・・」という感じで、たとえ言葉に出さなくとも、そんな雰囲気を敏感に感じ取って話しにくくなります。そのうちにどんどん情報が来るのが遅くなり、「なんでこんなことになるまで連絡くれないの!」と、あなたも、そして患者さんも不幸になってしまいます。
これは病棟やERの看護婦さんたちも同じです。普段から報告、連絡、相談をしても大丈夫な先生だと思ってもらえるように気をつけてみて下さい。
(編集長)
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修了成果会と修了証授与式が行われました
早いもので、あと1週間もすると新年度になります。当院のJ2らも4月からの新しい職場への異動の準備で忙しくなっていますが、先週に修了成果会、そして今週は研修修了証の授与式が行われました。
修了成果会では、J2全員からのスピーチと指導医からのねぎらいの言葉、そしてJ1からの記念品贈呈がありました。修了証授与式では院長からJ2のそれぞれに修了証が手渡されました。
この学年は仲が良くて、まとまりがとても良く、安心して仕事を任せられる人ばかりでした。さらに同じ学年で2名の産休がいるという当院初の学年でもありました(当院ではこの学年の2名を含めて5名の研修医が産休をとっています)が、皆でカバーしながら無事に全員で修了式を迎えました。
水戸済生会での初期研修を修了したのですから、これから遭遇するどんな状況にも対応できるはずです。4月からの新たな場所でも間違いなく活躍してくれるでしょう。新たな環境で、緊張感と責任感をもって頑張ってほしいと思います。健闘を心から祈っています。
(編集長)
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ブース訪問ありがとうございました! レジナビ@東京ビックサイト
3月19日に東京ビックサイトで開催されたレジナビフェアに、当院も久しぶりにリアルで参加しました。
コロナ前のレジナビと言えば、参加する医学生が1500名を超える大規模イベントでした。昨年も開催されましたが、参加数がだいぶ少なかったそうです。今年もマスク解禁後といえそれほど多くの参加はないだろうと思っていましたが、実際は900名を超える参加者だったそうで、編集長の予想よりもだいぶ多い数でした。参加者の約6割が4年生(新5年生)で情報収集の機会として利用されているようでした。
さて、当院のブースではJ1の研修医3名とNao先生と編集長で対応しました。ほぼ切れ目なく訪問いただき、50名を超える方に足を運んでいただきどうも有難うございました!当院の売りである産婦人科、小児科、そして救急科に関心のある方が多かったのはもちろんですが、それ以外の科に興味がある人も多く来ていただきました。
当院はレジナビオンラインにも参加していますが、リアルだと質問していただけて、それに対して細かいところまで詳しく説明して、医学生側も我々も納得感が得られるという、リアルの良さを改めて認識しました。また、このブログの読者や当院のインスタのフォロワーと言う方もいて編集長的には大満足でした♪
レジナビで色々な病院の情報を手にいれたら、次にすることは病院見学です。このブログでは何度も触れていますが、興味がある病院には絶対に見学に行くべきですし、その中で気になった病院には複数回行ってみることをお勧めします。
春休み中の病院見学も多少の空きがありますし、5月の連休あたりの見学申し込みも、既にいただいていますので、ぜひ下記のリンクから早めにお申し込み下さい。お待ちしています♪
(編集長)
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国試合格おめでとうございます!
3月16日に医師国家試験の合格発表があり、当院マッチング10名全員が合格でした♪
おめでとうございます!!
今までの努力が報われて、ホッとしていると思います。ホントに良かったですね。我々指導医も、そしてJ2の先輩たちも、良いスタートを切れるように全力でサポートしていきますので、4月からの研修を頑張っていきましょう!
喜びもひとしおかと思いますが、合格したあなたは、これから医学生ではなく、医師として患者さんの前に立つことになります。医学部を目指した時に考えたことだと思いますが、臨床に出る前のこの時期に、自分がなすべきことは何か、自分に与えられた役割は何なのかを、是非もう一度考えてみてください。
残り僅かの休みですが、ケガや事故、そして体調に十分気を付けてお過ごしください。
(編集長)
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◆春休みは病院見学に来ませんか?
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◆レジナビでお会いしましょう!
3月19日に東京ビックサイトで開催されるレジナビに当院も参加します。
当日は研修医と編集長らがブースであなたをお待ちしています♪
病院見学の時間が取れないあなた、どの病院にいくべきか決めかねているあなた。
ぜひブースにお越しください!
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たこつぼ心筋症
日本人が発見したたこつぼ心筋症。今年の医師国家試験でついに新規出題されるなど話題の疾患ですね。今回私は国試と同時期に同症例を経験したため、まとめてみました。
まず疾患背景について、1990年ころ➀急性心筋梗塞に類似した発症経過で、②左室心尖部を中心とした領域の収縮異常を呈するが、③その責任病変として妥当な冠動脈病変を認めず、④短期間で正常化してしまう病態が報告された。左室収縮末期像が「たこつぼ(入口が狭く奥が広い形)」に似ていることから「たこつぼ型」と形容されて以来、この名称は次第に定着し「たこつぼ心筋症」と呼称されるようになりました。
原因は未解明です。多枝冠動脈攣縮説、微小循環障害説などありますがカテコラミン心筋障害説が今のところ有力視されています。カテコラミン心筋障害説では、哺乳類の心臓において交感神経とβ受容体の分布が心尖部と心基部とで真逆であり、それが発症に関与しているのではと指摘されています。しかしどの説でも臨床像と合致しない事象が多く、確証に至っていません。
臨床症状としては、突然の感情的・肉体的ストレスを誘因とした胸部症状(胸痛・息苦しさなど)が典型例です。感情的ストレスの場合、討論会で緊張した、口論になった、震災を経験したなど日常誰でもあり得るエピソードで発症します。肉体的ストレスの場合、基礎疾患による症状がストレスとなり発症、あるいは検査・治療など医療行為を契機に発症します。
疫学としては、高齢女性(73±11歳)に好発する(凡そ男:女=1:4)と言われていますが、男性では肉体的ストレスに関連し発症することが多いという特徴もあります。
症状が急性心筋梗塞と類似しているため検査も同様の手順を踏みます。心電図では急性期にST上昇(心筋梗塞に類似)、陰性T波やQT延長など、冠動脈造影では異常を示さないことで、急性冠症候群との鑑別ができます。心エコー・左室造影は図1を参照してください。
図1:たこつぼ心筋症の左室造影
左室心基部の過収縮と心尖部を中心とした収縮低下を認める。
経過としては、1か月以内に壁運動以上は正常化し一般的に予後良好とされています。治療も多くの場合対症療法のみ(原因不明なので確立されていない、というのが本音)です。しかし、心破裂やtorsade de pointesといった致死的不整脈を合併することもあるため決して甘く見てはいけないと指導医が強調していました。
今回私が経験した症例は70歳台の女性で、胸痛・V1~V5でST上昇・心筋逸脱酵素の上昇あり、STEMIを疑われ緊急カテーテル検査が施行されるも責任病変はなく、たこつぼ心筋症の診断に至りました。その後合併症はなく入院10日目の心エコーにて心尖部壁運動の改善みられ入院14日目に退院、以降も再燃なく経過しています。
この症例で問題になったのは、この方の誘因は何だったのか、という点です。患者さんは体が不自由で、自宅で転倒したのですが、帰宅した家族に発見されて、いつ、どうして転倒したのか本人も覚えていませんでした。転倒し際に頭部打撲で出血もあり、感情的ストレスというよりは肉体的ストレス(今回は転倒とか頭部外傷)の関与があると推測されましたが、原因未解明なだけに断定は難しかったです。
たこつぼ心筋症は基礎疾患の症状により隠蔽されることも多く、重篤な状態で発症した場合自ら訴えようがないことから、急性期には見過ごされ後の心電図変化で初めて診断されるケースもあります。このような疾患の性質から、救急領域はもちろんのこと、内科領域あるいは外科領域とほぼすべての診療科で遭遇しうる疾患と言っても過言ではありません。
(Aotearoa)
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【参加御礼】茨城県臨床研修病院合同説明会 on web
3月11日に茨城県臨床研修病院合同説明会がWebで開催されました。
新型コロナの影響で2年前からWebでの開催となっている県主催のイベントです。事前申し込み制で、各病院との個別面談形式で行われました。1人あたり10分で、入れ替え時間が5分でしたから1時間に4名のペース。当院の枠には昨年同様に15名もご参加いただき、最後の方が終わったのは17時でした。多数の方にご参加いただき有難うございました。
10分という短い時間でしたが、参加者の皆さんは事前に質問事項を準備してくれていて、短時間といえ知りたいところをある程度はお伝え出来たのではないかと思っています。
今回はJ1の藤森先生と海老原先生が参加してくれましたが、もうすぐ2年目になる研修医からの実感のこもった回答に、参加者も頷きながら聞き入っていました。
と言っても、後からもうちょっと聞いてみたいことが出てくるはずです。編集長は病院見学を推奨しているものの、諸事情で足を運べないあなたには、Zoomで個別病院説明会も準備しています。基本的に研修医が対応するので、ちょっとした疑問も気にせず、時間に余裕をもって質問できます。ぜひご利用ください。
Zoomでの個別病院説明会をご希望の方は、下記リンクから氏名などの他に希望日や知りたい診療科、さらに「その他ご希望」の欄に「Zoomでの説明希望」と入力して送信して下さい。日程を調整してご連絡いたします。
(編集長)
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今日は3月11日
今日は3月11日です。東日本大震災から12年経ちます。
あの日、あなたはまだ小学生とか中学生だった頃でしょうか?編集長は外勤先の茨城県庁9階の職員診療所にいました。急いで病院に戻り、それから1週間はほとんど家に帰らず院内にいたことを覚えています。
そしてこれから紹介する記事は2016年5月からこのブログを始めてから、毎年この時期に載せているものです。編集長としては、単にあの時のことが思い出されるだけでなく、これから研修を始めるあなたに、そして現在初期研修中のあなたに、是非とも読んでもらいたいからです。
この記事を書いてくれた白ひげ救急医は弘前大学の出身で、医師としてのデビューが東日本大震災という強烈な場面で、その後の医師人生に大きな影響を受けました。まだ医師でもない、何もできない立場だったとは言え、病院スタッフよりも一生懸命動き回ってくれていたのをよく覚えています。
そんな白ひげ救急医は、長い闘病生活の末に天国に旅立ちました。ずっと死と隣り合わせでしたが、そんな様子は見せずに救急医としてドクターヘリやドクターカーに乗って活躍したり、後輩の研修医たちを鼓舞し、先頭に立って指導してくれていました。
白ひげ救急医と一緒に仕事をしたことのある後輩も少なくなりましたが、水戸済生会にはそんな先輩がいたことは覚えておいて欲しいと思います。
(編集長)
**************
白ひげ救急医です.
皆さんは「あの日」何をしていましたか?
僕はその頃,まだ法律的には医学部6年生.卒業は間違いないけど,国家試験の結果は出ておらず宙ぶらりんの状態.大学のある弘前から,妻と一緒に水戸に移動して来たのはあの日の前日.半日かけて車で東北道を南下し, 水戸市内のホテルに一泊.
そしてあの日.
朝から空っぽの新居に,引っ越し業者の手によって,意外に多い量の段ボール箱を搬入してもらい,僕と妻は少し遅い昼食をとりに外出.まだ見慣れない水戸の町並みの中,全国どこでも同じデザインのコンビニの駐車場に車を入れた瞬間・・・
2011年3月11日午後2時46分
当然,新居にはまだライフラインが通っておらず,怯える妻を連れて,自然と水戸済生会病院に足が向かっていました.
学生時代から何度も病院見学をしていたので,僕の顔を覚えてくれている先生方から声をかけていただきました.妻に安全な場所を提供していただき,僕はお借りしたスクラブに袖を通し,できる範囲のお手伝いをさせていただきました.
とは言え,法律的にはただの医学生.混乱する院内で事務的な作業,搬送のお手伝い,医療資器材の運搬など,はっきり言ってこの時の事はあまり覚えていません.何もできませんでした.
おそらく,医師の資格を持っていたとしても,ほとんど役に立たなかったと思います.“何もできなかった” “何も覚えていない”ということを強烈に覚えています.
これが僕の医師人生の,そして救命医としての始まりでした.その後,それぞれの早さで時間が流れ,救命医として勤務する中で,3月11日になると毎年「あの日」のことを思い出します.何の因果かわかりませんが,3月11日に当直を担当する事が多く,今年もまた当直に入ります.あの時何もできなかった自分と今日の自分を最大限客観視しながら,節目の日の当直を迎えます.
災害はいつ起こるかわかりません.その時医師として何ができるか.今のうちに考えてみませんか?
(白ひげ救急医)
当時の慌ただしいERの一コマ
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どうして家族がそう判断するのか?を理解するヒント
あなたも患者さんが亡くなりそうな場面に何度か遭遇したことがあると思います。ご家族に病状を説明して、いよいよ最後の時はどのように対応するかという話もします。その時のご家族の反応はどうだったでしょう?
最後まで積極的な治療を望む家族もいれば、意外にあっさりしていたり、「苦しまないようにお願いします」と言われたり、話をするまでどんな反応があるか、なかなか予想できないと思いませんか?
我々は疾患のことを理解しているので、その後の経過をある程度予測できるし、こんな感じで対応するのがイイかなとイメージしながらご家族に話をします。ところが、ご家族の反応は我々の予想通りにはいかないことがほとんどです。
でも、どうしてご家族がそう判断するのかを理解するヒントを得る方法があるのですが、あなたはご存じですか?
↓
↓
それは家族歴に隠されています。
入院時などに家族歴を聞く時に、患者さんのご家族の中で既に亡くなっている方がいれば、その方の話を詳しく聞き出してみてください。
編集長の経験で言えば、例えば脳梗塞が原因で寝たきりで、療養病院を何度も転院した経験がある方がいたご家族は、その苦労を思い出して、積極的な治療を希望しないことが多い印象があります。
逆に、大動脈解離や心筋梗塞などで急にご家族を亡くされた方は、何もしてあげられなかったということをずっと悔やまれて、最後まで積極的な治療を希望されたご家族が多かったように思います。
また、ご家族がみな健在で家族が亡くなる経験がない場合は、時間をかけて丁寧にお亡くなりになるまのでプロセスを説明する必要が出てきます。
家族歴は鑑別疾患を考える時の重要な情報源だけでなく、ご家族の考えや選択を理解する大きなヒントが隠れていることがあります。冒頭のようにセンシティブな話をする時に役立ちますので、あなたもこういう視点で家族歴を聞き出してみてください。
(編集長)
指導医の質問に答えられずに
固まっている二人
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