臨床研修ブログ

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レッドマン症候群

2025.08.05
カテゴリー: カンファレンス 内科

今回はJ1のA先生が書いてくれた記事を掲載します。前回のさくらもち先生に続いてのブログデビューです。これも日常臨床での経験からの記事ですので、是非読んでみてください。

(編集長)

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こんにちは!

さくらもち先生に引き続きブログデビューさせていただきます、J1のAと申します。

 

文章を書くことが苦手なのでずっと逃げていましたが、そろそろ編集長に怒られそうなので書いてみます。拙い文章ですが、ぜひ読んでみてください^ ^

 

 

あなたが当直中に病棟から電話がかかってきました。

「入院している〇〇さんですが、顔面が紅潮し、体全体が真っ赤です!薬疹でしょうか!先生診てください!」

 

研修医になってまだ3ヶ月目。こんな電話かかってきたら、普通に焦ります。病棟に早足で向かいながらこの患者さんのことを思い出してみました。

 

「60歳台の男性でパーキンソン病でかかりつけの方で脱力、歩行困難で入院した方だな。熱があったから血液培養出したら、MRCNSが確か4本中3本から検出されて、抗菌薬始めてたな。」

 

そうこうしているうちに病室に着きました。

 

電話で聞いていた通り、患者さんの顔面は真っ赤に紅潮しており、四肢、体幹には紅斑が広がっていました。

 

バイタルは安定していて、患者さんの様子は落ち着いており、「痒くないし痛くもない」と言っています。ひとまず安心、、。

 

一体、この患者さんに何が起こっているのでしょうか?

そういえば、看護師さんからの電話の時、「薬疹かも」と言っていた気がします。

カルテでこの患者さんへの処方を確認してみました。

 

〜、〜、イーシードパール、セフトリアキソン、バンコマイシン

 

ここまで読んで分かったあなたはもう国試合格間違いなしです。おめでとうございます。今すぐ勉強をやめて遊びにでも出かけてください。

 

では、答え合わせです。

 

 

“レッドマン症候群”という名前を聞いたことがあるでしょうか?

 

レッドマン症候群とは、バンコマイシンの急速投与によりヒスタミンが遊離されて生じるアナフィラキシー様反応で、顔面、頸部、体幹、四肢に搔痒感と紅斑性発疹が現れます。ほかには、脱力感、血管浮腫、胸痛・背部痛なども起こり得ます。発症機序にIgEは介在しないためアレルギー反応ではありません。

 

ここでバンコマイシンについて簡単におさらいです。

 

バンコマイシンはグリコペプチド系の抗菌薬で細胞壁の合成を阻害します。MRSAを含めたグラム陽性菌にのみ有効です。基本は点滴投与ですが、偽膜性腸炎には経口投与でしたよね。

 

忘れてはならないのは、薬物血中濃度モニタリング(TDM)が必要ということです!(国試頻出です‼️)

濃度が高ければ腎障害などの重篤な副作用を引き起こしますし、低い状態が続けば耐性菌が生えてしまうという、なかなか難しい抗菌薬です。

 

バンコマイシンの初回TDMは、投与3〜4日目(投与4〜5回目)に行うことが望ましいとされています。採血の時間帯ですが、「トラフ」と呼ばれる投与直前(約30分前)に行います。(なぜこのタイミングかを説明すると長くなってしまうのでぜひ調べてみてください。) また、場合によっては「ピーク」と呼ばれる点滴終了後1〜2時間のタイミングで濃度を測ることもあります。

 

さて、レッドマン症候群の話に戻りましょう。

 

レッドマン症候群を引き起こさないためには、バンコマイシンの点滴を60分以上かけてゆっくり点滴静注することがとても重要です。

 

実際に、上級医がオーダーしたカルテを見てみると、「投与時間1時間30分」としっかり書いてありました。

 

もし、あなたがバンコマイシン投与中の患者の全身の紅斑をみたら、すぐにアレルギーと判断するのではなくレッドマン症候群を疑って投与速度の確認を行いましょう!

 

 

レッドマン症候群は抗ヒスタミン薬により改善させることができます。この患者さんは、ポララミンを投与したところ翌日には紅斑は消退していました。

 

ここまで読んでいただきありがとうございました。バンコマイシンについて少しだけ詳しくなっていただけたかなと思います。

 

また、ぜひこのブログに遊びに来てください!

見学もお待ちしております\(^^)/

(A)

 

ERでの一コマ

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