臨床研修ブログ

水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
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仕事の進め方(2023年版)

2023.09.30
カテゴリー: 初期研修

明日から10月ですね。今年は残暑が長すぎますが、いかがお過ごしでしょうか?

 

J1のあなたも仕事を始めて半年になります。仕事を始めて半年もたつと、病棟や当直の仕事にもだいぶ慣れてきて、少し余裕もでてきたと思います。

 

でも、そうは言っても仕事が無くなるわけはなく、PHSがかかってきて仕事がたびたび中断されてしまいます。またカンファの準備や地方会での発表など、病棟以外の業務も振られるようになります。忙しいですが、成長するチャンスと捉えて前向きに取り組んでもらい

たいです。

 

そんな毎日ですが、どの仕事から先に片付けるべきか? 生産性を上げて、できるだけ早く帰るにはどうしたらいいか? あなたは意識したことがあるでしょうか?

 

仕事の進め方をどう考えるのかはすごく大事で、このブログでも過去にたびたび取り上げてきました。その元ネタは「7つの習慣」という本の中の「時間管理のマトリックス」というものですが、少し前に読んだ本に、このマトリックスを少し発展させた考え方が書いてあり、なるほどと思ったのでシェアしたいと思います。

 

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まずは、7つの習慣の中にある「時間管理のマトリックス」について説明します。

やらなければいけない仕事を、下の図のように4つのカテゴリーに分けた時、あなたは最初にどのカテゴリーの仕事に取り組みますか?

 

最初はⅠのカテゴリーを選びますよね。これには異論はないと思います。

 

では2番目に取り組む仕事は何でしょう? たいていの人はⅢのカテゴリーと答えます。

 

でも、具体的な仕事を想像してみてください。研修医の仕事でⅢのカテゴリーに入るのは・・・、例えば退院直前になって退院指示を書いてくれと看護師さんに言われるとか、夕方になって翌日の点滴の指示を出してくれと看護師さんから電話がかかってくるとか・・。よく考えると、前もって処理できそうなものがほとんどです。

 

では、カテゴリーⅡに入る具体的な仕事は・・・、例えば学会の発表とか抄読会の当番、専門医試験に向けてのお勉強が相当すると思います。ところが、学会発表の準備が前日まで終わっていないとか、明日の抄読会の準備が出来ていない、と言っても許してもらえませんよね。専門医試験も勉強していなければ落ちるだけです。

 

つまり、油断していると緊急度も重要度も高いⅠのカテゴリーに移ってしまいます。当たり前ですが、学会や抄読会、試験の準備をちゃんとしていれば、カテゴリーⅡからⅠの事案にならずに済むわけです。仕事を進めるコツは、カテゴリーⅡの仕事を上手く処理して、カテゴリーⅠの事案にならないようにしておくことなのです。

 

さらに、カテゴリーⅢの仕事を大きくしないように、効率よく片付けることです。Ⅱを大きくして、Ⅲを小さくするように優先順位を決めて取り組んでいくのが理想的です。

 

ところが、カテゴリーⅡの仕事は大事なことは分かっているけど、どうしても取り掛かりにくいという特徴があります。学会発表の準備をやらなくてはいけないのは分かっているけど、いざとなると後回し・・・。

 

こんな時に「時間投資思考(ロリー・バーデン著)」という本には、重要度(Important)と緊急度(Emergent)に加えて、「将来的意義(原著ではSignificant)」という3つ目の軸を加えて考えると良いことが書かれています。

 

将来的意義(Significant)のイメージ

 

例えばあなたのキャリア形成を考えてみるとイイと思います。将来、どの診療科に進むか?専門医資格などを、いつ取得するのか?といったキャリア形成から見た場合に重要なことがカテゴリーⅡに相当します。専門医資格取得には学会発表が条件となっていることが多いですから、学会発表ととらえるより、その先の専門医資格のための準備ととらえると、少しやる気がでませんか?。

 

「今」重要なのは何か?だけでなく、「後」に重要な効果を生むものは何か?ということまで考えて判断を下ことが必要なんだと思います。あなたもちょっと意識を変えて仕事に取り組んでみてください。

(編集長)

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救命救急センターだより「一酸化炭素中毒」

2023.09.28
カテゴリー: 救命救急センター

空に憧れている消化器内科医ことnaoです。こんにちは。ようやく涼しくなってきましたね。

 

いよいよ2024年から医師の働き方改革が本格化しますが、そのせいで時間外労働の厳しい制約があり救急科での診療にも制約が入ってしまっています。働きたいのに働けない、なんて嘆きも出てきますが、それくらい当院では時間外労働しっかり管理されておりますので、若手の先生はご心配なく当院で働いていただければと思います。

 

さて、意外と対応を慎重にしなければならない一酸化炭素中毒についてお話しさせていただきたいと思います。三次救急病院ですと、定期的に火事などで気道熱傷きたしたり、一酸化炭素中毒になったりという患者さんが搬送されてきます。

 

一酸化炭素中毒の症状ってどんな症状かご存じでしょうか。軽いと頭痛、めまい、嘔気、皮膚の紅潮程度で、重度になってくると呼吸困難に加えて呼吸抑制、意識障害、痙攣などをきたします。

 

症状だけを見たときに一酸化炭素中毒っぽいな、っていきなり思うことはないと思います。つまり、症状から鑑別に挙げる疾患ではなく、状況から鑑別にあげる必要があります。

 

では、一酸化炭素中毒をきたす状況ってどんなでしょう? 家事、練炭自殺、住居用でない地下施設での作業などが考えられます。そうです。わざわざ念を押されなくても最初から鑑別に上がりますよね。

 

でも、意外と鑑別に上がりにくいことがあります。

 

それは、特に自殺目的でもなんでもなく、日常のちょっとだけ特殊な事情で一酸化炭素中毒になることがあります。

 

最近は住宅が高気密化しています。それに伴い住宅の換気システムは向上していますが、換気シ

ステムが何らかの理由で作動していない状況で、家の中で焼き肉をした、とか。雪国ですと、寒い時期に車にエンジンをかけたまま仮眠をしていたら、マフラーの出口がふさがって、排気ガスが室内に逆流してきてというのは定期的にある事故です。また、ガレージで換気扇を回さずに車のエンジンをかけて作業していたなんて言う事例もあります。

 

多くの場合、救急隊が優秀ですのでしっかり現場のアセスメントをして伝えてくれますが、プレホスピタルの場合は自分が最先着隊の時もあります。その場合は自分が現場でそのアセスメントができなければなりません。それができないと、自分がむしろ危険にさらされる可能性すらあります。ですので、現場の状況把握、情報収集というのは非常に大切です。

 

ちなみに、ご存じだと思いますが、SpO2では酸素化ヘモグロビンとCO-Hbを区別することができませんので、SpO2が保たれていることと一酸化炭素中毒の軽症、重症は基本的に関係ありません。ですので一酸化炭素中毒は血ガス分析装置でCO-Hbを測定して判断していきます。ただ、タバコ吸いの人は5から最大10%程度くらいまではCO-Hbが含まれていることがありますので、CO-Hbがちょっとくらい高いからと言って慌てず、生活歴の聴取も重要です。

 

治療は軽症の場合は酸素投与です。CO-Hbが20%を超えてくるような場合は高圧酸素療法を検討したり、挿管管理が必要になることがあります。

 

10年以上医者をやっていても、病歴聴取が甘かった!と振り返ることがあります。研修医の先生がしっかり問診をとっているので、先に気づいてくれたりすることすらあります。基本って大事です。ではまた!

(Nao

朝からバタつくERの一コマ

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進行性核上性麻痺(PSP)はhummig birdだけじゃない! その2

2023.09.26
カテゴリー: カンファレンス 内科

前回に引き続き、J1のホナミンのPSPのまとめです。今回はPSPの診断基準を紹介します。

 

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③PSPの診断基準

前回の記事で紹介した鑑別疾患を踏まえた厚労省作成の診断基準が以下になります。

 

1.主要項目

(1)40歳以降で発症することが多く、また緩徐進行性である。

 

(2)主要症候

①垂直性核上性眼球運動障害(初期には垂直性衝動性眼球運動の緩徐化であるが、進行するにつれ上下方向への注視麻痺が顕著になってくる。)

②発症早期(おおむね1~2年以内)から姿勢の不安定さや易転倒性(すくみ足、立直り反射障害、突進現象)が目立つ。

③無動あるいは筋強剛があり、四肢末梢よりも体幹部や頸部に目立つ。

 

(3) 除外項目

①レボドパが著効(パーキンソン病の除外)

②初期から高度の自律神経障害の存在(多系統萎縮症の除外)

③顕著な多発ニューロパチー(末梢神経障害による運動障害や眼球運動障害の除外)

④肢節運動失行、皮質性感覚障害、他人の手徴候、神経症状の著しい左右差の存在(大脳皮質基底核変性症の除外)

⑤脳血管障害、脳炎、外傷など明らかな原因による疾患

 

(4) 診断のカテゴリー

次の3条件を満たすものを進行性核上性麻痺と診断する。

①(1)を満たす。

②(2)の2項目以上がある。

③(3)を満たす(他の疾患を除外できる。)

 

私が今回経験した症例は、元々Parkinson病と近医で診断されレボドパを内服されていましたが、発症3年にして歩行不可とPDにしては進行が速い点、入院時にレボドパを数日中止しても症状の増悪がなかった点(レボドパは半減期が非常に短いため、1日飲まなかっただけでも症状悪くなるそう)、身体所見として上肢の筋強剛は左右差なくごく軽度だが体幹の無動が高度(瞬きや表情筋の動きが全くない)である点から、PSPかもしれない!と臨床的に診断。MIBGシンチを施行したところ、取り込みの低下陰性であり、PDの除外ができました。

(ホナミン)

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進行性核上性麻痺(PSP)はhummig birdだけじゃない!

2023.09.23
カテゴリー: カンファレンス 内科

J1のホナミンのブログデビュー記事です。Parkinson病と他院で診断されていた入院患者さんの臨床経過に違和感を感じて、いろいろ調べてくれたことをまとめてくれました。良くまとまっているので、あなたも是非参考にしてみてください♪

 

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皆さんこんにちは。今日は私と一緒に『進行性核上性麻痺(PSP)』について勉強しましょう。国試受験のときは、PSP=humming bird signという一対一のキーワードしか覚える余裕がなかった私ですが、総合内科をローテーションしている際にParkinson病とPSPの鑑別について学ばせていただきました。拙い文章ですが、私のアウトプットのためにも勉強したことを共有させていただきます。

 

①PSPってなに?

パーキンソニズム(安静時振戦、筋強剛、無動、姿勢保持障害)をきたす疾患の中でParkinson病についで頻度が高い、中年以降に追好発する神経変性疾患。パーキンソニズムのうち、安静時振戦はマレ。

これがあったらPSPかも?と考える特徴的な所見は、眼球運動障害(垂直性核上性注視麻痺=注視できない、特に下方視、発症3年程度で出現)、頸部後屈(四肢<体幹に目立つ筋強剛)、早期から転倒しやすい(姿勢保持障害のため)皮質下認知症、偽性球麻痺(構音障害や嚥下障害)など。

進行例では、頭部MRIで第3脳室の拡大や中脳被蓋の萎縮(←矢状断でhumming bird signがみられる理由)がみられる。大脳基底核と脳幹を中心にタウ蛋白が異常蓄積するが、その機序は明らかでなく、現時点で有効な治療法はないため対象療法を行う。

予後としては4~5年で寝たきりとなり、5~9年で衰弱で死亡と、進行が速いのも特徴。

 

②鑑別ってなにがあるの?

鑑別のポイントは様々あり、例えばParkinson病は一側の手の振りが減少するのが特徴らしいのですが、患者さんを観察しても、うーんよく分からない…。そのため、今回はそんな私でも鑑別ができたポイントをまとめてみました!

 

・Parkinson病(PD)

-頭部MRIで異常所見は見られない。

-心筋シンチグラフィー(MIBG)で後期相での取り込み低下がみられる。

-レボドパがよく効く(十分量投与しても反応性が乏しかったり、逆に薬剤を中止しても症状増悪しなければPDじゃないかも⁉というヒントに。)

-PSPは頸部後屈がみられるが、PDは頸部を前に突き出す姿勢がみられる。

-寝たきりになるまで進行するのに大体15年以上かかる。

 

・多系統萎縮症(MSA)

-小脳失調(ふらつき、四肢の協調運動障害)、自律神経症状(起立性低血圧、便秘)が特徴。

-頭部MRI T2強調画像で被殻外縁にスリット上の高信号を認める。

 

・大脳皮質基底核変性症(CBD)

-大脳萎縮や四肢の症状(肢節運動失行、筋強剛、ジストニア)に左右差が見られる

-他人の手徴候(aline hand signとも言う、自分の腕が勝手に動き自分で制御できない)が特徴的

-しかしPSPとCBDの臨床診断は困難なことも多く、基本的に病理診断らしい。

 

次回は診断基準を紹介します。

(ホナミン)

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【2回目】田口先生の”皮膚科レジデントレクチャー”

2023.09.21
カテゴリー: 初期研修

今月初めのことですが、水戸協同病院皮膚科部長、筑波大学臨床教授の田口先生による、皮膚科レクチャーの2回目が開催されました。

 

前回のこの記事でもご説明した通り、以前は水戸済生会にも常勤の皮膚科医がいたのですが、現在は非常勤のみで、お隣の水戸協同病院の皮膚科の先生方に来ていただいています。このようなご縁で、当院のJ2が水戸協同病院の皮膚科をローテートさせてもらうことが増えてきました。

 

今回のレクチャーのテーマは「薬疹」でした。

 

入院中でもERでも、患者さんや看護師さんから「薬疹ではないか?」「クスリの影響は?」と聞かれることが良くあります。そうかもしれないけど、安易に薬疹と診断できない悩みは誰でも経験するはずです。そんな薬疹についての基本を非常に分かりやすく教えていただきました。

 

今回はレクチャーの中から「薬疹の基本」をシェアします。

 

・投与している間は、悪化・拡大・進行する

 ⇒原因薬剤を止めないといけない(基本は全部止める)。
 ⇒止めれば、改善する事例の方が多い。

・第1容疑者は、7日~1ヵ月前から始めた薬

 ⇒初回投与薬が感作されるのに5日以上かかる。
 ⇒長期間投与している薬で、薬疹は起こりにくい。

 

・治療は「ステロイド」
 ⇒外用はもちろん、重症ではPSL30~60mg/day。

 

・出現部位は、躯幹からが多い

 ⇒四肢末端や顔からの出現は稀。

 

・ウイルス性発疹症との鑑別に注意

 ⇒安易に、PSL投与とする前に、一度感染症除外を!

 

・随伴症状と既往歴(薬疹歴)の再チェック
 ⇒発熱肝機能障害好酸球増多粘膜診は?

 

・診療上遭遇する9割が播種状紅斑丘疹型を呈する

  ①躯幹から始まる

  ②左右対称・ほぼ均一

  ③個疹は「丘疹 紅斑

  ④経過とともに「癒合

 

これらを知っておくだけでも、薬疹を疑うことに自信がつきますね。

 

実は好評のため12月にも田口先生のレクチャーを開催してもらうことになりました。今から非常に楽しみです♪

(編集長)

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髄膜炎②・・・松永先生の感染症カンファ

2023.09.19

松永先生の感染症レクチャーから髄膜炎についての続きです。

 

髄膜炎は一刻も早く治療を開始することが肝心です。培養結果を待っているヒマはありません。

なので、年齢などを考慮して原因微生物を想定し、Empiric therapyを開始します(下表参照)。

 

 

そして、髄膜炎の治療では「髄膜炎用量」で抗菌薬を投与する必要があるのを知っていますか?

血液脳関門(BBB)を通過して、十分な濃度に達する用量として設定されています。 

さらに、抗菌薬に加えてステロイド投与も行われます。具体的には、

デキサメサゾン0.15㎎/㎏(体重60~70㎏の人なら10㎎と覚えておくと便利です)

 

もちろん髄液や血液培養の結果が判明したら、適切な抗菌薬への変更も検討しましょう。

(編集長)

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【書評】SKILL 一流の外科医が実践する修練の法則

2023.09.18
カテゴリー: 専門研修ブログ ブログ

専攻医になると手技の習得が大きなテーマの一つになります。例えば、どの診療科でもエコーは習得すべき手技ですし、循環器内科ならPCIやアブレーション、消化器内科なら内視鏡、当院の腎臓内科ならシャント造設やPTAなど。

 

初期研修医のうちはあまり手技のレベルに差があるようには見えませんが、専攻医になるとちょっと様相が変わってきます。そう、上手い人は最初から上手くできるように見えてしまいます。

 

もちろん経験症例数が多ければ、一般的には上達も早いのでハイボリュームセンターは有利かもしれません。でも、症例数が多いだけでは決して手技が上手くなる訳ではないのも事実。

 

では、上手い人とそうでない人は何が違うのか?そんな疑問に答えてくれるのが本書です。

 

著者はクリストファー・S・アーマッド医師。整形外科医でニューヨークヤンキースのチームドクター長を務めている人です。そして翻訳したのはセントルイス大学で小児外科をしている日本人医師の宮田真先生です。訳者の言葉には「これまで自分が日米で出会ってきた「抜きんでた人たち」の哲学が見事に言語化され、ちりばめられているように思いました。中略 「抜きんでた人たちに」になるエッセンスを読みやすい形でまとめたこの本を、同じような志をもつ多くの日本人医師・研修医・医学生、ひいては一芸に秀でようとするあらゆる分野の人たちに広めたいと、翻訳を決意した次第です。」とありますが、まさにこのブログを読んでいるあなたのためにある本だと思います。

 

編集長自身が実践していたことも書かれていましたし、実践していなかったことも書いてありましたが、手技を身につける、上達するためのコツが見事に言語化されていると思います。

 

上手い人は最初から上手い訳ではない。見えないところで自分の才能を作り出すべく膨大な努力をしていることが分かるはずです。ぜひ何度も繰り返して読むことをお勧めします♪

(編集長

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どんなことでも、問い合わせフォームからご質問ください。

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髄膜炎①・・・松永先生の感染症カンファ

2023.09.16

松永先生の感染症カンファからのシェアです。テーマは「感染症Emergency」でしたが、今回はEmergencyの中でも重要な髄膜炎について2回に分けて紹介します。

 

髄膜炎は、頭痛だけでなく、何となく反応が鈍いといった程度の意識障害だったり、けいれん、神経巣症状も来します。大事なのは、迅速に診断して、速やかに治療を開始することです。

 

さて、ここで質問です。髄膜炎の時に見られる身体所見を挙げて下さい。

項部硬直だけしか思いつかなかったあなたはラッキーです。必ず続きを読んでくださいね。

 

項部硬直以外にも、

Brudzinski徴候

Kernig徴候

Jolt accentuation

Neck flexion test

などがあります。

 

それぞれのやり方と、どうなったら陽性と判定するかは必ずネットで調べておいてください。

 

ここでは、松永先生が強調していたそれぞれの感度と特異度について紹介します。

 

【項部硬直】       感度 30%  特異度68%

【Brudzinski徴候】   感度5%   特異度95%

【Kernig徴候】     感度 5%   特異度95%

【Jolt accentuation】 感度 97% 特異度60%

【Neck flextion test】感度 81% 特異度39%

 

こうしてみると、感度と特異度が結構違っているのが分かります。髄膜炎は、身体所見で確定診断する疾患というよりも、見逃してはいけない疾患ですから、特異度よりも、感度が重要になります。感度が高いということは、陰性所見に意味があり、陰性ならば除外可能を意味します。

 

上記の感度・特異度を見てみると、Jolt accentuationやNeck flextion testが陰性なら除外可能です。

 

もしJoltが陽性なら、もっと特異度の高い、項部硬直やBrudzinski徴候、Kernig徴候をさっと確認し、髄液検査をためらわないことです。

(編集長)

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感染症Emergency・・・松永先生の感染症レクチャー

2023.09.14

本年度3回目の松永先生となる感染症レクチャーが開催されました。

 

今回のテーマは「感染症Emergency」でしたが、レクチャーの中から、いいところをシェアします。

 

Emergencyには色々な意味がありますが、感染症におけるEmergencyには

 

・時 間:経過が速い

・重症度:局所の問題(壊死など)

      全身の問題(循環・呼吸動態)

・部 位:局所(髄膜、咽頭周囲、眼窩など重篤な機能障害が残る)

      全身(Focus不明のSeptic shock)

 

といった、いくつかの意味があります。今回のレクチャーの大事なメッセージとしては

Emergencyであってもアプローチは基本通り」。つまり、この3つを押さえることが重要です。

 

診断の二つの軸:どこで?なにが?

治療の二つの軸:化学的と物理的

経過観察の二つの軸:全身か?局所か?

(クリックすると過去の記事にリンクしています)

 

でも、Emergencyですから診断と治療を同時に進めていく必要があります。さらに全身状態、すなわちバイタルの安定化は最重要です。

 

具体例として、

・壊死性筋膜炎

・ガス壊疽

・Toxic Shock Syndrome(TSS)

・MSSAの感染性心内膜炎

・髄膜炎性菌血症

・Postsplenectomy Sepsis(PSS)

・Ludwing angina(Orbital cellulitis)

・接合菌症

・髄膜炎

 

など多くの症例を提示しながらのレクチャーでした。

 

次回はこれら取り上げた中でも、おそらく遭遇する機会の最も多い髄膜炎について紹介します。

(編集長)

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病棟からのコールを減らすコツ・・・タイミングはいつ?

2023.09.12
カテゴリー: 初期研修

前回は院内の業務の中で最大のストレスである病棟からのコールを減らすコツとして、「食事とクスリ」を紹介しました。今回はもう一つ、コールを減らすためのコツを紹介します。

 

それはコールのタイミングです。勘のいいあなたは気づいていると思いますが、病棟からのコールが多いタイミングが2つあります。

 

1つ目は、申し送り前後です。こではどこの病院でも同じです。日勤の看護師が準夜の看護師に申し送るために、日中の出来事をまとめておく必要があります。具体的には16時前には日勤看護師の情報収集が始まっていますから、もし、この時点で翌日の点滴のオーダーが出ていなければ確認しなければいけません。もし、翌日に手術や検査が予定されていれば、その準備が必要なので、食事とかクスリを確認しなければいけません。

 

2つ目は、患者さんが入院した時。原則論として、医師からの指示がなければ看護師さんは何もできないことになっていますので、「何やりますか?早く指示簿を書いて下さい」となる訳です。でも、この時点であなたは指導医から、どんな患者さんかを聞いていないことが多いですよね。それで看護師さんへの指示出しを後回しにしてしまう。するとまた病棟からコールが鳴って「まだですか?」・・・、と悪循環です。

 

対策としては、翌日のオーダーやルーティンの指示は16時前に出しておくことです。新規入院患者さんについては、入院の知らせがあったらすぐに、指導医に方針の確認をして、その足で患者さんの様子を見に行き、挨拶をしてしまうことです。こうすることで、とりあえずの指示は書けます。そして、分かる範囲で指示やオーダーを出して、足りない部分は後で付け足せば看護師も分かってくれます。

 

看護師も患者さんに何をしてあげられるのか? 大事なことは何か?の情報共有や方針の確認をしたいのです。ここをおさえておけば、病棟からのコールの回数を減らすことができるはずです。看護師さんたちを味方につけて、効率の良い仕事を出来るように工夫してみて下さい。

(編集長)

院内カンファの一コマ

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