臨床研修ブログ

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抗てんかん薬に潜む落とし穴

2025.07.29
カテゴリー: カンファレンス 内科

今回はJ1のさくらもち先生が書いてくれた記事を掲載します。今回がブログデビューですが、日常臨床での気づきをまとめてくれています。そしてさくらもち先生のキャラが出ている文章ですので(笑)、是非読んでみてください。

(編集長)

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こんにちは。さくらもちです。

 

私が先月経験した症例をご紹介します。意識障害で救急搬送された施設入所中の高齢女性。バイタルは安定していました。

 

さて、意識障害の原因を考えます。鑑別はたくさん挙がりますが、今回はこの方の内服薬に注目します。(AIUEO TIPSとか、このブログのどこかに記事が載っているはずですので、探してみて下さい♪)

 

内服薬→○○,○○,○○,炭酸リチウム,バルプロ酸ナトリウム

 

これを見たら、原因として挙げられることは何でしょう。

まず、てんかん発作が生じている可能性はありますね。この2剤は国試ではてんかん薬として勉強します。そして、さらに薬自体が引き起こす問題についても考えていきます。

 

まず、炭酸リチウム

 

すぐに思いつくのはリチウム中毒だと思います。特に腎臓が悪い人では注意ですよね。

これについて詳しくは、このブログの記事にあったので割愛します。ぜひ読んでみてください。

 

次!(今回はこれが言いたかった)

 

バルプロ酸ナトリウム

アンモニアも測りましょう!

(全然知らなかったですよね〜  わかる〜〜)

 

そもそもバルプロ酸Naは、脳内のGABAやドパミン濃度を上げたり、セロトニン代謝を促進したりするお薬です。これらの神経伝達物質たちが脳内の抑制系を賦活させる作用があり、だから抗てんかん薬として使われているわけですね。抗躁作用および片頭痛発作の発症抑制作用もあるそうです。抑える感じですね。

 

そしてこのバルプロ酸ナトリウム、代謝の過程に注目しましょう。

 

尿素サイクルって覚えているでしょうか。国試でもなんとなく触れますよね。バルプロ酸ナトリウムの代謝過程で、尿素サイクルの働きが阻害されるために、アンモニアの分解が進まなくなり、蓄積してしまうわけです。(カルバミルリン酸合成酵素Ⅰ(CPS-Ⅰ)の活性が阻害され、カルニチンも減り、β酸化が抑制され、、、、など、色々詳しい機序が気になる方は調べてみてください)

 

このようにして、バルプロ酸ナトリウム内服中の方の身体の中では、高アンモニア血症が生じる可能性があります。

 

バルプロ酸ナトリウムの服用開始から高アンモニア血症が発見されるまでの期間は,急性中毒を除けば数ヵ月から10 年以上で、またその症候も昏睡や意識障害から無症状の例まであり、その期間や症候は症例により大きく異なると報告されています。ずっと服用しているから大丈夫と言えないし、症状も分かりにくそうってことですね。

 

ちなみに他の抗てんかん薬と併用することで、高アンモニア血症のリスクが高まるそうです。また、発熱時、嘔吐、下痢を伴う流行性疾患を伴った場合も高アンモニア血症をおこしやすいので、注意しましょう。

 

長くなりましたが要は

「長期にバルプロ酸ナトリウムを飲んでいる人では高アンモニア血症の可能性がある」

このことだけ頭の片隅に入れておいてもらえたらおっけーです。

 

症例に基づいた話に戻ると、

意識障害の患者で抗てんかん薬飲んでいる方

リチウム中毒、高アンモニア血症もチェックしましょう! いずれも血中濃度の測定が大事です。

 

ただし!最後に1つだけ!

アンモニア濃度測定には忘れてはいけないポイントが! 国試にもでます!

検体を放置すると偽性にアンモニアが高値になってしまうこと、ですね

 

放っておくと赤血球中のアンモニアが遊離などしてしまうせいです。なので、研修医がアンモニア測定のオーダーをだしたら、自分で採血して自分で検査室まで持っていきましょう。(上級医がオーダーした場合も研修医が率先して持っていくと良い運動になりますよね)

 

以上大変長く読みづらい文章になってしまいましてすみません、、

これでも書くのに2ヶ月かかってしまいました。文章って難しいですね。

(さくらもち)

 

水戸医学生セミナーでの一コマ

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