臨床研修ブログ
水戸済生会総合病院は、救急医療から緩和医療まで多彩な症例が経験できる総合力の高い地域の基幹病院です。
医師の生涯のうち最も実りある初期臨床研修期間を私たちは強力にサポートします。
どこで?何が?・・・診断の2つの軸
高齢の患者さんが転倒して動けなくなったとの主訴で救急搬送されてきました。患者さんは転んで腰を打ったらしく、腰痛を訴えています。明らかな麻痺はありません。バイタルを確認すると血圧等は大丈夫ですが、発熱を認めました。高齢者に良くあることですが、発熱でふらついて転倒し、それを契機に立てなくなったようです。
脳梗塞の既往があって、ADLは一応自立していたけど、外に出ることはなく、食事などでむせこむこともあった様子。胸部レントゲンも右下肺野で透過性が低下しているように見えます。
誤嚥性肺炎からの発熱で合致しそうな経過と判断し、入院して抗菌薬の点滴を開始しました。幸い徐々に解熱が得られ、全身状態も改善傾向です。ところが、2日後に判明した入院時の血液培養では、4本中4本から黄色ブドウ球菌(MSSA)が検出されました。
これって、何かおかしくないですか?ここで「誤嚥性肺炎なのに血培からMSSA?」と、あなたが違和感を感じたのなら、あなたの臨床センスはスバラシイ!
多くの人は「感受性もあってるし、患者さんも元気になっているし、抗菌薬はこのまま継続でいいね」としか考えません。でも、ちょっと考えてみてください。そもそもMSSAが肺炎の起炎菌になる得るのでしょうか?
松永先生のレクチャーで何度も登場する重要なメッセージに、感染症診断の2つの軸は「どこで」、「何が」があります。
「どこで(=感染巣)」が分かると、起炎菌が絞れます。
「何が(=起炎菌」」が分かると、感染巣が絞れます。
この症例のように血液培養でMSSAが検出されたら、肺ではなく皮膚軟部組織か血管内を思い浮かべる必要があります。
実は病歴をよく確認すると、腰痛は転倒する前から自覚していたらしく、画像検査で化膿性椎間板炎と診断されました。MSSAの侵入経路ははっきりしませんでしたが、かゆみのためによく皮膚をひっかいていたそうです。
今回は皮膚から侵入したMSSAによって血流感染から化膿性椎間板炎を来して、発熱と腰痛、体動困難を認めたと考えられます。一度誤嚥性肺炎だと診断してしまうと、解熱してCRPが下がっていると安心してしまいますが、化膿性椎間板炎であれば長期の抗菌薬投与を行わないと再燃してしまいます。培養結果を見て、当初想定していた菌が検出されていればイイですが、想定と違う菌が検出された際は、{どこで」「何が」悪さをしているのかを考える必要があります。
培養結果など、後日に結果が判明するものも必ず目を通して、今までの経過と矛盾がないかを振り返ってみてください。
(編集長)
松永先生のレクチャー風景
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