専門研修ブログ
茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
STEMIか?解離か? CTはいつ撮るべきか
50歳代の男性が胸痛で搬送されてきました。心電図は下壁誘導(Ⅱ、Ⅲ、aVF)でST上昇が見られます。
バイタルは血圧170/100mmHg、心拍数86bpm、体温36.5℃、呼吸数20回/分。STEMIと診断して、緊急PCIの準備に取り掛かりました。そんな最中に、「A型解離の可能性は大丈夫かな?」「CTどうする?」と誰かが言いました。
こんな時、あなたならどうしますか?
確かに、急性A型大動脈解離では胸痛の訴えが多いですし、右冠動脈を巻き込むことが多く、下壁梗塞の心電図を呈します。では、下壁梗塞とか、胸痛を訴える患者さんは、A型解離を鑑別するために、全員に造影CTを施行するべきなのでしょうか?
一方で、STEMIに比べれば、急性A型大動脈解離は頻度がずっと少ないですし、CTを撮ればPCI開始までの時間が長くなり、せっかちな循環器医は待ってくれません。
こんなときに参考になるのが、大動脈解離診断リスクスコア(ADD-RS : Aortic DissectionDetection Risk Score)です。(Circulation 2011; 123:2213-8)
3つのカテゴリーがありますが、各カテゴリーの中で1つ以上該当するものがあれば1点とし、0点から、最高3点となります。0点は低リスク、1点は中リスク、2点以上は高リスクとします。
このスコアでは、症状も重要で、裂けるような痛みと表現されています。(ちなみにSTEMIでは胸痛と言っても、「象に乗られたような、胸全体が苦しい感じ」という表現に近くなります。ですので、胸痛と一言で片づけないで、良く症状を聞き出しましょう)
さらに、このADD-RSとDダイマーをあわせて、大動脈解離を除外していくアルゴリズムも提唱されています。(Circulation.2018; 137:250-8.)
「解離の可能性は?」「CTを撮るべきか?」 悩んだ時は参考にしてみてください。
(編集長)
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