専門研修ブログ

茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
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急性心筋梗塞の病型分類

2023.04.03
カテゴリー: 循環器

80歳台の女性が胸痛で救急搬送されてきました。ADLは自立していますが、糖尿病の既往があり、1週間前から下腿浮腫に気づいており、2日前から労作時の息切れもあったそうです。この日は夜間就寝中に突然の胸痛を自覚したとのことでした。胸部レントゲンでは両側に肺うっ血と胸水を認め、心不全の増悪で間違いなさそう。ところが心電図は下壁誘導でわずかですがST上昇あり。トロポニンも陽性でエコーでも下壁の動きは低下していたため、STEMIの診断で緊急PCIとなりました。

 

PCIをやってみると、前下行枝と回旋枝に狭窄病変はあるものの閉塞病変はありませんでした。下壁でST変化があったことから回旋枝病変に対してPCIを行うこととし、病変部をバルーンで拡張したものの硬い病変で、血栓が関与している印象はなし。ステントを留置して、無事終了しましたが、その後の心筋逸脱酵素の上昇も大したことない・・・・。なんか、いつものSTEMIとはちょっと印象がちがっている症例でした。

 

実はこの症例は、おそらくType2心筋梗塞と呼ばれるものですが、あなたは心筋梗塞に病変分類があることをご存じでしょうか?

 

前回の記事でも紹介した2018年のUniversal definitionでは、心筋梗塞の原因によりType 1~5に分類されています。

 

Type 1:アテローム性動脈硬化に併発した血栓症によるもの。

Type 2:心筋への酸素の需要と供給のミスマッチによるもの。

Type 3:心筋バイオマーカー未評価の状況下での心筋虚血による突然死。

Type 4a:PCI手技関連によるもの。

Type 4b:ステント血栓症によるもの。

Type 5:冠動脈バイパス(CABG)手技関連によるもの。

 

実際のところType3以下はあまり使うことはないのですが、Type2心筋梗塞はあなたも遭遇するかもしれません。

 

Type2心筋梗塞とは、具体的には冠動脈狭窄病変における酸素需給のインバランス,冠動脈攣縮,冠動脈解離などにより心筋壊死を伴う心筋傷害を認めるもののことを指しています。

 

冒頭の症例は、心不全のため酸素需要が増大したものの、冠動脈の狭窄病変があるため酸素の需要と供給にミスマッチが生じて起こったと考えられます。よくある冠動脈内の血栓が関与していない心筋梗塞のPCIは時々経験するので、決して珍しい訳ではありませんので、知っておいた方が良いと思います。            

参考文献:Circulation. 2018;138:e618–e651

(編集長)

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