専門研修ブログ

茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。

左脚ブロックならSTEMIの診断はできない?

2023.09.25
カテゴリー: 循環器

ERに70歳台の男性が胸痛で搬送されてきました。その時にERでとられた心電図がこれです。

 

 

洞調律で、左脚ブロック(LBBB)波形を呈していました。左脚ブロックはST変化が判断でき

ないと教わったと思いますが、この症例も心電図からSTEMIと判断することはできないのでしょうか?

 

LBBBでは、原則STの判断ができないのですが、Sgarbossa criteriaを使うことで、虚血と診断ができる場合もあります。

(*Sgarbossaはスペイン語で、発音は「ズガルボッサ」と聞こえました・・・)

 

Sgarbossa criteriaの話をする前に、LBBBでは前提としてQRSの向きとST-Tの向きが逆になるのが原則です。これをdiscordantと言いますが、虚血などの影響でQRSの向きとT波の向きが同じになる(concordantと言います)と異常所見と捉えます。

 

一般的なLBBB波形

QRSとST-Tの向きが逆になっているのが通常です

 

これを踏まえたうえで、Sgarbossa criteriaとは

①QRSが上向きの誘導で1mm以上のST上昇 →5点

②V1~V3のいずれかの誘導で1mm以上のST低下 →3点

③QRSと逆方向の5mm以上のST上昇 →2点

3点以上で虚血ありと診断できる

 

 

なお、③はST上昇とS波の比が0.25以上とするModified Sgarbossa criteriaを用いた方がオリジナルのものよりも精度が高いとされています。ちなみにSgarbossaスコア3以上の感度は20%、特異度は98%とされています。つまり、特異度が高いので所見が合えば診断できますが、感度が低いので除外には使えないということです。

 

冒頭の心電図を見てみると、V4では①を満たしそうですし、V1~V3ではST上昇/S>0.25となっていて、3点以上をクリアしています。トロポニンも陽性で、緊急CAGではLAD#6の99%病変が判明し、PCIを行って無事に退院しました。

 

冒頭の症例のV2誘導

明らかにST上昇/S>0.25を満たしています

LBBBのSTEMIに遭遇することは少ないと思いますが、記憶のどこかにあるだけで、すぐにスマホで調べることができるので役に立ちますよ。

(編集長

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

水戸済生会総合病院の臨床研修は

総合診断能力を有するスペシャリスト

を目指します

 

◆水戸済生会での専門研修に関するご質問はこちらへ!

どんなことでも、問い合わせフォームからご質問ください。

また、各診療科の専攻医にZoomで質問できますので、その旨もお知らせください!

お問い合わせフォームはこちら

 

 

Kounis(コーニス)症候群

2023.08.28
カテゴリー: 循環器

Kounis(コーニス)症候群をご存じでしょうか?

 

ACS患者に関わる循環器医なら、どんな疾患なのかだけでも知っておくべきものです。当院で経験したKounis症候群の症例報告を、7月に開催されたCVITで本田先生が発表してきましたので、今回はその内容をシェアします。

 

Kounis症候群とは、アナフィラキシー反応に伴う冠攣縮や冠動脈の血栓形成で引き起こされる急性冠症候群を言います。1991年にKounisが、内皮機能障害または微小血管狭心症の症状を示す冠攣縮がアレルギー性急性心筋梗塞に進展する”アレルギー性狭心症症候群”を報告したのが最初です。(Br J Clin Pract1991;45:121-8)

 

頻度は非常に稀で、ACSが疑われCAGを受けた患者における発生率は0.002%という報告がありますが、稀な分だけ過小評価されている可能性があり、実際はもう少し多いのかもしれません。

機序としては肥満細胞がマクロファージやTリンパ球と相互作用していると言われています。

 

誘因には以下のものが報告されています。

Unknown 6.3%

Systemic disease 2.4%

Medication 51.7%

Environment 1.4%

Insect bite 18.8%

Contrast 6.3%

Food 9.7%

Other 3.5%

A.Roumeliotis, et al. Vaccines. 10, 38(2022)

 

以下のように3つのタイプに分類されており、ステント血栓症にも関与している症例もあります。

 

•TypeⅠ(72.6%)— 冠動脈に病変がなく、冠攣縮によるもの 

•TypeⅡ (22.3%)— 冠動脈プラークのびらんや破裂を伴う冠攣縮 

•TypeⅢ (5.1%)—  アレルギー反応の結果として引き起こされた冠動脈ステント血栓症

M.Abdelghany, et al. int J. Cardiol. 232(2017)

 

 

頻度が少ないのでなかなか難しいところではありますが、ACSを疑う状況(胸痛、心電図変化、心筋逸脱酵素の上昇)に加え、発疹やかゆみと言ったアレルギー症状、24時間以内にアレルギー反応が生じていた、以前に診断されたアレルギー疾患の再燃が見られるといった点があれば、Kounis症候群を疑うきっかけになります。

 

対応としては、ACSの対応とアレルギー反応への対応に分かれます。

 

ACSの対応はβ遮断薬を避けて、冠攣縮を押さえる硝酸薬やカルシウム拮抗薬を投与を行いつつ、必要ならPCIを行います。アレルギー反応に対しては、アレルゲンの除去、輸液、ステロイド、抗ヒスタミン薬、エピネフリン投与を考慮していきます。

A.Roumeliotis, et al. Vaccines. 10, 38(2022)

 

当院で経験した症例は、造影剤によるアナフィラキシーが関与したと考えられるもので、鑑別も対応もかなり難しかった症例でした。発表の際も、座長の先生らとかなり議論が盛り上がった症例でしたので、ぜひ覚えておいてください。

(編集長)

発表中の本田先生

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

水戸済生会総合病院の臨床研修は

総合診断能力を有するスペシャリスト

を目指します

 

◆マイナビでお会いしましょう!

マイナビレジデントフェスティバル 内科専門領域 エリア関東に当院も登壇します!

 

病院説明会の前に開催されるキャリアガイダンスには当院の専攻医が登壇して、専門研修病探しについてアドバイスしてくれますので、併せてご参加下さい。

開催は 8月8日 17:30~

マイナビの申し込みページはこちら

 

◆水戸済生会での専門研修に関するご質問はこちらへ!

どんなことでも問い合わせフォームからご質問ください。

また、各診療科の専攻医にZoomで質問できますので、その旨もお知らせください!

お問い合わせフォームはこちら

 

循環器内科の専門研修2023

2023.08.14
カテゴリー: 循環器

今回は水戸済生会循環器内科の専門研修についての紹介です。

 

もしあなたが、循環器内科に関心があって

 

・PCIをできるようになりたい

・PCIだけでなく、アブレーションもやってみたい

・PCIはもちろん、TAVIもMitraclipもやってみたい

・PADやAortaなど、カテーテル治療は何でもやってみたい

 

と考えているなら、この先を読む価値があります。さらに、医局に入らずに循環器専門医資格を取りたいと思っているなら、なおさら読んでください。

 

ご存じの通り循環器領域はデバイスの進歩が目覚ましく、治療戦略が次々にアップデートされています。それだけやりがいのある領域ですが、水戸済生会の循環器内科は「地域完結」を一つのキーワードに循環器領域の大部分の診療をカバーしています。

 

循環器内科のサイトもぜひご覧ください

 

水戸済生会は、PCIではもともと県内で有数の施設でしたが、さらにカテーテルアブレーションやICD、CRTにも早くから取り組んでおり、今ではアブレーションも県内有数の症例数となっています。また循環器内科医が関わることの多いPADに対するEVTは県内トップの症例数で、さらに心外との連携が密で、大動脈瘤や大動脈解離へのステントグラフトにも関われますし、大動脈弁狭窄症に対するTAVIや僧帽弁閉鎖不全症に対するMitraclipも順調に症例数を伸ばしています。

 

新しいデバイスは症例数の多い施設から導入されることが多いので、あなたが専門研修施設を選ぶ時は当然考慮すべきポイントです。さらに最近では、新しいデバイスの術者になるための要件として、ほとんどの場合で循環器専門医資格が必要になっています。循環器専門医を取得したうえで、他の循環器領域の資格であるCVIT専門医や不整脈専門医などを取得するシステムになっています。

 

つまり、循環器専門医を持っていないと、いくら経験や技術はあってもその次の資格が取得できないようになっているのです。あなたが循環器内科を考えているなら、最初にすべきことは内科専門医を最速で取得し、最短で循環器専門医資格を得ることです。そして、そんな時に水戸済生会の循環器内科は有利です。

 

県立こども病院が隣接しているため成人の先天性心疾患症例も含めて当院は症例数も多く、異動することなく1つの施設で専門医取得のための症例が全部経験できるのです。そして専門医資格を取得後も、PCIをはじめとした各種の施設認定を受けているので循環器領域の各種の資格取得もスムーズです。しかも、大学の医局とは関係なく専門医資格を取得できるのが当院の強みです。

 

当院の内科専門医プログラムから循環器領域をじっくりと腰を据えて、技術の取得と経験症例数の確保に専念できる環境ですので、あなたも当院での内科専門医プログラムから循環専門医取得を目指してください

(編集長)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

水戸済生会総合病院の臨床研修は

総合診断能力を有するスペシャリスト

を目指します

 

◆水戸済生会での専門研修に関するご質問はこちらへ!

どんなことでも問い合わせフォームからご質問ください。

また、各診療科の専攻医にZoomで質問できますので、その旨もお知らせください!

お問い合わせフォームはこちら

 

CVIT2023で発表してきました♪

2023.08.07
カテゴリー: 循環器

PCIやEVTなどの循環器領域の学会にCVIT(心血管インターベンション治療学会)と言うものがありますが、今年の学術集会(いわゆる総会)は福岡で開催されました。

 

水戸済生会からは編集長と本田先生、さらにメディカルスタッフ向けのセッションでは、診療看護師の青柳先生も招聘されていましたので、あわせて3名が発表してきました。

 

ペイペイドームのスタンドが発表会場

 

暑い福岡でしたが、会場のペイペイドームとヒルトンシーホークにはかなりの参加者がいて、

対面での議論が盛り上がっていました。

 

本田先生は当院で経験したKounis症候群の症例を発表しましたが、座長やコメンテーターの先生らも経験したことがなかったようなので、教育的な議論で勉強になりました。お疲れ様でした。

発表後の一コマ

応援に来てくれた清瀬先生と

ちなみにKounis症候群については次の機会に紹介します。

(編集長)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

水戸済生会総合病院の臨床研修は

総合診断能力を有するスペシャリスト

を目指します

 

◆マイナビでお会いしましょう!

マイナビレジデントフェスティバル 内科専門領域 エリア関東に当院も登壇します!

 

病院説明会の前に開催されるキャリアガイダンスには当院の専攻医が登壇して、専門研修病探しについてアドバイスしてくれますので、併せてご参加下さい。

開催は 8月8日 17:30~

マイナビの申し込みページはこちら

 

◆水戸済生会での専門研修に関するご質問はこちらへ!

どんなことでも問い合わせフォームからご質問ください。

また、各診療科の専攻医にZoomで質問できますので、その旨もお知らせください!

お問い合わせフォームはこちら

 

大動脈弁狭窄症(介入のタイミング) 

2023.07.24
カテゴリー: 循環器

前回はSAVRとTAVIのそれぞれの特徴を紹介しましたが、どちらの治療を選択するとしても、あとはどのタイミングで外科的な治療介入を行うかが問題となります。

 

今回はガイドラインでの推奨度を確認してみましょう。

 

【AS に対する手術適応の推奨度】

ClassⅠ

・有症候性重症AS 患者に対する手術介入

・無症候性重症AS を有し,心機能低下(LVEF < 50%)を認める患者に対する手術介入

・無症候性重症AS を有し,他の開心術を施行する患者に対するSAVR

・無症候性重症AS を有し,運動負荷試験で症状を呈する患者に対する手術介入

 

ClassⅡa

・無症候性重症AS を有し,運動負荷試験で有意な血圧低下を呈する患者に対する手術介入

・無症候性の超重症ASを有し,低手術リスク* の患者に対する手術介入

・無症候性重症AS を有し,AS による著明な肺高血圧(収縮期血圧60 mmHg 以上)を認め,低手術リスク* の患者に対する手術介入

・無症候性中等症AS を有し,他の開心術を施行する患者に対するSAVR

 

ClassⅡb

・無症候性重症AS を有し,急速に進行(Vmax 年0.3 m/ 秒以上増加)する低手術リスク* の患者に対する手術介入

(* ここでの「低手術リスク」とは,解剖学的/患者背景をふまえて,その手技(SAVR・TAVI含む)が低リスクであることを意味する)

 

 

このように有症状であれば手術を勧めるのは問題ないのですが、無症状だけど重症もしくは超重症のASを見つけた時に手術をどうするかが昔から議論されてきましたが、いまだに結論が出ないところです。

 

そもそもASは高齢者に多く、高齢であるがゆえに症状の判断が難しく,また有症状の定義が不明確という問題があります。

 

また、当然ながら無症候患者に手術を勧めるためには,突然死や不可逆的左室心筋障害の回避など,早期手術により得られる利益が,手術リスクや人工弁に関連する合併症など,早期手術により被る不利益を上回らなければならない訳です。

 

もちろんガイドラインで推奨されているように、EFの低下や運動負荷で症状や血圧低下を来す場合、超重症ASの場合などは明らかに予後が悪くなるので、我々としては手術を強くお勧めしたいところですが、高齢者ほど患者やその家族らとよくよく話し合って決めていく必要があります。

 

なお、経過観察をする場合は、通常は重症ASであれば6ヵ月から1年毎,中等症ASであれば1年から2年毎,軽症ASであれば3年から5年毎のフォローアップを推奨するとされています。

 

参考:弁膜症治療のガイドライン2020年改訂版

(編集長)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

水戸済生会総合病院の臨床研修は

総合診断能力を有するスペシャリスト

を目指します

 

◆水戸済生会での専門研修に関するご質問はこちらへ!

どんなことでも問い合わせフォームからご質問ください。

また、各診療科の専攻医にZoomで質問できますので、その旨もお知らせください!

お問い合わせフォームはこちら

 

大動脈弁狭窄症(SAVRとTAVI) 

2023.07.17
カテゴリー: 循環器

前回まででASの重症度評価を紹介してきました。今回から治療に関してです。

 

今さらですが、ASは内科的治療では限界があり、外科的治療介入が必要な病気ですが、どのタイミングで、どの外科的治療を選択すべきかは症例ごとに非常に悩むところです。

 

外科的治療には、ご存じの通り外科的大動脈弁置換術(SVAR)と経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)があり、その特徴はおさえておきましょう。

 

SAVRの周術期死亡率は全体で3.0%(SAVR単独2.4%、SAVR+CABG5.4%)、特に80歳以上では5.2%(SAVR単独4.6%、SAVR+CABG7.1%)となっています。長期成績についてもTAVIと同様のウシ心膜を用いた生体弁を70歳以上に植え込んだ場合、人工弁関連死回避率は15年で91~100%,20年で70%となっています。

 

一方でTAVIの30日死亡率は2%以下となっていますが、弁の耐久性は10年以下ならSAVRと遜色ないものの、10年以上の成績が出ていないこと、TAVIを植え込むことで房室ブロックを来してペースメーカー植え込みが必要になることがあるのが弱点です。

 

ガイドラインでもどの治療を選択するのかなど、治療方針を決める際には患者の希望も十分考慮しつつ、ハートチームで以下の点を協議して決めるように推奨しています。

 

①患者背景に関する因子

【SAVRを考慮する因子】

 ・若年
 ・IEの疑い
 ・開胸手術が必要な他の疾患が存在する

   CABGが必要な重症冠動脈疾患
   外科的に治療可能な重症の器質的僧帽弁疾患
   重症TR
   手術が必要な上行大動脈瘤
   心筋切除術が必要な中隔肥大

 

【TAVIを考慮する因子】

 ・高齢
 ・フレイル
 ・全身状態不良
 ・開胸手術が困難な心臓以外の疾患・病態が存在する
   肝硬変
   呼吸器疾患
      閉塞性肺障害(おおむね1秒量<1L)
      間質性肺炎(急性増悪の可能性)
   出血傾向

 

②SAVR,TAVIの手技に関する因子

【SAVRを考慮する因子】

 ・TAVIのアクセスが不良
   アクセス血管の高度石灰化,蛇行,狭窄,閉塞
 ・TAVI時の冠動脈閉塞リスクが高い
    冠動脈起始部が低位・弁尖が長い・バルサルバ洞が小さいなど
 ・TAVI時の弁輪破裂リスクが高い
   左室流出路の高度石灰化があるなど
 ・弁の形態,サイズがTAVIに適さない
 ・左室内に血栓がある

 

【TAVIを考慮する因子】

 ・TF-TAVIに適した血管アクセス
 ・術野への外科的アプローチが困難
   胸部への放射線治療の既往 (縦隔内組織の癒着)
   開心術の既往
   胸骨下に開存するバイパスグラフトの存在
   著しい胸郭変形や側弯
 ・大動脈遮断が困難 (石灰化上行大動脈)
 ・PPM(prosthesis-patient mismatch:人工弁患者不適合)が避けられないような狭小弁輪

 

参考:弁膜症治療のガイドライン2020年改訂版

(編集長)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

水戸済生会総合病院の臨床研修は

総合診断能力を有するスペシャリスト

を目指します

 

◆水戸済生会での専門研修に関するご質問はこちらへ!

どんなことでも問い合わせフォームからご質問ください。

また、各診療科の専攻医にZoomで質問できますので、その旨もお知らせください!

お問い合わせフォームはこちら

 

【院内開催報告】アブレーションシンポジウム

2023.07.10
カテゴリー: 循環器

水戸済生会の循環器内科では、「地域で完結できる循環器診療」を合言葉に循環器領域の幅広い診療を行っています。近年は不整脈に対するアブレーション治療が大幅に増加して、年間340~350件とPCIの年間250~300件よりも症例数がずっと多くなっています。

 

当院メインオペレーターの長谷川先生(右)

 

以前からアブレーションを行っていましたが、これだけ増えたのは元筑波大学循環器内科教授でアブレーション治療のレジェンドである青沼和隆先生が当院の最高技術顧問に就任したことが契機となっています。

 

そんな青沼先生が中心となって、6月に院外の先生方7名ほどをお招きしてアブレーションシンポジウムを開催しました。

 

テーマは「PSVTに対するアブレーション」で、従来の解剖学的に焼灼部位を決める方法ではなく、マッピングシステムをもとに焼灼部位を決めるという戦略でディスカッションしました。準備した4症例とも非常にうまく、短時間で治療を終えることができ、参加した先生方は非常に手ごたえを感じたそうです。

 

市中病院で充実したアブレーション環境がそろっている水戸済生会の循環器内科では、あなたの見学を歓迎します。ぜひ下記フォームに、必要事項に加えて「アブレーションの見学希望」を入力してお問い合わせてください。

見学申し込みフォームはこちら

(編集長)

青沼先生(右から3番目)を中心に

アブレーション中のディスカッション

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

水戸済生会総合病院の臨床研修は

総合診断能力を有するスペシャリスト

を目指します

 

◆水戸済生会での専門研修に関するご質問はこちらへ!

どんなことでも問い合わせフォームからご質問ください。

また、各診療科の専攻医にZoomで質問できますので、その旨もお知らせください!

お問い合わせフォームはこちら

 

朴澤先生のEVTワークショップ

2023.06.26
カテゴリー: 循環器

当院の循環器内科では、虚血に対するPCIや不整脈に対するアブレーション治療はもちろん、大動脈弁狭窄症に対するTAVIや僧帽弁閉鎖不全に対するMitraclipなど、幅広く診療を行っています。

 

その中でも末梢動脈疾患(PAD)に対するカテーテル治療(EVT)は、県内有数の症例数を施行しています。PADはようやく疾患の認知度が高くなって来ましたが、下肢切断に至ることもある重篤な疾患です。特に透析患者さんは下肢切断に至ることが多く、EVT以外にも血管外科や形成外科、リハビリなど、多診療科・多職種での取り組みが必要です。

 

しかし、下肢切断の回避にEVTによる血行再建が重要なことは間違いなく、当院では循環器内科でレベルアップに積極的に取り組んでいます。

 

先日は、国内で下肢EVTのトップオペレーターの一人である、新東京病院の朴澤先生にお越しいただき、EVTを指導していただきました。その中には我々がEVTをやってガイドワイヤーは通過したけど、バルーンがどうしても通過できず断念した症例も含まれていたのですが、朴澤先生の粘りとテクニックで見事成功していました。

 

やはり上手な先生と一緒にEVTに入り、デバイスの選択や術中の判断など、そばで見ていないと分からないところを学べるのがワークショップの良いところです。水戸済生会の循環器内科ではEVTに限らず、院外の指導医を招聘しながら、診療のレベルアップに取り組んでいます。

(編集長)

あごマスクが気になるEVT中の朴澤先生

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

水戸済生会総合病院の臨床研修は

総合診断能力を有するスペシャリスト

を目指します

 

◆水戸済生会での専門研修に関するご質問はこちらへ!

どんなことでも問い合わせフォームからご質問ください。

また、各診療科の専攻医にZoomで質問できますので、その旨もお知らせください!

お問い合わせフォームはこちら

 

大動脈弁狭窄症 (Low Flow, Low Gradient AS)

2023.06.19
カテゴリー: 循環器

今回は低流量低圧格差(low flow, low gradient)のASについてです。

 

ASの重症度を評価する時に、AVA<1.0㎠で、Vmax≧4.0m/secないしmPG≧40mmHgであれば、重症ASと診断は容易です。ところが、たとえ重症ASでもVmax<4.0、mPG<40mmHgの圧格差を示さないことがあります。

 

これは1回拍出量が低下している時に見られるもので、低流量低圧格差大動脈弁狭窄症(low flow, low gradient AS)と呼んでいます。この低圧格差を来す1回拍出量の低下には原因が2つあります。

 

①EFが低下している

②EFは低下していないが、左室肥大により左室内腔が狭小化することで流量が低下する

 

①のEFが低下してる場合には、真の重症ASの場合と、もともと中等症ASがあったけど、EFが低下したことで一回拍出量が低下し、大動脈弁が十分に開かなくなりAVAが小さく算出されてしまう場合(偽性重症AS)があります。

 

この鑑別にはドブタミン負荷心エコーが有用で、ドブタミン負荷後でもAVA<1.0㎠のままで、Vmax≧4.0m/secないしmPG≧40mmHgとなれば真の重症ASということになります。一方でAVA≧1.0㎠となった場合は偽性重症ASという診断になります。

 

しかしドブタミン負荷でも1回拍出量が増加しない場合は、収縮予備能の低下を意味するので、これ以上の鑑別は困難でCTでのカルシウムスコアなどを参考にした総合判断となります。

 

②のEFが低下していない場合は、奇異性低流量重症ASと呼ばれます。しかし、この奇異性低流量重症ASと診断するにはSViとAVAの計測に誤差要因がないかしっかり確認する必要があります。それは、左心室が小さい場合には左室流出路径が小さく、SViが低く、AVAが小さく算出される可能性があるためです。

 

参考:弁膜症治療のガイドライン2020年改訂版

(編集長)

ガイドラインから一部改変

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

水戸済生会総合病院の臨床研修は

総合診断能力を有するスペシャリスト

を目指します

 

◆水戸済生会の内科専門研修プログラム説明会を開催します

日 時:2022年6月26日(月)18時開始(40分程度の予定です)

場 所:本館3階 第一会議室

説明会の詳細はこちら

 

◆水戸済生会での専門研修に関するご質問はこちらへ!

どんなことでも問い合わせフォームからご質問ください。

また、各診療科の専攻医にZoomで質問できますので、その旨もお知らせください!

お問い合わせフォームはこちら

 

大動脈弁狭窄症(重症度分類)

2023.05.22
カテゴリー: 循環器

今回はASの重症度分類についてです。

 

まず、ASに基づくと考えられる自覚症状を有するか否かで、症候性と無症候性に分類されますが、症候性の場合は無症候性以上に予後不良であることが分かっています。つまり重症度がより高いと判断する必要があります。

 

そして通常では、ASの重症度評価は心エコーで行います。その際の指標は、大動脈弁口面積(AVA)と大動脈弁最大血流速度(Vmax)、大動脈弁平均圧格差(mPG)の3つを覚えればOKです。

 

まずAVAから。覚えておくべき数字は「1㎠」「0.6㎠」です。正常のAVAは3~4㎠ですが、≧1㎠なら軽症もしくは中等症<1㎠なら重症となります。さらに<0.6㎠を超重症と呼んでいます。なお、AVAを体表面積(BSA)で補正した値(AVAI)が<0.6㎠/㎡も重症と定義されますが。無理に覚えておかなくても構いません。

 

ここでAVAの弱点を押さえおく必要があります。AVAの求め方には。エコーで短軸画面をトレースする「プラニメトリー法」と、「連続の式」と呼ばれる左室流出路血流速から求める方法があります。プラニメトリー法は石灰化のため正確にトレースすることは困難で、わずかにトレースが異なるだけで、値が全然違ってきます。連続の式から求める方法はパルスドプラ法を用いますが、正確な流速の評価にはドプラビームと血流の方向が一致することが大事です。心尖部から計測することが多いものの、他の方向からもしっかり確認する必要があります。

 

次にVmaxとmPGについて。連続波ドプラ法によって大動脈弁最大血流速度、最大圧較差(maxPG)、mPGを求めます。ただし、計測が簡便なものの大動脈弁圧較差は弁通過血流量に依存するために、血流量低下(前負荷減少や左室サイズ減少および機能低下)により AS は高度であるにもかかわらず圧較差が少なかったり,血流量増加(甲状腺機能亢進・大動脈弁逆流の合併や貧血など)により AS は軽度であるにもかかわらず圧較差が大きかったりします。そこでAVAと合わせて評価する必要があります。

 

VmaxとmPGでおさえておくべき数字は、Vmaxの「4.0m/sec」と「5.0m/sec」mPGでは「40mmHg」と「60mmHg」です。重症ASはVmax≧4.0m/secないしmPG≧40mmHg、超重症ASはVmac≧5.0、mPG≧60と定義されます。

 

ただし、AVA<1.0㎠でもVmax<4.0、mPG<40mmHgの低圧格差を示す低流量低圧格差(low flow, low gradient)のASがあり、ここが混乱してしまうところです。この点については次回に紹介します。 

参考:弁膜症治療のガイドライン2020年改訂版

(編集長)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

水戸済生会総合病院の臨床研修は

総合診断能力を有するスペシャリスト

を目指します

◆水戸済生会での専門研修に関するご質問はこちらへ!

どんなことでも問い合わせフォームからご質問ください。

また、各診療科の専攻医にZoomで質問できますので、その旨もお知らせください!

お問い合わせフォームはこちら

 

◆市中病院で循環器専門医を目指しているなら

水戸済生会循環器内科のサイトを是非ご覧ください!

循環器内科のサイトはこちら

 

PCIだけでなく、Ablation、TAVI、MitraClipなど、当院で行っている幅広い循環器診療を紹介している

充実したサイトです。各種の資格取得にも有利です!

是非ご覧ください!