専門研修ブログ

茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。

心電図異常の陽性基準 不整脈

2024.11.11
カテゴリー: 循環器

前回は心電図異常の基準としてST変化を取り上げましたが、今回は運動負荷中に見られる不整脈についてです。

 

一般的に、運動による心筋虚血は異所性興奮を起こしやすく不整脈を引き起こすとされています。具体的には心室頻拍、R on T現象、連続する2段脈、3段脈、30%以上の頻度の心室性期外収縮(PVC)がガイドラインでも運動負荷中止徴候として挙げられていますし、運動誘発性に一過性の心房粗細動、Ⅱ度以上の房室ブロック、脚ブロックが出現することがありますが、これらも重篤な基礎疾患を反映している場合があるので、運動負荷中止基準に含まれています。

 

一方で運動による迷走神経抑制と交感神経刺激により安静時に存在する不整脈を抑制することもあります。具体例としては、安静時のPVCの多くは運動により焼失し、運動後に再出現するパターンをとり、良性の反応と言われます。

 

【洞不全症候群(SSS)】

洞不全患者では運動に対する酸素摂取量の増加に比べて心拍数の増加の程度が少ないとされていますが、ガイドラインではSSSによる3秒以上の洞停止(Sinus arrest)や洞房ブロック(SA block)を認めても、運動負荷で心拍数が適度に増加すれば運動許容できるとされています。注意すべき点としては、負荷中よりも負荷終了後に迷走神経緊張を来して著明な洞徐脈や洞停止を来すことがあるので、観察を怠らないようにしましょう。

 

【心房細動】

慢性心房細動患者では、運動時の心拍上昇反応と自覚症状を確認する目的に運動負荷を行う場合がありますが、最大心拍数が高く、最大酸素摂取量が低い傾向があります。このため、心拍数だけでなく酸素摂取量の増加の程度も確認しながら運動負荷を行う必要があります(つまり、トレッドミル検査よりもCPXの方が望ましいことになります)。

 

【心室性期外収縮(PVC)】

前述のように、安静時のPVCの多くは運動により焼失し、運動後に再出現するパターンをとり、良性の反応と言われますが、負荷終了後だけに出現するPVCは冠動脈疾患と関連し、予後不良とする報告もあります。

 

運動誘発性のPVCは健常者にも見られることがあり、心拍数130bpm以上で散発するPVCは正常反応とも言われます。しかし連発や頻度が多い場合は虚血と関連しているとされ、中止基準に含まれます。

 

(参考文献:安達仁編著 CPX・運動療法ハンドブック)

(編集長)

ICUでのECMO抜去の助手

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心電図異常の陽性基準 ST変化

2024.11.04
カテゴリー: 循環器

前回は運動負荷試験の中止基準について確認しました。今回は心電図異常の基準を確認していきます。

 

虚血性心疾患における運動負荷検査では、診断だけでなく病態の評価や予後予測、治療効果判定などの評価目的に心電図変化だけでなく、血圧増加反応の低下、心拍数上昇反応の低下、低運動耐容能なども指標にて判断していきます。心電図指標としてはST低下が有名ですが、それ以外の心電図指標の意味も頭に入れておく必要があります。

 

まずは虚血の判定基準は以下の通りです。

 

【確定基準】

・ST低下:水平ないし下降型で0.1mV以上低下(J点から0.06秒後ないし0.08秒後で測定)

・ST上昇:0.1mV以上(T波の増高に影響を受けないようにJ点付近で判定する)

・安静時からST低下がある場合:水平型ないし下降型で付加的な0.2mV以上のST低下

 

 

【虚血が疑わしい所見】

・0.1mV以上の上向型ST低下の中でもST部の傾きが小さい(≒水平型に近い 1mV/秒以下)の場合

・陽性U波の陰転化

・HR-STループが時計方向回転

 

【偽陽性を示唆する所見】

・HR-STループが反時計方向回転

・運動負荷中は上向型のST低下だが、負荷終了後に徐々に水平型、下降型に変化して長く続く場合(Hysteresis)

 

ST上昇について補足説明するとaVR以外で認めるST上昇は虚血の特徴的な所見ですが、心筋梗塞後の異常Q波がある誘導では必ずしも虚血を意味するものではありません。

 

HR-STループとは、横軸に心拍数を縦軸にST変位をとって、負荷開始から回復期にかけてのST変化と心拍数をグラフ化したもので、ループが反時計回転(傾きが小さい)場合には偽陽性の確率が高い、ループが時計回転(傾きが大きい)場合には陽性である確率が高いというものです。今は使われることはあまりありませんが、要は低い心拍数の時点からSTが低下してくる方が虚血の可能性が高いと覚えておけば良いと思います。

 

(参考文献:安達仁編著 CPX・運動療法ハンドブック)

(編集長)

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運動負荷試験の中止基準

2024.10.28
カテゴリー: 循環器

前回は運動負荷試験の禁忌をまとめました。今回は運動負荷試験の中止基準について確認します。

 

中止基準には

・自覚症状

・他覚所見

・血圧

・心電図

で判断していきます。

 

<自覚症状>

・強い息切れ、下肢疲労や下肢痛(Borgの自覚的強度≧17)

・進行性に増強する胸痛(心電図変化の有無は問わない)

・失調・めまい(中枢神経症状)

・本人の要望(運動を中止したい)

 

<他覚所見>

・チアノーゼ、顔面蒼白(低潅流の徴候)

・冷汗

・運動失調

 

<血圧>

・収縮期血圧の上昇不良ないし進行性低下(負荷増強にもかかわらず収縮期血圧10mmHg以上の低下)

・異常な血圧上昇(収縮期血圧250mmHg以上を連続して記録)

 

<心電図>

・明らかな虚血性ST-T変化(ST上昇や2mm以上の虚血性ST低下)

・調律異常(著明な頻脈ないし徐脈、心室頻拍、頻発する不整脈、心房細動、R on T、心室性期外収縮など)

・Ⅱ~Ⅲ度の房室ブロック

・心電図記録不良(電極接触不良などの技術的要因)

 

心電図はここに挙げたもの以外にも異常判定の基準がありますが、次回以降に紹介します。

 

(参考文献:安達仁編著 CPX・運動療法ハンドブック)

(編集長)

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運動負荷試験の禁忌

2024.10.14
カテゴリー: 循環器

前回はCPXを紹介しました。CPXは有用な情報が得られますが、運動負荷をかけるという点では適応や禁忌を熟知しておく必要がある検査です。今回は運動負荷試験の禁忌をまとめておきます。

 

<絶対的禁忌>

・2日以内の急性心筋梗塞

・内科治療により安定していない不安定狭心症

・自覚症状または血行動態異常の原因となるコントロール不良の不整脈

・症候性の高度大動脈弁狭窄症

・コントロール不良の症候性心不全

・急性の肺塞栓または肺梗塞

・急性の心筋炎または心膜炎

・急性大動脈解離

・意思疎通の行えない精神疾患

 

<相対的禁忌>

・左冠動脈主幹部狭窄

・中等度の狭窄性弁膜症

・電解質異常

・重症高血圧

・頻脈性不整脈または徐脈性不整脈

・肥大型心筋症またはその他の流出路狭窄

・試験が十分行えないような精神的または身体的障害

・高度房室ブロック

 

相対的禁忌とは負荷検査の利点が、運動のリスクを上回る場合に実施してよいという意味です。運動負荷により状態が悪化する可能性が高いものですが、低レベルの負荷で慎重に行うことで貴重な情報を得ることがあります。

 

状態悪化の可能性を考慮して、緊急対応が取れる準備を整えることはもちろんですが、心疾患患者では症状が刻々と変わるものですので、負荷試験直前のチェックも重要になります。

 

(参考文献:安達仁編著 CPX・運動療法ハンドブック)

(編集長)

カテ後の振り返り

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CPX(心肺運動負荷試験)で分かること

2024.10.07
カテゴリー: 循環器

前回は外来心リハについて紹介しましたが、心リハを行う上でどの程度まで運動負荷をかけて良いのかの判断には、バイタルの変化や症状の有無だけでなく、負荷試験での評価が重要になります。

 

そんな時に用いられる負荷試験の一つにCPX(Cardioplumonary Excercise Training:心肺運動負荷試験)があります。当院にもCPXがあって心リハの際に利用していますが、その特徴をまとめてみます。

 

CPXは「ランプ負荷」、「運動負荷試験」、「呼気ガス分析」という特徴を有する呼気ガス分析を併用して行う運動負荷試験のことです。運動負荷には自転車エルゴメーターが用いられています。

 

ランプ負荷とは徐々に負荷量が増加するため、安静時、軽労作、中等度の労作、重度の労作と各段階の血行動態などを把握することができます。そして呼気ガス分析で酸素摂取に関する呼吸機能や心機能、骨格筋、自律神経など関連する病態の把握が可能となります。

 

他の負荷検査としては、運動負荷心筋シンチや負荷心エコーがありますが、運動負荷心筋シンチでは最大運動負荷かけないと評価できません。例えば膝の悪い高齢者だと最大負荷をかけられないので有用な情報が得られないことになります。また負荷心エコーでは骨格筋を含めた全身の情報はえられません。

 

そしてCPXはトイレ歩行が許可されたばかりの心不全患者さんでも施行可能で、心リハの方針決定に有用な情報が得られます。

 

CPXの具体的な臨床応用として以下のようなものがあります。

・運動耐容能の評価

・運動処方・日常生活指導

・息切れの鑑別

・虚血重症度の判定

・心不全の病態解明、重症度把握

・ペースメーカ至適モードの設定

・心不全における僧帽弁置換術/形成術の効果予測

 

(参考文献:安達仁編著 CPX・運動療法ハンドブック)

(編集長)

筑波大学循環器内科のホームページより

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外来心リハ

2024.09.30
カテゴリー: 循環器

81歳の男性で、8年前に前壁の急性心筋梗塞に対してPCIを施行した既往があります。この時は最大CPKが12000Uまで上昇し、EFは30%程度で退院しました。しばらくは心不全や不整脈の出現もなく通院していましたが、徐々に労作時の息切れや心房細動が出現し、腎機能も悪化してきました。内服薬はARNI、β遮断薬、MRA、SGLT2阻害薬に加えてフロセミドもトルパプタンも全て服用してもらっている状況でした。心エコーもEFは全く改善なく、むしろ左室のリモデリングが進んでLVDd=60㎜と左室拡大をきたしています。

 

2回ほど心不全の増悪で入院歴があり、いつ心不全で入院するか分からないハイリスクの患者さんでしたが、あることを始めたら、その後は外来で利尿剤の調整などを要する程度の悪化はありましたが、心不全で入院することはなりました。この患者さんは何をはじめたのでしょう?

答えは、外来心臓リハビリテーション(外来心リハ)です。

 

心不全診療ガイドラインでは心不全患者の再入院の主な要因として、

1)管理不十分によるうっ血(体液貯留)の増悪

2)感染・腎不全・貧血・糖尿病・COPDなどの非心臓性併存疾患(noncardiac comorbidities)

3)薬物治療および非薬物治療に対するアドヒアランス不良(nonadherence)

が指摘されていますが、さらに高齢心不全患者の長期予後の規定因子としてサルコペニア・フレイルがあげられています。つまり再入院リスクの高い高齢で多臓器併存疾患を保有している心不全患者では、入院中だけでなく退院後にも「 QOL向上・運動耐容能向上」と「再入院防止・要介護化防止」を目指して、全身的な疾病管理とサルコペニア・フレイルを予防する運動介入の必要性が強調されています。

 

以前から心不全に対する多職種介入プログラム・疾病管理プログラムの有効性が多数報告されいて、心不全患者の再入院と総死亡率を有意に減少させることが示されていますが、近年では心不全患者が定期的に多職種チームによる観察・指導を受ける外来心リハが、セルフケア・生活習慣改善指導を受ける理想的な場であると認識されつつあります。

 

具体的には、医師・看護師・理学療法士らからなる多職種チームが

1)運動処方に基づく運動療法を退院後に週1~3程度の外来通院方式で継続

2)慢性心不全の治療アドヒアランス遵守・自己管理への動機づけとその具体的方法を指導

3)心不全増悪の早期兆候を発見し,心不全再入院を未然に防止する対策を実施する

 

 

施設ごとにやり方は異なると思いますが、外来診察室での安静時身体所見にくらべて、運動中の自覚症状・身体所見・心電図変化を観察することにより心不全増悪兆候をより早期に鋭敏に検出できる利点があります。当院では外来受診前に外来心リハをやってもらい、心リハ資格をもったリハビリスタッフの記録を確認しながら患者さんの診察をしています。

 

冒頭に提示した患者さんも、外来心リハを継続するなかで、自宅生活での問題点を把握し、介入できたことや早期に利尿剤等の調整を行えたことに加えて、リハビリによる運動耐容能が向上したことが、心不全入院を繰り返さなくなった大きな要因だったと考えています。

(引用:JCS/JHFS 急性・慢性心不全診療ガイドライン2017年改訂版)

(編集長)

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リズムコントロールか? レートコントロールか?

2024.08.05
カテゴリー: 循環器

フォーカスアップデート版が出された循環器学会の不整脈治療ガイドラインからです。

 

心房細動患者さんを診た時に中長期的な管理をどうするかは毎回悩むところです。この管理方針には、洞調律への復帰と維持を図るリズムコントロールと、洞調律には復帰させずに適切な心拍数のコントロールで症状改善を図るレートコントロールの2つがあります。

 

まず、洞調律の復帰・維持する利点としては心房細動の症状に加え,運動能力とQOL の向上、LVEF の改善、左房径減少、入院イベントの減少に有効とされています。

 

レートコントロールは、約20 年前に行われたAFFIRM試験というリズムコントロールとレートコントロールを比較した試験で生命予後に有意差がなかったことが根拠となっています。

 

もっとも当時は心房細動に対するカテーテルアブレーションが普及しておらず、現在もそのまま適応することは困難ですし、いろいろな研究から近年では心房筋リモデリングなどの有害事象が進展する前の早期に抗不整脈薬やアブレーションを積極的に用いてのリズムコントロールを行うことの重要性が指摘されていて、ガイドラインでは推奨度と共にリズムコントロールが望ましい場合も示されています。

 

ClassⅡa:発症早期の心房細動患者において,リズムコントロール療法を考慮する

 

<リズムコントロールが望ましい場合>

・症状(動悸,眼前暗黒感,胸部不快感など)が強い

・心房細動の持続により心不全の発症、増悪が危惧される

・心房細動発症関連の併存疾患(高血圧、心不全、冠動脈疾患、糖尿病、睡眠時呼吸障害など)が比較的少ない

・心房筋のリモデリングが軽度(左房径の高度拡大がない、心房内伝導遅延が少ない)
・ 患者がリズムコントロールを希望する

 

そうなると、レートコントロールの方針で管理する患者さんは、洞調律を維持することが困難と考えられる持続性および永続性心房細動患者がおもな対象となります。

 

(参考文献:2024JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療)

 (編集長)

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心房細動とアルコール・カフェイン

2024.07.15
カテゴリー: 循環器

今回もフォーカスアップデート版が出された循環器学会の不整脈治療ガイドラインからです。

 

心房細動に限らず、患者さんからよく質問されることの一つに「アルコール」があります。そして、「アルコール」よりは少ないものの「カフェイン」のこともよく質問されます。患者さんにとっては毎日の大事な楽しみですから医師からのアドバイスは重要で、決してテキトーなことを言ってその場をごまかしてはいけません。

 

さて、あなたはいつもどう答えているでしょうか?

 

まずアルコールについてですが、アルコールの過剰摂取は心房細動誘発の危険因子です。飲酒した翌日に発作性心房細動が起こるという患者さんもいました。同時にアルコールの過剰摂取は、抗凝固療法中の出血の危険因子にもなります。出血性合併症のリスク評価に用いるHAS-BLEDスコアの中にも、D(Drug)のところにアルコール依存が入っています。さらに血栓塞栓症の発症や死亡リスクをも増加させてしまいます。

HAS-BLEDの過去記事はこちら

 

でも安心して下さい。最近のRCT で常用飲酒している心房細動患者において、禁酒が心房細動再発を抑制するという報告があり、これを受けてアップデート版では、心房細動発症予防および抗凝固療法を考慮する心房細動患者においてはアルコールの過剰摂取を避けるための助言と管理を行うべき(Class IIa)となっています。

 

一方,カフェインの過剰摂取は,心房細動発症の契機となる上室期外収縮発生の危険因子と考えられていますが、近年は適切なカフェイン摂取習慣は心房細動のリスクを高めず、むしろ1 日1 ~ 3 杯の習慣的なコーヒー飲用は心房細動発症リスクを軽減するとの報告もあるようです。

 

このためアップデート版には特にカフェインに関する推奨はされていませんが、心房細動とは無関係の動悸症状を増加させる可能性があることは知っておくと良いですね。

 

(参考文献:2024JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療)

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高齢者の心房細動に対するカテーテルアブレーション

2024.07.08
カテゴリー: 循環器

今回もフォーカスアップデート版が出された循環器学会の不整脈治療ガイドラインからです。今回は高齢者の心房細動に関するCQからシェアします。

 

高齢になるほど心房細動の罹患率が上昇するのはご存じだと思いますが、例えば車いすで外来に来られる83歳の患者さんで心房細動を見つけた時に、アブレーションを勧めるべきでしょうか?

 

当院でも80歳以上の心房細動の患者さんにアブレーションを施行することが増えてきていますが、何でもかんでもという訳ではありません。何を重視するのか、ガイドラインの記載を確認してみます。

 

まず、安全性については、高齢な患者さんほど合併症が多くなるのですが、合併症発症率は60歳未満では2.5%で、85歳以上では6.8%と2.8倍の差があります。しかし全体では5.8%なので、絶対にやってはいけないと言えるほどのものではなく、慎重に適応を判断することが大事なようです。

 

年齢にかかわらず症候性心房細動ではカテーテルアブレーションでQOL が改善することが見込まれますが、患者の予後を改善するというエビデンスは確立していません。

 

まとめると、

・高齢(≧80歳)のみで症候性心房細動に対するカテーテルアブレーションの選択肢を排除しないことを推奨する。

・高齢者の無症候性心房細動に対して、予後改善目的のカテーテルアブレーションは推奨しない。

となっています。

 

実際のところ、高齢者における心房細動カテーテルアブレーションは,併存疾患や認知症、フレイルなどを十分に検討して、合併症のリスクが高くないと想定される症候性心房細動の患者さんに対して、心房細動によって低下したQOL やADLを回復させることを目的として行われるべきで、患者さんや家族と何のためにやるのかを良く話し合うことが大事になります。

 (編集長)

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心房細動に対するカテーテルアブレーションの適応

2024.07.01
カテゴリー: 循環器

フォーカスアップデート版が出された循環器学会の不整脈治療ガイドラインからです。今回は心房細動に対するカテーテルアブレーションの適応についてシェアします。

 

当院でも心房細動に対するアブレーションを多く施行していますが、デバイスの進歩で手技時間も大幅に短縮でされて、治療成績も安定してきました。しかし一定の頻度で合併症が起こり得ますので、心房細動を見つけ次第アブレーションという訳では決してありません。

 

そもそも心房細動はただちに生命に関わる疾患ではないため、カテーテルアブレーションは洞調律維持による患者のQOL 改善を目的として施行されてきました。しかし臨床現場では症候性心房細動以外にも拡大されてきていることを踏まえてのアップデートです。

 

今回のフォーカスアップデート版では、

①症候性再発性発作性心房細動

②無症候性再発性発作性心房細動

③心不全を伴う心房細動 

に分けて記載されています。

 

【症候性再発性発作性心房細動】

第一選択治療としてのカテーテルアブレーションはClassⅠになっています。ただし、アブレーションに用いるデバイスとして高周波やクライオバルーンなど複数あるのですが、エビデンスの点からクライオバルーンによるアブレーション治療がClassⅠとなっています。もちろんClassⅠと言っても、患者がアブレーションを希望した場合,他の選択肢や治療のリスクなどの十分な説明を行ったうえで選択することが必要です。

 

【無症候性再発性発作性心房細動】

無症候性心房細動患者の予後をカテーテルアブレーションが改善することを明瞭に示したRCT はまだありませんが、① 早期の洞調律維持治療が心房細動患者予後に関連する,② カテーテルアブレーションは心房細動の進行を抑制する、といったエビデンスが集積されつつあることを踏まえて、以下のようになっています。

 

無症候性再発性の発作性心房細動でCHA2DS2-VASc スコアが3 点以上の患者に対するカテーテルアブレーションを行う(Class IIa)

 

【心不全を伴う心房細動】

心不全を合併した心房細動に対するカテーテルアブレーションの有効性が高いことが示されていますが、一方でHFrEFでは特にNYHAIII やLVEF < 25% の群では薬物治療に対する有意性は示されていません。心不全の病態は多様であり,心機能,NYHA,基礎心疾患,心房細動持続期間など患者背景に応じて適応を判断する必要があることが強調されています。

 

また重症心不全に進行した心房細動が合併している症例では、安易なアブレーションでむしろ予後を悪化させてしまう可能性もあります。複雑な手技や高齢者、多くの合併疾患(心不全,腎機能障害,高血圧など)は周術期の合併症リスクを高めるため症例ごとに慎重な対応が望まれます。これらを踏まえて以下のようになっています。

 

明らかな基礎心疾患をともなわず、心房細動起因性の低左心機能が強く疑われる心房細動患者において、死亡率や入院率を低下させるためにカテーテルアブレーションを行う(Class Ⅰ)

 

ガイドラインにもとづく標準的心不全治療が行われているHFrEFの心房細動患者の一部において、死亡率や入院率を低下させるためにカテーテルアブレーションを考慮する(Class Ⅱa)

 

心不全の要因となる合併疾患がないHFpEFの心房細動患者において,死亡率や入院率を低下させるためにカテーテルアブレーションを考慮してもよい(Class Ⅱb)

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