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茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
【循環器】大腿穿刺のトラブル その7(仮性動脈瘤の対応)
今回は仮性動脈瘤への対処法についてです。
対処法としては
1. 圧迫(用手またはプローブ圧迫)
2. トロンビン注入
3. 外科的修復術
と主に3つの方法がありますが、いずれにせよ仮性動脈瘤と判明したら早期に対処することが大事なので、院内のリソースを考えて選択します。
まず、圧迫法ですが、むやみに圧迫してもダメで出血点をきちんと圧迫することが必要です。用手的に行ってもいいのですが、出血点が良く分からないので、エコープローブを用いた圧迫がおススメです。
ポイントはエコーを当てて、カラードプラで出血点を見つけたら、仮性瘤内への血流が無くなるように、そのままエコープローブで20~30分間圧迫を続けます。押さえていると疲れてプローブがずれてくるので、ときどきカラードプラで瘤内に血流が入らず適切に圧迫できているか確認します。20~30分経って、圧迫をやめても瘤内にカラードプラで血流が見えなくなったら、沈子で圧迫してPCI後と同じように4~5時間の安静です。
この圧迫法の弱点は、血腫が大きいときちんと圧迫できない場合があることです。そこで患者さんには申し訳ないのですが、血腫を周囲によけるように「散らして」出血点を圧迫しましょう。また、10分程度では止血は得られないので、あなたの他の仕事はあきらめて20~30分圧迫を継続することです。ここで止血しておかないと、もっと多大な時間をとられることになります。小さい仮性動脈瘤なら、圧迫だけで大丈夫なことが多いです。
トロンビン注入は、仮性動脈瘤内(つまり血管外のスペース)に体表からトロンビンを注入することで、血栓化を図るものです。手技的に慣れが必要ですが、圧迫時間を短縮できる点で優れています。ただ、血栓化が得られた後の4-5時間の安静を省略できるものではありません。
エコーで出血点を同定し、プローブで圧迫して仮性瘤内への血流を遮断した状態にします。ここで体表から仮性瘤内にトロンビン0.3~0.5mlを注入します。小さい血腫であれば狙うのが難しくなりますし、大きな血腫では上手く血栓化が得られないこともあります。トロンビンは血管内投与が禁忌ですから、圧迫をしっかり行って仮性動脈瘤内(=血管外のスペース)に注入しましょう。ちなみにトロンビンは内視鏡室や手術室にありますが、この手技に対する保険適応はありませんのでご注意ください。
(Angiologist)
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【循環器】大腿穿刺のトラブル その6(穿刺部仮性動脈瘤)
穿刺部トラブルで比較的遭遇するものに仮性動脈瘤があります。カテが終わって、患者さんの安静時間も終了してしばらくたったところで急に穿刺部が腫れてきた・・・といった場合に考慮する必要があります。
ところで、そもそも仮性動脈瘤はどんなものか? 真性動脈瘤との違いは言えますか?真性動脈瘤と仮性動脈瘤の違いは下の図の通りです。
仮性動脈瘤は、すでに血管壁が破綻して周囲の組織でかるく覆われるだけですから、出血している状態と同じです。ということは、早急な対応が必要です。以下に、穿刺部仮性動脈瘤についてまとめておきます。
【症状】
多くは、圧迫止血後の安静解除後に急に穿刺部が腫れてきたり疼痛を訴えます。
【診断】
聴診器を当てると血管雑音が聴取されます。エコーを当てれば血腫が見えて、カラードプラでその血腫内に血流が入っているのが分かります。
【対処法】
通常、穿刺部の仮性動脈瘤は穴が小さいので、
・圧迫法(用手やプローブ圧迫)
・外科的修復
・トロンビン注入 が選択されます。
穴が大きい場合や大きな血腫でしっかり穿刺部を圧迫できない時は、外科的修復やカテーテル治療との併用を考慮します。もちろん輸血が必要となる時もあります。
次回はそれぞれの対処法を具体的に紹介します。
(Angiologist)
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コネなしからコネを作る方法
初期研修を終えると、自分の選んだ専門プログラムに進みます。例えば、循環器内科志望であれば内科専門プログラムでj循環器領域以外の領域を含めて症例を経験し、内科専門医試験を通ってから、循環器内科専門医を受験します。
ところが、循環器内科専門医を取得しても、循環器領域にもいろいろな領域があります。虚血、不整脈、心不全、先天性心疾患弁膜症・・・。とは言え、たとえ大学であっても、循環器の全領域すべてに強いという施設は少ないものです。
そんな時に自分の関心のある分野で有名な施設に行って研修したいとか、スタッフとして働きたい思った時は、どうしたら良いのでしょうか?
大学と違って、市中病院で専門研修をしているとコネも無いし、なかなかチャンスが無いと心配する人もいますが、心配いりません、大丈夫です。
コネなしからコネを作るための有効な方法の一つは、「学会や研究会で質問をする」ことです。
コロナ以前なら1つのセッションで演題ごととか、学会や研究会が開催されるたびに出席して、毎回質問を続けていると、「またあいつか」とかなりの確率で覚えてもらえます。セッションの合間にロビーなどでつかまえて質問するのも手でした。
今は学会も、研究会も各種のセミナーもWebで開催されていますが、この方法はWebでも有効です。開催中にチャットや質問コーナーで質問する、そうでなければ事務局へメールで相談してみるのも有効です。返事があれば、お礼のメールを出す際に「施設見学をさせてもらえませんか?」と書くと、印象に残りやすくなります。
ただし、大事なことは、何となく有名な施設だからではなく、そこで何を身に着けたいか、何を学びたいかをなるべく明確にして、具体的な質問や疑問を持っていることが重要です。その方が「意欲があるやつ」と覚えてもらえる可能性が高くなります。
また施設見学をしたいと口では言っていても、コロナのことだけでなく、実際に行けるほどの時間がある人は少ないです。だからこそ、時間をやりくりして、自腹で施設見学に行くと、それだけやる気がある、熱心だと良い印象を持ってもらえます。さらに色々なことに関心を持って、具体的な質問をたくさんするのが良いでしょう。
あなたにとっては、少し先の話かもしれません。でも、これから進路を考えていくうえで、コネなしからコネを作る方法として覚えておくと良いと思います。
(編集長)
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【循環器】大腿穿刺のトラブル その5(穿刺時の解離)
前回は適切な穿刺部位を紹介しましたが、今回から穿刺の際のTipsを紹介します。
今回は比較的遭遇しやすいトラブルの一つ、穿刺時の血管解離です。
穿刺針で血管を穿刺し、ガイドワイヤーを進めようとしたけどスルスルと入らないことがありますよね。これは血管内腔をきちんととらえていないので、ガイドワイヤーが血管壁内を進んでしまっているのです。気づかずに無理にワイヤーを進めると、閉塞させてしまうこともあります。
ここで覚えておくべきことは、穿刺針の構造です。よく使われるサーフロー®の先端は下のようになっており、針先と外套にわずかに差があります。
たとえば大腿動脈の前壁を穿刺しても、きちんと外套が血管内に入っていないことがあり得ます。たとえ逆血があっても、ガイドワイヤーが引っかからずにスムーズに血管内に挿入できない時は解離を生じた可能性を考えて、それ以上ワイヤーを進めず穿刺しなおしましょう。これは血管壁構造がしっかりしている動脈で良く経験しますが、静脈を穿刺する際にも同様のことが起こります。
(Angiologist)
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【循環器】大腿穿刺のトラブル その4
前回は穿刺部のトラブルを回避するための適切な穿刺部位を紹介しました。
安全な穿刺部位は、動脈触知が良好なことに加えて、
・動脈・静脈を同時に貫通しない。
→ 動脈と静脈が重なっていないで並走している
・確実な止血が行える
→ 背側に骨頭があって、圧迫する際の土台になる。
・近傍の分枝を傷つけない
→ 小さい枝だけでなく浅大腿動脈や深大腿動脈を穿刺せず、総大腿動脈を穿刺できる
こういった条件がそろってほしいところです。
前回紹介した古寺先生の文献によると、下図のように、透視で大腿骨頭を4等分したうちの一番下方の領域で穿刺すると
・動脈と静脈が重ならない
・背側に骨頭があり圧迫できる
・皮膚との距離が近い
・分枝を損傷しにくい
という条件を満たしていました。
逆に、それ以外の部位だと、下図のように動脈と静脈が重なることが多く、また分枝に当たりやすくなるなど、注意が必要になります。
実際には皮膚と血管までの距離が少しあるため、皮膚の刺入部は透視で見た大腿骨頭下縁にすることで、この領域で血管を貫くことができます。穿刺時にはこのようにペアンなどで目印を付けておくと良いでしょう。
ここで一つ注意は、浅大腿動脈(SFA)と深大腿動脈(DFA)との分岐レベルにかなり幅があることです。多くは大腿骨頭下縁から下方で分岐していますが、高位分岐と呼ばれる、上方で分岐することも比較的多く経験します。古寺先生の文献では、大腿骨頭下縁を基準として、上方40㎜から下方35㎜と75㎜の幅で分岐していたと報告しています。
SFAやDFAを穿刺してしまうと、圧迫止血に難渋する場合があるので、穿刺は避けたいところです。SFAとDFAが高位で分岐するタイプがあることに覚えておき、過去にCTを撮影しているのなら、分岐がどのレベルなのかをよく確認しておきましょう。
(Angiologist)
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【循環器】大腿穿刺のトラブル その3(安全な穿刺とは)
大腿穿刺はいろいろな合併症が起こりえます。
・穿刺部血腫
・仮性動脈瘤
・分枝動脈損傷
・動静脈穿刺(シャント)
・血管解離
・血栓形成
・感染(止血デバイス使用時)
そして、これらは決して動脈穿刺の時だけに起こるものではありません。静脈穿刺の際にも起こりえるので、たとえCVしか入れないあなたでも、十分関係がある話です。
さて、上記のような合併症を起こさないためのコツは、穿刺部位を十分に吟味することです。
動脈をよく触知できるところで穿刺するの良いとして、
・動脈・静脈を同時に貫通しない。
・確実な止血が行える(背側に骨構造がある)。
・近傍の分枝を傷つけない
これに適した穿刺部位があるのを知っていますか? それがこちら↓
これは当院に定期的に来ていただいている慶応大学放射線科の井上政則先生からいただいたスライドですが、古寺研一先生が「経皮的血管造影における大腿動脈穿刺部の画像解剖学的検討」というタイトルで発表されたものです。(慶応医学76:179~186,1999)
なぜ穿刺部位として、この位置が良いのか? その理由まで知っておくべきだと思いますので、次回に紹介します。
(Angiologist)
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【循環器】大腿穿刺のトラブル その2(局所解剖)
穿刺部のトラブルを予防するには、まず局所解剖をおさえましょう。なにも全部の血管名を覚える必要はありませんが、こんな感じで血管が走行している、というイメージを持つことが大事です。
たぶんあなたは、大腿部のイメージはこんな感じではないでしょうか?
動脈と静脈が離れているイメージで、脈を触れながら、少し内側を穿刺すれば静脈に当たる。しかも分枝はない・・・・。
でも、研修医らがCVを挿入する際の穿刺を見ていると、全然静脈に当たらないのです(笑)。このイメージは、決して間違いではありませんが、実際はのところは
こんな風に少し重なるイメージです。動脈を触れながら、そのすぐわきを狙う感じ。こうすることで静脈穿刺の成功率が向上します。
そして、PCIなどで動脈を穿刺する時は、思っている以上に動脈の分枝があることを覚えておきましょう。
もちろん、破格があるのでこの通りという訳ではありませんが、変なところを穿刺すると、動脈損傷を来してしまうといのは分かってもらえると思います。
こんな枝を針で刺せないよと思うかもしれませんが、実際に針が当たって、トラブルを起こしてしまうのです。動脈を穿刺する時でも、静脈を穿刺する時でも、動脈の分枝を損傷させてしまったかも、という謙虚さがトラブルの早期発見に大事です。
(Angiologist)
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【循環器】大腿穿刺のトラブル
PCIを終えた患者さんが病室に戻ったところで、病棟看護師さんから「先生!穿刺部周囲が腫れているので見てください!」と連絡がありました。慌てて見に行くと、穿刺部周囲が腫れていました。幸い血圧低下などバイタルの崩れはありません。エコーを当ててみると、大腿動脈本幹からの出血ではなさそうです。
造影CTを行ってみると、こんな感じでした。何が起こったのでしょう?
カテーテルの合併症で一番多いのが穿刺部関連のトラブルで、全体の7割を占めると言われています。動脈穿刺はもちろんのこと、たとえ静脈穿刺であっても動脈を損傷して出血することがあり、発見が遅れれば重大な結果につながります。なので、カテーテルに携わるなら、どうすれば防げるのか?起こってしまったらどう対処するのか?といったことを絶対に知っておかねばなりません。
この例は、穿刺により大腿動脈の分枝である下腹壁動脈を損傷してしまった症例です。こんな場合は、カテーテル動脈塞栓術(TAE)を行い、コイルで止血をします。
画像提供:慶応大学放射線科 井上政則先生
トラブルを起こさないことが大事ですが、臨床のいろいろな場面では避けられないこともあります。なので、起こした場合の対処を身に着けておく必要があります。特にいろいろな場面で使われることの多い、大腿穿刺でのトラブルについて、これから何回かに分けて紹介していきます。
ちなみに、水戸済生会の循環器内科には2名のIVR専門医がいて、緊急TAEがいつでもできる体制です。興味のある方は、このサイトのお問い合わせフォームからぜひご連絡ください♪
(Angiologist)
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【循環器】腎動脈疾患・・・検査その2
今回は腎動脈狭窄(RAS)を疑ったときの検査の続きです。
検査法としては以下の3つでしたが、
・ドップラーエコー
・CTアンギオ
・血管造影
今回はCTアンギオと血管造影についてです。
②CTアンギオ(CTA)
CTAの特徴は、何といっても高い空間分解能です。ただし、被ばく等の問題から何度も行う検査ではありません。また狭窄の程度を過大評価する傾向があることは覚えておくべきです。また、腎動脈ステントをすでに留置されている症例では、アーチファクトの影響でステント内やステント前後の評価は困難となり、あまり有用ではありません
③血管造影
診断のために血管造影を施行することはほとんどありません。一般的に、腎動脈にステント留置を行うことを前提に施行されます。また、血管造影では狭窄の評価に加えて、狭窄前後の圧格差を評価できる利点があります。パパベリン、ドーパミン、アセチルコリンなどの薬剤負荷で評価する方法もあり、血行再建に対する効果を予測できる可能性があります。
(Angiologist)
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朴沢先生にEVTをご指導いただきました
当院の循環器内科は、虚血に対するPCIや不整脈に対するアブレーション治療だけでなく、大動脈弁狭窄症に対するTAVIや大動脈瘤・大動脈解離のEVAR/TEVAR治療など、幅広く診療を行っています。その中でも末梢動脈疾患(PAD)に対するカテーテル治療(EVT)は、県内最多の症例数を施行しています。
PADは下肢切断に至ることもある重篤な疾患ですが、EVTだけで完結できるものではなく、血管外科や形成外科、リハビリなど、多診療科・多職種での取り組みが必要で、対応できる病院が少ないのが現状です。しかし、下肢切断の回避にEVTによる血行再建が重要なことは間違いなく、当院では循環器内科が積極的に取り組んでいます。
先日は、国内で下肢EVTのトップオペレーターの一人である、新東京病院の朴沢先生にお越しいただき、EVTを4件ほど指導していただきました。実は朴沢先生は編集長の大学の先輩でもあり、今までも年に1,2回の頻度でお越しいただいていましたが、コロナの影響で来ていただけなかったので、しばらくぶりの指導でした。
当院の専攻医らも自分の症例を準備して一緒にEVTに入り、デバイスの選択や術中の判断など、そばで見ていないと分からないところを指導いただきました。EVTに限らず、院外からの指導医を招聘しながら、診療のレベルアップに取り組んでいます。
(編集長)
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