専門研修ブログ

茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。

心房細動に対するカテーテルアブレーションの適応

2024.07.01
カテゴリー: 循環器

フォーカスアップデート版が出された循環器学会の不整脈治療ガイドラインからです。今回は心房細動に対するカテーテルアブレーションの適応についてシェアします。

 

当院でも心房細動に対するアブレーションを多く施行していますが、デバイスの進歩で手技時間も大幅に短縮でされて、治療成績も安定してきました。しかし一定の頻度で合併症が起こり得ますので、心房細動を見つけ次第アブレーションという訳では決してありません。

 

そもそも心房細動はただちに生命に関わる疾患ではないため、カテーテルアブレーションは洞調律維持による患者のQOL 改善を目的として施行されてきました。しかし臨床現場では症候性心房細動以外にも拡大されてきていることを踏まえてのアップデートです。

 

今回のフォーカスアップデート版では、

①症候性再発性発作性心房細動

②無症候性再発性発作性心房細動

③心不全を伴う心房細動 

に分けて記載されています。

 

【症候性再発性発作性心房細動】

第一選択治療としてのカテーテルアブレーションはClassⅠになっています。ただし、アブレーションに用いるデバイスとして高周波やクライオバルーンなど複数あるのですが、エビデンスの点からクライオバルーンによるアブレーション治療がClassⅠとなっています。もちろんClassⅠと言っても、患者がアブレーションを希望した場合,他の選択肢や治療のリスクなどの十分な説明を行ったうえで選択することが必要です。

 

【無症候性再発性発作性心房細動】

無症候性心房細動患者の予後をカテーテルアブレーションが改善することを明瞭に示したRCT はまだありませんが、① 早期の洞調律維持治療が心房細動患者予後に関連する,② カテーテルアブレーションは心房細動の進行を抑制する、といったエビデンスが集積されつつあることを踏まえて、以下のようになっています。

 

無症候性再発性の発作性心房細動でCHA2DS2-VASc スコアが3 点以上の患者に対するカテーテルアブレーションを行う(Class IIa)

 

【心不全を伴う心房細動】

心不全を合併した心房細動に対するカテーテルアブレーションの有効性が高いことが示されていますが、一方でHFrEFでは特にNYHAIII やLVEF < 25% の群では薬物治療に対する有意性は示されていません。心不全の病態は多様であり,心機能,NYHA,基礎心疾患,心房細動持続期間など患者背景に応じて適応を判断する必要があることが強調されています。

 

また重症心不全に進行した心房細動が合併している症例では、安易なアブレーションでむしろ予後を悪化させてしまう可能性もあります。複雑な手技や高齢者、多くの合併疾患(心不全,腎機能障害,高血圧など)は周術期の合併症リスクを高めるため症例ごとに慎重な対応が望まれます。これらを踏まえて以下のようになっています。

 

明らかな基礎心疾患をともなわず、心房細動起因性の低左心機能が強く疑われる心房細動患者において、死亡率や入院率を低下させるためにカテーテルアブレーションを行う(Class Ⅰ)

 

ガイドラインにもとづく標準的心不全治療が行われているHFrEFの心房細動患者の一部において、死亡率や入院率を低下させるためにカテーテルアブレーションを考慮する(Class Ⅱa)

 

心不全の要因となる合併疾患がないHFpEFの心房細動患者において,死亡率や入院率を低下させるためにカテーテルアブレーションを考慮してもよい(Class Ⅱb)

(編集長)

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