
専門研修ブログ
茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
アルドステロン症の見つけ方 その3
前回はスクリーニングについて紹介しました。
スクリーニングでARRとPACが基準を満たせば、次にするのは機能確認検査です。この検査をすることで、通常ならばアルドステロンが抑制される状況を作っても、アルドステロンが抑制されずに異常な分泌を続けているのを証明する訳です。
これには
・カプトプリル負荷試験
・生食負荷試験
・フロセミド立位負荷試験
・経口食塩負荷試験
がありますが、どの方法でも良いようです。(日本内分泌学会のコンセンサスステートメントVer4.1)
となると、外来で簡単にできるカプトプリル負荷試験がオススメです。カプトプリルはACE阻害薬ですが、先述のように健常人では服用するとレニンが上昇して、アルドステロンが低下します。でも、PAの場合はアルドステロンが過剰分泌されたままなので、レニンは抑制されたまま、アルドステロンも低下しません。
やり方としてはスクリーニングの時と同じように、ARRに影響のない降圧剤に変更しておき、外来にきたら安静臥位で負荷前の採血を行った後、カプトプリル50㎎を内服します。その後は院内をぶらぶらしてもらい90分後(60分後でも良いらしい)に戻ってきてもらい、再度安静臥位で負荷後の採血を行っておしまいです。そして、1週間後に結果説明に受診してもらいます。
負荷後もARR>200(pg/mlの場合)ならPAの診断となります。
ちなみに診断するには、影響ある降圧剤を中止したりと、きちんとした手順で検査をする必要があります。でも降圧剤の中止や変更は思っている以上に面倒ですので、裏技を紹介しましょう。すでにACE阻害薬やARBを服用している人でも、カリウムが高くない場合(低値ではないけど、ACE阻害薬を服用しているのに低めという意味)、そのままARRを調べてみて下さい。この状況でレニンが抑制されたままとか、ARR>200であれば、かなりPAが疑われます。こうなれば、きちんと説明して薬剤を変更してカプトリル負荷試験をやるのが良いと思います。
機能検査でアルドステロンの自立性分泌が証明されれば、これでPAの診断は確定となります。
次回は病型診断を紹介します。
(編集長)
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アルドステロン症の見つけ方 その2
今回はPAのスクリーニングについてです。
PAのスクリーニングには、随時採血で
・血漿アルドステロン濃度(PAC)
・血漿レニン活性(PRA)
を測定して
・アルドステロンレニン比(ARR=PAC/PRA)
を求めましょう。
本来、アルドステロンもレニンも座位と臥位では値が異なるので、30分の安静臥位での採血が望ましいとされています。しかし、実際のところ難しいので、座位での随時採血でOKです。
なお、ARRを求める時に単位を必ず確認しましょう。PACにはng/dlとpg/mlの二つがあり、各施設(検査機関)によって異なります。
そして、カットオフ値は
単位がpg/mlであれば、ARR>200
ng/dlであれば、ARR>20
となります。(ng/dl=1000pg/100ml=10pg/mlですよね)
さらに、ARRに加えてPAC>120pg/ml (12ng/dl)の併用が推奨されています。
(内分泌学会のコンセンサスステートメントVer4.1 平成28年2月)
他に注意点としては、スクリーニング採血の際にほとんどの症例では降圧剤を内服しているはずですが、利尿剤、β遮断薬、アルドステロン拮抗薬(ACE阻害薬、ARB、スピロノラクトン、エプレレノン)はARRに影響してしまうので、事前に変更が必要です。ただ、利尿薬、アルドステロン拮抗薬は6週間以上、β遮断薬は2週間以上の中止がガイドラインでは求められていますが、実際は難しいです。
変更する降圧剤については
・ブドララジン(ヒドララジンの同効薬)、
・α遮断薬(ドキサゾシン)、
・カルシウム拮抗薬(ニフェジピン、
アムロジピン、マニジピン)
実際のところ、ブドララジンを処方できる施設は限られるので、ドキサゾシンとアムロジピンの組み合わせが、どの施設でも利用可能で便利です。編集長はドキサゾシンとアムロジピンでコントロールが著しく不良の時は、さらにニフェジピンをかぶせています。
スクリーニングの随時採血で、ARR>200かつPAC>120pg/mlの2つの基準を満たせば、次の機能確認検査に進みます。
(編集長)
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アルドステロン症の見つけ方 その1
循環器内科には高血圧の患者さんが多く紹介されてきます。健診で指摘された人、既に治療を開始しているけどコントロールがイマイチな人などですが、そのほとんどが本態性高血圧(EH)です。でも、その中に二次性高血圧の患者さんが隠れていて、これを見つけ出すのは循環器内科医のやりがい(ひそかな楽しみ)の一つです。
というのも、二次性高血圧の多くは何種類もの降圧剤を使ってもコントロール不良のことが多く、原因に特異的な治療を行うと非常にコントロールも良くなるし、状況によっては降圧剤を最小限まで減らすことができる場合があるからです。
そんな二次性高血圧の中で、原発性アルドステロン症(PA)は高血圧患者のうち3~10%を占めるというデータもあるくらい頻度の高い疾患ですので、その気になればあなたも見つけられます。今回から、そんなPAの見つけ方を紹介していきます。
まず、PAとくれば高血圧と低カリウム血症ですね。しかしカリウム値が正常の場合も多く存在するので、カリウム値だけで判断するのは良くないようです。
PAのスクリーニングとしては、最初に血漿アルドステロン濃度(PAC)と血漿レニン活性(PRA)を随時採血で調べて、アルドステロンレニン比(ARR=PAC/PRA)を求めます。本来は高血圧患者全例にPAのスクリーニングが望ましいのですが、費用対効果のエビデンスがありません。
このため実際のところ、ARRのスクリーニングが推奨されているのは
①低カリウム血症合併高血圧
②若年者の高血圧、
③Ⅱ度以上の高血圧
④治療抵抗性高血圧
⑤副腎偶発腫合併例
⑥40歳以下での脳血管障害発症例
⑦耐糖能障害
⑧肥満
⑨睡眠時無呼吸症候群
スクリーニングでARRを調べるときは、体位は臥位でも座位でも構いません。ぜひチェックしてみてください。
(編集長)
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【循環器】大腿穿刺部トラブル その13(高位分岐)
穿刺部のトラブルを減らすために知っておくべきことを紹介してきましたが、今回は高位分岐です。
このシリーズの「その3」(安全な穿刺とは)で説明しましたが、トラブルを減らす穿刺の条件は、
・動脈・静脈を同時に貫通しない。
・確実な止血が行える(背側に骨構造がある)。
・近傍の分枝を傷つけない
ということで、下図の位置が適切だと紹介しました。
しかし、浅大腿動脈(SFA)と深大腿動脈(DFA)が分岐する位置が、通常よりも頭側にずれていると、SFAやDFAを穿刺することになり、止血時のトラブルにつながります。
高位分岐は体表からでは分かりませんので、患者さんの過去のCTやエコーなど、画像から確認するしかありません。あまり穿刺部のことをCTで確認することはないかもしれませんが、やはり準備が大事です。
CT画像で説明すると、通常は大腿骨頭より足側でSFAとDFAに分岐します。
ところが、高位分岐では、大腿骨頭が写っているレベルでSFAとDFAに分岐します。
これに気づいていれば穿刺部のトラブルを減らすことにつながります。ぜひカテ前の準備でチェックしてみてください。
(編集長)
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【循環器】大腿穿刺部トラブル その12(ガイドワイヤーの特徴)
穿刺部のトラブルを減らすには、使っている道具の特徴を理解しておくことも重要です。
穿刺の際に使われるシースキットにはガイドワイヤーが付属していますが、このガイドワイヤーには大きく2種類あります。
一つは、コアワイヤーにプラスティックをカバーしたタイプで、ラジフォーカス®が代表的なものです。
もう一つが、ステンレスコアに細いワイヤを巻きつけてあるスプリングワイヤー
ラジフォーカスタイプは滑りが良く、屈曲や蛇行が強くても挿入できますが、どこでも進んでしまうので、分枝に先端が迷入してしまう危険性があります。透視のない状況で、挿入時の手ごたえだけでは、どこに進んでいるのか全く判断できません。それだけと血管損傷のリスクが高くなります。
一方で、スプリングワイヤーは滑りはそれほどでもなく、高度に屈曲していると通過困難なこともあります。しかし、多くの製品が先端形状がJ型になっていることもあり、分枝に迷入しにくいワイヤーです。挿入時のワイヤーの抵抗がなくスムーズに挿入できれば、分枝損傷の危険は小さいと判断できます。逆に何らかの抵抗を感じるのであれば、それ以上挿入の手技をやめて、透視などで確認しないと、トラブル必発と言えます。
前回の記事で触れましたが、どうしても透視なしで大腿動脈穿刺をしなくてはいけない時には、編集長だったらシースに付属のワイヤーがどちらのタイプかを確認し、あえてスプリングワイヤーを用いてやります。特にERの現場で重症患者に鼠経部から動脈や静脈にシースを入れることがありますが、穿刺部のトラブルを起こして、かえってヤバいことにならないように慎重にすべきです。
(編集長)
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【循環器】大腿穿刺部トラブル その11(シース挿入時の血管損傷)
あなたが心カテをやっている時のことを考えてみてください。
カテをやる時は最初にシースを入れます。今回は右大腿動脈からシースを挿入しますが、その時なんかスムーズに入りません。「何でだろ?」と思ってやり直すと、今度は問題なく挿入できました。カテも無事に終わって帰室の準備をしようと覆布をとったら、穿刺部周囲が腫れていた・・・。
このように、穿刺部のトラブルは思わぬ形で起こってしまいます。このケースでは、いったい何が起こったのでしょう?
このようなことは、シース挿入時のガイドワイヤーが分枝に迷入してしまうことで起こります。ガイドワイヤー先端で血管穿孔を起こし得ますし、ワイヤーでは損傷しなくとも、分枝に進んだワイヤーに気づかずシースを挿入すると損傷してしまいます。
特に注意すべき分枝は、この2つです。(冒頭のCTは下腹壁動脈損傷による血腫です)
下腹壁動脈に比べて深腸骨回旋動脈(DICA)は角度的にガイドワイヤーが迷入しやすいので、特に注意が必要です。血腫ができる位置も穿刺部と離れていることが多いので、自分のせいじゃないと思いたくなりますが、やはり穿刺手技が原因です。
でも、これはカテ室では透視で先端がどこにあるのかを確認すれば防ぐことができます。手ごたえがおかしければすぐに透視で確認をする。手ごたえが問題なくとも透視で確認する。透視で確認することが重要です。
問題なのは、透視が使えない状況でシースを挿入する時です。具体的にはERでAライン代わりに動脈にシースを挿入する時が特に危ないので、慎重さが必要です。編集長自身は、冒頭のような血管損傷が怖いので、透視なしの大腿動脈穿刺でシース挿入は原則行いません。でも、どうしても必要な時は、ガイドワイヤーを変更してやることもあります。
なぜガイドワイヤーを変更するのか?についいて次回に紹介します。
(編集長)
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◆【初期研修医向け】eレジフェアONLINE Week2021に出展します!
6月14日(月)から開催される初期研修医向けeレジフェア 専門・後期研修病院合同説明会に当院も出展します。水戸済生会の内科専門研修プログラムについて、現在研修中の専攻医らがあなたの質問にお答えします!是非ご参加ください!!
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【循環器】大腿穿刺のトラブル その10(TAEに用いる塞栓材)
穿刺部のトラブルで、分枝からの出血を来した際には、カテーテル動脈塞栓術(TAE)が非常に有効です。一般的にTAEに用いられる塞栓物質は以下のように分類されます。
【固形塞栓物質】
・一時塞栓物質
短期塞栓物質 自己凝血塊、DSM
長期塞栓物質 ゼラチンスポンジ (セレスキュ―® ジェルパート®)
・永久塞栓物質
金属コイル フリーコイル、離脱式コイル
塞栓用プラグ (Amplatz Vascular Plague®)
PVA [Polyvinyl Alochol] (ディーシービーズ®)
Plastic microsphere (エンボスフィア®、ヘパスフィア®)
【液体塞栓物質】
エタノール
EO[Ethanolamine oleate] オルダミン®
NBCA [N-butyl-cyanoacrylate] ヒストアクリル®
穿刺部関連の出血では、通常1か所からの出血ですので、出血点までマイクロカテーテルを進めてコイルを用いて塞栓術を行います。どうしても出血点に到達できない、またはバイタルが不安定で時間を掛けられない時には液状塞栓物質であるNBCAを用いることがあります。
(Angiologist)
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◆10分で分かります!
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【循環器】大腿穿刺のトラブル その9(コイル塞栓術)
前回までは、穿刺部にできた仮性動脈瘤への対処について紹介してきました。
しかし穿刺の際は、近くを走る分枝を損傷してしまうことで、巨大な血腫を作ることもあります。
この場合は一般的に出血点が同定しにくく、かつ圧迫止血を行いにくいので前回まで紹介してきた方法では止血困難です。こんな時は、カテーテル動脈塞栓術(TAE)が威力を発揮します。
TAEは、コイルなどのいろいろな塞栓物質を使って止血をする技術ですが、一般的には放射線科医が行っている施設が多いかもしれません。しかし水戸済生会では、IVR専門医資格を持った循環器内科医が2名いるので、ほとんどのTAEは対応可能なのが大きな強みです。
次回からTAEについてもう少し詳しく紹介します。
(Angiologist)
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【循環器】大腿穿刺のトラブル その8(外科的修復術)
前回は仮性動脈瘤への対処法について、前回は①圧迫 ②トロンビン注入について紹介しました。今回は、外科的修復術についてです。
外科的修復術は、血管外科の先生にお願いしないとできないので、タイミングによっては頼みにくいことがあるかもしれません。
でも、仮性動脈瘤はすでに出血している状態ですから、迅速な対応が必要です。普段から相談しやすい関係を作っておきましょう。
修復術の際は出血点の中枢側と末梢側を遮断してから出血点を修復しますが、血腫が大きすぎると動脈自体の同定が困難なことがあります。また部位的に遮断しにくいこともあるので、この場合カテーテルとのハイブリッドも役に立ちます。
上図のように、対側の大腿動脈などから出血しているところにバルーンを進めて、出血点で拡張すれば止血が得られて操作がしやすくなります。ハイブリッドカテ室で透視下に行えば、場所の同定が容易になるのでラクです。
(Angiologist)
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【循環器】大腿穿刺のトラブル その7(仮性動脈瘤の対応)
今回は仮性動脈瘤への対処法についてです。
対処法としては
1. 圧迫(用手またはプローブ圧迫)
2. トロンビン注入
3. 外科的修復術
と主に3つの方法がありますが、いずれにせよ仮性動脈瘤と判明したら早期に対処することが大事なので、院内のリソースを考えて選択します。
まず、圧迫法ですが、むやみに圧迫してもダメで出血点をきちんと圧迫することが必要です。用手的に行ってもいいのですが、出血点が良く分からないので、エコープローブを用いた圧迫がおススメです。
ポイントはエコーを当てて、カラードプラで出血点を見つけたら、仮性瘤内への血流が無くなるように、そのままエコープローブで20~30分間圧迫を続けます。押さえていると疲れてプローブがずれてくるので、ときどきカラードプラで瘤内に血流が入らず適切に圧迫できているか確認します。20~30分経って、圧迫をやめても瘤内にカラードプラで血流が見えなくなったら、沈子で圧迫してPCI後と同じように4~5時間の安静です。
この圧迫法の弱点は、血腫が大きいときちんと圧迫できない場合があることです。そこで患者さんには申し訳ないのですが、血腫を周囲によけるように「散らして」出血点を圧迫しましょう。また、10分程度では止血は得られないので、あなたの他の仕事はあきらめて20~30分圧迫を継続することです。ここで止血しておかないと、もっと多大な時間をとられることになります。小さい仮性動脈瘤なら、圧迫だけで大丈夫なことが多いです。
トロンビン注入は、仮性動脈瘤内(つまり血管外のスペース)に体表からトロンビンを注入することで、血栓化を図るものです。手技的に慣れが必要ですが、圧迫時間を短縮できる点で優れています。ただ、血栓化が得られた後の4-5時間の安静を省略できるものではありません。
エコーで出血点を同定し、プローブで圧迫して仮性瘤内への血流を遮断した状態にします。ここで体表から仮性瘤内にトロンビン0.3~0.5mlを注入します。小さい血腫であれば狙うのが難しくなりますし、大きな血腫では上手く血栓化が得られないこともあります。トロンビンは血管内投与が禁忌ですから、圧迫をしっかり行って仮性動脈瘤内(=血管外のスペース)に注入しましょう。ちなみにトロンビンは内視鏡室や手術室にありますが、この手技に対する保険適応はありませんのでご注意ください。
(Angiologist)
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