専門研修ブログ

茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。

【循環器】大腿穿刺のトラブル

2021.02.15
カテゴリー: 循環器

PCIを終えた患者さんが病室に戻ったところで、病棟看護師さんから「先生!穿刺部周囲が腫れているので見てください!」と連絡がありました。慌てて見に行くと、穿刺部周囲が腫れていました。幸い血圧低下などバイタルの崩れはありません。エコーを当ててみると、大腿動脈本幹からの出血ではなさそうです。

 

造影CTを行ってみると、こんな感じでした。何が起こったのでしょう?

 

カテーテルの合併症で一番多いのが穿刺部関連のトラブルで、全体の7割を占めると言われています。動脈穿刺はもちろんのこと、たとえ静脈穿刺であっても動脈を損傷して出血することがあり、発見が遅れれば重大な結果につながります。なので、カテーテルに携わるなら、どうすれば防げるのか?起こってしまったらどう対処するのか?といったことを絶対に知っておかねばなりません。

 

この例は、穿刺により大腿動脈の分枝である下腹壁動脈を損傷してしまった症例です。こんな場合は、カテーテル動脈塞栓術(TAE)を行い、コイルで止血をします。

画像提供:慶応大学放射線科 井上政則先生

 

トラブルを起こさないことが大事ですが、臨床のいろいろな場面では避けられないこともあります。なので、起こした場合の対処を身に着けておく必要があります。特にいろいろな場面で使われることの多い、大腿穿刺でのトラブルについて、これから何回かに分けて紹介していきます。

 

ちなみに、水戸済生会の循環器内科には2名のIVR専門医がいて、緊急TAEがいつでもできる体制です。興味のある方は、このサイトのお問い合わせフォームからぜひご連絡ください♪  

(Angiologist)

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【循環器】腎動脈疾患・・・検査その2

2021.02.08
カテゴリー: 循環器

今回は腎動脈狭窄(RAS)を疑ったときの検査の続きです。

 

検査法としては以下の3つでしたが、

・ドップラーエコー

・CTアンギオ

・血管造影

 

今回はCTアンギオと血管造影についてです。

 

②CTアンギオ(CTA)

CTAの特徴は、何といっても高い空間分解能です。ただし、被ばく等の問題から何度も行う検査ではありません。また狭窄の程度を過大評価する傾向があることは覚えておくべきです。また、腎動脈ステントをすでに留置されている症例では、アーチファクトの影響でステント内やステント前後の評価は困難となり、あまり有用ではありません

 

③血管造影

診断のために血管造影を施行することはほとんどありません。一般的に、腎動脈にステント留置を行うことを前提に施行されます。また、血管造影では狭窄の評価に加えて、狭窄前後の圧格差を評価できる利点があります。パパベリン、ドーパミン、アセチルコリンなどの薬剤負荷で評価する方法もあり、血行再建に対する効果を予測できる可能性があります。

(Angiologist)

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朴沢先生にEVTをご指導いただきました

2021.02.01
カテゴリー: 循環器

当院の循環器内科は、虚血に対するPCIや不整脈に対するアブレーション治療だけでなく、大動脈弁狭窄症に対するTAVIや大動脈瘤・大動脈解離のEVAR/TEVAR治療など、幅広く診療を行っています。その中でも末梢動脈疾患(PAD)に対するカテーテル治療(EVT)は、県内最多の症例数を施行しています。

 

PADは下肢切断に至ることもある重篤な疾患ですが、EVTだけで完結できるものではなく、血管外科や形成外科、リハビリなど、多診療科・多職種での取り組みが必要で、対応できる病院が少ないのが現状です。しかし、下肢切断の回避にEVTによる血行再建が重要なことは間違いなく、当院では循環器内科が積極的に取り組んでいます。

 

先日は、国内で下肢EVTのトップオペレーターの一人である、新東京病院の朴沢先生にお越しいただき、EVTを4件ほど指導していただきました。実は朴沢先生は編集長の大学の先輩でもあり、今までも年に1,2回の頻度でお越しいただいていましたが、コロナの影響で来ていただけなかったので、しばらくぶりの指導でした。

 

当院の専攻医らも自分の症例を準備して一緒にEVTに入り、デバイスの選択や術中の判断など、そばで見ていないと分からないところを指導いただきました。EVTに限らず、院外からの指導医を招聘しながら、診療のレベルアップに取り組んでいます。

(編集長)

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【循環器】腎動脈疾患・・・検査その1

2021.01.18
カテゴリー: 循環器

今回は腎動脈狭窄(RAS)を疑った時の

検査についてです。

 

検査法としては以下の3つです。

・ドップラーエコー

・CTアンギオ

・血管造影

 

以前は腎シンチグラフィ、ACEI誘発前後の

血漿レニン測定、静脈レニン測定なども

行われたこともありましたが、動脈硬化性

腎動脈疾患の診断には、もはや考慮

されなくなりました。

 

今回はドップラーエコーについて

紹介します。

 

①ドップラーエコー(DUS)

DUSはスクリーニング検査として第一選択

となる検査で、経時的に繰り返し評価する

ことが容易です。

 

最大収縮速度(PSV)で評価しますが、

ESCガイドラインには具体的なカットオフ値

は記載されていません。一般的には

PSV>1.8~2.0m/secが目安になります。

 

弱点としては、狭窄度を過大評価する

可能性あり、後述するRRIなど他の基準も

合わせて評価する必要があります。

また、腎動脈が複数ある場合(Accesary 

renal artery)の評価は困難です。また

当然ながら、肥満患者などで腎動脈を

うまく描出できなければ評価はできません。

 

腎抵抗性指標(RRI:Renal resistive index)は、

血行再建の治療反応の予測に役立つ可能性があります。

 

RRI=(PSV-EDV)/PSV

正常値は0.60~0.70

 

ただし、RRIは腎臓だけでなく、腎臓以外の

因子(大動脈弁狭窄、徐脈など)の影響も

受けるため、正常値より高くとも、低くとも

異常であり、解釈には注意が必要です。

 

一般的には、RRIが低値(0.60未満)で

あれば、血行再建後に腎機能回復と

血圧コントロールを得られるの可能性が

あります。

 

逆に、RRIが高い(>0.75-0.80)場合には

腎実質病変を示すので、血行再建後の

腎機能や血圧の改善は期待できないと

されています。

(Angiologist)

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◆今週レジナビでお会いしましょう!

レジナビFairオンライン2021 

     東日本Week

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当院の出番は

1月20日(水)19時~

参加受付は当日15時までです!

ぜひご参加下さい!

【循環器】腎動脈疾患・・・RASの自然経過

2021.01.11
カテゴリー: 循環器

腎動脈狭窄(RAS:Renal artery stenosis)を

来す疾患として、動脈硬化性の他に、繊維

筋性異形成(FMD:Fibromuscular dysplasia)など

がありますが、頻度としては動脈硬化性の方が

多いです。

 

動脈硬化性RASは進行性であり、狭窄度が強い、

重度の高血圧、糖尿病では特に進行のリスクが

高いようです。

 

とは言っても、RAS患者の10%未満が5年以内に

狭窄の悪化または閉塞に進行し、腎機能の

悪化は片側RASではまれですが、両側RASや

単一機能の腎臓では、より明らかに腎機能に

影響が出てきます。具体的には、2年後に

腎機能悪化を来すのが、それぞれ3%、18%、

55%とされています。

(Angiologist)

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レジナビFairオンライン

参加します!

 

1月18日から開催される

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【循環器】腎動脈疾患・・・疑うポイント

2020.12.21
カテゴリー: 循環器

動脈硬化性疾患について、ESCの

ガイドラインから紹介している

このシリーズですが、頸動脈病変、

上肢動脈疾患、腸間膜動脈疾患と来て、

今回から腎動脈疾患に入ります。

 

腎動脈狭窄が高血圧に関与するのは

有名ですが、一時期は腎動脈狭窄に

対するステント留置が流行ったものの、

今ではほとんど話題になりません。

 

また、腎デナベーション(腎交感神経

除神経術)という治療も盛り上がった

のですが、その後は普及していません。

 

どちらの治療も、非常に有効な症例は

あるのは間違いないのですが、どの

ような症例が治療適応となるのかが

良く分かっていないのが現状です。

 

ESCガイドラインでも、こういった背景も

あって、腎動脈疾患に関する記載は

少ないですね。

 

今回は、腎動脈疾患が疑われる臨床

所見を紹介します。

 

<腎動脈疾患が疑われる臨床所見>

・30歳未満の高血圧発症

 

・55歳以上でCKDや心不全を伴う

 重症高血圧発症

 

・高血圧と腹部の血管雑音

 

・コントロールされていた高血圧の急速

 かつ持続性の悪化

 

・治療抵抗性の高血圧

 

・高血圧クライシス

 (急性腎不全、急性心不全、高血圧性

 脳症、grade 3-4の網膜症)

 

・新たな高窒素血症やRAS系阻害薬

 投与後の腎機能悪化

 

・原因不明の腎萎縮、腎サイズの左右差、

 腎不全

 

・急性肺水腫

 

ちなみに治療抵抗性高血圧は

定義があって、

「他の二次性高血圧でなく、利尿剤と

鉱質コルチコイド(アルドステロン)受容体

拮抗剤を含む適切な容量の4種類の薬剤を

用いても目標値に下がらない」

となっています。

(Angiologist)

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【循環器】腸間膜動脈疾患 その5

2020.12.14
カテゴリー: 循環器

今回は慢性腸間膜動脈虚血(CMI)の

画像診断と治療についてです。

 

【画像診断】

画像診断の第一選択はエコーです。

腹腔動脈、上下腸間膜動脈のフローを

ドップラーで評価するのが、一番侵襲が

少なく評価できます。ただし、評価基準

には定まったものは、まだありません。

 

他には造影CT、MRA、血管造影ですが、

血管造影では、実際のフローの評価と

狭窄前後の圧の評価ができる利点が

あります。

 

【治療】

無症候性の場合は、予防的な血行再建の

適応はありません。一方、症候性の場合は、

栄養状態を改善するために再灌流を遅ら

せることは推奨されていません。

 

侵襲性の低い治療法として血管内治療が

広く行われるようになっていますが、ラン

ダム化比較試験(RCT)がないことから

血管内治療を第一選択としてよいかの

結論は得られていません。

 

他にも、腹腔動脈と上下の腸間膜動脈の

うち、どれを血行再建すべきか、ベアメタル

ステントにすべきか、カバードステントを

用いるべきかなど、明らかになっていない

ことが多々あります。

(Angiologist)

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【循環器】腸間膜動脈疾患 その4

2020.12.07
カテゴリー: 循環器

前回までは急性腸間膜動脈虚血に

ついて紹介してきました。今回からは

慢性腸間膜動脈虚血(CMI)に関してです。

 

CMIというと、あまりピンときませんが、

具体的には腹腔動脈または上下の

腸間膜動脈の狭窄または慢性閉塞が

含まれます。

 

CMIの有病率は、当然のことながら年齢

とともに増加し、特に他の動脈硬化性

疾患および腹部大動脈瘤の存在下では

増加することが知られています。

 

腹腔動脈と上下腸間膜動脈の3つのうち

少なくとも1つの動脈の有意な狭窄あるのは、

腹部大動脈瘤患者で40%、下肢動脈疾患

(LEAD)の患者では27%に認められたとの

報告があるそうです。

 

CMIの典型的な症状は、食後の腹痛、体重

減少、下痢、便秘ですが、無症状のことも

良くあります。また、食後の腹痛を避ける

ために、患者さんは食べることを嫌がります。

でも、悪性腫瘍の患者んなどとは対照的に

食欲は影響を受けません。つまりおなかがすくけど

痛くなるので食べたくない、と言うのです。

 

ポイントは臨床的に疑うことが早期診断の

カギになります。非特異的な検査所見として、

貧血、白血球減少、電解質異常、栄養失調

による二次的な低アルブミン血症などがあります。

(Angiologist)

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【循環器】腸間膜動脈疾患 その3

2020.11.30
カテゴリー: 循環器

前回は、急性腸間膜動脈虚血の

診断について紹介しました。

今回は治療に関してです。

 

上腸間膜動脈が急性閉塞した場合、

壊死した腸管の切除のみで生存できる

のは20~30%で、主に末梢側(腸管に

近い側)の塞栓の場合です。

 

ほとんどの場合、救命するために即時の

再灌流が必要となりますが、腸管の評価

(つまり切除する必要があるかの判断)は

CTだけでは悩ましいこともあり、開腹する

必要も出てきます。

 

開腹が先か?再灌流が先か?は議論の

余地がありますが、実際のところ消化器

外科が主体で見ている施設もあれば、

当院のようにIVRチームが最初に関わる

ところもあり、施設の事情に影響されます。

 

またガイドラインでは、再灌流の方法に

ついても言及しています。

まとめると、

・塞栓性閉塞の場合、開腹再灌流と

 血管内再灌流は同等の効果。

 血栓性閉塞では血管内治療の方が

 死亡率と腸管切除率が低い。

・(高齢の)虚弱な患者を治療する際

 には、ダメージコントロール手術の原則に

 従うことが重要。 

・急性腸虚血患者では血管内治療後の

 開腹手術は必須ではないが、腸の検査が

 必要になることが多い。 

・上腸間膜動脈のカテーテル血栓溶解術は

 良好な結果が報告されており、腸粘膜壊疽が

 なければ、重篤な出血性合併症はまれ。

 

ガイドラインの推奨は以下のように

なっています。

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【循環器】腸間膜動脈疾患 その2

2020.11.23
カテゴリー: 循環器

前回は、ESCガイドラインから、急性

腸間膜動脈虚血の診断に関する

推奨事項を紹介しました。

今回は診断に関する補足です。

 

症状の特徴は

・検査所見はほとんどないが激しい腹痛、

・腸の空洞化(多くの場合、嘔吐と下痢の

 両方を伴う)、

・塞栓症の原因(心房細動など)の存在。

約80%の症例で、この3要素を伴っている

そうです。

 

採血検査ではDダイマーの利用を考慮と

なっていますが、メタアナリシスでは

D-ダイマーの感度は96%、特異度は40%と

感度が高いものの、特異度に欠ける検査

です。なので、使い方としては、Dダイマーが

上昇している急性発症の腹痛なら、

急性腸間膜動脈虚血を疑う必要がある、

という程度で他の検査を進めるべきでしょう。

 

ちなみに、腹部の単純X線検査も行われる

と思いますが、この検査の特異性はなく、

正常であれば、診断を除外するものでは

ないということです。

 

診断のためには、やはりCTアンギオが

一番で、メタアナリシスでも診断精度は

高く、感度94%、特異度95%となって

います。

 

なお、腎機能が悪化していることが一般的

ですが、臨床的に疑わしい場合にはCT

アンギオを禁忌とすべきではない、として

います。つまり他の検査法はあまり役に

立たないので、たとえ腎機能が悪くても

疑ったらCTアンギオをやるしかない

ということです。

 

また、診断するという点においては

エコーや血管造影は有用でない、

MRAは実際にほとんど行われていない

のでデータがないと記載されています。

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