
専門研修ブログ
茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
急性膵炎の話8 早期経腸栄養
急性膵炎シリーズ最終話です。
最後に取り上げる早期経腸栄養は、急性膵炎のバンドルの中でも特に遵守率が低い項目です。正直なところ、自分も、です。
早期経腸栄養の遵守率が低いことに関する僕なりの推測を挙げると、
1.膵刺激しそうで悪い気事のような気がする。
2.経空腸栄養が大変だし、挿入が煩雑。
3.重症膵炎の場合、腸管蠕動が低下し嘔吐しやすい。
僕の場合は3が原因で、一応やるのですが遵守できないことが多いです。
では、どうやって経腸栄養を行っていけばよいか、の前に、なんでそんなに経腸栄養が大切かという部分について触れます。
経腸栄養が大切な理由、それは、感染制御のためです。
重症膵炎の場合、広域スペクトラムの抗生剤を投与し、禁食となります。それが原因となりbacterial translocationをきたし、重症敗血症を合併する引き金になると考えられています。それで、選択的消化管除菌という治療が以前はあったわけです。選択的消化管除菌は有用性が示されていませんが、この腸管から全身への感染の波及を予防するために、消化管を少しでもいいから使っていくというのが有用である。それがこの経腸栄養につながっていくわけです。
先に挙げた3項目の1ですが、早期経腸栄養が膵炎を重症化させるというデータはありません。経腸栄養に用いる栄養剤についても、一定の推奨は現時点ではありません。ちなみに自分ではエレンタールをかなり薄めて使っています。プラスして、経静脈的な栄養管理を併用します。経腸栄養は、栄養管理目的というよりは、感染制御のためです。
そしてもう一つですが、経空腸栄養は管を空腸まで挿入する必要があるので煩雑です。これは、実際に煩雑というだけでなく、膵炎でつらい患者さんに空腸まで管を挿入するのは忍びないという気持ちもあります。この点については、新しいガイドラインでは経胃栄養でよいとされています。ただし、嘔吐が増えることが予想されるので、経胃栄養の場合は少量から始めることが望ましいと思います。
急性膵炎ではバンドルの遵守率が高いほど、治療成績が上がることがわかっています。全ての項目を遵守した治療を心がけていきましょう!
(Nao)
下部消化管内視鏡中♪
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