専門研修ブログ

茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。

急性膵炎のはなし7 抗菌薬は使うな 

2022.05.02
カテゴリー: 消化器内科

急性膵炎シリーズも残すところあと少しです。そして、本日の話題は急性膵炎シリーズで最も伝えたいことと言っても過言ではありません。これは、ガイドラインでも強く主張されていることですので、先に結論をお伝えしておきます。

 

「軽症膵炎では抗菌薬を使うな」

  

研修医の先生に、急性膵炎の患者さんの治療プラン立ててみてというと、まず成因評価、重症度評価はしてくれることが多いです。で、実際の治療プランを立てていくとなると、抜けるのが疼痛管理(ガイドラインでも文章量が少ないので、今回は触れません)、入れすぎなのが抗菌薬です。輸液量を最初から完璧にプランしてくれる先生はなかなかいないのですが、これはやむを得ないでしょう。前回の通り、輸液は奥が深いのです。

 

さて、抗菌薬を入れた先生に理由を問うと、「炎症反応が高かったので」と言われます。

 

そりゃあ炎症反応は高いでしょう。だって膵炎なのだから!最近流行りのCOVID-19(純粋にSARS-CoV-2感染の症例)に対してCRPが高いからと言って抗菌薬が有効ですか?癌で腫瘍性にCRPが上がっている患者さんに抗菌薬は有効ですか?潰瘍性大腸炎が増悪してCRPが上昇している患者さんは抗菌薬を投与したらCRPが下がるのですか?研修医の先生方、CRPが上がっているから抗菌薬を投与するという考えはいい加減捨てましょう!

 

急性膵炎でCRPが上がっているのはなぜなのか? 急性膵炎で抗菌薬が有用な場面はなにか? まず、これを検討しましょう。

 

まず急性膵炎でCRPが上昇する理由についてお話しします。これは、細菌感染症による炎症反応の上昇ではなく、化学炎症によるものです。つまり、タンパク分解酵素により「自己消化」がおこったことによる炎症反応の上昇なのです。「まだ」細菌感染は成立していません。ですので、急性膵炎での抗菌薬は原則的に不要なのです。

 

しかしながら、壊死組織、というのは栄養もたっぷりで細菌感染をきたし、しかも血流が届かないので膿瘍化する可能性もあります。

実際、膵炎の治療では亜急性期~回復期にきたした感染が治療を難渋させます。ですので、抗菌薬が必要な症例、不要な症例を分ける必要があります。

 

これまでの研究で「重症例での早期抗菌薬投与(壊死部への感染が成立してからでは抗菌薬の影響が十分に及ばないからだと考えます)」が有効であるということが明らかにされています。投与する場合はカルバペネム系など広域スペクトラムな抗菌薬を選択します。しつこいですが、軽症例では抗菌薬は不要です。今後は「CRPが高いので抗菌薬入れました」は厳禁です。

 

しかし、重症度に関わらず抗菌薬を投与する場面があります。それは胆石性膵炎で胆管炎を合併している時です。この時は胆道感染症として抗菌薬を入れましょう。

 

話が長くなりすぎたので、もう割愛しますが、腸管滅菌(選択的消化管除菌)というものが僕が医者になったころはされていましたが、今はエビデンスがないとのことでガイドラインでは非推奨です。経口の抗菌薬をかませるようにと上級医から指示があった場合は、ガイドライン見ながらその必要性を再度確認しましょう。

 

急性膵炎は最終的に感染との戦いになることも多いです。適切な抗菌薬の投与を心がけるようにしましょう。この後、経腸栄養の話なども出ますが、重症の膵炎の場合は感染コントロールが非常に大切になります。経腸栄養も実は感染コントロールのために大切なのです。

 

最後になりますが、偉そうに色々書いていますが、僕も抗菌薬の適正使用についてICTからたびたび指導を受けています。正直抗菌薬苦手なのでわかんないことも多いです。僕も勉強しながらより適切な抗菌薬使用を行えるように励んでいます。抗菌薬の適正使用は、未来の医療のために重要なことです。

(Nao)

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