専門研修ブログ

茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。

Kounis(コーニス)症候群

2023.08.28
カテゴリー: 循環器

Kounis(コーニス)症候群をご存じでしょうか?

 

ACS患者に関わる循環器医なら、どんな疾患なのかだけでも知っておくべきものです。当院で経験したKounis症候群の症例報告を、7月に開催されたCVITで本田先生が発表してきましたので、今回はその内容をシェアします。

 

Kounis症候群とは、アナフィラキシー反応に伴う冠攣縮や冠動脈の血栓形成で引き起こされる急性冠症候群を言います。1991年にKounisが、内皮機能障害または微小血管狭心症の症状を示す冠攣縮がアレルギー性急性心筋梗塞に進展する”アレルギー性狭心症症候群”を報告したのが最初です。(Br J Clin Pract1991;45:121-8)

 

頻度は非常に稀で、ACSが疑われCAGを受けた患者における発生率は0.002%という報告がありますが、稀な分だけ過小評価されている可能性があり、実際はもう少し多いのかもしれません。

機序としては肥満細胞がマクロファージやTリンパ球と相互作用していると言われています。

 

誘因には以下のものが報告されています。

Unknown 6.3%

Systemic disease 2.4%

Medication 51.7%

Environment 1.4%

Insect bite 18.8%

Contrast 6.3%

Food 9.7%

Other 3.5%

A.Roumeliotis, et al. Vaccines. 10, 38(2022)

 

以下のように3つのタイプに分類されており、ステント血栓症にも関与している症例もあります。

 

•TypeⅠ(72.6%)— 冠動脈に病変がなく、冠攣縮によるもの 

•TypeⅡ (22.3%)— 冠動脈プラークのびらんや破裂を伴う冠攣縮 

•TypeⅢ (5.1%)—  アレルギー反応の結果として引き起こされた冠動脈ステント血栓症

M.Abdelghany, et al. int J. Cardiol. 232(2017)

 

 

頻度が少ないのでなかなか難しいところではありますが、ACSを疑う状況(胸痛、心電図変化、心筋逸脱酵素の上昇)に加え、発疹やかゆみと言ったアレルギー症状、24時間以内にアレルギー反応が生じていた、以前に診断されたアレルギー疾患の再燃が見られるといった点があれば、Kounis症候群を疑うきっかけになります。

 

対応としては、ACSの対応とアレルギー反応への対応に分かれます。

 

ACSの対応はβ遮断薬を避けて、冠攣縮を押さえる硝酸薬やカルシウム拮抗薬を投与を行いつつ、必要ならPCIを行います。アレルギー反応に対しては、アレルゲンの除去、輸液、ステロイド、抗ヒスタミン薬、エピネフリン投与を考慮していきます。

A.Roumeliotis, et al. Vaccines. 10, 38(2022)

 

当院で経験した症例は、造影剤によるアナフィラキシーが関与したと考えられるもので、鑑別も対応もかなり難しかった症例でした。発表の際も、座長の先生らとかなり議論が盛り上がった症例でしたので、ぜひ覚えておいてください。

(編集長)

発表中の本田先生

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