専門研修ブログ

茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。

肝性脳症にまつわる誤解 その①

2023.06.05
カテゴリー: 消化器内科

皆様、はじめまして。消化器内科の蒼いRX²と申します。昨年度まで近くの研修病院の総合内科で勤務していました。初投稿の今回は、肝性脳症にまつわる3つの誤解を解いていきたいと思います。

 

誤解① 肝硬変患者の意識障害 ⇒ 肝性脳症!

誤解② 高アンモニア血症+意識障害 ⇒ 肝性脳症!

誤解③ とりあえずアミノレバン入れておけばOK!

 

誤解① 肝硬変患者の意識障害 ⇒ 肝性脳症!

「肝硬変の人が意識障害で救急搬送?どうせ肝性脳症でしょ!」と短絡的に考えてしまいがちですが、本当にそうでしょうか?

 

AASLDガイドラインでは、肝性脳症の診断において、意識障害の原因となる他疾患の除外を行うことを推奨しています。1)  まずはAIUEOTIPSの基本に立ち返って考えてみましょう。その中でも特に重要なのが、頭蓋内出血、低血糖、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)、アルコール性ケトアシドーシス(AKA)です。

 

アルコール性肝硬変では、頭蓋内出血のリスクは5倍に跳ね上がるとも言われています。2)

低血糖は意識障害において真っ先に除外すべきですし、鑑別から落としがちなのがDKA, AKAです。「肝性脳症っぽいな~」と思いつつも、まずは瞳孔と粗大な麻痺の評価をしつつ、血液ガスでアシドーシス、血糖異常、電解質異常はチェックしておいた方が良いでしょう。何事も基本が肝心です。

 

少々長くなってしまいました。誤解②と③は次の機会にお話ししましょう。

 

参考文献:

1) Hepatology. 2014;60(2):715-735

2) BMC Gastroenterol. 2008 May 24;8:16

3) Hospitalist vol.6 No.3 2018『肝胆膵』

 

(蒼いRX²)

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日 時:2022年6月26日(月)18時開始(40分程度の予定です)

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ピロリ菌除菌について

2023.04.24
カテゴリー: 消化器内科

H.pylori感染では胃粘膜の慢性炎症を背景として胃・十二指腸潰瘍, 胃癌をはじめとしたH.pylori関連疾患を引き起こし, 胃酸分泌能など胃機能への影響や消化管以外の疾患との関連性も指摘されています. 

 

『H.pylori感染の診断と治療のガイドライン2016改訂版』では, H.pylori除菌が強く勧められる疾患として, H.pylori感染胃炎, 胃・十二指腸潰瘍, 早期胃癌に対する内視鏡治療後胃, 胃MALTリンパ腫, 胃過形成性ポリープ, 機能性ディスペプシア, 胃食道逆流症, 免疫性血小板減少性紫斑病, 鉄欠乏性貧血が挙げられています.

 

実際には, 上部消化管内視鏡検査で前述のH.pylori感染関連疾患を認める場合, H.pylori感染診断検査を行います. 当院では血清抗H.pylori抗体測定で感染診断を行うことが多いです. 他に, 迅速ウレアーゼ試験, 鏡検法, 培養法(内視鏡による生検組織を用いる), 尿素呼気試験, 便中抗原測定法などがあります.

 

感染診断検査で陽性の場合, 1次除菌としてアンピシリン+クラリスロマイシン+PPIを7日間内服します. 1次除菌の成功率は75-90%で, 飲み忘れや中断なく内服すること, 除菌中の喫煙を避けることで除菌成功率が高まります. 除菌薬終了後4週以降に除菌判定検査を行います. このときは除菌前の影響を受けない尿素呼気試験(抗菌薬やPPI内服中は偽陰性となり得る), もしくは便中抗原検査(PPIの影響を受けにくい)を行います.

 

1次除菌失敗の場合, 2次除菌としてアンピシリン+メトロニダゾール+PPIを7日間内服し, 終了後4週以降で再び除菌判定検査を行います. 2次除菌も失敗の場合, 3次除菌へ進みますが, 3次除菌以降は保険適応外となります. ペニシリンアレルギーや腎機能低下のある患者さんでは, 抗菌薬の変更や減量が必要です.

 

除菌によって胃癌リスクは低下しますが, 除菌後長期経過後の胃癌発症も報告があり, 基本的には除菌後も1年ごとの上部内視鏡検査をお勧めしています.

 

参考文献:H.pylori感染の診断と治療のガイドライン2016年度版 日本ヘリコバクター学会ガイドライン作成委員会

(やまガール)

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消化器内科の専門研修2023

2023.02.06
カテゴリー: 消化器内科

今回は消化器内科の専門研修について紹介します。

 

今年度(令和4年度)の消化器内科には7名のスタッフと消化器内科志望の専攻医が5名います。専攻医5名のうち、2名が他施設の内科専門研修プログラムからのローテーションで来てくれていますが、3名は当院の内科専門研修プログラムに在籍しています。

 

そして次年度(令和5年度)からは消化器内科志望の専攻医が4名加わってくれます。(なんと、応募してくれた専攻医全員が消化器内科志望でした♪)他施設からのローテーションの2名は自施設に戻りますが、それでも2名の増員となるので、ますます活気がでますね。

 

どの病院でも消化器内科は患者さんも多く、とても忙しい診療科ですが、水戸済生会の消化器内科は以下のような特徴があります。

 

① 高いQOL

チーム制を実効性のある形で導入しているので、仕事の時はみっちり仕事。休みの日は、完全オフ。仕事と趣味を両立できます。それを実現するために、上下の隔たりなく仲間として全員で力を合わせて診療しています。

 

② 幅広い治療手技

内視鏡治療は当然のこと、当院ではエコー下穿刺治療、血管内治療もすべて自科で行います。食道静脈瘤に対するBRTOや憩室出血や腹腔内出血も血管内治療グループと共に治療にあたりますので、消化器内科がカバーすべきほぼすべての治療手技+αを習得できます。

 

③ 高難度治療

EUS下穿刺治療、胆道鏡(SpyGlass)を積極的に行っており、さらに小腸内視鏡も導入されました。これからの内視鏡医に求められる新しい治療技術も身に着けられます。また、外科との合同手術(LECS)も導入し、協力して治療を行っています。

 

④ IBD(炎症性腸疾患)診療

IBD診療も積極的に行っております。典型的初発症例の寛解導入は当然ながら、ステロイド抵抗例などの難治例、外科治療を考慮すべき重症例まで対応しています。IBDの基本治療薬である5-ASA製剤の使い分けはもちろん、栄養療法、血球除去療法、免疫抑制剤、生物学的製剤など、ありとあらゆる医療リソースを用いたIBDの幅広い治療戦略を学ぶことができます。

 

冒頭でも紹介したように専攻医が5名いますが、他院のプログラムから来た専攻医は、自院ではあまり内視鏡などの手技をできていなかったようですが、当院ではすでに数多くの症例を経験し、どんどん上達しているようです。あなたも水戸済生会の消化器内科で一緒にレベルアップを目指しましょう!

 

ご質問など、どんな小さなことでも遠慮なく、下記の問い合わせフォームからご連絡ください!

(編集長)

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新しい内視鏡が入りました!

2022.10.31
カテゴリー: 消化器内科

タイトル通りですが、当院の内視鏡システムが更新されました!

 

 

当科はオリンパス社とフジフィルム社2社の内視鏡を揃えています。これは、世界のほとんどのシェアを持つ2社の内視鏡の特性を理解しつつ使いこなせる医師を育てるためです。当院で育った若手医師はそのままどこの病院に行っても、選り好みすることなく、与えられた内視鏡の特性に合わせて内視鏡検査や処置にあたることができます。

 

若干マニアックな話が入りますが、是非内視鏡医を目指すあなたは読んでいただければと思います。

 

今回の更新はフジフィルム社でした。オリンパス社が一足先にLED光源になっておりましたが、今回フジフィルム社もレーザー光源からLED光源になりました!元々画質には定評のあったフジフィルム社ですが、LEDになりその画質に磨きがかかっています。経鼻内視鏡については目を見張るものがあります。

 

オリンパス社の画像取り込み方式は高速面順次方式と言い、赤緑青の光を高速で切り替えながら照射し、それで得られた3色の色を重ねて一つの画像にしています(実際は、特殊光観測のための2色を加えた5色のようです)。フジフィルム社は同時式で通常のデジタルカメラと同様の方式です。一般的には面順次方式のほうが画質は向上させやすいという評判があるのですが、フジフィルムは同時式で面順次方式に負けない(それ以上の?)画質を出してきています。

 

 

ちなみに、面順次方式では撮影の瞬間にぶれたりすると色分解が起こってしまうのですが(以前の光源では白色光源の前に3色の色のフィルムを高回転で回して撮像する方式で、色の切り替え速度が遅かったこともありこれが起こりやすかった)、LEDのX1シリーズでは色分解がほとんど起こらず、両社とも技術の進歩を感じます。

 

話がブレブレしてしまいましたが、要するに、画質が非常に良くなりました。経鼻内視鏡は近接撮影が強化され、拡大内視鏡の40倍程度と同等の血管情報を得ることができるとのことです。

 

最近の内視鏡学会の主流の意見は、スクリーニングは経鼻内視鏡で十分であるという論調になっているように感じますが、個人的には懐疑的な考えでした。しかし、この経鼻なら!本当にスクリーニングでは経口内視鏡なんか要らない、と心から言えます。

 

ちなみに、当院のオリンパスの経鼻内視鏡は、X1シリーズの最新の光源が入っているにもかかわらず、ちょっとした事情で290という一個前の経鼻内視鏡のままのため、オリンパスの本領が発揮されていません。来年、オリンパスの経鼻内視鏡もちゃんと更新になる予定ですので、非常に楽しみです。

 

尚、実は今回フジフィルム社のAiも入れてしまいました。まだまだ粗削りな技術ですが、市中の基幹病院として実戦でのフィードバックを私たちからも入れさせていただき、更なる技術の発展に貢献したいと思っています。

 

これがAi

 

Aiが私たち内視鏡医の仕事を奪うのか。そんな後ろ向きなことは考えず私たちはAiにタスクシフトをしつつ私たち人間にしかできないことをしっかりこなしていこうじゃないですか。いつの日か内視鏡入れて、何も考えずに抜くだけでAiが病変を指摘してくれるようになり、私たちは内視鏡切除適応病変を切除するだけでいい、なんて日が来たら良いですね。

(Nao

 

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粘膜下異所性胃腺と発癌の関係

2022.06.27
カテゴリー: 消化器内科

前回は消化器内視鏡学会での発表内容をシェアしましたが、その続きです。今回は粘膜下異所性胃腺と発癌の関係についてです。

 

【発癌機序】

①粘膜下異所性胃腺をそれ自体が癌化するprecancerous lesion(前癌病変)と捉える考え方

②胃粘膜下異所性胃腺をparacancerous lesion捉える考え方(粘膜の反復するびらんと再生によって粘膜下層に異所腺が生じると同時に慢性炎症の結果として胃癌も発生する)

 

上記2つがあり、後者を支持する報告が多い。

 

【その傍証】

粘膜下異所性胃腺自体の癌化を示唆する報告9)は少なく、びまん性粘膜下異所性胃腺の症例では、高率に胃癌を合併し、しかも多発する傾向がある8) 。

 

【肉眼診断】

粘膜下異所性胃腺に胃癌が発生した場合には、粘膜下の胃腺組織の肥厚に伴い癌病変の存在診断、肉眼所見、深達度診断には難渋する事も多い8, 10)

 

【疫学など】

残胃の発癌は手術から十数年〜数十年と長期経過した例に多く12)早期癌が多いが、中には多発リンパ節転移を伴う例11)や進行癌9)も少数報告がある。

 

【治療法等】

近年は非切除胃に発生した異所性胃腺随伴早期胃癌のESD治療13)の報告が増加しているが、その場合は多発癌や異時性癌を念頭に慎重な経過観察が必要である。

 

8)  岩永剛 他:日消誌 73(1): 31-40, 1976

9)  中松大 他:日消誌 110: 290-293, 2013

10) 中村玉美 他:山口医 60: 17-22, 2011

11) 松本英一 他:日消誌 1007(suppl-1.2): 388-388, 2010

12) 服部隆則 他:外科治療 94(3): 250-258, 2006

13) 竹内学 他:胃と腸 44: 736-743, 2009

(編集長)

 

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消化器内視鏡学会での発表してきました♪

2022.06.20
カテゴリー: 消化器内科

水戸済生会では研修医のうちに学会発表を1回は行うようにしていますが、コロナの影響でちょっと少なくなっていました。でもコロナが落ち着いてきて、学会も完全Webからハイブリッドやリアル開催にどんどんシフトしています。

 

そんな中、先日開催された消化器内視鏡学会でJ2の竹内先生が発表してきました。今回はその発表をシェアします。

 

40年以上前に十二指腸潰瘍穿孔で胃亜全摘を行われている患者さんの残胃に粘膜下異所性胃腺を5年前に指摘。その後、5年経過して同部位に胃癌が発症したという症例です。発表のポイントは粘膜下異所性胃腺と発癌です。

 

まず今回は粘膜下異所性胃腺について

 

粘膜下異所性胃腺(submucosal heterotopic gastric glands)

【定義】本来胃粘膜固有層内に存在する胃腺組織が、異所性に胃粘膜下層に増殖したもの。

 

【呼称】1947年にScott1)らが報告したdiffuse cystic malfomation(DSM)、1972年にLittler2)らが報告したgastritis cystica profunda(GCP)も、粘膜固有層深層部〜粘膜下層に嚢胞状の拡張腺管を認める病変であるが、これら用語に明確な定義がなく、疾患概念が重複している可能性が高い3,4)

 

【疫学】切除胃の4.0〜10.7%に認められ、特にBillroth Ⅱ法の術後に発生しやすく、40-60代に好発し、男性に多い傾向がある5,6)

 

【発生】先天説1)と後天説7)があり、胃粘膜のびらん・再生を繰り返す間に、粘膜下層に異所腺を生じるという後天性炎症説が有力視されている8)

 

【診断】異所腺の量が多くなり嚢状に胃腺が拡張すると粘膜下腫瘍様の肉眼形態を示す。超音波内視鏡では第3層を主座とした多房性低エコー域が特徴的で診断に有用である。

 

1) Scott,H.W. et al.:Bull.Johns Hopkins Hos., 81: 448-455, 1947

2) Littler,E.R. et al.:Cancer, 29: 205-209, 1972

3) 渡邉信之 他: 癌と化学療法 43(12): 1881-1883, 2016

4) 田中宏樹 他: 日消誌 112: 1657-1663, 2015

5) 岩永剛 他:最新医 41: 2418-2426, 1986

6) Yamagiwa H. et al.: Acta Pthol Jpn 29: 347-350, 1979

7) Kaijser, R. :Acta Chir.Scand., 101: 91-111, 1951

8) 岩永剛 他:日消誌 73(1): 31-40, 1976

(編集長)

 

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急性膵炎の話8 早期経腸栄養

2022.05.16
カテゴリー: 消化器内科

急性膵炎シリーズ最終話です。

 

最後に取り上げる早期経腸栄養は、急性膵炎のバンドルの中でも特に遵守率が低い項目です。正直なところ、自分も、です。

 

早期経腸栄養の遵守率が低いことに関する僕なりの推測を挙げると、

1.膵刺激しそうで悪い気事のような気がする。

2.経空腸栄養が大変だし、挿入が煩雑。

3.重症膵炎の場合、腸管蠕動が低下し嘔吐しやすい。

 僕の場合は3が原因で、一応やるのですが遵守できないことが多いです。

 

では、どうやって経腸栄養を行っていけばよいか、の前に、なんでそんなに経腸栄養が大切かという部分について触れます。

 

経腸栄養が大切な理由、それは、感染制御のためです。

重症膵炎の場合、広域スペクトラムの抗生剤を投与し、禁食となります。それが原因となりbacterial translocationをきたし、重症敗血症を合併する引き金になると考えられています。それで、選択的消化管除菌という治療が以前はあったわけです。選択的消化管除菌は有用性が示されていませんが、この腸管から全身への感染の波及を予防するために、消化管を少しでもいいから使っていくというのが有用である。それがこの経腸栄養につながっていくわけです。

 

先に挙げた3項目の1ですが、早期経腸栄養が膵炎を重症化させるというデータはありません。経腸栄養に用いる栄養剤についても、一定の推奨は現時点ではありません。ちなみに自分ではエレンタールをかなり薄めて使っています。プラスして、経静脈的な栄養管理を併用します。経腸栄養は、栄養管理目的というよりは、感染制御のためです。

 

そしてもう一つですが、経空腸栄養は管を空腸まで挿入する必要があるので煩雑です。これは、実際に煩雑というだけでなく、膵炎でつらい患者さんに空腸まで管を挿入するのは忍びないという気持ちもあります。この点については、新しいガイドラインでは経胃栄養でよいとされています。ただし、嘔吐が増えることが予想されるので、経胃栄養の場合は少量から始めることが望ましいと思います。

 

急性膵炎ではバンドルの遵守率が高いほど、治療成績が上がることがわかっています。全ての項目を遵守した治療を心がけていきましょう!

(Nao)

下部消化管内視鏡中♪

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急性膵炎のはなし7 抗菌薬は使うな 

2022.05.02
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急性膵炎シリーズも残すところあと少しです。そして、本日の話題は急性膵炎シリーズで最も伝えたいことと言っても過言ではありません。これは、ガイドラインでも強く主張されていることですので、先に結論をお伝えしておきます。

 

「軽症膵炎では抗菌薬を使うな」

  

研修医の先生に、急性膵炎の患者さんの治療プラン立ててみてというと、まず成因評価、重症度評価はしてくれることが多いです。で、実際の治療プランを立てていくとなると、抜けるのが疼痛管理(ガイドラインでも文章量が少ないので、今回は触れません)、入れすぎなのが抗菌薬です。輸液量を最初から完璧にプランしてくれる先生はなかなかいないのですが、これはやむを得ないでしょう。前回の通り、輸液は奥が深いのです。

 

さて、抗菌薬を入れた先生に理由を問うと、「炎症反応が高かったので」と言われます。

 

そりゃあ炎症反応は高いでしょう。だって膵炎なのだから!最近流行りのCOVID-19(純粋にSARS-CoV-2感染の症例)に対してCRPが高いからと言って抗菌薬が有効ですか?癌で腫瘍性にCRPが上がっている患者さんに抗菌薬は有効ですか?潰瘍性大腸炎が増悪してCRPが上昇している患者さんは抗菌薬を投与したらCRPが下がるのですか?研修医の先生方、CRPが上がっているから抗菌薬を投与するという考えはいい加減捨てましょう!

 

急性膵炎でCRPが上がっているのはなぜなのか? 急性膵炎で抗菌薬が有用な場面はなにか? まず、これを検討しましょう。

 

まず急性膵炎でCRPが上昇する理由についてお話しします。これは、細菌感染症による炎症反応の上昇ではなく、化学炎症によるものです。つまり、タンパク分解酵素により「自己消化」がおこったことによる炎症反応の上昇なのです。「まだ」細菌感染は成立していません。ですので、急性膵炎での抗菌薬は原則的に不要なのです。

 

しかしながら、壊死組織、というのは栄養もたっぷりで細菌感染をきたし、しかも血流が届かないので膿瘍化する可能性もあります。

実際、膵炎の治療では亜急性期~回復期にきたした感染が治療を難渋させます。ですので、抗菌薬が必要な症例、不要な症例を分ける必要があります。

 

これまでの研究で「重症例での早期抗菌薬投与(壊死部への感染が成立してからでは抗菌薬の影響が十分に及ばないからだと考えます)」が有効であるということが明らかにされています。投与する場合はカルバペネム系など広域スペクトラムな抗菌薬を選択します。しつこいですが、軽症例では抗菌薬は不要です。今後は「CRPが高いので抗菌薬入れました」は厳禁です。

 

しかし、重症度に関わらず抗菌薬を投与する場面があります。それは胆石性膵炎で胆管炎を合併している時です。この時は胆道感染症として抗菌薬を入れましょう。

 

話が長くなりすぎたので、もう割愛しますが、腸管滅菌(選択的消化管除菌)というものが僕が医者になったころはされていましたが、今はエビデンスがないとのことでガイドラインでは非推奨です。経口の抗菌薬をかませるようにと上級医から指示があった場合は、ガイドライン見ながらその必要性を再度確認しましょう。

 

急性膵炎は最終的に感染との戦いになることも多いです。適切な抗菌薬の投与を心がけるようにしましょう。この後、経腸栄養の話なども出ますが、重症の膵炎の場合は感染コントロールが非常に大切になります。経腸栄養も実は感染コントロールのために大切なのです。

 

最後になりますが、偉そうに色々書いていますが、僕も抗菌薬の適正使用についてICTからたびたび指導を受けています。正直抗菌薬苦手なのでわかんないことも多いです。僕も勉強しながらより適切な抗菌薬使用を行えるように励んでいます。抗菌薬の適正使用は、未来の医療のために重要なことです。

(Nao)

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急性膵炎のはなし6 蛋白分解酵素阻害薬

2022.04.25
カテゴリー: 消化器内科

さて、膵炎の治療で議論が尽きないのが、蛋白分解酵素阻害(膵酵素阻害薬と表現されることもあります)の投与の是非です。ガイドラインでは「推奨」とはなっていません。でも、多くの施設で投与されているのが実情ではないでしょうか。

 

これまでの研究データを考えると、軽症~中等症にあっては投与については不要ではないかというのが個人的な意見です。医療費を挙げることにつながってしまっているだけで、予後の改善には寄与していない。重症については論文により結論に差があります。ガベキサートメシル(FOY)の投与が有効性が示唆される論文もあります。

 

蛋白分解酵素阻害薬は、僕は正しくは海外の実情を知らないのであくまで一般的に言われているところによると、海外では蛋白分解酵素阻害薬はほぼ使用されていないが日本ではかなり積極的に使用されている。という風に言われています。海外で積極的な検討がされていないので、なかなか大規模な研究結果が出ない、という側面はあるかもしれません。

 

蛋白分解酵素阻害薬が10年後、20年後にどのように推奨が変わっていくのか注目です。

(Nao)

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急性膵炎のはなし5 急性膵炎と内視鏡

2022.04.11
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急性膵炎に内視鏡がかかわるのか。実は3通りのかかわり方があります。

 

1つ目は内視鏡検査の結果としての膵炎。

 ERCP後膵炎や、当院では経験がありませんがEUS-FNA後の膵炎、経口ダブルバルーン内視鏡後の膵炎などがあります。

2つ目は胆石性膵炎に対しての治療としての内視鏡。

3つ目は重症急性膵炎後の被包化壊死などに対しての治療としての内視鏡。

 

3つ目はまたお話しする機会があるかと思いますので、今回は2つ目についてお話しします。

 

胆石性膵炎に対しての内視鏡治療の姿勢は、多少施設によって差があると考えます。ガイドラインに照らし合わせると、胆管炎合併例、胆道通過障害の遷延が疑われる症例では早期のドレナージを考慮するとなっています。胆管炎合併例は当然緊急治療を行ったほうが良いです。当院では必ず速攻で治療します。

 

では、「胆道通過障害の遷延が疑われる症例」とはどのような症例でしょうか?

 

遷延が疑われる、ということは他院ですでに経過見られた症例ならともかく、自分で診断した症例の場合は半日~1日程度経過観察することになります。それでは、その間に重症化してしまう可能性がある。

 

当院では、ただ胆管結石併存の膵炎は当然緊急ERCPは見送りますが、症状やデータが改善傾向でない限り、それ以上の重症化を阻止するために原則的に緊急でERCPを行っています。そのおかげか、胆石性膵炎で診断時よりさらに重症化するという症例はかなり稀です。

 

ただ、ERCPにより膵炎を重症化させる恐れがあるということは常に念頭に置いて治療適応を検討すべきですので、その点は抑えていてください。

 

膵炎の話題はさらに続きます。

(Nao)

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