専門研修ブログ
茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
CPXの実際(1) 安静時に見るべきポイント
今回からCPX(心肺運動負荷試験)の実際を見ていきます。まずはCPXの負荷開始前、安静時で見るべきポイントについてです。
CPXでの負荷は8~12分で終了するようにします。心疾患患者では最大負荷強度が100ワット前後で
あることが多いので、10ワットずつのランプ負荷に設定します。
安静時には以下の5つのパラメータを確認します。
①心電図・血圧
②心拍数
③酸素摂取量(VO2)
④ガス交換比(R)
⑤VE/VCO2
①心電図・血圧
前回までで紹介しましたが、負荷検査をやって良いかの判断や心電図の中止基準を判断するベースラインとなります。血圧>180mmHg、<80mmHgではCPXは行わない方が良いでしょう。
②心拍数
ご存じの通り、安静時には副交感神経優位で、運動時は交感神経優位となっています。副交感神経活性は速やかに変化するので、安静時にも心拍数は微妙に変化します。しかし心不全患者などでは安静時でも交感神経優位になっており、心拍数の微妙な変化が消失します。安静時からやや頻脈気味で心拍数の変化が見られない状況であれば、負荷中に不整脈などの出現が起こりやすいと想定しながらCPXを行うことが大事になります。
③酸素摂取量(VO2)
酸素摂取量は250~400㎖/分となります。だいたいこの範囲に入っているかをチェックして、外れているようなら機器の較正をやり直します。
この数字の根拠としては、安静時における酸素摂取量3.5(mL/kg/分)を1METとする定義をから考えると、体重が60㎏の人の酸素摂取量は210㎖/分となります。実際はエルゴメーターに乗ると体全体にやや力が入る影響で1.2~1.8METsくらいになるので、酸素摂取量は250~400㎖/分となります。
④ガス交換比(R)
通常ガス交換比は0.82~0.83で、0.70未満や1.0以上の場合には較正をやり直します。
ガス交換比はVCO2/VO2で計算しますが、安静時では呼吸商とほぼ同じ値を示します。ちなみに脂肪のみを摂取していると0.7程度、炭水化物のみだと1.0になります。「呼吸商」とは呼ばないのは、基礎代謝量測定時のように完全な安静状態ではないため、CPXでの安静時でも「ガス交換比」と呼んでいるそうです。
⑤VE/VCO2
VE/VCO2はCO2換気当量とも呼ばれますが、CO2を1モル排出するのに必要な換気量のことです。これだけだとちょっと良く分かりませんが、換気・血流不均衡(V/Qミスマッチ)に依存する指標と言われるとイメージしやすいかもしれません。安静時には30~50程度を示しますが、高いほどV/Qミスマッチが大きいことを意味します。
具体的には、心不全では運動中に肺動脈が拡張しないことと心拍出量が少ないため、肺血流量が増加せずガス交換効率が低下するので、VE/VCO2は高値になります。当然ながら、安静時のVE/VCO2は心不全の重症度を反映します。他にも肺高血圧や重症COPDでも高値となり、各種の治療効果の判定にも使えます。
(参考文献:安達仁編著 CPX・運動療法ハンドブック)
(編集長)
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