専門研修ブログ
茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
CPXの実際(2) ウォームアップで見るべきポイント
前回からCPX(心肺運動負荷試験)の実際を紹介していますが、今回はウォームアップで見るべきポイントについてです。
ウォームアップは0ワット、3分間で行います。これだと心不全患者さんでも行うことができます。ウォームアップ中には以下の3点を見ていきます。
①酸素摂取量(VO2)
ウォームアップを開始すると、VO2は急激に増加しますが3分以内に定常状態(プラトー)に達します。このプラトーに達するまでの時間は老化や心不全で延長し、延長の度合いは予後の指標となります。
もしVO2がプラトーにならない場合には、ウォームアップで既に嫌気性代謝閾値(AT)を超えていることを意味します。
②VE/VO2、VE/VCO2の変化
VE/VO2、VE/VCO2ともウォームアップ開始に伴って低下します。これは肺血流も肺換、気も増加するためですが、心不全であればこれらの増加の程度が小さいのでVE/VCO2がどの程度低下するかを見ると心不全の重症度を推測できます。
一方でウォームアップですでにATに達している場合には、VE/VO2が増加し、VE/VCO2以上の値になります。
③心拍応答
ウォームアップを開始すると、速やかに心拍数が増加します。これは副交感神経活性の消退が主たる要因とされています。この心拍応答が極端に低下している(つまり心拍数が上昇しない)場合としては、ペースメーカリズム、除神経(開心術後、心臓移植)など限られています。
逆に心房細動の場合は心拍応答が過剰になりますが、この場合はβ遮断薬や運動療法でのレートコントロールが必要です。運動療法の禁忌ではなく、運動療法を継続すべき状況です。
(参考文献:安達仁編著 CPX・運動療法ハンドブック)
(編集長)
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