専門研修ブログ
茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
CPXの実際(3) 負荷中に得られる指標
CPX(心肺運動負荷試験)の実際を紹介していますが、今回は負荷中の指標についてです。
負荷中に得られる指標は以下のようにたくさんあります。
①酸素摂取量
②最高酸素脈(peak VO2/HR, Oxygen pulse)
③VE/VO2, VE/VCO2
④VE vs VCO2 slope
⑤PETCO2, PETO2
⑥TV-RR関係
⑦RR threshold
⑧Ti/Ttot
⑨呼吸予備能(Breathing reserve)
⑩SpO2
⑪Oscillatory ventilation
⑫OUES
これらを全部覚えて使いこなすのは正直なところ難しいですが、何となくこんなものを見ているとイメージだけでもつかんでおくと良いでしょう。
今回は酸素摂取量を見ていきます。酸素摂取量はATP産生そのものと考えて良いので、酸素摂取量が増加しなければATPも増加しないので、いろいろな症状につながります。
今回は酸素摂取量増加に関する異常パターンを見ていきます。
・酸素摂取量増加の3つの異常パターン
酸素摂取量は負荷1ワット(W)につき10㎖/分増加(ΔVO2/ΔWR=約10㎖/min/W)することは覚えておきましょう。
異常パターンの1つ目(図A)は、ΔVO2/ΔWRが低下しているパターンで、傾きの異常と言われます。心不全症例やでコンディショニングが進んだ患者など、有酸素代謝能力が低下して負荷初期から嫌気性代謝の割合が高いことが原因で、ΔVO2/ΔWRが7㎖/min/Wくらいまで低下します。
2つ目のパターン(図B)は直線性の異常と言われ、軽労作では有酸素代謝が正常に行われますが、あるレベルの負荷に達すると嫌気性代謝の割合が増大するような場合に見られます。狭心症による虚血や拡張障害などがこのパターンを示します。
3つ目(図C)は傾きは正常だが、上方にシフトする位置の異常のパターンで、特に肥満の強い場合に見られます。安静時の酸素摂取量は正常ですが、ウォームアップ時から予測値よりも増加し、傾きは正常パターンが特徴です。強い肥満の場合には自分の下肢が重いため、エルゴメーターを漕ぐ時に要するエネルギー需要が正常体重の人よりも多いことが原因とされています。
次回は最高酸素摂取量(peak VO2)について紹介します。
(参考文献:安達仁編著 CPX・運動療法ハンドブック)
(編集長)
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