専門研修ブログ

茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。

安藤先生のEVTワークショップ

2025.03.03
カテゴリー: 循環器

前回の記事では水戸済生会の循環器内科について紹介しましたが、末梢動脈疾患(PAD)に対するカテーテル治療(EVT)は、県内有数の症例数を施行しています。

 

PADは下肢切断に至ることもある重篤な疾患でEVTによる血行再建以外にも血管外科や形成外科、リハビリなど、多診療科・多職種での取り組みが必要です。しかし、特に透析患者さんでは高度石灰化

などのため難易度の高い症例が多くを占めており、EVTのレベルアップに積極的に取り組んでいます。

 

今までも、この領域で国内トップオペレーターである新東京病院の朴澤先生や大阪警察病院の飯田先生など、大御所にお越しいただいてEVTの指導を受けてきましたが、先週は春日部中央総合病院心臓病センター顧問の安藤弘先生にお越しいただきました。実は安藤先生はコロナ前にも水戸済生会にお越しいただいたことがあり、今回は約5年ぶり2回目となります。

 

今回は3症例で、透析患者の高度石灰化SFA、そしてBK症例、さらに足関節以下(BTA)とかなり厳しい症例ばかりでしたが、最終的には見事に成功させていました。循環器内科の若手も積極的に助手に入り、達人の手技を間近で見ることができました。この学びを忘れないうちに、次の自分の手技で生かしてもらえると思います

(編集長)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

水戸済生会総合病院の臨床研修は

総合診断能力を有するスペシャリスト

を目指します

 

◆水戸済生会での専門研修に関するご質問はこちらへ!

どんなことでも問い合わせフォームからご質問ください。

また、各診療科の専攻医にZoomで質問できますので、その旨もお知らせください!

お問い合わせフォームはこちら

 

循環器内科の専門研修2025

2025.02.24
カテゴリー: 循環器

今回は水戸済生会の循環器内科の専門研修について紹介します。

 

もしあなたが、循環器内科に興味があって

・STEMI患者のPCIをできるようになりたい

・アブレーションで不整脈を治したい

・早いうちからTAVIもMitraclipもやりたい

・PADやAortaなど心臓以外もやってみたい

 

これらいずれかに当てはまるなら、この先を読む価値があります。さらに、医局に入らずに循環器専門医資格を取りたいと思っているなら、必ず最後まで読んでください。

 

ご存じの通り、循環器内科は日中でも夜中でもERに最も呼ばれる診療科の一つで、決して楽な診療科ではありません。ですが、ホントに心臓が止まりかけた患者さんが、自分の治療でみるみる良くなって歩いて退院するという、ほかの診療科ではそれほど経験できないようなことがしばしばある、非常にエキサイティングな診療科でもあります。

 

さらにデバイスの進歩が目覚ましく、治療戦略が次々にアップデートされるので、それだけやりがいのある領域です。そんなエキサイティングな循環器内科を水戸済生会の循環器内科では「地域完結」をキーワードの一つに掲げて、循環器領域の大部分の診療をカバーしています。

 

循環器内科のサイトもぜひご覧ください

 

もう少し紹介すると、水戸済生会の循環器内科はPCIではもともと県内で有数の施設でしたが、これに加えてカテーテルアブレーションやICD、CRTにも早くから取り組んでおり、今ではアブレーションも県内有数の症例数となっています。また循環器内科医が関わることの多いPADに対するEVTも県内トップクラスの症例数で、さらに心外との連携が密で大動脈弁狭窄症に対するTAVI、そしてMitraclipも順調に症例を重ねています。あなたがその気になれば大動脈瘤、大動脈解離へのステントグラフトなど大動脈疾患の治療にも関わることができます。そしてこれらの症例に対応するための心エコーも年間6000件、経食道心エコーも400件を超えています。

 

そんな水戸済生会の循環器内科の専攻医は、現在基幹型で1名と協力型(筑波大学、日本大学)で2名と少人数なので、彼らは様々な症例や手技を経験し、実力をつけてくれています。

 

ご存じかもしれませんが現在の専門医制度は、まず内科専門医を取得して、その後に循環器専門医になってから他の循環器領域の資格であるCVIT専門医や不整脈専門医などを取得するシステムになっています。

 

つまり、循環器専門医を持っていないと、いくら経験や技術はあってもその次の資格が取得できないようになっているのです。ちなみに新しいデバイスは症例数の多い施設から導入されることが多いので、あなたが専門研修施設を選ぶ時は当然考慮すべきポイントです。さらに最近では、新しいデバイスの術者になるための要件として、ほとんどの場合で循環器専門医資格が必要になっています。

 

あなたが循環器内科を考えているなら、最初にすべきことは内科専門医を最速で取得し、最短で循環器専門医資格を得ることです。そして、そんな時に当院は有利です。

 

先ほど紹介したように主要な疾患をカバーしていることに加え、県立こども病院が隣接しているため成人の先天性心疾患症例も含めて当院は症例数も多く、施設を異動することなく1つの施設で専門医取得のための症例が全部経験できます。実際のところ水戸済生会の専攻医はJOSLERだけでなく循環器JOSLER症例にも困っていません。

 

そして専門医資格を取得後も、PCIをはじめとした各種の施設認定を受けているので循環器領域の各種の資格取得もスムーズです。しかも、大学の医局とは関係なく専門医資格を取得できるのが当院の強みです。

 

水戸済生会の循環器内科は内科専門医プログラムから循環器領域をじっくりと腰を据えて、技術の取得と経験症例数の確保に専念できる環境です。ぜひ、あなたも当院での内科専門医プログラムから循環専門医取得を目指してください

(編集長)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

水戸済生会総合病院の臨床研修は

総合診断能力を有するスペシャリスト

を目指します

 

◆水戸済生会での専門研修に関するご質問はこちらへ!

どんなことでも問い合わせフォームからご質問ください。

また、各診療科の専攻医にZoomで質問できますので、その旨もお知らせください!

お問い合わせフォームはこちら

 

CPXの実際(7) TV-RR関係 

2025.02.03
カテゴリー: 循環器

CPX(心肺運動負荷試験)で負荷中の指標を紹介しています。

 

今回はTV-RR関係とRR threshoidそしてTi/Ttotです。

 

【TV-RR関係】

浅く速い呼吸パターンを評価する指標です。横軸に呼吸回数(RR)を、縦軸に一回換気量(TV)をとると、正常であればATまでは呼吸数はほとんど増加せずに一回換気量のみが増加します(a)。その後呼吸数も増加し始め、傾きが右上方に変わります(b)。RCP(呼吸性代償開始点)になると一回換気量の増加は止まって呼吸数のみが増加します(c)

 

 

実際にはこのようなきれいなパターンを呈さないことも多いので、軽い労作時方異常な呼吸パターンを有するか否かを判定する指標と考えるのが良いようです。

 

【RR threshold】

呼吸数をプロットしていくと、ATを境にして急激に増加し始めます。AT付近ではもはやVT(一回換気量)を増加させることができないので、VE(分時換気量)を増加させるためには呼吸数を増加させることになるからです。こうなると息切れせずに会話が困難となります。

 

【Ti/Ttot(ティーアイ・ティートート)】

Tiとは吸気時間、Ttotは総呼吸時間のことで、ひと呼吸(吸気+呼気)における吸気時間の割合のことです。最大負荷時に注目すべき指標で正常は≧0.4です。

 

この指標が低下する代表的なものに肺気腫があります。運動負荷を行って、下肢疲労よりも息切れを強く訴える場合に最大負荷時にTi/Ttot<0.4に急激に低下するようなら、運動耐容能の原因が肺気腫と言えます。

(編集長)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

水戸済生会総合病院の臨床研修は

総合診断能力を有するスペシャリスト

を目指します

 

◆水戸済生会での専門研修に関するご質問はこちらへ!

どんなことでも問い合わせフォームからご質問ください。

また、各診療科の専攻医にZoomで質問できますので、その旨もお知らせください!

お問い合わせフォームはこちら

 

【循環器内科】TAVI 200 症例達成しました!

2025.01.27
カテゴリー: 循環器

当院での大動脈弁狭窄症(AS)に対するTAVIが、先日200症例を達成しました!

 

TAVIとはTranscatheter Aortic Valve Implantation(経カテーテル大動脈弁置換術)のことで、TAVR(Transcatheter Aortic Valve Replacement)とも呼ばれます。

 

当院では循環器内科の山田先生と川原先生を中心に心臓血管外科や麻酔科、看護師、生理検査技師、放射線技師、ME、リハビリスタッフなどからなるハートチームで順調に症例を重ねており、100症例到達が2022年春でしたので、約3年で100例をこなしたことになります。

 

当院のTAVIについて

 

TAVIは対象となるのが外科的な弁置換術(SAVR)ができない、もしくはハイリスクな高齢の患者さんばかりです。症例によってはアプローチ部位の制約など、なかなか大変な症例がありますが、標準的な大腿動脈アプローチ(TF-TAVI)に加えて、心尖部アプローチ(TA-TAVI)、鎖骨下動脈アプローチ(TS-TAVI)、内頚動脈アプローチ(TC-TAVI)といろいろ対応できるようになっています。

 

未診断のASの心不全に対しても、急性期に緊急で大動脈弁バルーン拡張(BAV)を行って落ち着けてから、その後TAVIにつなげる症例も増えており、緊急対応にも慣れてきた感じです。

 

もしあなたが循環器内科を考えていて、TAVIにも取り組んでみたいなら、ぜひお問い合わせください!

循環器内科へのお問い合わせはこちら

 

(編集長)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

水戸済生会総合病院の臨床研修は

総合診断能力を有するスペシャリスト

を目指します

 

◆水戸済生会での専門研修に関するご質問はこちらへ!

どんなことでも問い合わせフォームからご質問ください。

また、各診療科の専攻医にZoomで質問できますので、その旨もお知らせください!

お問い合わせフォームはこちら

 

CPXの実際(6) VE vs VCO2 slope

2025.01.13
カテゴリー: 循環器

CPX(心肺運動負荷試験)で負荷中の指標を紹介しています。

 

前回は最高酸素脈とVE/VO2、VE/VCO2について紹介しました。今回はVE vs VCO2 slope、PETCO2PETO2です。

 

【VE vs VCO2 slope】

前回紹介したVE/VCO2と同様に、換気血流不均衡がどの程度改善されるのかが分かる指標です。つまり心不全の重症度の指標になるもので、34以上になると予後不良とされています。

 

求め方としては、下図のようにVEが増加し始めた点からRCPまでの傾き(①)を用います。RCP以降だと傾きが急峻になる(②)ので健常人でも値が悪くなる、つまり運動耐容能が低いと評価されてしまいます。

 

【PETCO2、PETO2

PETCO2(終末呼気中のCO2分圧)は、肺血流が少なかったり換気血流不均衡が大きい場合に低値となります。肺血流量、心拍出量、肺血管床減少度の指標となります。

 

これは、血液中のCO2がほぼ完全に肺胞に拡散されるため、すべての肺胞で適切なガス交換が行われていれば肺動脈血CO2分圧と肺胞内CO2分圧と終末呼気中のCO2分圧とがほぼ等しくなるはずですが、ガス交換がうまくいかないと終末呼気中のCO2分圧は低くなるからです。正常値はRCPでのPETCO2が45㎜Hg以上と覚えておけば良いようです。

 

一方、PETO2(終末呼気中のO2分圧)は、負荷中に漸減していきます。運動に伴い呼吸が深くなって、ガス交換がよくなり、呼気中に残っているO2が減少するのですが、ATに達すると逆に増加し始めます。

 

(参考文献:安達仁編著 CPX・運動療法ハンドブック)

(編集長)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

水戸済生会総合病院の臨床研修は

総合診断能力を有するスペシャリスト

を目指します

 

◆水戸済生会での専門研修に関するご質問はこちらへ!

どんなことでも問い合わせフォームからご質問ください。

また、各診療科の専攻医にZoomで質問できますので、その旨もお知らせください!

お問い合わせフォームはこちら

 

CPXの実際(5) 最高酸素脈

2024.12.23
カテゴリー: 循環器

CPX(心肺運動負荷試験)で負荷中の指標を紹介しています。

 

前回は最大酸素摂取量(Peak VO2)と嫌気性代謝閾値(AT)について紹介しました。今回は最高酸素脈とVE/VO2、VE/VCO2を紹介します。

 

【最高酸素脈(Peak VO2/HR、Oxygen pulse)】

最高酸素脈は酸素摂取量を心拍数で割ったもので、1回の心拍出量がどれだけ酸素摂取に関与しているかを評価する指標です。つまり最大負荷時の心拍出量の指標の一つでもあります。

 

標準値は以下のように計算されるそうですが、60歳代で運動習慣のない人であれば10ml/beatであれば正常と考えて良いそうです。

 

<激しい運動習慣のない成人における VO2/HRの標準値>

 男性:(-0.1×年齢+34.5)×体重/(220-年齢)

 女性:(-0.1×年齢+28.9)×体重/(220ー年齢)

(日本循環器学会の標準値より)

 

注意点としては、ベータ遮断薬など心拍数を下げる薬を服用していると高く出てしまいます。そして心拍出量を示す指標と述べましたが、心機能そのものを示す指標ではないことにも注意が必要です。例えば肺高血圧や長期臥床で骨格筋量が低下している場合にはこの値は低下します。

 

【VE/VO2、VE/VCO2

ウォームアップの項でも触れましたが、これらの指標は負荷に伴って徐々に低下します。これは運動に伴って肺血流も肺換気も増加するため、換気血流不均衡分布が改善されるためです。VE/VO2はATまで低下し続け、その後上昇に転じます。VE/VCO2はATあるいはRCP(呼吸性代償開始点)まで低下し続け、RCP以後に上昇します。

 

この指標は、VE/VO2ーVE/VCO2の関係から最大負荷をかけずにATを決定できるため、心筋梗塞後や術後早期にCPXを行う場合に有用です。

 

この指標に影響する因子は肺血栓塞栓症、SV(1回拍出量)低下、血管内皮機能低下、交感神経活性の異常亢進、浅く速い呼吸様式などです。

 

心不全ではSV低下により、血管壁へのシアストレスを増加させることができず、結果として血管内皮からのNOの産生が増加しないため肺血流も増加しないことや、交感神経活性の更新により血管拡張をきたしにくくしているとされます。

 

(参考文献:安達仁編著 CPX・運動療法ハンドブック)

(編集長)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

水戸済生会総合病院の臨床研修は

総合診断能力を有するスペシャリスト

を目指します

 

◆水戸済生会での専門研修に関するご質問はこちらへ!

どんなことでも問い合わせフォームからご質問ください。

また、各診療科の専攻医にZoomで質問できますので、その旨もお知らせください!

お問い合わせフォームはこちら

 

CPXの実際(4) 最大酸素摂取量と嫌気性代謝閾値

2024.12.16
カテゴリー: 循環器

CPX(心肺運動負荷試験)の実際を紹介しています。CPX負荷中に得られる指標はたくさんありますが、前回は酸素摂取量の異常パターンを紹介しました。

 

今回は最高酸素摂取量(Peak VO2)と嫌気性代謝閾値(AT)についてです。

 

最高酸素摂取量(Peak VO2

Peak VO2は心臓リハビリにおける酸素摂取量に関する最も重要な指標ですが、これ以上はもはや運動できないという強度(医学的な安全限界とか本人の自覚的限界)で負荷が終了したときの酸素摂取量(酸素摂取量の最高値)のことです。

 

混乱しやすいものとして、最大酸素摂取量(VO2 max)があります。VO2 maxは有酸素運動能力を反映し、この値が大きいほど心肺機能の能力が高いことを意味します。アスリートやトレーナーが使っているのはこちらの方です。

 

心不全患者さんの心臓リハビリでは安全優先ですので、VO2 maxではなくPeak VO2が用いられますただし、両者は同義語として用いられている場合もあります。

 

【嫌気性代謝閾値(AT:Anaerobic threshold)】

ATの定義は「好気的代謝に無気的代謝が加わる時点での酸素摂取量」となっていて単位はml/minです。

 

ATの決定法には以下の通りいくつかあるので、負荷終了後の解析時にいくつかの方法を見ながら決定していきます。

 

1.VCO2、VEがVO2から乖離して増加を開始する点(下図・左)

2.V-slope法でSlopeの傾きが45度以上になり始める点(下図・右)

3.VE/VO2の増加開始点

4.R増加開始点

5.PETO2増加開始点

 

ATはPeak VO2の約60%であり、AT以後は乳酸の産生が進み、徐々にアシドーシスになります。この時はまず腎臓での代償機序が働きますが、それが限界を迎えると肺による代償機序(=過換気)が始まります。このポイントを呼吸性代償開始点(RCP:Respiratory Compensation Point)と言います。

 

(参考文献:安達仁編著 CPX・運動療法ハンドブック)

(編集長)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

水戸済生会総合病院の臨床研修は

総合診断能力を有するスペシャリスト

を目指します

 

◆水戸済生会での専門研修に関するご質問はこちらへ!

どんなことでも問い合わせフォームからご質問ください。

また、各診療科の専攻医にZoomで質問できますので、その旨もお知らせください!

お問い合わせフォームはこちら

 

CPXの実際(3) 負荷中に得られる指標

2024.12.09
カテゴリー: 循環器

CPX(心肺運動負荷試験)の実際を紹介していますが、今回は負荷中の指標についてです。

負荷中に得られる指標は以下のようにたくさんあります。

 

①酸素摂取量

②最高酸素脈(peak VO2/HR, Oxygen pulse)

③VE/VO2, VE/VCO2

④VE vs VCO2 slope

⑤PETCO2, PETO2

⑥TV-RR関係

⑦RR threshold

⑧Ti/Ttot

⑨呼吸予備能(Breathing reserve)

⑩SpO2

⑪Oscillatory ventilation

⑫OUES

 

これらを全部覚えて使いこなすのは正直なところ難しいですが、何となくこんなものを見ているとイメージだけでもつかんでおくと良いでしょう。

 

今回は酸素摂取量を見ていきます。酸素摂取量はATP産生そのものと考えて良いので、酸素摂取量が増加しなければATPも増加しないので、いろいろな症状につながります。

 

今回は酸素摂取量増加に関する異常パターンを見ていきます。

 

・酸素摂取量増加の3つの異常パターン

酸素摂取量は負荷1ワット(W)につき10㎖/分増加(ΔVO2/ΔWR=約10㎖/min/W)することは覚えておきましょう。

 

異常パターンの1つ目(図A)は、ΔVO2/ΔWRが低下しているパターンで、傾きの異常と言われます。心不全症例やでコンディショニングが進んだ患者など、有酸素代謝能力が低下して負荷初期から嫌気性代謝の割合が高いことが原因で、ΔVO2/ΔWRが7㎖/min/Wくらいまで低下します。

 

2つ目のパターン(図B)は直線性の異常と言われ、軽労作では有酸素代謝が正常に行われますが、あるレベルの負荷に達すると嫌気性代謝の割合が増大するような場合に見られます。狭心症による虚血や拡張障害などがこのパターンを示します。

 

3つ目(図C)は傾きは正常だが、上方にシフトする位置の異常のパターンで、特に肥満の強い場合に見られます。安静時の酸素摂取量は正常ですが、ウォームアップ時から予測値よりも増加し、傾きは正常パターンが特徴です。強い肥満の場合には自分の下肢が重いため、エルゴメーターを漕ぐ時に要するエネルギー需要が正常体重の人よりも多いことが原因とされています。

 

次回は最高酸素摂取量(peak VO2)について紹介します。

 

(参考文献:安達仁編著 CPX・運動療法ハンドブック)

(編集長)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

水戸済生会総合病院の臨床研修は

総合診断能力を有するスペシャリスト

を目指します

 

◆水戸済生会での専門研修に関するご質問はこちらへ!

どんなことでも問い合わせフォームからご質問ください。

また、各診療科の専攻医にZoomで質問できますので、その旨もお知らせください!

お問い合わせフォームはこちら

 

CPXの実際(2) ウォームアップで見るべきポイント

2024.12.02
カテゴリー: 循環器

前回からCPX(心肺運動負荷試験)の実際を紹介していますが、今回はウォームアップで見るべきポイントについてです。

 

ウォームアップは0ワット、3分間で行います。これだと心不全患者さんでも行うことができます。ウォームアップ中には以下の3点を見ていきます。

 

①酸素摂取量(VO2)

ウォームアップを開始すると、VO2は急激に増加しますが3分以内に定常状態(プラトー)に達します。このプラトーに達するまでの時間は老化や心不全で延長し、延長の度合いは予後の指標となります。

 

もしVO2がプラトーにならない場合には、ウォームアップで既に嫌気性代謝閾値(AT)を超えていることを意味します。

 

②VE/VO2、VE/VCO2の変化

VE/VO2、VE/VCO2ともウォームアップ開始に伴って低下します。これは肺血流も肺換、気も増加するためですが、心不全であればこれらの増加の程度が小さいのでVE/VCO2がどの程度低下するかを見ると心不全の重症度を推測できます。

 

一方でウォームアップですでにATに達している場合には、VE/VO2が増加し、VE/VCO2以上の値になります。

 

③心拍応答

ウォームアップを開始すると、速やかに心拍数が増加します。これは副交感神経活性の消退が主たる要因とされています。この心拍応答が極端に低下している(つまり心拍数が上昇しない)場合としては、ペースメーカリズム、除神経(開心術後、心臓移植)など限られています。

 

逆に心房細動の場合は心拍応答が過剰になりますが、この場合はβ遮断薬や運動療法でのレートコントロールが必要です。運動療法の禁忌ではなく、運動療法を継続すべき状況です。

 

(参考文献:安達仁編著 CPX・運動療法ハンドブック)

(編集長)

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

水戸済生会総合病院の臨床研修は

総合診断能力を有するスペシャリスト

を目指します

 

◆水戸済生会での専門研修に関するご質問はこちらへ!

どんなことでも問い合わせフォームからご質問ください。

また、各診療科の専攻医にZoomで質問できますので、その旨もお知らせください!

お問い合わせフォームはこちら

 

CPXの実際(1) 安静時に見るべきポイント

2024.11.25
カテゴリー: 循環器

今回からCPX(心肺運動負荷試験)の実際を見ていきます。まずはCPXの負荷開始前、安静時で見るべきポイントについてです。

 

CPXでの負荷は8~12分で終了するようにします。心疾患患者では最大負荷強度が100ワット前後で

あることが多いので、10ワットずつのランプ負荷に設定します。

 

安静時には以下の5つのパラメータを確認します。

①心電図・血圧

②心拍数

③酸素摂取量(VO2)

④ガス交換比(R)

⑤VE/VCO2

 

①心電図・血圧

前回までで紹介しましたが、負荷検査をやって良いかの判断や心電図の中止基準を判断するベースラインとなります。血圧>180mmHg、<80mmHgではCPXは行わない方が良いでしょう。

 

②心拍数

ご存じの通り、安静時には副交感神経優位で、運動時は交感神経優位となっています。副交感神経活性は速やかに変化するので、安静時にも心拍数は微妙に変化します。しかし心不全患者などでは安静時でも交感神経優位になっており、心拍数の微妙な変化が消失します。安静時からやや頻脈気味で心拍数の変化が見られない状況であれば、負荷中に不整脈などの出現が起こりやすいと想定しながらCPXを行うことが大事になります。

 

③酸素摂取量(VO2)

酸素摂取量は250~400㎖/分となります。だいたいこの範囲に入っているかをチェックして、外れているようなら機器の較正をやり直します。

この数字の根拠としては、安静時における酸素摂取量3.5(mL/kg/分)を1METとする定義をから考えると、体重が60㎏の人の酸素摂取量は210㎖/分となります。実際はエルゴメーターに乗ると体全体にやや力が入る影響で1.2~1.8METsくらいになるので、酸素摂取量は250~400㎖/分となります。

 

④ガス交換比(R)

通常ガス交換比は0.82~0.83で、0.70未満や1.0以上の場合には較正をやり直します。

ガス交換比はVCO2/VO2で計算しますが、安静時では呼吸商とほぼ同じ値を示します。ちなみに脂肪のみを摂取していると0.7程度、炭水化物のみだと1.0になります。「呼吸商」とは呼ばないのは、基礎代謝量測定時のように完全な安静状態ではないため、CPXでの安静時でも「ガス交換比」と呼んでいるそうです。

 

⑤VE/VCO2

VE/VCO2はCO2換気当量とも呼ばれますが、CO2を1モル排出するのに必要な換気量のことです。これだけだとちょっと良く分かりませんが、換気・血流不均衡(V/Qミスマッチ)に依存する指標と言われるとイメージしやすいかもしれません。安静時には30~50程度を示しますが、高いほどV/Qミスマッチが大きいことを意味します。

 

具体的には、心不全では運動中に肺動脈が拡張しないことと心拍出量が少ないため、肺血流量が増加せずガス交換効率が低下するので、VE/VCO2は高値になります。当然ながら、安静時のVE/VCO2は心不全の重症度を反映します。他にも肺高血圧や重症COPDでも高値となり、各種の治療効果の判定にも使えます。

 

(参考文献:安達仁編著 CPX・運動療法ハンドブック)

(編集長)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

水戸済生会総合病院の臨床研修は

総合診断能力を有するスペシャリスト

を目指します

 

◆水戸済生会での専門研修に関するご質問はこちらへ!

どんなことでも問い合わせフォームからご質問ください。

また、各診療科の専攻医にZoomで質問できますので、その旨もお知らせください!

お問い合わせフォームはこちら