専門研修ブログ
茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
心室中隔瘤
今年7月に仙台で開催されたTAVI関連学会のJTVT(日本経カテーテル心臓弁治療学会)で循環器内科の川原先生が発表した内容からシェアします。
心室中隔中を合併した重症AS患者に対するTAVの問題点を整理してくれています。
【心室中隔瘤】
心室中隔から右室側に膨隆する瘤状の構造物
Valsalva洞直下の心室中隔に左室から
右室に突出する心室中隔瘤(矢印)
【病因】
先天性:先天性心疾患の0.3%に合併 うち20%は心室中隔欠損(VSD)に合併
後天性:外傷・虚血・感染性心内膜炎後・VSDの術後に生じた報告例あり(稀)
(心臓 vol.49 No.6 (2017) 590-594)
【症状】
一般的には無症状 ただし合併症発生のリスクあり
合併症としては・・・
大動脈弁閉鎖不全症・三尖弁閉鎖不全症・瘤破裂・左右シャント・細菌感染・右室流出路狭窄・血栓塞栓症(脳梗塞・冠動脈塞栓)・不整脈(心室性頻拍・脚ブロック・房室ブロック)
【治療】
外科的なパッチ閉鎖 → 瘤閉鎖に伴う三尖弁弁尖のゆがみ、医原性伝導路障害のリスクあり
無症状であれば経過観察 → 上記のような合併症を有する場合には手術を検討
日心外会誌 47巻 2号:49-53 (2018)
【TAVIでの問題点】
①弁のsizing(中隔瘤をどう計測するか)
TAVIではCTでの計測が重要で、特にAnuulusやValsalvaの計測が弁のサイズ決定に重要です。でも、今回の心室中隔瘤はValsalva洞直下にあり、通常の計測では含まれる位置でした。瘤を含めるか含めないかでAnnulusの計測が変わってきます。
②中隔瘤部分からのPVL(弁周囲からの逆流)
中隔瘤部分が圧着しないため、術後にPVLが残存する可能性が懸念されました
③中隔瘤部分の脆弱性
中隔瘤部分は周囲組織比べて薄く、圧が加わることによる損傷のリスクも懸念されました。
本症例では特に大きな問題なく弁を留置でき、PVLもtrivial-mild程度で終了しています。術後3カ月の時点では経過良好ですが、症例数が少ないこともあり心室中隔瘤合併例のTAVI後の長期成績は不明であるため、今後もPVLや心室中隔瘤に関連した合併症の発生に注意してフォローしていく必要があると考えています。
(編集長)
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STが上昇するのはSTEMIだけ?
オンコール当番だったある休日、ERから電話がかかってきました。
「60歳代の女性が自宅で倒れているのを発見されて、救急搬送されました。バイタルは大丈夫ですが、心電図の胸部誘導でST上昇を認めます。前壁のSTEMIだと思うのですが・・・・。」
STEMIなら、もちろんPCIをするので「すぐに病院に向かうので、心カテコールをお願いします」と返事しました。ただ、発症時間を知りたくて当直医に「何時ごろからの胸痛ですかね?」と聞くと、「意識レベルがヘンで、胸痛の訴えははっきりしません。」とのこと。
さて、この情報だけですが、あなたは鑑別に何を考えますか?
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編集長はSTEMIなのに、意識障害を伴っているのがひっかかりました。胸痛がはっきりしないSTEMIはありです。でもSTEMIだけで意識レベルが悪くなることは通常ならありません。では、他に鑑別を挙げるとすると?
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病院に向かいながら編集長が考えたことは「大動脈解離」でした。上行大動脈の解離が、冠動脈に及べばSTEMIになるし、腕頭動脈や左総頚動脈に及べば脳梗塞などを来すからです。ただし、解離に伴うSTEMIは右冠動脈を巻き込む下壁梗塞が多いのですが、今回のST上昇は前胸部誘導というのが合わない点です。
さて、病院に到着して患者さんのところに行ってみると確かに意識清明とは言えない、でも麻痺はないし、血圧の左右差もない状況でした。あまり大動脈解離っぽくないな、と思いながらエコーをあてましたが、少なくとも上行大動脈に解離のフラップは見えません。
そのままカテ室に搬送しようと思いつつ、救急科の先生にCTチェックを勧められてあまり乗り気ではないものの、チェックすることに。そしたらこんな画像でした・・・。
さて、この症例の答えは何だかわかりますか?
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答えは、くも膜下出血(SAH)。そしてSAHを契機としたたこつぼ型心筋症でした。
たこつぼ型心筋症はもともと日本から報告された疾患概念ですが、STEMIと同じように胸痛とST上昇をきたします。しかし冠動脈に有意狭窄がなく、たこつぼのような特徴的な左室造影で診断されます。海外でもTakotsubo Cardiomyopathyで通用しますが、Stress CardiomyopathyとかApical ballooning syndrome、Catecholamine induced cardiomyopathyとも言われます。
情動ストレスなど、過度のストレスによって、カテコラミンが多量に分泌されることで、心筋障害や心筋の微細循環障害を来すのが原因ではないかと言われています。(JACC:72, 1955-1971, 2018) 当然SAHなどの頭蓋内のイベントでカテコラミンが多量に分泌され、たこつぼ型心筋症を起こします。
今回はSAHによって意識障害を来し、倒れていた。さらに、SAHを契機にたこつぼ型心筋症を起こし、STが上昇していたと考えられました。
よく遭遇する疾患の中から「なにか違う?」と重篤な疾患を見つけだす感覚は大事です。ただ、それには丁寧に臨床を積み重ねて経験値を上げていく必要があります。
(編集長)
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アブレーションのトレーニング
水戸済生会の循環器内科は「地域で完結できる循環器診療」を旗印に、虚血性心疾患や不整脈、心不全など幅広く診療に取り組んでいます。その中でも不整脈診療はこの数年で大きく変わりました。
筑波大学循環器内科の前教授である青沼和隆先生が、当院の最高技術顧問として着任してからカテーテルアブレーション治療が激増しました。もちろん、それまでもPSVTやAfに対するアブレーションは行っていましたが、非持続性心室頻拍や持続性心室頻拍など対象となる疾患も大きく広がり、昨年度(令和3年度)は314件のアブレーションを施行しています。おそらくこの調子だと今年度は350件は確実に超えると予想しています。
そんなアブレーションも成功率を上げるには細かいカテーテル操作が必須です。当院のメインオペレーターの長谷川先生の指導のもとで、ときどきシュミレーターを使ったトレーニングをしています。
不整脈は目に見えるものではないのですが、波形を見ながらどう攻略していくかを考えるのは非常に面白いところです。基本的なアブレーションカテーテル操作を勉強しつつ、実際の症例を経験して、引き出しの数を増やしていくのが重要です。
(編集長)
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【循環器内科】TAVI 100症例を超えました!
当院でも大動脈弁狭窄症(AS)に対するTAVIに取り組んでいますが、先日100症例を達成しました。
ちなみにTAVIとはTranscatheter Aortic Valve Implantation(経カテーテル大動脈弁置換術)のことで、TAVR(Transcatheter Aortic Valve Replacement)と同じことです。
当院では循環器内科の山田先生と川原先生を中心に心臓血管外科や麻酔科、看護師、生理検査技師、放射線技師、ME、リハビリスタッフなどからなるハートチームで順調に症例を重ねてきました。
現在では大腿動脈アプローチの症例は止血デバイスを使用した経皮アプローチで、2時間かからずに終了できることがほとんどです。
山田先生はTAVI指導医、川原先生は恐らく国内最年少でTAVI実施医資格を持っています。今後はTAVIの術者を増やして、迅速にタイミングを逃すことなく施行できるようにしていくのが目標です。
もしあなたが循環器内科を考えていて、TAVIにも取り組んでみたいなら、ぜひお問い合わせください!
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【循環器】アルドステロン症の見つけ方 その11(ガイドラインの変更点3)
原発性アルドステロン症(PA)の診療ガイドライン2021年から変更点を紹介していますが、今回はデキサメタゾン抑制試験についてです。
実はPAには同時にコルチゾールの自律分泌を合併する場合があることが知られています。頻度は評価法によって異なるそうですが、PA全体で3.9~77.6%、片側性のPAでは23.4%と報告されています。
アルドステロンとコルチゾールの同時産生腫瘍はアルドステロン単独を産生する腫瘍と比較して
・腫瘍径が大きい
・耐糖能異常
・骨粗しょう症
・蛋白尿
・心血管イベントを合併する頻度が多い
といった特徴があるそうです。
そして、コルチゾールの同時産生があると、副腎静脈サンプリングの解釈に影響が出たり、副腎摘出後のステロイド補充が必要になることがあります。さらに同時産生腫瘍では、アルドステロンとコルチゾールの過剰分泌が必ずしも同側とは限らないことがあるため、局在診断が重要となります。
このためガイドラインでは
CTで腫瘍径が1㎝以上の明確な副腎腫瘍を認める時は、1㎎デキサメサゾン抑制試験を実施して、コルチゾールの自立分泌の有無を確認する
ことを推奨しています。
コルチゾールの産生過剰の判定基準は
1㎎デキサメサゾン負荷後のコルチゾール≧1.8μg/dlで
としています。
(編集長)
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【循環器】アルドステロン症の見つけ方 その10(ガイドラインの変更点2)
前回は原発性アルドステロン症(PA)の診療ガイドライン2021年改訂から測定法の変更に伴ってスクリーニングのカットオフが変更されたことを紹介しました。
新しい測定法では十分なカットオフ値の検証ができていないので、暫定的陽性という判断をして、アルドステロンの自律的過剰産生を証明するための機能検査を行います。
機能検査はカプトプリル検査がおススメですが、そのカットオフ値も変更されています。
カプトプリル50㎎を内服して60分もしくは90分後に採血をします。この時の採血で
PAC(CLEIA法)/PRA ≧ 200 で陽性と判定します。
スクリーニングの基準と同様に、ARR100~200も境界域として暫定的陽性と判定します。
PRAではなく、ARC(活性型レニン濃度)を用いる場合は
PAC(CLEIA法)/ ARC ≧ 40 で陽性と判定します。
こちらも 20~40を境界域として暫定的陽性と判定します。
暫定的陽性はちょっとわかりにくいかもしれません。実際の臨床では確かに微妙な症例に遭遇することがあります。現状では面倒でも内分泌専門医に相談するのが良いでしょう。
(編集長)
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【循環器】アルドステロン症の見つけ方 その9(2021ガイドラインの変更点)
原発性アルドステロン症(PA)の診療ガイドライン2021年改訂版が日本内分泌学会からこの秋にリリースされました。
この改訂ではアルドステロンの測定法も、レニンの測定法にも変更点があり、これに伴ってカットオフ値も変更されています。今回はちょっと分かりにくいこれらの点を整理します。
このブログの シリーズ その2 で紹介しましたが、まず従来のPAのスクリーニングは
・血漿アルドステロン濃度(PAC)
・血漿レニン活性(PRA)
上記2つを測定して
・アルドステロンレニン比(ARR=PAC/PRA) を求めます。
従来のカットオフ値は
PACの単位がpg/mlであれば、ARR>200(単位がng/dlであれば、ARR>20)
さらに、ARRに加えてPAC>120pg/ml (12ng/dl)の併用が推奨となっていました。
ところが、従来用いられていたRIA法は測定キットが供給停止になったため、CLEIA法によるPACに統一されました(単位はpg/ml)。
CIEIA法では、以前のRIA法よりも値が低くなります。理由として、より特異的なモノクローナル抗体を用いているため、アルドステロン以外のステロイドなどとの交差が極めて低いためだそうです。
このため新しいスクリーニングのカットオフ値は
ARR≧200 かつ PAC≧60pg/ml に変更
さらに、CIEIA法に切り替わったばかりなので、至適カットオフ値が確立するまで
ARR 100~200も境界域として
ARRが100~200 かつ PAC≧60pg/mlも暫定的陽性
としています。
もう一つ、レニンの測定も血漿レニン活性(PRA)と共に、活性型レニン濃度(ARC)も採用されています。
ARCはPRAと測定原理が異なるので正確な換算は困難だそうですが、便宜上
CLEIA法によるPAC/ARC≧40 を陽性と判定
CLEIA法によるPAC/ARCが20~40 かつ PAC≧60pg/mlも暫定的陽性
としています。
当院で検査をオーダーすると、結果の画面には・・・
・アルドステロンCLEIA
・アルドステロンRIA相当値(→すでに廃止されたので換算値)
・レニン活性(→PRAのこと)
・レニン定量CLEIA(→ARCのこと)
・アルドステロン/レニン活性比(→CLEIA法によるPAC/PRAのこと)
・アルドステロン/活性型レニン定量値比(→CLEIA法によるPAC/ARCのこと)
というように、いくつも記載してあってかなり迷いますが、結局のところ
・アルドステロンCLEIA ≧60
・アルドステロン/レニン活性比 ≧200
(もしくは、アルドステロン/活性型レニン定量値比≧40)
が当てはまっているかを見ればよいことになります。
ちなみに、前回は2016年にコンセンサスステートメントが出されていますが、それから5年経過経過しての改訂でした。今回は日本からのエビデンスも多く採用されていますが、JPAS・JRASという本邦の大規模PAレジストリが大きく関わっています。
実はこのJPAS・JRASに水戸済生会も参加しており、編集長も普段は交流のない内分泌の先生方との議論に参加させてもらい、非常に勉強になりました。(注:もちろんガイドライン改訂には関わっていません)
(編集長)
これはアブレーション中の一コマ
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【循環器】アルドステロン症の見つけ方 その8(治療について)
前回は副腎静脈サンプリング(AVS)の評価方法について紹介しました。
コルチゾール値で適切にサンプリングされているのかを評価したうえで、片側性病変と診断されたら手術を考慮します。両側性の場合はアルドステロン拮抗薬(スピロノラクトンやエプレレノン、エサキセレノン)を中心にすえて内服薬を継続します。手術は、腹腔鏡下の片側副腎全摘術になります。最近は腹腔鏡手術も単孔式で行われているようです。
どこに紹介したらよいのかは、その地域ごとに異なると思いますが。泌尿器科が手術を行っていることが多いようですが、大学によっては内分泌外科が行っているところもあります。ちなみに当院では泌尿器科で行っています。
なお、編集長はまだ見たことがありませんが、症例の多い病院ではAVSも副腎内の分葉内静脈支脈ごとの超選択的にサンプリングを行う選択的副腎分葉内支脈採血(Segment-selective adrenal tributary sampling: S-ATS)を行って、片側副腎の部分切除で済ませるということもできるそうです。
こうすることで約10%程度にみられる両側性のアルドステロン産生腫瘍(APA)においても外科手術が可能になるとともに、対側に病変を生じた場合の副腎不全を防止できる利点があるそうです。
術後はアルドステロン拮抗薬を中止して大丈夫ですが、経験的に全例で降圧剤が全く不要になるわけではありません。血圧を見ながら降圧剤を減量していきます。
さて、アルドステロン症に関して紹介してきましたが、実は今年(2021年)にガイドラインが改定されています。次回はガイドラインの改訂点を紹介していきます。
(編集長)
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【循環器】アルドステロン症の見つけ方 その7(AVSの解釈)
前回は副腎静脈サンプリング(AVS)の具体的なやり方について紹介しました。今回はAVSの判定について、3つの指標を紹介します。
この3つの指標とは
・SI:Selective Index
・LR:Lateralized ratio
・CR:Contralateral ratio
です。
まず、SIについて。
AVSは右副腎静脈のサンプリングが最大の難関ですが、うまくサンプリングできたかどうかの判定はコルチゾールで判定します。(AVSでは左右副腎静脈、IVCの3か所からACTH負荷前後でアルドステロン、コルチゾールを測定します)。この時用いられるのがSIで、副腎静脈とIVCのコルチゾール濃度比のことです。
日本内分泌学会のコンセンサスステートメントでは、SIのカットオフ値を
・ACTH負荷前のSIは2.0以上、
・ACTH負荷後のSIは3.0または5.0以上
で適正なサンプリングと判断します。
他に適切にサンプリングできたかの判定にコルチゾール濃度も用いられます。
・ACTH負荷前では40μg/dl以上、
・ACTH負荷後は200μg/dl以上
で適正なサンプリングと判断します。
さて、コルチゾールでサンプリングが適正に行われたことが確認されれば、局在診断(片側性か両側性か)の判定に移ります。
局在診断に用いられるのがACTH負荷後のLateralized ratio(LR)とContralateral ratio(CR)です。
LRは左右副腎静脈で比較し、
LR=(高値側のアルドステロン/コルチゾール)÷(低値側のアルドステロン/コルチゾール)
で求めます。
CRは
CR=(副腎静脈低値側のアルドステロン/コルチゾール)÷(IVCのアルドステロン/コルチゾール)
で求めます。
LR>4かつCR<1.0で片側性と診断し、手術適応を決定するように推奨されています。
実際にはこれに当てはまらないグレーゾーンがあるのですが、総合的に判断するか、AVSをやり直してみることになります。
明らかな結果であれば心配いりませんが、判定に悩む時には内分泌専門医に相談したほうが良いですね。
(編集長)
これはAVSではなく緊急PCI♪
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【循環器】循環器専門医(とTAVI実施医も)合格しました
当院は日本循環器学会の研修施設になっており、循環器専門医の受験資格を得ることができます。例年8月に専門医試験が開催され、10月下旬に結果が発表されるのですが、今年は当院の川原先生が無事に合格しました。
ちなみに循環器専門医を取得するには
・内科系なら認定内科医または総合内科専門医である(来年度からは内科専門医がこれに該当します)
・学会の正会員歴が6 年以上、そのうち3年以上は研修施設で研修している
・満 6 年以上の臨床研修歴を有する(つまり最短で卒後7年目で受験できます)
・ACLS有効な認定を受けている
・タバコを吸わないで 禁煙の啓発に努めている
川原先生は7年目ですから最短での取得ですね。オメデトウございます!
そして同時期にTAVI実施医の認定証も送られてきました!
これはJTVT(日本経カテーテル心臓弁治療学会)が認定するもので、患者さんにより安全で確実な治療を提供する観点から、TAVIを独立して実施する際に必要になる資格です。ちなみに実施医に必要な症例は8例で、指導医になるには30例が必要です。
当院ではTAVI症例を順調にこなしており、指導医資格を持つ山田先生のもとで症例経験を積んで実施医の認定を得ることができました(しかも、どうやら国内最年少のTAVI実施医らしいです・・・)。
当院は異動することなく1つの施設で専門医取得のための症例が全部経験できます。そして専門医資格を取得後も、循環器領域の各種の資格取得もスムーズです。
当院の内科専門医プログラムから循環器領域をじっくりと腰を据えて、技術の取得と経験症例数の確保に専念できる環境ですので、あなたも当院での内科専門医プログラムから循環専門医取得を目指してください!
(編集長)
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