
専門研修ブログ
茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。
CLTI 評価(GLASS分類)
改訂されたガイドラインをもとにCLTIについて紹介する5回目。前回までは下肢の重症度を評価するためのWiFi分類を紹介してきました。
Wifi分類は下肢の重症度評価(=大切断のリスク評価)に用いられるものでしたが、今回は解剖学的重症度の評価に用いられるGALSS分類の紹介です。
改訂されたガイドラインでは、今まで用いられてきたTASCⅡ分類に代わってGALSS分類を用いることを提唱していますので、知っておきましょう。
Global Anatomic Staging System(GLASS分類)
【大腿膝窩動脈(FP:Femoropopliteal)領域】
0:軽度ないし有意でないSFA病変(狭窄度50%未満)
1:・SFA総病変長が<1/3(<10 cm)
・SFA起始部を含まない単独のSFA限局性閉塞(<5 cm)
・軽度あるいは有意でない膝窩動脈病変
2:・SFA総病変長が1/3~2/3(10~20 cm)
・SFA総閉塞長<1/3(10 cm)ただし,SFA起始部閉塞は含まない
・下腿3分岐に及ばない限局性膝窩動脈狭窄(< 2 cm)
3: ・SFA総病変長が>2/3(20 cm)
・SFA 起始部からのSFA閉塞(<20 cm)または起始部を含まないSFA閉塞(10~20 cm)
・下腿3分岐に及ばない短区間の膝窩動脈狭窄病変(2~ 5 cm)
4:・SFA総閉塞長が> 20cm
・膝窩動脈病変>5 cmまたは下腿3分岐に及ぶ膝窩動脈狭窄病変
・膝窩動脈閉塞
【膝下動脈(IP:Infrapopliteal)領域】
0:軽度あるいは有意でない治療対象動脈経路の病変
1:・狭窄病変長が対象動脈全長の1/3以下
・限局性閉塞(<3 cm)
・脛骨腓骨動脈幹あるいは下腿動脈の起始部を含まない病変
2:・狭窄病変長が対象動脈全長の1/3以下
・限局性閉塞(<3 cm)
・脛骨腓骨動脈幹あるいは下腿動脈の起始部を含まない病変
3:・病変長が動脈全長の2/3まで
・全長の1/3 に及ぶ閉塞病変(下腿動脈起始部を含んでよいが脛骨腓骨動脈幹は含まない)
4:・びまん性狭窄病変長が動脈全長の>2/3
・閉塞病変長が全長の>1/3(下腿動脈起始部を含むことあり)
・脛骨腓骨動脈幹の閉塞(前脛骨動脈が治療対象でない場合)
【足関節以下(IM:Infra-malleolar)領域】
P0:完全なpedal archを伴い,標的血管が足部まで開存
P1:pedal archは閉塞あるいは高度狭窄を有するが,標的血管が足部まで開存
P2:足部まで連なる標的血管なし
(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)
(編集長)
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CLTI 評価(Wifi分類3)
改訂されたガイドラインをもとにCLTIについて紹介する4回目。CLTIの評価に用いられるWIFI(ワイファイ)分類の続きです。
WIFI分類はCLTI患者の患肢の重症度、つまり大切断のリスクを評価するツールで、創(W;wound),虚血(I;ischemia),感染(fI;foot infection)の3項目で点数化してステージングします。前回まで3つの項目のGradingを解説してきました。
各項目のGradingを算出したら、下の表に当てはめて最終的にステージングを行います。例えば拇趾に限局した潰瘍でWoundはGrade1、SPPは35mmHgでIschemiaがGrade2、感染兆候はないのでFIはGrade0とすると、Stage2ということになります。
Stage4になると1年後までの大切断のリスクは約30%(!)にもなってしまいます。
ここまででCLTIの下肢の重症度評価に用いられるWIFI分類を紹介してきましたが、実はこれだけでは不十分です。多くの合併症を有する高齢者が大多数を占めるCLTIの最適な治療方針を決定するためには、下肢の重症度に加えて、症例のリスクと血管病変の解剖学的複雑性を包括的に評価するPLANコンセプトが推奨されているので、次回以降で紹介していきます。
(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)
(編集長)
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◆内科専門研修プログラム説明会@Zoomを開催します!
来年度からの専門研修をどうするか?
医局はどうしたらいいのかお悩み中のあなた。
医局に属さずに消化器内科、腎臓内科、循環器内科の
サブスぺ資格を取得できる水戸済生会の内科専門研修
プログラムについて、下記日程で説明会を開催します。
J2が対象ですが、関心のあるJ1や医学生も参加可能です。
ぜひご参加ください!
日時:2022年9月21日(水)20時~(40分程度の予定です)
場所:Zoom
内容:①内科専門研修の概略について
②消化器内科の専門研修について
③腎臓内科の専門研修について
④循環器内科の専門研修について
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CLTI 評価(Wifi分類2)
改訂されたガイドラインをもとにCLTIについて紹介する3回目。CLTIの評価に用いられるWIFI(ワイファイ)分類の続きです。
WIFI分類はCLTI患者の患肢を創(W;wound),虚血(I;ischemia),感染(fI;foot infection)の3項目で点数化して重症度をステージングするもので、前回はWound Gradingを紹介しましたが、今回は虚血(Ischemia)と感染(Foot Infection)の評価です。
CLTIは虚血があること前提で、各種の血行動態検査の値からグレードを判断します。ちなみにもともとのWIFI分類の文献には日本で普及しているSPP(皮膚還流圧)値は定義されていませんでした。しかしガイドラインでは日常診療で使い安いように、目安となる数値を提唱しています。
Foot Infection Gradingについてのガイドラインの記載は細かいのですが、編集長的に簡略化すると以下のようになります。
もう少し細かく書くと、
Grade1では、下記の少なくとも2つの兆候を有する限局性感染
・局所の腫脹や硬結
・潰瘍周囲の発赤(0.5~ 2 cm)
・局所の圧痛や痛み
・局所の熱感
・膿汁の排泄(濃い濁った白色または血性混じりの浸出液)
Grade2では、広範な局所感染(発赤>2 cm)、あるいは皮膚・皮下より深部の構造物を巻き込む感染(膿瘍,骨髄炎,敗血症性関節炎,筋膜炎)でSIRSの兆候を伴わないもの
Grade3では、下記の2つ以上を有する全身性炎症兆候
・体温> 38 ℃または< 36 ℃
・心拍数>90回/分
・呼吸数>20回/分またはPaCO2<32 mmHg
・白血球数>12,000 または<4,000 cells/mm3 または10%を超える幼若球の出現
実際のところは全身性の炎症兆候として、血圧低下や意識障害、低血糖などいろいろな形で現れることがあるので、患者さんの状態をよく見ることが重要です。
(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)
(編集長)
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CLTI 評価(Wifi分類1)
下肢動脈疾患(LEAD)の中でCLTIと呼ばれる状態は極めて予後不良な集団があります。このCLTIを早く拾い上げて、早く専門施設につなげることが下肢の切断回避だけでなく、生命予後の点でも重要です。
水戸済生会では10年以上前からLEADに対する血管内治療(EVT)に取り組んでおり、多い時で年に約160例、コロナの影響を受けた昨年も約120例ほど施行しています。そして当院は透析症例が多いという背景からEVT施行例の約7割がこのCLTI患者さんです。
今回はCLTI患者さんを見つけた時、もしくはCLTIかもしれないと思った時の評価について紹介します。
CLTIの評価にはWIFI(ワイファイ)分類が用いられます。このWIFI分類は2014年に米国血管外科学会から発表されたものですが、CLTI患者の患肢を創(W;wound),虚血(I;ischemia),感染(fI;foot infection)の3項目で点数化して重症度をステージングするものです。発表されてまだ日が浅いものの、その後有用性についていろいろと評価がなされ、今では最新の海外のガイドラインでも採用されています。
このWIfI分類で評価して出てくるWIfI ステージは大切断の予測に有用であることが分かっていますが、これに加えて、血管病変の複雑性を反映したGlobal Anatomic Staging System(GLASS)分類や患者リスクなどを組み合わせて、至適な治療方針を決定することが提唱されています。
さて、実際の評価項目を見ていきましょう。まずは下肢の創部の評価(Wound grading)を行います。
上図はガイドラインに掲載されているものを簡略化しています。実際にはどのグレードの点数をつけるのが良いのか迷うことがありますが、各グレードのところに「臨床的描写」が書かれていますので、それを参考にして点数を付けます。
Grade0では、虚血性安静時痛で創なし(ischemic grade 3に加えて典型的症状を必要とする)
Grade1では、小組織欠損,足趾(2本以内)の切断または植皮にて救肢可能な状態
Grade2では、大組織欠損.足趾(3本以上)の切断または標準的TMA切断±植皮にて救肢可能な状態
Grade3では、広範組織欠損.複雑な足部形成術(非古典的中足骨切断,ショパールまたはリスフラン切断)や皮弁被覆あるいは複雑な創管理を行うことでのみ救済可能な状態
次回は虚血の評価について紹介します。
(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)
(編集長)
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CLTI 疾患概念・予後
末梢動脈疾患(PAD)ガイドラインが今年春に改訂されました。PADといってもピンとこないと思いますが、PADとは冠動脈疾患と大動脈疾患以外の動脈硬化性疾患を指します。PADの中で大部分を占めるのが下肢動脈疾患ですが、他に頸動脈・椎骨動脈疾患や上肢動脈疾患、腎動脈疾患なども含むので、最近のガイドラインでは下肢動脈疾患(LEAD)と呼んでいます。これは従来、下肢の閉塞性動脈硬化症(ASO)と言われていたものと同義と考えてください。
最近ではこのLEADという疾患の認知度も上がってきたのですが、重篤な疾患を想起させる胸痛といった症状と異なり、下肢の症状はあまり積極的に拾い上げられていない、いざ見つけたとしても、どこに相談したら良いのか分からないので、整形外科や皮膚科や形成外科に紹介されているというケースがまだまだ多いのが実情ではないでしょうか?確かにLEADの主たる症状である間歇性跛行は通常急速に悪化するものではありませんし、大部分の症例では、何年もそのまま悪化することなく経過していきます。
しかしLEADの中でもCLTIと呼ばれる状態は極めて予後不良ですので、このCLTIについては早く拾い上げて、早く専門施設につなげることがとても重要なので、ぜひあなたにも知っておいてもらいたいと思います。
水戸済生会では10年以上前からLEADに対する血管内治療(EVT)に取り組んでおり、多い時で年に約160例、コロナの影響を受けた昨年も約120例ほど施行しています。そして当院は透析症例が多いという背景からEVT施行例の約7割がこのCLTI患者さんです。今回から改訂されたガイドラインをベースに、当院の経験も交えてCLTIについて紹介していきます。
まず、先ほどから登場しているCLTI(シーエルティーアイ)ですが、Chronic Limb-Threatening Ischemiaの略で、日本語では「包括的高度慢性下肢虚血」と訳されています。
下肢虚血,組織欠損,神経障害,感染などの肢切断リスクをもち,治療介入が必要な下肢を総称する概念で、虚血による安静時痛や下肢潰瘍,壊死が少なくとも2週間以上改善せず持続するものを指します。
もしかしたら、今までCLIという言葉を聞いたことがあるかもしれません。これはCritical Limb Ischemiaの略で、日本語で「重症下肢虚血」と呼んでいました。ところがCLIだと虚血の程度でしか評価していませんでしたが、虚血に加えて,創の部位や大きさ,感染が下肢の予後を大きく左右する要因になっていることが分かり、より的確に下肢切断リスクを反映する概念としてCLTIが出てきました。
このCLTIは血行再建を行わなければ1年以内の下肢切断率が20~30%、さらに1年死亡率も約20%という非常に予後の悪い集団です。ちなみにここでの下肢切断とは、踵がなくなる下腿レベルでの切断のことを指しており、大切断と呼んでいます。
また死亡率に関しては、ステージⅢの胃がんでは1年生存率が約80%、つまり1年死亡率が約20%ですから、どのくらい予後が悪いかが分かってもらえると思います。
もう一つ重要なことはCLTIで切断に至っても、大切断をうけた術後30日死亡率が4~22%、周術期死亡を免れても1年の死亡率は30~50%と非常に高いことです。
ですので、早期にCLTIを発見し、創治癒を得て、下肢切断を回避することが生命予後的にも極めて重要になることをぜひ知っておいてください。
(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)
(編集長)
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心室中隔瘤
今年7月に仙台で開催されたTAVI関連学会のJTVT(日本経カテーテル心臓弁治療学会)で循環器内科の川原先生が発表した内容からシェアします。
心室中隔中を合併した重症AS患者に対するTAVの問題点を整理してくれています。
【心室中隔瘤】
心室中隔から右室側に膨隆する瘤状の構造物
Valsalva洞直下の心室中隔に左室から
右室に突出する心室中隔瘤(矢印)
【病因】
先天性:先天性心疾患の0.3%に合併 うち20%は心室中隔欠損(VSD)に合併
後天性:外傷・虚血・感染性心内膜炎後・VSDの術後に生じた報告例あり(稀)
(心臓 vol.49 No.6 (2017) 590-594)
【症状】
一般的には無症状 ただし合併症発生のリスクあり
合併症としては・・・
大動脈弁閉鎖不全症・三尖弁閉鎖不全症・瘤破裂・左右シャント・細菌感染・右室流出路狭窄・血栓塞栓症(脳梗塞・冠動脈塞栓)・不整脈(心室性頻拍・脚ブロック・房室ブロック)
【治療】
外科的なパッチ閉鎖 → 瘤閉鎖に伴う三尖弁弁尖のゆがみ、医原性伝導路障害のリスクあり
無症状であれば経過観察 → 上記のような合併症を有する場合には手術を検討
日心外会誌 47巻 2号:49-53 (2018)
【TAVIでの問題点】
①弁のsizing(中隔瘤をどう計測するか)
TAVIではCTでの計測が重要で、特にAnuulusやValsalvaの計測が弁のサイズ決定に重要です。でも、今回の心室中隔瘤はValsalva洞直下にあり、通常の計測では含まれる位置でした。瘤を含めるか含めないかでAnnulusの計測が変わってきます。
②中隔瘤部分からのPVL(弁周囲からの逆流)
中隔瘤部分が圧着しないため、術後にPVLが残存する可能性が懸念されました
③中隔瘤部分の脆弱性
中隔瘤部分は周囲組織比べて薄く、圧が加わることによる損傷のリスクも懸念されました。
本症例では特に大きな問題なく弁を留置でき、PVLもtrivial-mild程度で終了しています。術後3カ月の時点では経過良好ですが、症例数が少ないこともあり心室中隔瘤合併例のTAVI後の長期成績は不明であるため、今後もPVLや心室中隔瘤に関連した合併症の発生に注意してフォローしていく必要があると考えています。
(編集長)
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STが上昇するのはSTEMIだけ?
オンコール当番だったある休日、ERから電話がかかってきました。
「60歳代の女性が自宅で倒れているのを発見されて、救急搬送されました。バイタルは大丈夫ですが、心電図の胸部誘導でST上昇を認めます。前壁のSTEMIだと思うのですが・・・・。」
STEMIなら、もちろんPCIをするので「すぐに病院に向かうので、心カテコールをお願いします」と返事しました。ただ、発症時間を知りたくて当直医に「何時ごろからの胸痛ですかね?」と聞くと、「意識レベルがヘンで、胸痛の訴えははっきりしません。」とのこと。
さて、この情報だけですが、あなたは鑑別に何を考えますか?
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編集長はSTEMIなのに、意識障害を伴っているのがひっかかりました。胸痛がはっきりしないSTEMIはありです。でもSTEMIだけで意識レベルが悪くなることは通常ならありません。では、他に鑑別を挙げるとすると?
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病院に向かいながら編集長が考えたことは「大動脈解離」でした。上行大動脈の解離が、冠動脈に及べばSTEMIになるし、腕頭動脈や左総頚動脈に及べば脳梗塞などを来すからです。ただし、解離に伴うSTEMIは右冠動脈を巻き込む下壁梗塞が多いのですが、今回のST上昇は前胸部誘導というのが合わない点です。
さて、病院に到着して患者さんのところに行ってみると確かに意識清明とは言えない、でも麻痺はないし、血圧の左右差もない状況でした。あまり大動脈解離っぽくないな、と思いながらエコーをあてましたが、少なくとも上行大動脈に解離のフラップは見えません。
そのままカテ室に搬送しようと思いつつ、救急科の先生にCTチェックを勧められてあまり乗り気ではないものの、チェックすることに。そしたらこんな画像でした・・・。
さて、この症例の答えは何だかわかりますか?
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答えは、くも膜下出血(SAH)。そしてSAHを契機としたたこつぼ型心筋症でした。
たこつぼ型心筋症はもともと日本から報告された疾患概念ですが、STEMIと同じように胸痛とST上昇をきたします。しかし冠動脈に有意狭窄がなく、たこつぼのような特徴的な左室造影で診断されます。海外でもTakotsubo Cardiomyopathyで通用しますが、Stress CardiomyopathyとかApical ballooning syndrome、Catecholamine induced cardiomyopathyとも言われます。
情動ストレスなど、過度のストレスによって、カテコラミンが多量に分泌されることで、心筋障害や心筋の微細循環障害を来すのが原因ではないかと言われています。(JACC:72, 1955-1971, 2018) 当然SAHなどの頭蓋内のイベントでカテコラミンが多量に分泌され、たこつぼ型心筋症を起こします。
今回はSAHによって意識障害を来し、倒れていた。さらに、SAHを契機にたこつぼ型心筋症を起こし、STが上昇していたと考えられました。
よく遭遇する疾患の中から「なにか違う?」と重篤な疾患を見つけだす感覚は大事です。ただ、それには丁寧に臨床を積み重ねて経験値を上げていく必要があります。
(編集長)
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アブレーションのトレーニング
水戸済生会の循環器内科は「地域で完結できる循環器診療」を旗印に、虚血性心疾患や不整脈、心不全など幅広く診療に取り組んでいます。その中でも不整脈診療はこの数年で大きく変わりました。
筑波大学循環器内科の前教授である青沼和隆先生が、当院の最高技術顧問として着任してからカテーテルアブレーション治療が激増しました。もちろん、それまでもPSVTやAfに対するアブレーションは行っていましたが、非持続性心室頻拍や持続性心室頻拍など対象となる疾患も大きく広がり、昨年度(令和3年度)は314件のアブレーションを施行しています。おそらくこの調子だと今年度は350件は確実に超えると予想しています。
そんなアブレーションも成功率を上げるには細かいカテーテル操作が必須です。当院のメインオペレーターの長谷川先生の指導のもとで、ときどきシュミレーターを使ったトレーニングをしています。
不整脈は目に見えるものではないのですが、波形を見ながらどう攻略していくかを考えるのは非常に面白いところです。基本的なアブレーションカテーテル操作を勉強しつつ、実際の症例を経験して、引き出しの数を増やしていくのが重要です。
(編集長)
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【循環器内科】TAVI 100症例を超えました!
当院でも大動脈弁狭窄症(AS)に対するTAVIに取り組んでいますが、先日100症例を達成しました。
ちなみにTAVIとはTranscatheter Aortic Valve Implantation(経カテーテル大動脈弁置換術)のことで、TAVR(Transcatheter Aortic Valve Replacement)と同じことです。
当院では循環器内科の山田先生と川原先生を中心に心臓血管外科や麻酔科、看護師、生理検査技師、放射線技師、ME、リハビリスタッフなどからなるハートチームで順調に症例を重ねてきました。
現在では大腿動脈アプローチの症例は止血デバイスを使用した経皮アプローチで、2時間かからずに終了できることがほとんどです。
山田先生はTAVI指導医、川原先生は恐らく国内最年少でTAVI実施医資格を持っています。今後はTAVIの術者を増やして、迅速にタイミングを逃すことなく施行できるようにしていくのが目標です。
もしあなたが循環器内科を考えていて、TAVIにも取り組んでみたいなら、ぜひお問い合わせください!
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【循環器】アルドステロン症の見つけ方 その11(ガイドラインの変更点3)
原発性アルドステロン症(PA)の診療ガイドライン2021年から変更点を紹介していますが、今回はデキサメタゾン抑制試験についてです。
実はPAには同時にコルチゾールの自律分泌を合併する場合があることが知られています。頻度は評価法によって異なるそうですが、PA全体で3.9~77.6%、片側性のPAでは23.4%と報告されています。
アルドステロンとコルチゾールの同時産生腫瘍はアルドステロン単独を産生する腫瘍と比較して
・腫瘍径が大きい
・耐糖能異常
・骨粗しょう症
・蛋白尿
・心血管イベントを合併する頻度が多い
といった特徴があるそうです。
そして、コルチゾールの同時産生があると、副腎静脈サンプリングの解釈に影響が出たり、副腎摘出後のステロイド補充が必要になることがあります。さらに同時産生腫瘍では、アルドステロンとコルチゾールの過剰分泌が必ずしも同側とは限らないことがあるため、局在診断が重要となります。
このためガイドラインでは
CTで腫瘍径が1㎝以上の明確な副腎腫瘍を認める時は、1㎎デキサメサゾン抑制試験を実施して、コルチゾールの自立分泌の有無を確認する
ことを推奨しています。
コルチゾールの産生過剰の判定基準は
1㎎デキサメサゾン負荷後のコルチゾール≧1.8μg/dlで
としています。
(編集長)
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◆10分で分かります!
1月に開催された「レジナビFairオンライン2021 ~専門研修(内科)プログラム~」 での説明動画を、水戸済生会YouTubeチャンネルでご覧いただけます!
水戸済生会の内科専門研修の特徴が10分で分かります。特に、消化器内科・循環器内科・腎臓内科を志望しているあなたは、ぜひご覧ください!