専門研修ブログ

茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
初期研修を終えて、自分の専門領域を選ぶ際の参考になる情報や、その領域なら知っておくべきトピックなどを紹介していきます。

CLTI  創傷治療(3)

2022.11.14
カテゴリー: 循環器

改訂されたガイドラインをもとにCLTIについて紹介しています。

 

創傷治療の続きで、今回は創傷治癒を促進する治療についてです。この辺りの知識は循環器内科医にとって良く分からないことばかりですが、ちょっとだけでも知っておくと形成外科医との会話がすごく理解できるようになります。

 

④創傷治癒を促進する治療

・局所陰圧閉鎖療法(negative pressure wound therapy: NPWT)

比較的大きな創傷で壊死組織が除去され感染が制御された後に、肉芽形成を促進させる目的でNPWTを行います。慢性創傷における世界的標準治療法だそうです。「V.A.C療法」の方が聞いたことがあるかもしれません。臨床的には創傷の収縮、肉芽形成の促進、滲出液の排出、浮腫軽減などの効果を有するそうです。最近はNPWTに周期的自動洗浄液注入器を追加したNPWTi-d(negative pressure wound therapy with instillation and dwell time)というものが使用可能となったそうです。「Veraflo™(ベラフロ)」という商品名ですが、壊死組織が遺残している時期から使用可能で、デブリードマンが可能なNPWTという位置づけになっているようです。

 

・創傷被覆材

創傷被覆材はいろいろな種類があって、どれを使えばよいのか迷いますが、そもそも比較的小さな創傷やNPWT後の治療に適応があり、湿潤環境を維持し、上皮化を促進させる目的で使用されます。注意点はかえって感染を起こすことがあることです。これを回避するには、創傷内の滲出液の量と創傷の形態に応じて創傷被覆材を選択するのが良いそうですが、循環器内科医にはちょっとハードルが高いので、詳しい看護師さんや形成外科にその都度相談しています。

 

・栄養療法

現在のところCLTI患者に対する栄養療法が下肢救済につながるというエビデンスはありません。また本邦では透析患者のCLTIが圧倒的に多いという特殊な事情もあると思いますが、常識的なところとして創傷治癒の観点から栄養サポートチーム(NST)による適切な栄養管理を行うべきです。ガイドラインにはアルギニン,ビタミンC,亜鉛などを強化した栄養補助食品を付加する栄養療法を行うことも記載されています。

 

(参考文献:日本循環器学会・日本血管外科学会 2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン)

(編集長)

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