専門研修ブログ

茨城県水戸市にある水戸済生会総合病院の専門研修を紹介するブログです。
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胃静脈瘤の治療・BRTO(1)

2022.01.10
カテゴリー: 消化器内科

門脈圧亢進症での食道静脈瘤は、時に致死的な出血を来すものですが内視鏡で治療できることはあなたも知っていると思います。

 

でも、門脈圧亢進症には孤発性胃静脈瘤(Lg-f、Lg-cfとか2型、3型と呼ばれるもの)から出血を来すこともあり、こちらは内視鏡では治療困難なことが多いとされています。

 

それほど頻繁に遭遇することはないとはいえ、もし見つけたら、治療をどうする? 誰に相談するか? 消化器内科を目指すあなたなら、ちゃんと考えておく必要があります。

 

そんな胃静脈瘤に対する治療の一つがBRTOです。

 

BRTOとはBalloon occluded Retrograde Transvenous Obliteration(バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術)の略ですが、1996年に金川らが最初に報告した日本発の治療です。

 

肝硬変などによって門脈圧が亢進すると求肝性の血流が減って、行き場のなくなった遠肝性の血流は、①食道静脈瘤を形成して、その後に奇静脈から上大静脈に還流する経路と、②胃静脈瘤を形成して左腎静脈経由で下大静脈に還流する、主にこの2つの経路で大循環に還流します。

 

もう少し詳しくいうと、胃静脈瘤に流れ込む供血路は短胃静脈や後胃静脈が多く、胃静脈瘤から左腎静脈に戻る排血路は胃腎シャント(GRシャント)と呼ばれ、そのシャントが左下横隔静脈経由で左腎静脈、下大静脈に還流するパターンが多く見られます。

 

BRTOでは、この血流の下流にあたる排血路(左下横隔静脈)からアプローチし、流れをせき止めた状態で逆行性に硬化剤を注入することで静脈瘤の血栓化を図る治療で、肝硬変診療ガイドライン2020でも、孤発性胃静脈瘤の治療として推奨されています。

 

まず胃静脈瘤の治療適応ですが、

・胃静脈瘤破裂緊急例、待機例

・F2以上でRCサイン陽性

・F3あるいは明らかに増大傾向のあるもの

・胃静脈瘤を形成する門脈大循環シャントが、肝性脳症の主因になっている

・カテーテルでアプローチできるシャント血管がある

 

除外基準

・ビリルビン≧4.0㎎/dl、Child-Pigh score≧13点

・腎不全合併例

以上のようになっています。

 

次回はBRTOの理解に欠かせない廣田分類を紹介します。

(編集長)

矢印が胃静脈瘤、矢頭は胃腎シャント

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